朝、リビングに足を踏み入れたとき、もしも目の前でクマがスヤスヤと寝ていたら……? 日常に“おもしろさ”を加える、フェリシモの雑貨ブランド「YOU+MORE! (ユーモア)」。リアルな動物をデザインしたクッションや頬が膨らむリスのがま口財布など、あっと驚く商品を次々に提案しています。企画を担当しているのは、たった3人の女性スタッフ。それぞれの商品に対するこだわりや、制作の裏話を伺いました。
▽ YOU+MORE! (ユーモア) │ フェリシモ
▽ http://www.felissimo.co.jp/contents/youandmore/
ユーモアがカタログでデビューしたのは、2014年1月。これまでに、テーブルやキーボードを掃除できるペンギン型の卓上クリーナー「ペンギンスルスルー」や、あめなどを詰めれば詰めるほどリスやハムスターの頬が膨らむ「ほおぶくろがま口」といった、印象的なアイテムが続々と発売されました。商品を企画しているのは、豊川紗代さん、田中桃子さん、楢崎友里さんの3人。広報担当の中島健太郎さんも交え、ユーモアに仕掛けたこだわりを尋ねます。
■ おもしろい「物」ではなく、おもしろい「瞬間」を作る
――ユーモアのコンセプトを教えてください。
豊川 「誰かと過ごす毎日がもっと楽しく、もっとおもしろく、もっともっと笑えるように」というのが軸になっています。今は一番反響の多い「動物」というテーマが商品の中心になっていますが、深海魚や民芸品といったモチーフも広げています。ターゲット層は主に30代の既婚者です。一緒に暮らす誰かがいるという空間の中で、おもしろい瞬間を作りたいと思って取り組んでいます。
――ユーモアを立ち上げたきっかけは?
豊川 自分の経験になるんですが、結婚・出産をして、会社で働いて……という中で、いろんな人と楽しい時間を過ごすのは簡単ではないなと感じたんです。人はそれぞれ自分の価値観を持っているので、誰かと一緒に暮らそうとすると、ちょっとしたきっかけでけんかをしたり揉めちゃったりすることってありますよね。でも、仲良く楽しく暮らしたいという気持ちはお互いに共通していると思うんです。そんなときに、何が一番その場所やその人たちをつなげてくれるかな、というのを考えました。そこでキーワードとして浮かんだのが「ユーモア」だったんです。
ちょうどこのとき、会社からも「今までにない企画を作ってほしい」という提案がありました。私はユーモアをテーマに作っていこうと思ったんですが、ユーモアをキーワードにすると物作りってすごく難しいんですよね。おもしろいって何だろう、と悩んでしまいました。
豊川 ユーモアから最初に出た商品は、動物の形をした、布団を収納できる「クークークッションケース」です。ある日お家で、旦那さんが朝ごはんを食べようとリビングに入ってきたら、新しい家族が増えていた……という設定です。置いておくだけで、すごくおもしろい瞬間が生み出せるんですよね。これを見た旦那さんが「何だこれ!」って驚いて、奥さんは「生きているみたいでしょ?」と返す。こういうふうに、会話がどんどん生まれていく何かがあるといいなと思って作りました。絶対にこのモチーフでなきゃ、というのはありません。動物はいろんな人に受け入れられやすいし、身近な仕掛け人になってくれると思っています。
デザインに関しては「本当にいるのかと思った」というくらいリアルに描こうと思いました。すると、見間違えたり二度見したり「何これ!?」ってびっくりしたりして、そこから会話が始まる。そういう意図を持って、まずはリアルな動物のシリーズを展開していきました。
豊川 ピローカバーとダブルガーゼケットは、旦那さんが寝室に入って寝ようとしたら、家族が動物に変身していた!というシーンですね。ピローカバーには頭を入れられるので、旦那さんがそれを見てびっくりする。逆もあっていいと思います。動物のウォールシールは、子供が宿題をしていたら動物に「遊ぼう」と誘われた、というシーンをイメージしました。帰宅した旦那さんが子供部屋をのぞいたら、子供が動物たちと遊んでいるように見えるんです。
豊川 こちらは買い物に使っていただけるトートバッグです。それぞれに動物がプリントされているのですが、買い物袋から食べ物を盗み出そうとしているシーンを描いています。外に持ち出すものなので、これを持っているだけで「何このデザイン!」と近所の人から声を掛けてもらったり、このバッグをきっかけに仲良くなったりできるといいな……と。動物がバッグの中をごそごそしているみたいに、裏には動物のおしりをデザインしました。
動物と食べ物の組み合わせにも意味を持たせています。描かれている動物たちは、実際に人が食べる物と同じ物が好きなんです。クマはリンゴ、猫はサンマ、ペンギンはイカ、キツネは油揚げ……。パンダは笹だけでなくタケノコも食べるので、それを取り入れています。意外な組み合わせですが、「本当に食べられるの!?」という驚きやおもしろさはぐっと上がったと思います。毎月1デザインずつのお届けになるので、「今回はこのデザインがきた!」とわくわくしてもらえるよう、かわいいだけにとどまらない工夫を考えました。
――個人的におもしろい!と思ったのはこの「リアルプリントの着ぐるみ」なんですが……これも3人で考えられたんですか?
