13日、中国での検閲行為を中止する声明を発表したGoogle社ですが、その数時間後には、従来はGoogleの検索結果に表示されなかったダライ・ラマや法輪功、そして天安門事件の有名な「戦車の列に立ちはだかった男」の写真などが検索できるようになっているようです。
▽ 天安門事件の「戦車の男」、中国で閲覧可能に グーグルの検閲中止発表後 国際ニュース : AFPBB News
この記事で話題になっているのは、1989年の「六四天安門事件」の際に、鎮圧に訪れた中国当局の戦車に対して、身を挺して道を塞いだ男性の写真のこと。天安門事件について語られる際には必ずと言っていいほど話題になる写真で、米国の『ライフ』誌は2003年に「世界を変えた100枚の写真」に選んでいます。しかし、この写真は、天安門事件の話題に敏感な当局によって、中国では閲覧を禁止されていました。
▽ 無名の反逆者 - Wikipedia
▽ 天安門事件の報道映像をまとめたムービー - GIGAZINE
そもそもこの画像以外にも、天安門事件や法輪功などの話題そのものが、中国ではタブー。そして、Googleが2006年に中国版の「Google.cn」をオープンした際にも、苦渋の決断ながら彼らは中国当局によるこれらの話題の検閲を受け容れたことを公表しています。では、そんなGoogle社がここに来て検閲を受け容れない方針を発表したのには、一体どのような経緯があったのでしょうか?
■ 今回の事件のきっかけになった「ハッキング」
今回の事件で直接のきっかけになったのは、昨年末にGoogleを含む米国企業20社以上に対して仕掛けられた、何者かによる大々的なハッキング。そして、この件でGoogleが問題視しているのは、どうやらGoogleへのハッキングの主目的が中国人権運動家のGmailへのアクセスであったという点。以下のサイトで、それについて触れたGoogleの声明全文があります。
▽ Google、中国からの大型サイバー攻撃に中国市場撤退も
当社が確認した証拠から、攻撃者の主たる目的は、中国人権活動家たちのGmailアカウントに侵入することであることが示唆された。
それにしても、米国の金融、テクノロジー、メディア、化学薬品等の企業の内部情報を欲しがり、中国の人権活動家のメールボックスを覗きたがる集団がいたとすれば、それは一体何者なのでしょうか?
▽ 中国からGoogleほか30社以上に攻撃:目的はソースコード | WIRED VISION
いずれにせよ、今回の事件をきっかけに、Googleは以前から懸案であった中国政府の検閲行為に対して、これまでにない強気な対応に出ていることは、紛れもない事実です。
▽ 中国のネット検閲問題は重大な懸念=米国務長官 | Reuters
なお、この件でGoogleが米国政府に報告を行っていたことが、ヒラリー国務長官によって明らかにされており、米国政府は事実関係がさらに明らかになった段階で、より踏み込んだ声明を出す予定があるようです。
■ 中国での反応
中国に住む人々の反応はあまり報道されていませんが、はてなブックマークにはポツポツと向こうの雰囲気を伝える記事が出てきています。こちらは中国都市部のネットユーザーが集まる掲示板に投稿されたというコメントたちを翻訳したまとめ記事。
▽ 【速報】 Google、中国より撤退!? → 中国ネット民の反応 - 大陸浪人のススメ ~迷宮旅社別館~
Facebookの原罪は、自分が知り合いたい人間に知り合えること。
Twitterの原罪は、言いたい事が言えること。
Googleの原罪は、知りたい事が知れること。
Youtubeの原罪は、証明すべき現実を証明できること。ゆえに彼らは消された。#google.cn
▽ Googleの撤退騒動、中国ネットユーザーの反応は? - ITmedia News
また、上のITmedia Newsの記事では、中国在住者の声が詳しく報告されているようです。中国政府が考えを翻す可能性は低いのではという現地の雰囲気が伝わってくる記事です。
■ はてなブックマークコメントの反応
はてなブックマークのコメント欄では、例えば以下のような意見が書き込まれています。
- 中国政府と駆け引きできる企業か。今のところは応援できる。
- Googleから逮捕者出したり国外追放したりすれば、世界中から総スカン食らうんだけど。何もしなけりゃGoogleのやりたい放題。どちらに転んでもGoogleの勝ち
- Google vs 中国政府 なにか時代の象徴的な事件。
- Googleは政治思想にも影響を与えるような存在になるかもしれないなあ。Googleが歴史を確実に動かしつつあるような気がする。
- 逆に言うと中国とそこまでやりあえるようになったgoogleに一抹の怖さも。
- 中国支社の社員が心配
- 別にすごかねえ。bingは前からbing.com.cnでどれも検索できる。
ベルリンの壁の崩壊になぞらえる人、中国市場を失いかねないリスクを営利企業があえて取った理由を考察する人、別にbingでは前から検索できたと冷静にツッコむ人、様々なコメントがついています。興味のある方はぜひご一読ください。