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それは“PC盗難事件”から始まった Sleipnir開発者が語るフェンリルの歴史



柏木氏と言えば、画像編集ソフト「PictBear」や国産Webブラウザ「Sleipnir」の作者として、フリーソフトの世界では非常に有名な開発者。特にSleipnirは、タブ機能がまだ珍しかった時期にいち早くそれを取り入れるなど、個人制作でありながら先端的かつ高機能な内容で多くのユーザーに愛されてきたブラウザである。そして、このフェンリルとは、古株のネットユーザーであれば記憶に残っているであろう、あの不幸な盗難事件をきっかけに、柏木氏によってSleipnirの制作を続行するべく作られた会社なのだ。

われわれが黒と白を基調にしたスタイリッシュな現代風のデザインの会議室で待っていると、ドアの向こうからゆったりと柏木氏が現れた。写真を撮影することはできなかったが、若々しい外見が非常に印象的な方である。とは言え、氏には経営者らしい泰然とした威厳も漂っていて、一見ぶっきらぼうにも見える辺りは若武者のような趣も感じられる。考えてみれば、2005年、柏木氏が23歳の時に会社 を起ち上げてから、現在フェンリルはもう5年目なのだ。


フェンリルの公式サイト

この日は、今日公開された「Hatena Bookmarker」の新バージョンリリースに合わせたインタビューということもあり、まず最初に「はてなブックマークを使っていらっしゃいますか?」と問いを投げかけたところ、「使ってます」との答えが返ってきた。最近は忙しくてトップページは見られずにいるとのことだが、社員の方から「愛情のこもったメッセージつきのメール」で見るべき記事が送られてきたりするのだとか。実はフェンリルの社員の方には、はてなブックマークユーザーが多いのだそうである。
さて、今回のインタビューでは、そんなフェンリルという会社を柏木氏が立ち上げ、どのように氏がそれをディレクションしてきたのかを、じっくりと聞いてみることにした。「企業はお金にこだわってはいけない」と広言する氏の大らかな人柄と、「人の役に立ちたい」という並外れて強烈な意思が伝われば幸いである。

1.「私がプログラムをする動機は、それで人が喜んでくれるからです」

■ Sleipnirを開発した理由~「多くの人が使うものを作るのは、何て楽しいのだろう」

――今回のインタビューでは、Sleipnirの開発スタートから現在に至るまでのフェンリルの歴史をお聞かせいただきたいと思います。まずは、2002年にSleipnirを開発されたきっかけについて教えてください。

柏木 自分の理想にあったブラウザがなかったこと。まず、それが一番大きな理由です。

また、もう一つの理由として、多くの人に使ってもらえるソフトウェアを作りたいという思いがありました。それ以前からソフトウェアは作っていましたが、使う人が少なかった。ところが、「 PictBear」という画像編集ソフトを出してみたら、使ってくれる人が増えてきて、その時に「多くの人が使うものを作るのは、何て楽しいのだろう」と思ったのです。そこで、ブラウザならもっと多くの人が使ってくれるだろうと考えました。

――Sleipnirの開発は大学時代とのことですが、ソフトウェアの開発そのものはいつ頃からされていたのでしょうか?

柏木 中学・高校の時からです。その時は、先生とやり取りをしながら開発していました。

――それは部活動ですか?

柏木 いや、その先生の愛によるものでした。昼休みに作って見せたら「すごいなー」と言ってくれるような感じです。単純な人間なので、その言葉に喜んでやっていました。今思えば、それが教師なんだろうなというところですが感謝しています。

――それでは、中学・高校とずっとソフトウェアを開発されていたのでしょうか?

柏木 そうです。ただ、中学の時は人数が少なかったので、先生も子供ひとり一人を相手してくれたのですが、高校になると人が増えてくるので、先生のひとり一人への愛はどうしても薄くなってしまいます。そのときに、ちょうどインターネットが流行りだしたこともあって、愛情の求め先が近くの人よりも外のユーザーに向かっていったのかな、と思います。


国産Webブラウザ「Sleipnir」の有名なロゴマーク。

――Sleipnirは、2ちゃんねるのユーザーさんとやり取りしながら開発していたのが印象的です。やはりそうしたやり取りが原動力になっていたのですか?

