• Twitter
  • Facebook
  • Google+
  • RSS

上司も評価もなくていい ソニックガーデンの“働き方改革”がスゴい

「上司もねェ、ノルマもねェ、休みはいつでも取り放題」 そんな会社が日本にあることを、ご存じだろうか。

盛り上がる会場の様子

上司もねェ、ノルマもねェ、休みはいつでも取り放題

そんな会社は「イヤ」だろうか。むしろ、「うらやましい」と感じる読者が多いかもしれない。

社員がリモートワーカーで固定のオフィスを持たない株式会社ソニックガーデンは、上司による評価や勤怠管理をなくす、といった取り組みを進める中、こうした環境を実現した。同社の代表取締役・倉貫義人さんによると、働き方への柔軟性が生まれただけでなく、事業の成長にもつながっているという。

なぜ、同社は“管理ゼロ”でも成果を上げられるのか。

2019年5月28日に実施された、ウェブメディア「FINDERS(ファインダーズ)」のトークイベント「FINDERS SESSION VOL.7 倉貫義人さんと語る「徹底討論!『管理ゼロで成果はあがる』はどうすれば他社でも応用できるのか」から、そのカラクリを探っていきたい。

対談者プロフィール

株式会社ソニックガーデンの代表取締役・倉貫義人さん

倉貫義人(くらぬき・よしひと)
1974年 京都府出身。株式会社ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。
小学生でプログラミングをはじめ、大学卒業後に大手システム会社に入社。
研究開発部門の設立、社内SNSの企画・開発、オープンソース化を行い、社内ベンチャーを立ち上げる。その後、会社から独立し、起業。
著書に『「納品」をなくせばうまくいく』『リモートワークでうまくいく』(日本実業出版社)がある。

(聞き手)
Webメディア「FINDERS」創刊編集長の米田智彦さん

米田智彦(よねだ・ともひこ)
1973年 福岡市出身。株式会社シー・エヌ・エス・メディアの代表取締役で、ウェブメディア「FINDERS」創刊編集長。
出版社、ITベンチャー勤務を経て、文筆家・編集者・ディレクターとして活躍。
著書に『僕らの時代のライフデザイン』(ダイヤモンド社)『いきたい場所で生きる 僕らの時代の移住地図』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

FINDERSロゴ
「FINDERS(ファインダーズ)」は「クリエイティブ × ビジネス」をテーマにしたウェブメディア。



「ITブルーカラー」をやめたかった

倉貫 僕がSIerに新卒入社した1999年当時、IT業界は「3K」や「7K」といわれていました。Kはぜんぶ「キツい」なんですけど(笑)。

米田 「ITブルーカラー」ですよね。

倉貫 そうです。そんなエンジニアの働き方を変えようと思い、会社を立ち上げました。いま8期目で、社員は40名です。

僕らは、今流行りのサブスクリプション(月額課金)での受託開発を10年ほど前からやっています。社員がクライアントの顧問エンジニアとして、システムやサービスの開発、保守、コンサルティングまでを行います。

CTO(最高技術責任者)の代わりと思っていただいて間違いありません。税理士さんや弁護士さんのポジションに近いと思います。

システムやアプリの受託開発といえば「納品」がつきものです。逆に、納品したらそれで終わり。一方でユーザーは使い始めてからが“本番”なのに、直すには追加見積もり・発注が必要になります。

僕らは納品して終わりではなく、ずっとお付き合いします。だから、後からいつでも直したり改善したりできます。

また、時間で働くのをやめたかったのもあります。IT業界にありがちな「1ヶ月一人が何時間働いたら◯◯万円」という「人月」の制度では、単純に働く時間が減ると給料も減ってしまいます。

そこで僕らは、時間で契約するのをやめました。「どれくらい働いているかに関わらず、毎月定額をいただきます。パフォーマンスを出さなかったら切ってもらって構いません」と先方に伝え、納得してもらっています。時間単位で仕事をしないので、生産性を上げるほどに利益が出るんですね。

