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ホテルと住居が一体化した「アンテルーム」に潜入――京都“先進的”カルチャーの発信地に


■ 「ホテル アンテルーム 京都」とは

HOTEL ANTEROOM KYOTO | ホテル アンテルーム 京都

「ホテル アンテルーム 京都」は、京都駅の南側、九条通と十条通の間に位置するホテルです。館内には、観光客やビジネスマンなどに向けた客室のほか、実際に“暮らす”ことができるアパートメントが併設されています。また、外部の人が入れるギャラリーやレストランもあります。

■ 人が交わるパブリックスペース

まずは、アンテルームの1階にある「パブリックスペース」を紹介します。パブリックスペースは、宿泊客や居住者はもちろん、外部の人も立ち入ることができます。

<フロント>

エントランスに足を踏み入れてすぐ右側にあるのが「フロント」です。宿泊の際はまずこちらで手続きを行います。チェックインは15時からです。居住者はホテルのエントランスのほか、専用玄関から館内に入ることも可能です。

<本棚&共有PC>

フロントのすぐ隣にあるロビーには、大きなソファとテーブル、本棚、共有のPCが設置されています。本棚には、京都市左京区にある人気の書店「恵文社一乗寺店」がセレクトした本が並んでいます。PCは自由に使うことができます。

<ラウンジ>

館内の奥に進むと、庭を眺められるラウンジがあります。落ち着いた雰囲気が漂うスペースで、カウンターにはDJブースが設置されています。

<レストラン>

ラウンジの向かいには、レストラン「アンテルーム ミールズ」があります。外部の人も自由に利用できます。お店のオススメは、旬の食材を京風のダシで煮込んだ「京ポトフ」と自家製スモークです。営業時間は7時~10時と18時~22時(ラストオーダー)。日曜日は朝のみの営業です。ライブやイベントが開催されることもあるそうです。

■ 個性的なアート作品に触れられる、2つのギャラリースペース

アンテルームの1階には、先進的な作品を展示する2つのギャラリースペースが併設されています。

<ギャラリー9.5>

エントランスの左手にあるのが、「ギャラリー9.5」です。京都に縁のあるクリエイターがディレクションを担当し、写真やグラフィックを中心とした作品を展示しています。ギャラリーはレンタルも可能です。「9.5」という名前は、アンテルームが九条通と十条通りの間に位置していることから付けられたそうです。

<Spatium SANDWICH(スパティウム サンドイッチ)>


【左】Swell-Deer(2010)【右】Swell-Tiger(2010)

エントランスの真正面、「ギャラリー9.5」の横の柱と柱の間のスペースでは「Spatium SANDWICH(スパティウム サンドイッチ)」と名付けられたプロジェクトが展開されています。ここは、彫刻家の名和晃平さんを中心に多くのクリエイターが集う、京都市伏見区のクリエイティブ・プラットフォーム「SANDWICH」のサテライトスペースです。

■ スタイリッシュかつレトロな客室

次は客室を紹介します。アンテルームには、シングルの「スタンダードルーム」が49室、ダブルルームが5室、ツインルームが4室、テラスツインルームが3室、計61の客室があります。

<スタンダードルーム>

「スタンダードルーム」には、1人用のベッドとテーブル、テレビ、ユニットバスなどが用意されています。白を基調とした室内に、木製の家具や黒い小物などが置かれており、落ち着いた雰囲気が漂っています。

<テラスツインルーム>

「テラスツインルーム」は、広々とした空間がポイントです。部屋の外にはテラスがあり、外の空気に触れながらゆったりと過ごすことができます。トイレとお風呂はセパレートです。

全ての客室に、絵画やグラフィックなどのアート作品が設置されており、いずれも購入が可能です。乾燥機付きのランドリーやアイロンなどを自由に使うことができるため、長期で利用する宿泊客も多いそうです。

■ 自由に創造できる居住空間

続いて、居住スペースを紹介します。アンテルームには家具付きと家具なし、広さが違うアパートメントが50室用意されています。7月1日現在、半数以上の部屋が入居済みです。

