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神楽坂の本屋さん「かもめブックス」に行ってきた 街ならではの“棚”で本と出会う場を作る



かもめブックス|神楽坂|本屋 かもめブックス

サイトの案内にある「神楽坂駅矢来口より徒歩0.5分」という文字そのままに、出口を出てすぐのところに「かもめブックス」があります。その場所は、2014年4月に惜しまれつつ閉店した「文鳥堂書店本店」の跡地とのこと。

店に入るとすぐ、カフェのカウンターがあります。京都の自家焙煎専門店「WEEKENDERS COFFEE」のこだわりのコーヒーが楽しめます。

かもめブックス編集会議で選ばれたテーマに基づいて作られる「特集棚」には、かもめブックスが薦めたい本が並べられています。

特集棚「日本語を綴る、本を作る、本を愛する。」

特集棚「男たちよ!役割交換はどうだね? 伊丹十三の名翻訳エッセイ、待望の復刊!」

本や雑誌だけでなく、ノートやペン、読書にぴったりというブランケットなど、雑貨・文房具も販売しています。かもめブックスのキャラクター「アンドウさん」があしらわれたグッズも登場します。

アンドウさんのブックカバー

アンドウさんのトートバッグ

店の奥には、大阪のデザイン事務所「G_GRAPHICS INC.」と共に手掛けるギャラリースペース「ondo kagurazaka」があります。大阪の「ondo tosabori」と2拠点での展開です。訪れた日は展示「えがく展 7人の絵描きと10冊の本」の会期中で、本の中の文章をもとに大阪・東京の計7人の作家が絵で表現した作品が並んでいました。1月16日現在は、「西武アキラ個展『RIVER///RIVER』」が開催されています。会期は1月18日(日)までです。

G_GRAPHICS INC.代表の池田敦さんは「ondo kagurazaka」について「ギャラリーを通じて関東と関西をつないでいきたい」と話してくださいました。

■ 店主の柳下さんにあらためて聞く、「かもめブックス」オープンへの思い

かもめブックス店主の柳下恭平さんに、鴎来堂の取り組みや、かもめブックスへの思いについて伺いました。

――校正・校閲の専門会社である鴎来堂を立ち上げた経緯について教えていただけますか?

鴎来堂のサイト

柳下さん(以下、柳下) 出版業界に入って編集を手掛けるうちに校閲が面白くなって、校正者としてやっていきたいと考えました。しかし、周囲を見回してみると20~30代の校正者はあまりいなかったんですね。フリーランスでやっているのは、50~60代の方が多い。

校正者個人の優秀さも必要ですが、チームで動く「校閲部」としても優秀であるべきだと思っています。出版社が外部に校閲を依頼する場合、どうしても経験が浅い20代よりもベテランに仕事が集中します。校正専門の会社を作った最初のモチベーションは、若い校正者を育て、技術継承を空洞化させないようにしたいというものでした。

――鴎来堂の「校正憲章」を見ると、「校正者はゲラに関して自分を含めたすべてを疑う」「校正者はあきらめない」など、校正・校閲への理念が明快ですね。

柳下 校閲は日本語の間違いを見つける仕事です。日本語が読める人ならできる仕事のはずなんですが、そうじゃない。「文字を読む」ということを僕はよく音読に例えます。「かもめブックス」という文字列の音読は誰でもできますが、校閲では全く違う読み方をします。音読では目が先に読んで、脳が後から追いかける。校閲の場合は、これが完全にマッチして、目と脳で同時に判断します。

人間の脳はパターン認識をするので、知っている単語のまとまりにしたがっちゃうんです。「かもめブックス」を読んで、「かもめ」という単語は思い浮かばなくて、「かごめ」のような聞いたことのあるボキャブラリーで変換しちゃうんですね。その結果文字列を見て「かごめブックス」だと思ってしまう場合もあります。

鴎来堂の「校正憲章」

校正憲章には校閲で当たり前のことしか書いてないんですが、わざわざそれを書く理由はやっぱり「できないから」ですね。実際に業務をしていて「校閲ってなんて面白いんだろう」と思うところです。

――校正・校閲の会社がなぜ書店を始めるのか?ということについて教えてください!

柳下 かもめブックスについて最初報じられたとき、「書店事業に参入」と書いてあって、僕も「すごい!参入か!」と思いました(笑)。

街の本屋さんがどんどん消えていく現状は、本に対する入り口がどんどんなくなっているということです。露出が減れば減るほどお客様がいなくなる。露出がなくなるということは、本、出版、読書という習慣に対していいことがひとつもありません。

本屋が減って露出も減っているのに、自分たちが本を作り続けていいのかという問いに対する答えが見つからない。このまま本を作り、利用されるビジョンが思い浮かばないんですね。こんな状態で、本屋をやらない理由はありませんでした。

行ってみてわくわくするような場所だったら、お客様に受け入れてもらえると思うんですよね。ベストセラーばかり並べるのではなく、違った角度で切り込み、棚を作るのが「街の本屋さん」ではないかと。

――確かに、お店によって並ぶ本はだいぶ違いますよね。規模によっても特色が変わったり。

柳下 例えば、高田馬場、早稲田、神楽坂、飯田橋にそれぞれ本屋さんを作ったら、すべて違う本屋になるはずです。拠点が変わるだけで中身も変わる。神楽坂の人たちに興味を持ってもらえるコンセプトを作り、受け入れられるのが、かもめブックスにとって大事なことです。

神楽坂でずっと仕事をしてきたので、神楽坂のことしか僕らは考えられないけれど、神楽坂に受け入れてもらえる本屋さんはかもめブックスのような形なんじゃないかと思って作ってきました。

――「かもめブックス」はオープン前から注目されていたかと思いますが、実際にオープンして手応えはいかがですか?

柳下 地元の方にはすごく応援していただいています。ともすれば違う雰囲気のお店が来たぞ、と思われるかもしれませんが、「かもめブックス」を温かく迎えてもらいました。

オープン前に工事をしていると、「ここは何ができるんですか?」と聞いてくださる。興味を持ってくれる。街の人たちもお客様も最初からかもめブックスを待っていてくれた。とてもうれしいです。

――今後のかもめブックスについて一言お願いします!

柳下 普段本を読むという習慣がない人に「本を読むことは楽しい」と思ってもらえるようにして、本に出会う人・本を読む人を増やしていくためのお店です。お子さんもおじいちゃんもおばあちゃんも、いろいろな人が来てくれるお店になればいいと思っています。

――ありがとうございました!

かもめブックス
  • 営業時間
    • 月曜日~土曜日 午前10時~午後10時
    • 日曜日 午前11時~午後8時
  • 定休日
    • 不定休
  • アクセス
    • 地下鉄東西線「神楽坂駅」矢来口より徒歩0.5分(最寄り駅)
    • 地下鉄大江戸線「牛込神楽坂駅」A1出口より徒歩10分
    • 地下鉄有楽町線「江戸川橋駅」各出口より徒歩10分
    • JR総武線「飯田橋駅」B3出口より徒歩15分

文: 万井綾子

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