「信長の野望」のようにリモートワークで社員が全国展開

倉貫さんと米田さん

倉貫 時間で働かなくてよくなると、客先で仕事する必要がなくなります。打ち合わせもテレビ会議でいい、とお客さまが言ってくださいます。

なので、オフィスもなくしました。通勤のない、「リモートワーク」「テレワーク」と呼ばれる働き方をしています。今、社員40名が17都道府県に散らばっています。

米田 ゲームの「信長の野望」みたいですね。

倉貫 そうですね(笑)。 ちなみに、今は東北地方が空いています。会社の支社があるわけではなく、みんな在宅勤務です。

2016年まで渋谷に大きなオフィスを借りていたのですが、地方の社員と東京の社員がいると、どうしても「地方がいい」「東京がいい」と断絶が起こってしまうので……。

米田 登記はどうしているのですか。

倉貫 登記上は渋谷区に残っているので、渋谷区に納税しています。渋谷区からまったく恩恵は受けていませんが(笑)。

リモートワークでも「雑談」はできる

倉貫 オフィスがなくなったことで、仕事中の「ちょっといいですか」や「髪切った?」みたいな雑談がなくなってしまいました。雑談って、チームで仕事をするために、とても大事なんです。

オフィスは何のためにあるのか考えました。書類を置く場所は保管庫を作ればいい、会議室はテレビ会議でいい、働く場所は自宅でいい、でも雑談はオフィスに社員が集まらないとやりづらいんです。

だから、インターネット上に仮想オフィスを作り、ログインして“出社”できるようにしました。

米田 チャットじゃダメなんですか?

倉貫 チャットは“連絡手段”なので、雑談が自然に生まれる“場所”にはならないんです。30〜40人の会社でチャットを使うと、「おはようございます」なんて書いたら「未読30件」みたいな事態になりますよね。だから、気軽な発言はしにくくなります。

米田 Slackとは違うのですか?

倉貫 社員がオフィスにいることが前提のちょっとしたコミュニケーションならいいのかもしれません。ただ、Slackで一番困ったのは、そこにいるのかいないのか分からないこと。

僕らの開発した仮想オフィスでは、パソコンのカメラ経由でお互いの顔をシェアできます。

昼の仮想オフィスの様子
昼の仮想オフィスの様子(イベント中ではありません)

(リアルタイムで仮想オフィスを開く)

「娘の誕生日なので帰ります」と適当につぶやいても、全員には通知が行かないけれど自然と目に入るような仕組みです。Slackの使い方は人それぞれですが、このようなことはやはり書きづらいですよね。

(リアルタイムの社員の顔がスクリーンに映し出される。倉貫さんが「残業?」と声をかける)

仮想オフィスの様子

これって普通のオフィスと変わらなくないですか? 社長がきて「残業?」と聞くみたいな。

有給は取り放題、経費も使い放題

株式会社ソニックガーデンの代表取締役社長・倉貫義人さん

倉貫 クリエイティブな仕事って、再現性が低いと思いませんか。昨日と今日で同じ仕事をすることは、ほとんどないですよね。クリエイティブな仕事の生産性は指示・命令・管理されても上がらない。本人の気持ち次第なんです。

僕らの会社は部署もない、有給は取り放題、経費も使い放題なんです。経費に関しては、全員の振込申請用紙を共有していますし、悪いことをしようとは思わないですよね。

社員の評価もしていません。皆さんの会社には半年や1年に一度の目標管理面談があると思いますが、いざ面談になると、上司も半年前の目標を忘れてしまっていることも少なくありません。だからやめてしまいました。

また、ほとんどの社員が同じ職位なので、給与はほぼ一律、昇給もありません。売上目標すら立てなくても大丈夫です。実際、毎年売上が前年より上がっています。

米田 新人が入った場合の教育はどうしているのですか。

倉貫 新卒は4年前から毎年1人ずつ取っています。リモートで放っておくと何にもできなくなってしまうので、メンターの社員をつけるようにしています。

新卒は社内で「弟子」と呼ばれ、一人前の社員の手伝いをしながら仕事を覚えます。ちなみに、一人前になるにはだいたい5年ほどかかります。

「急募」で人を採用したら痛い目に遭った話

倉貫さんが一通りの説明を終え、質疑応答タイムに移ると、来場者から質問が次々寄せられた。

Q、新しい会社からの受注はどうしているか。

倉貫 外回りの営業マンは受託開発側にいないので、公式サイト経由の相談が多いです。弊社のエンジニアが顧問として高いパフォーマンスを出せば、お客さまは満足し、双方の関係も長続きします。だいたい、エンジニアの空きがない状況です。

