爆発的な流行を始めたTwitter


先月末にネットレイティングスが発表したレポートでは、米国における月間利用者数は、1月から4月にかけての四半期で455万人から1708万人と、約3.7倍に膨れあがっている。日本においても今年の1月から4月にかけて利用者数が2.6倍になっており、 ヤフーの検索数も急上昇を始めているようだ。

Twitterがスタートしたのは、2006年7月のことだが、こうした急速な利用者数の増加の中で、Twitterを取り巻く状況も大きく変化し始めている。オノヨーコやヨルダン女王などの海外セレブのアカウント開設は、そうした変化を示す分かりやすい例だろう。


Twitterとは何か?


だが、そもそもTwitterとは、どんなサービスなのだろうか?

Twitterの投稿画面には、”What are you doing ?(いまなにしてる?)”と書かれており、それに140文字以内で答えるというのが、一応はルールになっている。とは言え、実際には日常のふとした気分やちょっとした思いつきなどの「つぶやき」が投稿されることも多い。こうした短い「つぶやき」を連投するのは、ブログやmixiなどのSNSでも原理的に不可能ではないのだが、それを迷惑に思う人も少なくない。そんなちょっとした短文を投稿したいときには、Twitterは大変に有り難い存在なのである。

私たちは、必ずしも他人に何かの意見や考察を伝えたくてコミュニケーションをするわけではない。挨拶の言葉が存在しない言語はないと言われるように、繋がりを確認するための軽いコミュニケーションもまた、私たちは常に求めている。Twitterとは、そんな私たちの普遍的な欲求を、軽い気持ちで放出できるように設計されたサービスなのである。

実際、特に日本においては、まだ使っている人間が少人数であった2007年頃、Twitterに、ブログにもmixiにも疲れてしまった人が気軽に繋がれる「ミニブログ」としての役割を見いだす人もいたようだ。



個人的結論は『TwitterってなぁGeekyなおじさんには面白いオモチャかもしれないが、普通の人にとってはmixiモバイルとかモバゲータウンで十分事足りる』である。

もちろん、こうした他者との繋がりを求めてTwitterを使うユーザーは、現在でも数多くいる。仕事中や授業中のちょっとした失敗や、日常の中で浮かんでくる軽い思いつきが、今もTwitter上を飛び交って人々を繋いでいる。


ミニブログから、「現在」を伝えるソーシャル・メディアへ


だが、最近のTwitterにまつわる言説では、必ずしもこうした「ミニブログ」としての側面ばかりが強調されているわけではない。例えば、以下のTechCrunchの記事などがその典型だろう。

何か重大事件が起きたことをTwitterのストリームで最初に読んだのでない場合でも、何が起きたのか私が最初にチェックするのはTwitterだ。何年も前だったら、まずCNNニュースを見たところだろうが、今は断然Twitterだ。

Twitterが優れているのは事件を最初に伝えるという点ばかりではない。Twitterでは、事態の進展とともにアップデートが継続的にストリーミングされてくる。

Twitterを見ていると、いま世界で起きていることが瞬時に分かる。そう、最近話題になっているのは、こうしたTwitterのメディアとしての側面――特にリアルタイムの情報取得を可能にするソーシャル・メディアとしてのTwitterである。

今やTwitter人口が1800万人を超えているとも言われる米国では、Twitterはかなり身近なツールになり始めているという話も聞く。少人数のクラスタが緩やかに繋がり話題を共有する「ミニブログ」から、一千万単位の大量のユーザーがリアルタイムで入力した情報が飛び交う、究極の速報性を可能にするソーシャル・メディアへ。Webサービスにおいては、量の問題がどこかで質の問題に転化することが多いが、それがTwitterにおいても起きたのだろうか。

ここ数ヶ月の間で、Twitterはクリティカルマスを越えた。日本では「キャズムを越えた」状態ではないけども、IT業界周辺では、もはや必須のツール。自ら参加してつぶやかないにしても、リアルタイムな情報を探すツールとしての価値は非常に高い。

参加者視点としては、いわゆる「つぶやき」、「ミニ(マイクロ)ブログ」といった感じから、リアルタイムな情報の総合アグリゲーションサービスといった感じのものになりつつあるように思う。


Twitterが垣間見せる未来の情報環境


こうしたTwitterの隆盛の背後で、隠れた大活躍をしている存在がある――それは、携帯電話である。

例えば、日本においてケータイからの投稿を可能にする「モバツイッター」の登場がTwitterの普及に大きな役割を果たしたように、海外においても、TwitterとケータイやiPhoneなどのモバイル端末との関係を切り離すことは出来ない。

