美術館のスロープや券売機の点字など、街ではさまざまなバリアフリーを目にします。しかし、どれだけ整備されても、障害を持った方が何不自由なく生きるということは、難しいのではないでしょうか。今回紹介するのは、使い捨てカメラ「写ルンです」を愛用している視覚障害者の方の話から考える、コミュニケーションツールとしての写真について記したブログ。約2年前にアップされたエントリーですが、色あせない魅力を感じたのでピックアップしました。
▽車イスで行けない所は、デジカメで伝えあおう - イソムラ式 : バリアフリートラベル 8
このブログを書いたのは、ユニバーサルデザイン研究家の磯村歩さん。見学に訪れた先で車イスでは入れない場所があり思案していたところ、「これで写真撮ってきて、あとで教えて」と、車イスの連れにデジカメを渡されたそう。この出来事に磯村さんは「リアルな体験を共有することは出来ないが、どんな所だったかイメージは伝えられる」と述べ、とある視覚障害者の話を綴っています。
その方は目が見えないにもかかわらず、「写ルンです」を持ち歩いているそう。それは、現像した写真を見ることができなくても、家族に見せて思い出を共有するツールになるからです。そもそも「写ルンです」はレンズの被写界深度を深くするパンフォーカスを利用しており、1m以上離れれば自動的にピントが合うカメラ。被写体が見えなくても、きちんと撮影することができます。
最新技術でなくとも、多額の費用を費やさなくとも、些細なものが誰かの助けになる。スロープや点字のようなサポートとはまた違う、“同じ世界を共有する考え”が、充実したバリアフリー社会を築く礎になるのではないでしょうか。