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森美術館の「会田誠展」は“性暴力”にあたるのか 館長は展示を続ける意向


<市民団体が抗議、展示物の一部撤去を求める>

会田誠展:天才でごめんなさい | 森美術館

会田誠さんは、美少女や戦争、サラリーマンなどをモチーフに、独自の視点で奇想天外な対比や痛烈な批評性を提示する美術家です。森美術館が3月31日(日)まで実施する展覧会「会田誠展:天才でごめんなさい」では、新作を含めた約100点を展示。性的表現を含んだ作品もあることから、同館はサイトで理解を呼び掛けるとともに、展示の趣旨を「いずれも現代社会の多様な側面を反映したもの」と説明しました。特に刺激が強いと思われる作品は、18歳未満が入場できない特別なギャラリーに展示されています。

しかし、展示物の一部が「性差別」にあたるとして、市民団体「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)」は1月25日付で同館へ抗議文を送付したとのこと。「女性の尊厳を著しく傷つける諸作品」の撤去や、同館の意見を直接聞く話し合いの場を設けるよう求めました。

http://paps-jp.org/action/mori-art-museum/group-statement/(抗議文の内容)
http://paps-jp.org/action/mori-art-museum/

<館長が示した美術館の立場と役割>

会田誠展について | MORI ART MUSEUM

これらの意見を受け、同館の南條史生館長は2月6日、サイトで開催趣旨などを改めて説明。会田さんの作品のような“現代美術”について「まだ評価の定まらない多様な視点が登場する」と解説するとともに、法に抵触しない限り「そうした新しい視点をできるだけ広く紹介する」立場をとっていると表明しました。加えて「会田芸術の本質は、彼の作品の総合的な紹介によってのみ、理解することができると考えています」との見解も示しています。

展示物についてさまざまな議論が交わされている件については、「日本の良さは、そのような個々人の多様な意見を自由に表現・発表できる社会となっていることではないでしょうか」と言及。美術館という場は「美術を通して表現される様々な考え方の発表の場であり、それによって対話と議論の契機を生み出す」として、今後も議論と対話の基盤となる役割を果たしていくと、同館の姿勢を説明しています。

<どこまでが“表現の自由”なのか? ネットの反応は>

PAPSが森美術館『会田誠 天才でごめんなさい』展に抗議 - Togetter
退屈で倒錯した話 - 「森美術館・会田誠展への抗議」問題についての雑感 - ohnosakiko’s blog
会田誠のことなど - tanukinohirune

会田誠さんの展示物が児童ポルノにあたるのかについては、ネット上でもさまざまな議論が交わされました。

Twitterでは「美術史や戦後日本史が一つの作品の中に何層にも重なっていることの驚きや発想の面白さに感動した個展だったから、性表現や残酷表現は表面的な部分でしかないと思った」「もちろん抗議することも表現の自由だし、『私の受忍限度を超えている』と意見を表明することも自由だ」といった声が。はてなブックマークのコメント欄にも「美術館側はじゅうぶん配慮してると思うし、見たい人だけ見に行けばいいんだしなんだかなあ」「作品に対し、どんな感想を持つかは個人の自由。だけどそれを自分の価値観で(少なくとも成年に)規制するのは、逆の意味での暴力を行使していると思う」など多くの意見が寄せられています。


南條館長とともに意見を示した会田さんは、Twitter(@makotoaida)でメッセージについて「かなり前に書いたこともあり、通り一遍のことしか書いてないという反省があります」とツイート。今後、新たに書き足した文章が同館サイトに掲載される予定だとしています。

文: あおきめぐみ

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