ハドソン川の事故では、twitpic(画像投稿サービス)を通じてiPhoneで撮影した写真がアップロードされ、Twitterによって事故の様子が実況中継された。当局に不当逮捕されたUCバークレーの学生はケータイを通じて救助を求めて、followerたちの連絡によって素早く釈放された。そして今、イランではケータイによって当局の監視の目を逃れて情報が交換されている。いつでもWebに接続できる「小型の情報端末」としてのケータイと、日々の生活をリアルタイムで「実況」していくTwitterの相性は極めて良い。

今や私たちの身体の一部になりつつあるケータイなどのモバイル端末から、無数の私たちの情報や思いつきがリアルタイムで「放電」され、それらがWeb上を流通する中で構造化されて価値あるコンテンツへと生まれ変わっていく――こう書くと大袈裟だが、それはTwitterが垣間見せてくれる未来の情報環境の光景ではないか。

上でも挙げた、まさに現在進行中のイランにおける「民主化運動」においてTwitterが果たしている役割は、このサービスの報道メディアとしての可能性を示唆している。

Twitterとメディア - Vox

大統領選挙のやり直しを求める、群衆のこの抗議行動は、YouTubeやFlickrなどのサービスとも連携しつつ、当局の監視の目をかいくぐりながら進行している。

今回の抗議行動やモルドバにおける共産党の勝利への異議申し立て行動などは、極めて分かりやすい形で、Twitterのメディアとしてのポテンシャルを見せつけた事件として、今後も記憶されていくことだろう。


Twitter はニュースソースになり得るのか?


とは言え、一方で注意を喚起しておかねばならないのは、「Twitterはニュースソースにあらず」という意見は、まだ強い説得力を持っているということだ。

ムンバイ同時テロ報道での情報の錯綜、先月の新型インフルエンザ騒動の際に問題になったデマゴギー、有名人へのなりすまし――こうした問題に対して運営側も対応を取っていないわけではないが、このUGCに常に付きまとう「ソースの信憑性」の問題をクリアしているとは、現時点では言い難い。

Twitterとは個人のコミュニケーション志向のメディアなのであって、新聞や雑誌に要求される水準のコンテンツを発表する場には基本的には向いていない。無数の人々のちょっとしたコミュニケーションへの欲求が、今や従来メディアを脅かす高速の情報流通を可能にし始めているというのは興味深いが、デマゴギーの温床になる可能性を消すのは容易ではないだろう。


そして、オンとオフがシームレスに繋がり始めた


最後に、このTwitterが、それを使う私たちのWebに対する向き合い方に問題提起をしていることについて、簡単に記しておきたい。「@IT」のメールマガジンに掲載されていた記事には、こんなことが書かれている。

Twitterで考えるオンオフの境界

オンラインとオフラインの差を感じさせないくらい、Twitterがオフラインの世界と連続的だということなんだと思います。

しかしそれゆえの悩みもあります。自分の見聞きした情報をどこまでpostしていいのかという問題です。

…(中略)…

それは「情報が外に漏れることのリスク」としてもとらえられますが、「ウェブ上の人格と現実の人格のをどう使い分けるか」という問題でもあります。ここまでオン/オフの境界を揺さぶるツールが出てくると、そんな使い分けは無意味だったのでは、と思うこともしばしばです。

かつて90年代後半のHP文化が盛んだった頃、「オフラインの世界=現実」と「オンラインの世界=Web」を二分して捉えるのは、筆者には自然なことのように思えていた。今でもインターネットを、普段の自分とは違う別の自分を表現する場として捉えている人は多いはずだ。だが一方で、ブログ、mixi、Twitterと新しいWebサービスが登場するにつれて、徐々にオンラインの世界はオフラインの世界とシームレスに繋がっているという考えの方が、自然なものになってきているのを感じる。

考えてみれば、現在は、Webの情報を収集・整理することから事業を始めたGoogleが、世界中の図書館の本をスキャニングし始め、ストリート・ビューによって我々の現実の生活圏の風景を画像に収めている時代である。オンラインとオフラインを二分するような発想そのものが、既に意味を失い始めているのではないか。ユーザーの人格の「オン/オフの境界を揺さぶる」Twitterは、そんな現在ウェブが到達しつつあるように見えるフェーズの、言わば申し子のようなサービスなのかもしれない。

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