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「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」担当編集者が明かすネットの大きな力



スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

  • 作者:カーマイン・ガロ
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2010/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

本書は、スティーブ・ジョブズが多くの人を熱狂させた伝説のプレゼンを紹介しながら、その魅力やプレゼン手法を解き明かしていくものです。カーマイン・ガロ氏が著した英語版を井口耕二さんが翻訳し、日経BP社が発行しました。この記事を書く私は、日本語版の担当編集者です。

本書の告知を本格的に始めたのは発売2週間前の2010年6月30日のことでした。私のTwitterの個人アカウント(@hirominakagawa)でツイートしたり、日経BP社のWebサイト「ITpro」の記事で紹介したりしました。

■ ネットのクチコミがAmazonランキングを上げ、発売日には総合2位に

Twitterや記事中では、本書に解説を著していただいた外村仁(@hokayan)さんと、林信行(@nobi)さんを招いて、発売日の2010年7月15日にトークショーを開催することも告知しました。トークショーを紹介していただいたブロガーさんやニュースサイトの方のおかげもあって、定員の100人を超える申し込みがあっという間に集まりました。

この動きと並行して、発売前に献本させていただいたブロガーの方々が、次々と書評を掲載してくれました。一覧は本書の公式ページにまとめてあります。こうした書評ブログのおかげでAmazonのランキングは上がり続けます。これまでに経験したことのない反応の良さです。発売日前に急きょ増刷を決定しました。

発売当日のトークショーの時点で、アマゾンのランキングは総合2位に。1位に君臨していた『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社刊)には届かなかったものの、改めてネット上のクチコミの威力を実感しました。

■ Amazonで100冊前後売るブロガーたちの存在

ブログの力は、数字でも明らかになっています。私が知っているだけでも、アマゾンのアフィリエイトで100冊前後を売り上げた方が複数います。たとえば、人気の書評ブログ「マインドマップ的読感想文」を運営するsmoothさんや、人気ブログ「みたいもん!」を運営するいしたにまさきさん、iPhoneアプリ開発者として著名で「fladdict.net」の深津貴之さんなどがそうです。「404 Blog not found」を運営する小飼弾さんは、「100冊~1000冊の間」というさらに大きな規模で売り上げてくれました。

fladdict.netの深津貴之さんによると、「10月末時点で、ブログのエントリーを見てAmazonのリンクボタンを押した人は約1000人、そのうち購入した人は123人」だったそうです。深津さんのブログを機に「どんな本だろう」と興味を持ってくれた人が1000人もいたことに、私は非常に驚きました。さらに、深津さんがツイッターで本書に関して述べたツイートは、多くの人にRTされて総数が約900ツイートにも上ったそうです。

個人で100冊を売るというのは、実はものすごいことです。実際に本書を100冊以上販売してくれた書店を調べてみると、どこも規模が大きく、有名な店舗ばかり。さらに、ブログの影響力はこの実数以上と考えられます。ブログを見て本書を購入してくれた方でも、ブログ経由でAmazonから買うのではなく、ほかの店舗で買った方もいるはずだからです。

もちろん、本書がベストセラーになれた理由は、ネットだけではありません。多くの書店が大きく展開してくださったおかげでもあるし、テレビや、雑誌、新聞などで取り上げられた時にも大きな反響がありました。手前みそではありますが、プレゼンの名手として知られ、iPhoneやiPadなどアップル製品を魅力的にアピールするスティーブ・ジョブズのプレゼンを分析して、体系的にまとめた本書の魅力も大きかったことと思います。

■ 本当によいものを評価してくれる場所

むしろ、製品の魅力は、ネットの威力が大きくなることによって、より重要になってきたのではないでしょうか。

先日、米エバーノートのフィル・リービンCEOが展示会「ITpro Expo」の基調講演で、「これまで、本当によいものが売れるとは限らないと言われてきた。これは現在では正しくない」と話しました。ネット上で個人が情報を発信したり、モノを売ったりできることで、これまでのように販売力がなければ売れない、流通の環境を整備しなければ売れないというわけではなくなったという意見です。

この話には、とても勇気づけられました。著者や翻訳者の方々と私のような編集者が「よい」と考える本を作り、それをネット上で評価してもらい、知ってもらえれば、多くの方にとって「よい」本が届く可能性が増えるのではないかと思ったからです。本書に限らず、本当によいものを評価してくれる場所として、ネットの大きな力は広がり続けると考えています。

文: 中川ヒロミ

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