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【リレーコラム:雨の日の過ごし方】雨の日に会う人



ご覧いただきありがとうございます。aso(id:koringoweb)と申します。

絵を描くのが好きで、「asobook」というブログでは、生活や食べ物のことをイラストを描きながら楽しく綴っています。今回、「雨の日の過ごし方」というテーマで記事を書かせていただきました。日常の些細なお話ではございますが、しばしの間お付き合いいただければ幸いです。


雨が降る日のアトリエでは窓のそばを陣取り、ひたすら外を眺めてぼうっとしていました。室内でも外でも、いつも聞いているいろんな音が小さくなって、雨粒の落ちる音がベースになり落ち着きます。風景が水に濡れ色が濃くなり、土や緑の匂いが感じられて、深く息が吸えるような。あの独特の匂い、雨が降る前の匂いはペトリコール、降った後の匂いはジオスミンという名前の物質が主なんだとか。虹の匂いなんて言われたこともあるようで、雨のその先を感じさせてくれる言葉に嬉しくなります。

そんなしっとりした日はひとりで静かに考えるのが良いのですが、いつもの人といつものように会ってみるのも面白い。雨の日は苦手~とか、暗い空と一緒にテンションが下がっている人を見ると、天邪鬼な私は張り切ってしまいます。

ザーザー降りの雨、仲の良い友人と会う約束をしていました。家族から雨女認定を受けている私は、少しくらい雨が降っても風が吹いてもへこたれません。大き目のタオルを用意して、レインブーツを履き、いつもの傘を持って準備万端で待ち合わせ場所へと向かいます。そこへ現れた友人は、「雨風強いからさ、壊れてもいいように壊れた傘持ってきた」と曲がった傘を握り締めていました。

どこへ行くか何をするか決めていなかったので、雨だし、喫茶店に入ってお茶でもしようと店を探し始めます。…と言っても待ち合わせをした場所が「二人の家の中間地点」だったため、見知らぬ道や住宅が続くばかりでなかなか店を見つけられません。その間も雨は強くなり風がビュウビュウ吹き、友人の傘がひっくり返ること数回。傘が傘の形ではなくなって、変な声と笑顔を見せ始めたころ、ようやくお店にたどり着きました。

二人とも好きなケーキと温かいコーヒーを頼み、窓の外を見ながらポツポツ話し始めます。お茶を飲み終わっても、まだ降ってるねぇなんて、すっかり弱くなった雨を理由に席から離れません。話が途絶えると、そういえばさあ!を繰り返し、ケーキのフルーツの品種は何だったのかとか、最近作ったお弁当のことだとか、そんな取り留めのないことを思いつくままに話していました。

実はこの友人とは、休みの都合で天気の悪い日にしか会えません。天気予報を見て日を決めたり、雨がポツポツ降ってきたら連絡したり。今から行っていい?とか、やっぱり今日は止めようよ、とか。そういう会い方って大人になるとあまりできなくって、なんだか有り難い気持ちになります。すっかり馴染んだ店を出て、光が反射するコンクリート道を歩き、二人の待ち合わせ場所である中間地点へと戻ります。

そして、「また雨の日に会おう」と次の雨を約束し、去って行く相手を見送るのでした。

筆者:aso(id:koringoweb) はてなブログ:asobook

美術学校を卒業し、時間を見つけてはひっそり絵を描いています。数少ない友達は絵の具。文章や絵を通して伝わるものがあればと、日々筆を握り締め、HP「futenet」で絵やブログを更新しています。

文: aso

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