米田 スキルのある中途社員を雇わないのですか。

倉貫 中途採用は応募から採用まで1年3ヶ月ほどかけています。信頼関係を築いてから、ご入社いただいています。

前職時代は、案件ごとに急募したこともあるのですが、急募はロクな人が来ない。3回くらい痛い目に遭わないと気づきませんでした。現在は、「人を見てから案件を探す」というスタンスです。

米田 採用には時間をかけた方がいいですよね。

倉貫 焦って採用するとミスマッチが起こり、結果として出入りのコストがめちゃくちゃかかります。また、管理をしない会社なので、カルチャーを理解していない方が入社されると、トラブルのもとになります。

米田 採用面接もテレビ会議ですか。

倉貫 そうです。「顔を合わせて面接したい」という方は、申し訳ありませんが、不合格としています。会わないと熱意が伝えられないのであれば、僕らの仕事は難しい。

米田さん

米田 何次面接まであるのですか。

倉貫 数えきれないくらいです。フルタイムではありませんが、実際に社員とも働いていただきます。

入社前に応募者の信頼度をはかる方法って、一緒に仕事するしかないんです。もちろん、入社後だと(経歴に)傷をつけてしまうので入社前に。リスクを負わずに採用応募を受けていただきたいですね。


Q、社員40人くらいのIT企業を経営している。評価について、社員のスキルごとに等級はつけているか。そうした人事制度に対する従業員の満足度はどれくらいか。

倉貫 これにはカラクリがあります。生産性の高い社員には、「(仕事が終わった)残りの時間に好きな仕事をしていいよ」と伝えています。すなわち、受託開発以外の仕事です。給料と成果の量はほぼ一緒にしていますが、代わりに時間が手に入るのです。

研究開発をする社員もいれば、プログラムを作る社員もいれば、本を書く社員もいます。クリエイティブな仕事をしている方は、裁量や時間が手に入るとなると、頑張りますね。

副業もOKです。ただ、小遣い稼ぎをしている社員は多分いないですね。副業って実はあんまり割がよくないんです。それなら、会社で新規事業開発をしたほうがよほど稼げます。

二人に質問する来場者

Q、社会保障はどうしているか。リモートワークで金銭面の保証はしっかりつけるというのは何かお考えがあるからか。

倉貫 普通の会社と同じようにしています。福利厚生はしっかりしていると思います。ちなみに、会社のフットサル大会でけがをしても労災が下ります。

社会保障をしっかりしている理由は、仕事の生産性を上げたいからです。本人がものづくりやお客さまと向き合う上で、脳のCPUを余計な心配に使ってほしくないんです。

個人事業主の集まりだとリスクがありますね。皆さん、リスクを減らすために、相互補助の寄り合いのようなものとして会社に入るわけです。


Q、御社の制度は、自立できる人が集まるからこそ成り立つと感じる。たとえば、上場企業は社員に年間数十万の教育予算を投資しているが、御社にはそのような教育を受けた方が多いのでは。

倉貫 大企業・上場企業の出身者はそんなにいません。むしろ、フリーランスや起業家のような、普通の会社に適合できなかった方が来ている印象です。

ただ、自立している方しか採用しません。


Q、顧客が払う定額利用料について。自分も開発とコンサルをやっているが、どうしても開発は請負、コンサルは時間報酬となってしまう。定額利用の仕組みを、どう顧客に納得してもらっているか。