豊川 言い出しっぺは私なんです。着ぐるみっていうのはまだ“やり切ってない”というイメージがあって、着るんだったらもっとリアルなものにしたいというのを突き詰めて、本物に近いデザインを追求して作りました。手の先や裏側もきちんと描いてるんです。これは全身でリアルな動物を表現するというのにこだわりました。
――反響はどうでしたか?
豊川 反響はたくさんありました。この着ぐるみを作ったことで、ユーモアの形がだいぶ見えたというか……これがきっかけだったのかという感じですが(笑)。1回やり切ったかなという気持ちがあったので、その後の方向性が固まりました。
――確かにすごくインパクトがあるというか、まさに“ユーモア”だなと思いました。
豊川 そうですね。私たちが企画をしているときの共通言語に「おもしろい物を作るのは簡単だけど、おもしろい瞬間を作るのは難しい」というのがあります。だから、私たちはユーモアでおもしろい瞬間を作るための道具を提案していこう、と。着ぐるみはその代表だと思います。おもしろい物はすでに世の中にたくさんあるし、作ってもその中に埋もれて終わってしまう。なので、「おもしろい瞬間を作る」というキーワードは大事にしています。
――どちらかといえば、描かれているデザインはイラストというよりは実写に近いですよね。
豊川 かわいい雑貨を作ろうとすると、どうしても男性の入る余地が少なくなると思うんです。例えばオオカミのリアルなデザインだったら、男性でも会話に入ってきやすくなるんじゃないかなと。
――自分だけじゃなくて、家族も一緒に楽しめる。
豊川 あとは、世代を越えて年配の方にも入ってきてもらえるようなものを作りたいです。それを表現できるのが、幅広い世代に親しみのある動物モチーフかなと思いました。
■ アイデアは、自分の趣味や好きなものの延長線上で生まれる
――どういうときにアイデアが湧いてくるのでしょうか?
豊川 普段の生活の中で「これがもっとこうだったらおもしろいのに」と浮かぶことが多いかもしれません。日常的に、アイデアを思いついたらすぐメモを取るようにしています。そのときは「おもしろい!」と思っても、後で見返すと「何でこれ書いたんだろう?」と思うこともたくさんあるんですが(笑)。仕事中にわ~っと考えてもなかなか浮かばないので、日常生活を楽しんでいるときにふとアイデアが湧いてきてメモメモ……という形が多いですね。
楢崎 例えば「ペンギンスルスルー」は、フローリングワイパーで掃除をしているときに「あっ……ペンギンがお腹で滑ってる動作と似てる……」と思って生まれたものなんです。こうやって、生活の動作から見つけることもあります。
――チーム内での企画会議はどういう雰囲気なんでしょうか?
楢崎 はたから見るとしょうもないことも出していかないと盛り上がらないので、笑いに包まれている感じです(笑)。
田中 まだ形になっていない、これからどうなっていくんだろう?と思うサンプルもとりあえずミーティングに持っていきます。自分では気付けないことも、他のメンバーが「ここを裏返したらこう使えるかも」といろいろアイデアを出してくれるので。だめかもな、とか使えないかも……と思ったものでも、とにかく持ち込んで議論します。
豊川 2人が持ってきてくれたアイデアの中には、いつも「どう答えよう?」と悩むものがあります(笑)。おもしろいんですけど、これを商品として落とし込むにはどうすればいいのかなと……。でも、そういう状況がすごく楽しいんです。例えば、田中が言ってくれたことに対して私が「えっ……どうしようかな」と思っていたら、楢崎がいいフォローやツッコミをしてくれる。そういうのを繰り返していくうちに、なんとなく形が見えてくるんですよね。
――バランスがいいんですね(笑)。
中島 ボケとツッコミですね。
楢崎 商品が「ボケ」の役割ですからね(笑)。
――なるほど! 確かにそれも「ユーモア」ですよね。
中島 ツッコミどころが多いほうがいいんですよね。
――深海魚をモチーフにしたポーチや靴下もありましたよね。深海魚はネット上でも人気のテーマですが、こうしたネットの流行などは意識していますか?