柏木 そもそも、私がプログラムをする動機は、それで人が喜んでくれるからです。

ユーザーが感謝してくれて「役に立った」「ありがとう」と言ってくれる、あるいはプログラムを通じて「こういう機能が欲しい」などの会話ができる、私の原動力はそこにあるのです。2ちゃんねるのユーザーが「こういうことができたらいいな」と言ってきて、それを実装すると喜んでくれるという、そのこと自体が楽しかったんだと思います。

――2ちゃんねる以外でもコミュニケーションを取ることはありましたか?

柏木 元々は個人でやっていたサイトがあって、そこで普通の掲示板を使ってやり取りをしていました。しかし、それでは管理しきれなくなってしまい、ツリー型の掲示板に変えてみたり、フォーラム型にしてみたりと、色々と工夫しながら自分のページに来る人とコミュニケーションを取っていました。そんな時に2ちゃんねるのスレッドができました。
実は、それまで2ちゃんねるを見たことはありませんでした。でも、そういう場所があることを知り、実際にユーザーさんとやり取りをしてみて、「顔が見えない人とのやり取りは楽しい」と思いました。例えば、フォーラムではハンドルネームがあって、その人の姿を想像してやり取りをすることになる。でも、2ちゃんねるだと、発言している人のイメージが分かりにくい。具体的な姿を想像しにくくて、それはそれで楽しいコミュニケーションでした。

■ PC盗難事件から会社を立ち上げるまで~ユーザーの声を聞いて「やっぱり、やろう」と決心した

―― Sleipnirの開発は、大学を卒業されて一回社会人になられてからも続けていたとのことですが、やはりどうしても避けて通れないのが「PC盗難事件」の話題です。まさにユーザーさんとのコミュニケーションが断ち切られた瞬間でもあると思いますし……。

柏木 二日間は落ち込んでました。よく分からないというか……「これは現実ではない」と思い込みたくて……感情が理性を上まわった瞬間でした。

――お仕事も休まれていたのですか?

柏木 はい、休んでいました。今うちの会社の人間がそんなことで休むと言ったら、「なに言ってんねん、こら」と言いそうですが(笑)、まだ社会人として子供でしたし、未熟でした。

――本当にショッキングな出来事だったと思います。そんな困難な状況から精神的に立ち直られて、もう一度開発に戻ろうと思われたきっかけは何だったのでしょう?

柏木 ある段階で、「もう、しゃあないな」と受け容れることができたんですね。ユーザーの方にメッセージを送っていただいたり、掲示板で励ましてくださっているのを見て、「やっぱり、やろう」と。

――そこで、辞めてしまおうとは思わなかったんですね。

柏木 いや、実は少しは思っていたときもありました。「もうパソコンをやらない生活も、いいかもしれないな」と思ったりもしました。でも、やっぱり人に期待されているわけですから、やった方がいいなと。

――使っている人の声が、一貫して原動力になっているんですね。

柏木 そうですね。きっと寂しがり屋だったんでしょう。


毎年PC盗難があった11月16日を記念して作られる「11.16 Anniversary Page」

――そこからフェンリルの起ち上げとなるわけですが、社会人経験1年目で起業というのは、かなり大変だったと想像します。

柏木 社会人経験が少なくて、そもそも会社について何も分かっていなかったから、起業するという時になって「企業って何だろう」と思ったくらいでした。でも、分かっていなかったからこそできたという面があります。分かっていたら、怖くてできなかった。

――分かってはいなかったけど、起業への思いだけはぶれずにあったんですね。

柏木 そうですね。そこは気合いでした。もう気合いだけで生きているので。

2.「強くこだわっているのは、“お金にはこだわらない”ということ」

■ 「ハピネス」の理由~「生きている実感があるのが幸せですね、人が喜んでくれるとか」

――2008年10月に、「さぁ、攻めるぞ。」という印象的な記事がありました。その中に、2006年からの2年間、組織作りに注力していたという話がありましたが、組織作りでこだわってきた点を教えてください。

柏木 強くこだわっているのは、「お金にはこだわらない」ということです。私の家に飾ってある絵に、「儲けるは欲、儲かるは道」と書かれています。お金は追うと逃げるから、追うな。幸せの10分の1はお金に変わる。そこにはこだわってます。

――いくつかこれまでのインタビューを拝見して、「ハピネス」が会社の軸になっている言葉ではないかと思いました。それが具体的にどういうものか、柏木さんなりの言葉をお聞かせください。