倉貫 僕らはサブスクでは定番の「お試し期間」をつけています。満足してもらったら続けましょう、満足できなかったらそれまでです。


Q、ビジネスサイズが大きくなっても、こうした働き方を維持できるか。

倉貫 これは分かりません。8年前から、その都度その都度制度を変えてきました。社員数が100人になったら、今とまったく違うことをやっていると思います。

僕らは変えることが大事だと思っています。

僕らは「そもそもなぜするのか」とよく議論しますが、こうすると本質が見えてくるんです。本質さえ分かれば、細かいやり方はいくらでも変えられますよね。

二人に質問する来場者

Q、エンジニアリングの知識がない上司が、自分を評価したがる。技術に精通していない上層部の理解を得るには、どうすればいいか。

倉貫 上司もお客さまと考えたほうがいいですね。KPIや数字で評価したがる、というのはまだ心配されているということ。成果を出せていないのではないでしょうか。圧倒的成果を出していたら、細かいことは言わなくなります。

* * *

ソニックガーデンの“圧倒的に自由な働き方”の裏側には「納品のない受託開発」というビジネスモデルや、社員のセルフマネジメント力をはじめとした、数多の工夫があった。

ただ、疑問も残る。場所だけでなく、働く時間も自由にすることはできないのか。こうした働き方を他社に導入するのは難しいのか。

イベント終了後、編集部では倉貫さんに別途、メールでインタビューを実施した。その回答も併せて掲載する。

* * *

──貴著には、リモートワークでも同じ時間に同僚と働くことがチームの結束を強める、という旨の記述があります。チームワークを保ちながら、働く場所だけでなく時間も自由にするのは、やはり難しいのでしょうか。

倉貫 求めるチームワークが何かによって変わってくるので、一概に場所や時間の制約の有無で難しいか、難しくないかを論じることはできません。なので、ここでは私たちの場合にどう考えているかだけをお伝えします。

私たちの会社では、チームで仕事をする際に互いに「ちょっといい?」といった気軽な雑談&相談をよくしており、それが難しい問題を解決するヒントになったり、新しいアイデアが生まれる機会になったりしています。

そうした雑談&相談(私たちはザッソウと呼んでいます)を気軽にできることが、チームで働いている感覚をもたらしてくれると考えています。そしてザッソウをするためには、時間と空間がそろっている必要があります。

そのため、リモートワークでそれぞれが働く場所は離れていますが、「Remotty」(編注:トークイベントの際にも登場した、同社が開発した仮想オフィス)に集まります。制度上は完全フレックスなので勤怠時間は自由ですが、だいたい同じ時間帯で働くようにしています。


──貴著には、「チャットのやり取りには絵文字を使った方がいい」など、“雑談”への並々ならぬこだわりが随所に見られます。こうした考えに至るまで、何らかの失敗や気づきがあったのでしょうか。

倉貫 私たちは、生産性を上げて楽に成果を出すことを大事にしています。そのためにチャットやグループウェアといったさまざまなITツールを導入してきました。

コミュニケーションのことをよくホウレンソウ(報告・連絡・相談)と言いますが、そのうち報告と連絡は事後の通達であり、相談だけが何か決まる前に行うものです。ITツールを徹底活用することで、報告と連絡のための会議は不要になりました。

しかし相談だけは、ITツールに書き込んで解決するものではなく、話したい相手とリアルタイムで対話し合う必要があり、現代の難しい仕事を進めていくには必須のコミュニケーションでもあるため、ITの効率化でなくすことはできませんでした。

さらに、普段から話をしていない状態でいきなり相談をするのは非常にハードルが高いことも分かりました。普段から雑談をしておくことで、気軽に相談がしやすくなると考えて、雑談を大事にするようになりました。それがザッソウです。


──カルチャーフィットとセルフマネジメント力が社員に求められる貴社で、教育コストをかけてでも新卒社員を採用し続ける理由を教えてください。

倉貫 カルチャーフィットが重要だからこそ、新卒社員を採用すれば自社のカルチャーを身につけてもらいやすいと考えています。

新卒社員に期待することは2点。新卒からソニックガーデンのカルチャーで育ち、将来的に経営の根幹部分を担ってもらいたいこと、もう1つは新規事業など会社の可能性や幅を広げる活動をしてもらうことです。

中途採用で採用するプログラマたちは、確固たるスキルがあって、応募動機も「プログラマを一生の仕事にしたい」という人たちなので、新規事業や経営の部分に進むことは、少なくとも入社時点では本人の希望にありません。