<スタンダードなプランAの部屋>

こちらの居室は、ベッドルーム5畳とバスルーム、キッチンを備えたプランAの部屋です。室内はホテルの部屋と同様、白をベースとしています。壁は、退去の際に原状復帰できる範囲であれば、ペイントや塗り替えなど、自由にカスタマイズできます。タイプAの居室は、家具なしが49,000円~56,500円、家具付きが79,800円~82,500円です。10畳のベッドルームを備えたプランBの居室は、家具なしのみで74,000~84,500円です。いずれも管理費込みです。

<共用キッチン>

1階には共用キッチンが備わっています。本格的に料理を楽しんだり、他の居住者と交流したりするためのスペースとして活用できます。3口のIHコンロや冷蔵庫、電子レンジ、ホームベーカリー、料理本などがそろっています。

<実際に住む人の声>

ホテルと一緒になった、不思議なアパートメント。その住み心地はどうなのでしょうか。実際に“住んでいる人”の声を聞いてみました。

プランBの部屋に住む佐野亘さんは、グラフィックやWebのデザイナーとして、京都を中心に活動しています。自身が運営しているWebサイト「Refsign Magazine Kyoto」(http://blog.refsign.net)」でアンテルームを取り上げたことをきっかけに、住み始めたそうです。

「普通のマンションと違って、住人同士の距離が近いのが最大の特徴だと思います。知らない人とも気軽に話したり。最近は週1回のペースで友人を呼んで、共用キッチンでパーティをして、そのあと僕の部屋でゲームをするのが恒例になっています(笑)」

■ 「ここが“媒体”となり、人と人をつなげていきたい」――仕掛け人に効くアンテルームの裏側

ホテルとアパートメントが一体となった個性的なこの施設を運営しているのは、「都市デザインシステム」という会社です。なぜこのような施設を作ったのか、プロジェクトに企画から携わっていた同社の中西史さんに話を聞いてみました。

――なぜ、ホテルとアパートを一体化させたのですか?

中西 ここはもともと、築23年の学生寮だったんです。200室もある大きなこの建物を見て「ホテルだけだと物足りないし、住宅にしては大きすぎる」と感じました。「“それぞれの用途が一緒にあること”。それがメリットになるように」と考えたときに思いついたのが複合施設でした。

――アンテルームの狙いは何なのでしょう

中西 「アンテルーム(anteroom)」は、「次の間」「待合所」といった意味を持っています。ホテルは、決して旅行やビジネスの“主役”にはなれませんが、この街に住む方々と交流し、刺激しあうことで、面白い場所や出来事を教え合える場所になれば、と思いました。そういった狙いもあり、館内は宿泊客と居住者の方々の共有スペースを多く設けています。

また、若い世代が気軽に“京都”という体験しておくべき街へ遊びに来られるよう、宿泊料金を抑え、スタイリッシュなデザインに仕上げました。

――オープンして約2ヶ月が経ちましたが、反響は?

中西 観光シーズンは、平日でも予約をとりづらい状態が続きますね。若い世代を中心に“新しいもの好き”で“先進的なカルチャー好き”の方々が宿泊されていきます。リピート利用されるビジネスマンの方も目立ちます。

――今後の展開について聞かせてください

中西 “常に変化し続ける場所”であってほしいと思っています。私たちが作ったのは大きな“箱”なので、中身が一緒だと何も変わらないし、面白くありません。「ここに来ればガイドブックに載っていない生の声が聞ける」というように、アンテルームが“媒体”となって人と人をつなげていきたいです。


ホテル アンテルーム 京都

<住所> 京都市南区東九条明田町7
<電話番号> 075-681-5656
<宿泊料金> 1泊シングルルーム5,250円~(シーズンによって異なる)
<施設概要> レストラン、ギャラリー、ラウンジ、喫煙室、ランドリーコーナー、自動販売機コーナー、PCコーナー
<アクセス> 地下鉄烏丸線「九条駅」より徒歩5分

HOTEL ANTEROOM KYOTO | ホテル アンテルーム 京都


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文: タニグチナオミ

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