豊川 深海魚担当(楢崎)さん、どうですか?
楢崎 深海魚担当です(笑)。反応がどれくらいあるかというのを想像しながら作っているので、ネットの流行は結構意識しています。マグロなどの一般的な魚よりも、今は深海魚の方がニーズがあるんだなというのを、ネットやテレビを見て実感していました。
中島 楢崎は入社式のときに「私は魚が大好きです」ってあいさつをしていたんです。なので、トレンドを見極めてその中から“ユーモア”を探すというよりも、まず土台として魚に興味があり、そこからさらにリサーチした上でテーマを最終決定しています。豊川の場合は主婦としての実体験、楢崎の場合は魚がすごく好きだったという、個人の思いから派生していく形です。キャッチーだからそれを選ぶというばかりではないです。
――なるほど。豊川さんと田中さんの好きなものは何ですか?
田中 私は民芸品が好きなんです。ユーモアでは和のアイテムやモチーフを商品化しています。
豊川 私は結構流されやすいタイプで……「これいいよ」ってオススメされると、何でも気になってしまいます。今特にハマってるのは古墳なんです。
――なるほど、古墳!
豊川 あっ、分かりますか!?
――分かります! 最近だと古墳型ケーキも話題になりましたよね?
豊川 そうなんです! 今すごくハマっていて、ユーモアで古墳シリーズを出すことも決まりました。古墳の形をした枕や、ハニワのスタンプなどを企画しています。これもすごくおもしろくなりそうです。
中島 古墳シリーズは6月中旬ごろにカタログに掲載して、7月上旬から中旬にかけてインターネット上で公開していく予定です。
――古墳を好きになったのは最近ですか?
豊川 そうですね。社内に古墳好きのスタッフがいるんですが……フェリシモにいる人たちって、本当に趣味が幅広いんです。「古墳がかわいいねん!」と言っているスタッフの話を「え~本当に……?」と聞いていくうちに、いつの間にか自分もハマっていました(笑)。
――古墳や魚のように、自分の趣味や好きなものからアイデアが生まれていくという感じなんですね。
豊川 好きだからこそマニアックな方向にどんどん考えていけるし、追求できるのかもしれません。自分たちで言うのも変ですが、他のチームと比べてユーモアの商品企画は大変だと思う部分が多いです。結構考え込むところもあって……。好きじゃないとなかなかできないことだと思います。
――商品のデザインは、どういったものからインスピレーションを受けるんでしょうか?
豊川 私の場合は、モノやコトの画像でつながるソーシャルネットワークサービスを普段からよく見ています。見つけたものをそのまま商品に使うことはもちろんないですが、習慣として毎朝それらを見ていて、新しい画像をどんどん取り込んでいるので、想像力がかき立てられるんです。見ていくうちに何かと何かが結びついて、アイデアが出やすくなるのかもしれません。
■ どどんと登場! ダイオウイカの寝袋や“もぐもぐ”グッズ第2弾
豊川 先ほども深海魚の話がありましたが、これから夏のシーズンに向けてどどんと新商品を出す予定です。
――おおお、そうなんですね。わ、これは何ですか! 大きい!
楢崎 ダイオウイカの寝袋です!
――わ~! す、すごい!
楢崎 これも個人的な趣味なんですが、ダイオウイカがすごくかっこいいなと思っていて。この寝袋は全長2m60cmあります。季節外の布団や服を丸めて中に入れると少し大きめの抱き枕になるので、使わないときも部屋に置いておけます。これも企画会議で「こういうのが作りたいんですけど」と提案して、いろいろ突っ込まれながら出来上がりました。収納袋のデザインはマッコウクジラをイメージしているんです。
――マッコウクジラといえば、ダイオウイカとの因縁の対決でも有名な……。
楢崎 そうなんです! 寝袋はこのマッコウクジラの収納袋に入れてお届けします。
豊川 普段は袋に収納しておいて、友だちが来たときに使ってもらうこともできます。ダイオウイカの色は諸説あるんですが、最近撮影されたものは金色だったんです。ビデオカメラのライトで光っていただけかもしれないですが……金色であることに賭けてみました。
中島 テレビ番組で話題になっていたダイオウイカは確かに金色でしたよね。
豊川 陸まで上がってくるときに、色が変わってしまうそうなんです。なので、打ち上げられたときのダイオウイカは深海にいるときの色ではないんですよね。
楢崎 寝袋では、深海で泳いでるときのダイオウイカの色を表現しています。
漁港に打ち上げられたダイオウイカと並ぶ人をイメージして撮影
男性でもすっぽり。足はアイマスクになる!?