しかし、新卒社員たちはスキルもビジョンも未知数のため、彼ら彼女らが自分たちの可能性を広げて新しいことに取り組んでくれたら、それが新規事業になるなどで会社の可能性を広げることにもつながると考えています。そのための投資です。


──クライアントとのコミュニケーションはあえてメールを使い「時間差」を意識している、と貴著に書いていらっしゃいますね。チャットや電話などで即時対応してほしい、という要望はクライアントから寄せられないのでしょうか。

倉貫 私たちの提供する「納品のない受託開発」は時間を売るのではなく、サービスを売るビジネスモデルです。そのため、即時対応を求められると時間拘束が発生してしまいますので、対応できなくなっています。

そのサービス内容については最初の時点でお伝えしています。もちろん、緊急対応などあれば、その場合は柔軟に即時対応をさせていただいています。


──貴著でも紹介されている「ホラクラシー」(編注:役職や階級のないフラットな組織形態)と業績の相関はあるでしょうか。導入後に意思決定スピードや顧客ロイヤリティにどのような影響が出ているか、可能な範囲で教えていただけますか。

倉貫 私たちの場合はホラクラシーを導入したかったわけではなく、成果を上げてお客さまにとってより役立てる組織になるように考えた結果に過ぎません。

創業当初で取締役しかいない状態は、当然ですがフラットな組織で、そこから人が増え続けてもフラットなままを保ち続けたということなので、「導入したから影響があったわけではない」とご理解ください。

その上で、フラットであることでのメリットはこのブログ記事も参考にしてください。


──「職種ごとに一律、賞与は山分け」の給与制度は、社員を評価しないという貴社の理念を反映したものと認識しています。給与ではなく“時間”で報いるこの制度設計について、社員から不満の声は出ないのか、出ない理由は何か、ご見解を伺えますか。

倉貫 社員を評価しないのは、理念というよりも、再現性の低いクリエイティブな仕事における生産性を上げるための、合理的な判断の下での手段です。いずれ成果を上げるために評価した方が良いとなれば、評価をすることになるかもしれません。

本制度が理由で離職した社員は創業から一人もいないので、大きな不満はないのではないかと考えています。生きていれば多少の不満とは寄り添っていくもので、100%満足して生きている人はいないと思います。

毎日決まった時間に混雑した電車で通勤しなければいけなかったり、過ごしやすい自分の故郷や趣味がしやすい環境に移住するには仕事を変えないといけなかったり、なかなか子供や家族との時間を取ることができなかったりするような不満を持っている方もいるかもしれませんが、私たちの会社で働く場合、そうした不満を持つことはありません。

「何を満足と思い、何を不満と思って暮らすのか」ということが人の持つ価値観かと思いますが、採用の時点でそうした価値観が合う方を、応募者の方とお互いに見極めるため、時間をかけて進めるようにしています。それが、離職者の少ない理由ではないかと想像します。


──社員1,000人以上の大企業が「管理ゼロ」を導入する上で、最大の障壁となるのは何だと思いますか。その理由を添えてお答えいただけますでしょうか。

倉貫 1,000人以上が一斉に「管理ゼロ」を導入する必要はないと思います。強いて挙げるなら、全員を同じように扱うことが障壁です。人を一律にそろえることこそ、管理ゼロで考えている組織のあり方の真逆の姿です。

さらに言えば、どの会社も同じようにすること自体もナンセンスです。会社ごとに状況や目的が違って当然です。1,000人以上の大企業という状況と、その会社や事業の目的に合わせて考えたときに、本当に管理ゼロが良いのかどうか、今ある管理の仕方は本質的かどうかを考えてもらえればと思います。

私は『管理ゼロで成果はあがる』(技術評論社)という書名の本を出していますが、その本では、必ずしも「管理ゼロがよい」とは伝えていません。実際、本文に「管理ゼロ」の言葉は出てきません。大事なことは本質をつかんで、無駄や悪習慣を断ち切ることです。それが成果につながります。

管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう

管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう

本書を読んでいただくことで、すでにある制度や習慣などを「そもそも」の本質から考えてみて、管理という手段が本当に最適かどうかを考えるきっかけになればと考えています。


執筆:大木敦史(株式会社はてな)