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雨宮まみさん、京都の老舗日本茶専門店「一保堂茶舗」でおいしいお茶の淹れ方を学ぶ


■ 地元人も通う、上質なお茶が手に入る専門店

雨宮さんと訪れた一保堂茶舗は、1717年創業の老舗。東京・丸の内にも路面店を置くほか、全国の百貨店などにも出店しています。扱うお茶はさまざま。気軽に楽しめるティーバッグや、ギフトにぴったりな詰め合わせも用意しています。

京都御所にほど近い場所にある京都本店では、茶葉や茶器などのほか、散歩にぴったりなテイクアウト商品も購入が可能。

■ 「知らないお茶の味がします」

今回訪れた喫茶室「嘉木」は、「淹れるところから楽しむ」をコンセプトに掲げるスペース。一保堂茶舗のお茶を知り尽くしたスタッフが、おいしいお茶の淹れ方を一から教えてくれます。


案内してくれたのは、スタッフの金丸朗子さん

雨宮さんの前に用意されたのは、喫茶室の名前と同じ「嘉木」という煎茶の茶葉が入った缶、急須、2つの茶碗、100度のお湯が入ったポット。「嘉木」で提供しているお茶にはすべて、お菓子が付きます。

まず、ポットに入っているお湯を、1つ目の茶碗の約8分目まで注ぎます。もくもくと上がっていた湯気がゆらゆらと落ち着いてきたら、2つ目の茶碗にお湯を移します。こうすると、煎茶にぴったりな80度まで温度が下がるそう。少し温度を下げることで、渋みを抑えつつ、茶葉本来の甘みを引き出します。

金丸さん「最初から80度のお湯を用意すればいいのでは?と聞かれることもあるんですが、温度計を用いずに適温にできる、冷たい茶碗を温められるなどのメリットがあります」

お湯の温度が下がったら、茶葉を入れた急須にゆっくりと注ぎます。1人分で使用する茶葉は約10グラム(大さじで2杯ほど)。同じ茶葉で、2~3回お茶を淹れられます。

一煎目が抽出される時間は、約50秒。この間、急須を揺らすと余計な渋みや雑味が出てしまうため、なるべく動かさずに待ちます。50秒経ったら、どちらか温かい方の茶碗に、急須を一気に傾けお茶を注ぎます。

ポタポタと滴(しずく)になっても、傾けたままお茶が出切るのを待ちます。滴が出づらくなってきたところで2~3回急須を振り、最後の一滴まで注ぎ切ります。最後の一滴は味が濃く、うま味がぎゅっと詰まっているそう。

二煎目、三煎目もおいしいお茶を楽しむポイントは、お茶を淹れたあとに急須のフタをずらすこと。中の蒸気を外に出すことで、茶葉が開き切るのを防ぎます。冷めないうちに、淹れたてのお茶をいただきます。


ごくり

雨宮さん「……とってもおいしい! いつも飲んでいるものとは違う、知らない味です。これがお茶本来の味なんですね」

二煎目も、茶碗を用いてお湯の温度を80度まで下げます。一煎目で茶葉が開いてきているので、お湯を急須に移したあと、すぐに茶碗に注ぎます。最後までおいしいお茶をいただくため、一気に茶葉を開くのではなく、少しずつ少しずつ開かせるのがコツ。二煎目も最後の一滴まで注ぎ、フタをずらします。

雨宮さん「一煎目と少し色が違いますね。味もマイルドになりました」

金丸さん「一煎目でお茶の味をしっかり楽しんで、二煎目でお菓子と一緒にいただくのがおすすめです。三煎目はもっとあっさりしますので、最後に口の中をさっぱりさせてくれます」

■ 嗜好(しこう)品でも、生活必需品でもあるお茶

お茶の魅力や面白さを広く伝えるため、一保堂茶舗の京都本店と東京丸の内店では「お茶の淹れ方教室」をほぼ毎月開催しています。今回特別に、広報の石田歩さんからお茶の基礎知識を教えてもらいました。