柏木 まず、ハピネスというのは主観です。だから、その人が幸せだと感じる状態のことです。
問題は、そういう状態にするにはどうすればよいかですが、まずは安心できることでしょう。例えば、3分後にミサイルが飛んでくるという話があれば、落ち着いて会議なんてできません。まずは身の安全が最優先です。また、家で大事な子供が病気になっていたら、なかなか仕事に集中できません。しっかりと家族があって、安心できるというのも大事です。それでやっと「ハピネス」を目指すスタートに立てると思います。


フェンリルのオフィス玄関には、幸福についての本がいくつも置かれている。

その上で、次は評価です。「マズローの欲求段階説」というのがあります。一刻も早くそれを満たしていって、より上の段階に上がるか、あるいは次に行けないのであれば、上がるのを止める。何らかの方法で、自分が幸せであると思い込めている状態になればいいと思います。ぐちぐち不満ばかり言っていても、世の中が楽しくないですし、周囲も楽しくないですし。

――上に行かなくても、幸せになり得るということですか?

柏木 そうです。資本主義の中で生きる選択肢もあれば、田舎で農業して自給自足する生活もありますし、主観で幸せに感じるということが大事です。

――柏木さんにとって、この瞬間の「ハピネス」というのは、どういうことですか?

柏木 生きている実感があるのが幸せです、人が喜んでくれるとか。あるいは、今ここでお茶が飲めていることとか。

■ 18時で退社~「飲み会に参加しているときは影響がありますね」

――「ハピネス」には身の安全や家族が大事という話とも繋がると思うのですが、IT系の企業には珍しく18時の定時退社を推奨されていますね。

柏木 社員の家族のハピネスです。「どうして帰りがこんなに遅いのか、何のためにそんな風に一生懸命働いているのか」――このことをそういう体験をしていない家族に説明するのは、難しいと思います。そして、そういう状況では、なかなか働くという行為に集中できないと思います。それならば、帰宅して家族と仲良くしながら、空いている時間で自分の仕事やプログラミングをすればいい。

――18時退社というのは、他の会社と仕事をしていく上で影響がありませんか?

柏木 飲み会に参加するときは影響があります。20時開始とかですから。これは結構致命的です。2時間一人でいるのも辛いです。

――ちなみに、飲みに行かれる機会は多いですか?

柏木 あまりないです。誘ってくれる人と行っているくらいです。飲み会で社外と繋がりを持つのは社員に任せています。

3.「ゴールは、人に役立つ法人になることです」

■ フリーソフト文化~好きだったのは、「お金が欲しくて作っているのではない人が多かった」こと

――以前、「法人としての責任を果たしつつ、それでもフリーソフトという文化を大切にやっていきたい」とブログで書かれていました。現在は、不況の影響で広告出稿が減少している状況で、課金モデルが話題になったかと思えば今度は「フリーミアム」が話題になったりと、ネットの無料文化について多くの人が再考している時期だと思います。そういう中で、柏木さんの「フリーソフト文化」への思いをお聞かせいただければと思います。

柏木 私がフリーソフトで好きだったのは、「お金が欲しくて作っているのではない人が多かった」ことです。
作者がソフトウェアを作り、それがたまたまそこに置かれている。それを自己責任で使ったユーザーが、「こう言うのが欲しかった」と喜ぶ。すると、それを聞いた作者も嬉しくなる――そこでは、お金という利害関係が無くて、ただ人と人が助け合っているわけです。
私は、そういうことが好きです。そのフリーミアムは、確かにビジネスとしては面白いのかもしれない。でも、私たちがこだわっている「フリーソフト文化」、「助け合いの精神」とは関係のないことです。

――お金とは何の関係もないところに、人と人との繋がりやフィードバックがあって、それが螺旋を描きながら成長していく感じですね。ただ一方で、企業としてはどうしても収益を上げるのが必要なのも事実です。その点で、「フリーソフト文化」との関係はどうお考えですか。

柏木 それはなかなか難しい問題です。もちろん、両方やらなければいけないと思ってます。企業はお金を求めてはいけないと考えていますが、やはりお金は入ってくるようにはしなければいけない。お金がないと、この資本主義の世界では力がないので、人に与えるためにお金を手に入れることは大切です。
ただその時に、「そもそも何のために力を手に入れるのか」という大前提が崩れてしまったら、意味がありません。お金は何かを動かすために必要で、お金に自分が動かされるほど馬鹿馬鹿しいことはありません。その辺は概念としても非常に難しいところですが……
ゴールは、人に役立つ法人になることです。で、そのための条件として、お金がやってくる仕組みを作る必要があるということです。

■ 松下幸之助を読む理由~「助け合いの精神」に共感した

――松下幸之助さんの本を愛読しているという話を聞きました。法人についての考えにその影響はありますか?