楢崎 前回は深海魚のポーチを「基本編」というタイトルで出していたんですが、今回は「応用編」を用意します。全体像はまだお見せできないんですが、よりマニアックな生き物が出る予定です。前作よりも収納力が上がっていて、今回はメガネも入るんです。6月ごろに7商品ほど登場する予定なんですが、その中の1つが潜水艦と深海魚のシルエットがデザインされているバスタオルとフェイスタオルです。
楢崎 これには少し仕掛けがあるんです。こうやって濡らすと、生き物が浮かび上がるんですよ。
――おおお! このじわっと浮かび上がる感じがいいですね。
豊川 濡れたら現れるという、じっとり感が深海魚らしいですよね。
楢崎 深海をイメージして、色も落ち着いたものを選んでます。こちらは、部屋に貼ると潜水艦から深海の風景をのぞいているように見えるというウォールシールです。何枚も集めてもらって、並べて貼ると深海の風景がつながっているように見えます。
お風呂や階段にも貼りたい
豊川 新たな深海シリーズは、5月上旬からカタログに、Webサイトには6月上旬から掲載します。ダイオウイカの寝袋だけは先行予約を実施しています。
▽ 約260cmの「ダイオウイカ」寝袋、フェリシモから登場 収納袋は“天敵”のマッコウクジラ型 - はてなニュース
――今後発売を予定しているラインアップはありますか?
豊川 惑星など、宇宙をモチーフにした商品を冬ごろに発売する予定です。これもマニアックなものを用意します。あとは、まだ全然形になっていないんですが、2016年の春ぐらいに向けて未確認生物のグッズも考えています。今は下調べをしている段階で、どういうことができそうかを探っています。
――宇宙に未確認生物! 楽しみです。発売される商品の企画は1年単位で考えているんですか?
豊川 毎年、年間のプランを立てています。商品企画はだいたい半年くらい掛かりますね。アイデアを出してから製品化されるまでに1年掛かった商品もあります。
――それだと旬をつかむのは難しくないですか?
豊川 そうですね。新しいモチーフを投入する際はトレンドを確認するんですが、基本的に世の中にまだない商品を……と考えて作っているので、できたものから製品化していきます。例えば「ペンギンスルスルー」はまったく世になかったもので、季節もあまり関係がなかったので、できた時に出しました。おかげさまで好評だったので、この後に卓上用の小さいサイズも出したんです。こうやって反響にうまく反応して動いていきたいですね。お客さまの感想などは、Twitterでもよく見ています。「ほおぶくろがま口」も新作をすでに作っていて、巾着(きんちゃく)を出す予定です。これもがま口の反響を見た時点で企画が動きました。
田中 7月から販売します。動物の親子の巾着バッグなんです。
▽ 【先行お申し込み】YOU+MORE! もぐもぐ食べてふくらむ ほおぶくろ親子きんちゃくバッグの会|フェリシモ
左が新作の巾着バッグ。右は話題を集めた「ほおぶくろがま口」
豊川 田中が企画したものなんですが、実はがま口が出た時に「もっとほっぺが膨らんだらいいのにな」と思ったんです。現状の膨らみもかわいいんですが、もっと膨らませてほしい!とお願いして作ってもらいました。
田中 これはさらにもぐもぐできるようになりました。
――素材は一緒なんですか?
田中 がま口よりもさらに伸びる素材を使っています。こんなふうに……。
――わ! すごい!
びよ~んと伸びても、きょとんとした顔がかわいい
田中 びっくりするくらい物が入るようになっています!
楢崎 旅行のときにいいですよね。
――そうですね、物がたくさん入りそう。頬がふっくら!
いっぱい食べて満足、満足
豊川 この膨らみがもう、大満足で!