石田さん「一保堂茶舗では、大きく分けて抹茶、玉露、煎茶、番茶類の4種のお茶を扱っています。日本茶の味わいは“太陽の光を当てるか当てないか”で大きく変化します。『覆下園(おおいしたえん)』という、太陽光を遮った畑で育つお茶はうま味たっぷり。この畑では、玉露や抹茶がつくられます。煎茶や番茶のようにさっぱりとした渋みが楽しめる茶葉は、光をさんさんと浴びる『露天園(ろてんえん)』という畑で育ちます。

『覆下園』で収穫した玉露は、まず蒸して柔らかくし、揉んで乾かします。抹茶は、蒸した後パリパリに乾かして葉脈を取った『てん茶』を、さらに石臼で挽(ひ)いて作ります」

雨宮さん「葉脈を取るのは手作業ですか?」

石田さん「“風”ですね。風で茶葉を巻き上げると、固い葉脈は重みで落ち、軽い葉の部分が巻き上げられます。それだけでも手間が掛かる上、石臼で挽いて仕上げるため、なかなか量産ができず、その辺りがお値段に関わってきます」

雨宮さん「なるほど」

石田さん「『露天園』で育てた茶葉のうち、葉が大きいものが番茶で『柳』という名前が付いています。『柳』に炒ったお米を入れると玄米茶に、『柳』に火を入れると茶色いほうじ茶になります」

はてな「一保堂茶舗さんのお茶と、他のお店のお茶の違いは何ですか?」

石田さん「私たちが大事にしているのは、ほろ苦さも、うま味も両方ある“自然のままの風味”です。茶葉の香りを嗅ぐと、茶畑と同じ匂いがするんです。蒸したての、まだ乾いていない生葉の香りもそのまま表現されています」

はてな「家庭でおいしいお茶を楽しむコツは?」

石田さん「煎茶や玉露を楽しむなら、急須は片手に乗るくらいのサイズがベストです。急須の中に茶こしが付いているものは、外したほうが茶葉が開きやすいです。ミネラルウォーターを使う場合は、軟水のものをお選びください。茶葉は風味が飛びやすいので、購入後は2~3週間ほどで飲み切っていただければ。ごくごくとお茶を飲んで喉を潤したい夏は、熱湯で濃く出したお茶を氷で一気に冷やす『急冷』や、じっくりうま味を引き出す『水出し』などもおすすめです」

茶の葉言の葉図鑑 | 一保堂茶舗

石田さん「お茶は嗜好品でもありますし、水分補給に欠かせない日常の飲み物でもあります。例えば、玉露や抹茶などはおいしい和菓子を用意したときにぴったりですが、とても暑い日に濃厚な玉露を飲む気にはあまりならないですよね。さまざまなシチュエーションに合ったお茶を選んでいただくために、専門店としてバラエティー豊かな商品を扱いたいと考えています」

はてな「なるほど、ありがとうございました。雨宮さん、今日はいかがでしたか?」

雨宮さん「これまで知っているようで知らなかったお茶の知識がたくさん増えました。喫茶室でいただいたお茶のおいしさは、衝撃的でした……!」


「丸の内のお店にも行きたい!」と雨宮さん

このあと、おいしいお茶をいただきながら、雨宮さんに新刊『女の子よ銃を取れ』(平凡社)についてお聞きしました。「『こじらせ女子』はSEOから始まった?」や「ディズニー映画に共感するとは思わなかった」などの興味深いお話も。雨宮さんのインタビューは、週刊はてなブログで6月上旬に公開予定です。お楽しみに!

週刊はてなブログ


一保堂茶舗 京都本店
住所:京都市中京区寺町通二条上ル
営業時間:午前9時~午後7時(日祝は午後6時まで)
喫茶室の営業時間:午前11時~午後5時30分(ラストオーダー午後5時)
一保堂茶舗

雨宮まみ(あまみや・まみ)
ライター。自伝的エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版、2011年)で、多くの「こじらせ女子」の共感を得る。5月22日に新刊『女の子よ銃を取れ』(平凡社)を刊行。@mamiamamiya / id:mamiamamiya

文: タニグチナオミ

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