柏木 読み始めたきっかけは、本に書かれていることが、自分の価値観と似ていると思ったからです。
例えば、アメリカは「自分本位の人が集まっても、それなりに上手く回る」という考えの、「市場原理主義」の国です。それはたぶん、他民族の集まる文化で「助け合い」などと言っていたら、自分本位の人が有利になるからでしょう。
それに対して、松下幸之助さんは日本的な思考の人だと感じました。彼は「自分さえ良ければいい」とは言ってないわけです。「助け合いの文化」です。そして、私もそういう思考に近いから彼には共感できて、そういう会社を作ろうとしている。ただ、彼を読んでそういう考えに変わったわけじゃなくて、たぶん単に私は考え方が古いんでしょう。

――松下幸之助さんの後を追いかけているというのではなく、彼に共感して企業をこういう風に発展させていきたいと思っているのですね。

柏木 思想が近いのでしょうか。あと、彼とは境遇が近いんです。和歌山県出身で、同じ大阪という場所で起業している。そして、私が23歳で彼は22歳のときに会社を興していて、起業の年齢も近い。だから、上手く行くという思い込みです。

今回取材を行った会議室からは、大阪市のオフィス街が一望できる。


■ 社会の役に立つということの本質~コンピュータで人間がバカになるなら、関わらない方がいい

――松下幸之助さんと言えば、著作が世界の経営者のバイブルにもなっている非常に功績のある方ですから、柏木さんもパナソニックのように、10年後にはオリンピックのスポンサーになるような話に辿り着くのかな、と思ってしまいました。

柏木 そういう企業になると思います。オリンピックのスポンサーになるかどうかはわかりませんが。

――お話を聞いていると、世の中の発展に寄与していきたいという気持ちも感じられます。将来やってみたいことはありますか?

柏木 将来的には学校を作りたいと思っています。幸せに生きるために一番大事なのは、正しい教育かなと。幸せは、教育によって行き着くことができるものだと思っています。例えば、コップに半分飲み物が残っているときに、それを見て「もう半分しかない」ではなくて「まだ半分もある」と言える――そんな人になりたいと思う人が、集まれる環境を構築したいと思っています。ただ、現実にそれを実行できる具体的プランはまだないです。

――そういう発想ができるのは、「ハピネス」という主観を持つ近道ですよね。他にこういうことをしてみたいというものはお持ちですか?

柏木 これはなかなか難しいのですが、実は、もしコンピュータが発展すればするほど人間がバカになるのであれば、もうコンピュータとは関わらない方がいいかもとも思っています。例えばユーザーインターフェイスを突き詰めると、何も考えずに操作できるという発想に行き着くのですが、それは人間を賢くするだろうか、本当に幸せにするのだろうかと考えさせられます。
ピクサーに『WALL・E』という映画があります。コンピュータが発達した未来で、人間が椅子にもたれかかって生きている。「そこに貢献することで、それって世界の役に立ってるんだろうか」ということは、考えます。

――結構、現在のお仕事以外にも興味が拡がっている感じですね。

柏木 実はどちらかと言えば、ITには興味がないのかもしれません。単にプログラミングならば使えるし、手っ取り早くできるからやっているだけで。むしろハードウェアなどの方に興味があります。
ただ、もちろんこういう話はまだ未来のことで、理想でしかありません。今は自分たちの力と応援してくれるファンを増やすために、みんなで頑張っている段階です。

――かなりのロングスパンで実現するところに興味が向いている印象を受けます。

柏木 短期的に人のためにしていることが、本質的に人間に役立っているのか分からないということです。社会の役に立つということの本質的な答を探すと、なかなか難しいです。

4.「社員が賢くなれば、何をやったって上手くいきますしね」

■ iPhoneアプリを作る理由~アップルの素晴らしい思想に社員を触れさせたい

――iPhoneアプリ開発に進出されていますが、これまでWindows向けソフトウェアを一貫して作っていたことを考えると、かなり大きな方針転換だと思いました。

柏木 戦略的なところが大きいです。フェンリルの現時点での魅力は、やはり基本的にはアプリケーションの開発に拠っている。そこで、人に頼られる存在価値を作ろうと考えたときに、やはり何らかのマシンの上で動くアプリケーションを作ることに特化すべきだ、と考えました。
なぜiPhoneなのかということですが、実はアップルの製品って、中身の設計も凄く綺麗になっています。おそらく、それはマイクロソフトのような企業との思想の違いです。
マイクロソフトは、下位互換性やユーザーの慣れを重視していて、変えない難しさというのを実現しているのだと思います。すごくユーザー思いです。しかし、アップルは変えていく。常に最高の状態を実現することを優先している。アップルのOSなどのデザインは、常にベストを実現する分、やっぱり良い。その素晴らしい思想に触れることで、社員が賢くなる。その点で、これはやる意味があるなと思っています。