――この巾着だと、がま口よりもあめがたくさん入りそうです(笑)。
楢崎 深海魚のポーチは、カタログで「のどあめが約7粒入ります」という表現をしていたんです。いろんな人に「これってあめじゃなくてのどあめなの?」と聞かれたんですけど、「あえてのどあめなんです!」と。そういうところでも少しずつボケを入れてみています。
――今後もカタログに「これはのどあめが何粒分入ります」なんて表記があるとおもしろいですね。
豊川 確かにおもしろいですね! 先ほど「企画ってどうやって出してるんですか」という話がありましたが、今考えると大喜利風な感じがします。「ちょっと大喜利やってもいい?」って、とにかくネタを出すために集まってもらうんです。しかも話し合いのときに、変なことを言っても誰も否定しないんです。みんな優しいので……(笑)。そこで「それしょうもないやん」という否定が入ると、それで意見が言えなくなると思うんです。なので大喜利風の会話が、ある意味企画を生み出してるんじゃないかなと。
のどあめが約7粒入るメンダコ。スマートフォン用のスタンドにもなる
■ 目指すは「男性目線」 今後のユーモアで表現したいもの
――企画会議では話題にしたものの、実現しなかった商品はありますか?
豊川 いっぱいあります!
楢崎 チームの中ではかなり盛り上がって「これ絶対受ける!」というのはあったんですが、さまざまな事情で実現できないものもあります。秋冬シーズンに出したかったのは、すごくリアルなニホンザルをデザインしたものなんですけど、それをお風呂に浮かばせたかったんです。お猿さんってたくさん集まってお風呂に入ってるじゃないですか。そんなシーンをイメージして、何匹も浮かべたいなって。形にならなかったので「こういう商品です」というカテゴリーはないんですが、たくさんのお猿さんがお風呂でくつろいでいるというシーンを作り出したかったんです。
――なるほど、確かにビジュアルはぱっと浮かんできます。
豊川 お風呂のドアを開けた瞬間に、ニホンザルがすでにお風呂にたくさんいて「ふ~」ってくつろいでたらすごくおもしろいなと思って、「いいやんそれ!」って盛り上がったんですけど、いざ商品化しようってなるとどうしようか……というところで今止まっています。こういうアイデアはたくさんあるんです。
――ではそのアイデアが今後商品化される可能性もあるかもしれないですよね。
豊川 あると思います。今までも、一度ボツになってから1年ぐらいかけて商品化したものもありました。
楢崎 工場の方に「商品にできない」と言われることもあるんです。「ペンギンスルスルー」も形が結構複雑で、サンプルまで作った時に「首がちゃんと座ってないとヘロヘロになってしまう」と言われて……。
豊川 やたら値段が高くなってしまったり……。こだわりすぎてしまうと、販売が難しい値段にまでなってしまうんです。でも、諦めずにアイデアは取っておきます。その結果「ペンギンスルスルー」は世に出すことができたので。
――これは絶対に出したい!と思う気持ちがあったからこそですよね。
楢崎 私はもう、絶対に出したいと思っていました。
豊川 チームメンバーとしても「出してほしい」と思っていました。なので、商品化できる道を一緒に考えたり探ったりしていましたね。
――ユーモアでいちばん反響の大きかった商品は何ですか?
豊川 「ペンギンスルスルー」と「ほおぶくろがま口」ですね。こちらは最初にペンギン好きさんやリス・ハムスター好きさんが見つけて盛り上がってくださって、そこでの反響が大きかったです。
――そういったものの特徴は何なんでしょう?
田中 この2つも含め、お客さまの手で最後は完成してもらうというのを意識しています。例えば「ペンギンスルスルー」だったら、お客さまがフローリングワイパーをセットすることで商品として完成する。「ほおぶくろがま口」も、物を詰め込むことで頬の膨らみが出来上がります。
「ペンギンスルスルー」の企画書
――今後、ユーモアで表現したいことなどはありますか?
豊川 いろいろなおもしろいものが集まる場所にしたいと思っています。今は動物好きさんに集まっていただいているんですが、もっと「ここに来ると絶対何かに出会える」という場所にしようと、コンテンツをどんどん増やしているところです。雑貨って女性向けが圧倒的に多いと思うんですが、このアイテムがあることでいろんな人とつながれるというのが最初のコンセプトなので、おじいちゃんや旦那さんなど、女性以外にも好きになってもらうというのを意識していきたいです。なので、男性目線というのが今の課題です。最近、少し全体のデザインのテイストが甘めになってきているなと感じるので……。今期で取り入れていきたいのは男性目線ですね。
中島 フェリシモはかわいい雑貨や女性向けの通販というイメージがあると思うので、男女ともに楽しめる雑貨というのも目指していきたいですね。
――そう考えると、宇宙や古墳は男性も楽しめそうですよね。発売がとても楽しみです!