――必ずしもiPhoneアプリの流行に乗ったというわけではないわけですね。

柏木 会社の意義は、やはり社員が成長してくれることにあります。社員が賢くなれば、何をやったって上手くいきます。あまり何をするかにはこだわってないです。

フェンリル社内の仕事風景。


――有料アプリは初めてということですが、そこで普段との気分の違いはありましたか?

柏木 やはり若干、抵抗はありました。本当は無料で出したかったのですが、広告モデルがありませんでした。ただ、これは社内の話ですが、お金をもらって責任ある仕事をするというのも、社員にとって大事な経験かなと考えています。

――2009年4月に公開された「Elegant Apps」というiPhoneアプリ紹介サイトを拝見して、相当な労力をかけていらっしゃるなと思いました。運営で苦労されている点などはありますか?

柏木 担当者は苦労しているみたいです。ただ、やはり成長するには、苦労するしかないと思いますから。茨の道を進めば足も丈夫になりますし、気合いです、気合い。

■ Sleipnirの今後~「狭く深く」で強く愛してくれるユーザーを増やしたい

――Sleipnir 3へのリリースの動きなどがあれば、伺える範囲で教えていただければと思います。

柏木 いまフェンリルは組織を作ることが重要な軸になっていて、Sleipnirのユーザーインターフェイスなどを組織的に分担して開発していける体制にしています。Ver3は色々と構想していますが、まだかかりそうです。

――現在、Google Chromeなど競合ブラウザがどんどん出てきていますね。

柏木 ドンキホーテにならないように、頑張ります。
Sleipnirならではの強みという点では、大企業と比較しての中小企業というところがあります。ユーザーと直接コミュニケーションを取って、彼らをとても大事にすることができます。また、細かいところもある程度専門的に特化できます。例えば、ChromeならばすべてのOSに対応しなければいけないけれど、うちはWindowsに特化できます。
そういう意味で、すべてを考慮しなくて良いという点で「狭さ」をメリットにしていきたいと思ってます。広く浅くではなく、狭く深くにすれば、強く愛してくれるユーザーさんも増えていきますし。だから、Windows対Macにおける、Macみたいなところを目指しているのかも知れません。狭くても深く付き合っていける人を大事にしようと思っています。

――最後に、2010 年のフェンリルの方向性などお聞かせいただければと思います。

柏木 私は引き続き社長として組織作りを行っていきます。今年は、生産力が拡大できる大企業のようなシステム化された会社へ成長させます。
既存のプロダクトや新たなサービスでユーザーのみなさんへ直接ハピネスを届けるのは社員の役割となるので、「頑張れ」と Twitter でも2ちゃんねるでもいいので応援していただけると嬉しいです。ユーザーさんが喜んでくれることが何よりの励みになります。もちろん厳しさの方もよろしくお願いします。

――今日はお時間をいただきありがとうございました。


「Hatena Bookmarker」について

本日リリースされた「Hatena Bookmarker」は、Sleipnir専用のはてなブックマークを「もっと楽しく!もっと便利に!」するためのプラグイン。従来の「表示されているウェブページのはてなブックマーク数を表示する」などの機能に加えて、今回のバージョンでは、

  • 各ページにて、ページ内ポップアップを表示し、はてなブックマークコメントを表示する機能
  • ブックマーク追加を Sleipnir Start 同様の方式で、画面遷移することなく、サブウィンドウから行えるようにする
  • ネット上の「B!」アイコンの画像をクリックしたときも、プラグインが反応して追加サブウィンドウが表示される

という機能が追加されています。興味を持たれた方は、上のリンクからダウンロードすることができるので、ぜひお試しください。



【オマケ】

写真はNGとのことでしたが、無理を言って柏木社長の手だけ撮影させていただきました。ありがとうございます!


<インタビュー・撮影> 万井綾子
<構成・執筆> 稲葉ほたて
文: 稲葉ほたて

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