• Twitter
  • Facebook
  • Google+
  • RSS

140文字からはみ出した愛 ジャニヲタにブログ文化が浸透した理由――ジャニヲタの団扇の向こう側vol.2



ジャニヲタを多くフォローしている私のTwitterのタイムラインでは、「ブログを投稿しました」という更新通知ツイートが1日に数件流れてくる。それはフォローしている人のブログが更新されたというお知らせの場合もあれば、フォローしている人が別の人の面白いブログの更新通知をリツイートしている場合もある。以前はそこまで多くなかったはずなのに、何故今ジャニヲタの間でブログが流行り始めたのか。今回は「ジャニヲタのブログ文化」について話してみたい。

■ ジャニヲタはどこからブログにたどり着いたのか

ジャニヲタの歴史もインターネットの歴史も長く深いものであると思うが、今回はここ5~6年に焦点を当ててみたい。勿論全ての人がこの流れに当てはまるとは限らないが、まず5~6年前のジャニヲタが使っているSNSと言えば、統一されたものはなく多岐にわたっていた。mixiに生息する者、各社ブログサイトでブログを書く者、昔からのテキストサイトの運営を続ける者、掲示板に生息する者。インターネット上で特別何処か一点に集合する事は少なく、それぞれの場所で小さなコミュニティとして成り立っていたと感じている。

しかし各所のジャニヲタは、徐々に「Twitter」へ集合し始める。私がジャニヲタ用にTwitterアカウントを持ち始めたのは、2009年~2010年辺りである。この時期から瞬く間にTwitterのジャニヲタ人口が増えていき、Twitterのトレンドワードがジャニーズ関連のもので賑わう事も今では珍しくなくなった。

Twitterにジャニーズの公式アカウントがある訳でもないのに、一体どうしてジャニヲタはTwitterに集まってきたのか。私が思うに「レポ文化」との相性が良かったのではないかと思う。コンサートを見に行っていた人たちが、終わった瞬間にその日の公演のレポ(レポート)を呟き始める。他のSNSでは自分の知り合いが公演に入っていない限り知る事が出来なかったリアルタイムな情報が、Twitterではすぐさま大量に手に入るという点で、ジャニヲタにとってTwitterは画期的なツールとなった。またテレビやラジオや雑誌の感想を140文字で手軽に誰かと共有出来る点も、ジャニヲタがTwitterに依存する理由の一つであると思う。そうしてTwitterの楽しさを知ったジャニヲタは、他のSNSでの活動を一旦止めて「Twitter一本化」に踏み込むようになった。

しかし最初こそ140文字の手軽さを重宝していたジャニヲタだが、やがて140文字では物足りなさが増してくる。特に発信欲の強いジャニヲタにとって、140文字は愛を語るには短い。連投する事でその問題は解消されるが、前後の流れを把握されないまま読まれてしまう可能性があるのがTwitterの難点。そこであらためてTwitterと併用する形でブログが投入されるようになった。

ジャニヲタは自分の事を語る「自分語り」の性質が強い事もあり、他人の「自分語り」に影響されて自分のブログを作って語り始める人も多かった。Twitterで連投して呟くと鬱陶しいと思われそうな自分語りも、一つのツイートにリンクを貼るだけになるのでタイムラインを過剰に横切る事もなく、またワンクリックする手間が増える分だけ「読みたい人だけが読む」という形を取れるようになった。140文字以内で瞬発的に書き残しておきたい場合はTwitterへ。140文字以上占領してしまう、またはまとめて文章を残しておきたい場合はブログへ。そうして「Twitterとブログの併用時代」に今移り変わってきている。

■ ジャニヲタが「はてなブログ」に集まる理由

これは単純に「みんながやっているから」という点が大きいと思う。ジャニヲタの性質として面白いのが、「郷に入っては郷に従う」という礼儀を重んじるところである。恐らく「多様なSNS時代」には別のブログサイトでブログを書いていた人たちも、「Twitter一本化時代」を経た為に、以前のブログから一新したり、データはそのまま引き継ぎはてなブログへ移行したりした人が多いのではないかと思う。かくいう私もTwitterに来た時、周りのTwitter利用者がみんな「はてなダイアリー」(当時はまだ「はてなブログ」が無かった)を使用していた事から、急いではてなIDを取得した経緯がある。

私がTwitterを始めた頃は、Twitterにおけるジャニヲタの規模は本当に小さく、そこに居る同じグループのファンのアカウントを全員フォローしても100人超えるか超えないかくらいだった。それでもプロフィール欄を見ると、大抵の人がはてなダイアリーで日記を書いている人ばかりだった。当時はてなダイアリー界隈のジャニヲタたちの間でTwitterを開始するのが流行し、そこから流れてきた人が多いのだと先住民に教えて貰った事がある。そうしてたまたまTwitterに先に来ていた人たちが「はてな」を利用していたからという理由で、今現在に至るまでTwitterを利用しているジャニヲタの間では「ブログをやるならはてなブログ」という暗黙の了解が出来ている。

ちなみに先住民の中には、ハロプロヲタとジャニヲタを兼ねている人が多かった為、ジャニヲタのブログ文化は、ハロプロヲタのテキスト文化の影響を大きく受けているのではないかと個人的に感じている。

■ 「担降りブログ」を書くジャニヲタ、読むジャニヲタ

昨年末、あやなさんの「担降りしました。」というブログがジャニヲタを問わず沢山の方にシェアされていたのは記憶に新しい。

担降りしました。 - あやなのblog

「担降り」とは、好きなジャニーズのタレントが変わる事を指す。外側から見ると何だそれだけの事かと思われるかもしれないが、ジャニヲタにとっては結構な人生の分岐点だったりする。

これまで好きだったタレントに対して積み上げてきたお金も時間も愛情も全部を一旦リセットして、新しい別のタレントに視点を移す、場合によってはこの担降りによって人生が変わってしまう場合もある、重大な決断の瞬間である。「はてなブログ」で見かける退職エントリーともよく似ているし、担降りを「転職」と例えられる事も多い。人が過去の実績を捨てて新しい未来へ踏み出して行く瞬間は、エモーショナルな物語があり、読む人はみんなその経緯を知りたがっている。

アイドルを応援する上では、基本的には主人公はアイドルであり、私たちはその物語を見守る読者でしかないのだが、「担降りブログ」においてはジャニヲタが主人公になってしまう。アイドルを脇に置いてジャニヲタが主人公になってしまう「自分語り」を嫌う風潮もあるが、人の嫌悪感を生み出してしまうだけの熱量がそこには確かにあるのだ。また「自分語り」がただただ嫌われているだけであれば、読み手も少ない事から書く人が減ってきてしまうと思うのだが、減る事はなく日々タイムラインに一定数流れてくる様子を見ていると、「自分語り」を読みたがっている人もかなり多い。日本人の“共感”の文化が根強いのか、エッセイ的に読み込んで共感したがっている人が多いように思う。

■ ジャニヲタ大学文学部言語学科(はてなブログキャンパス)

「ジャニヲタ大学文学部言語学科(はてなブログキャンパス)」という比喩をフォロワーさんが使用していて、私はこのフレーズをとても気に入っている。先ほどの担降りブログ等に見られる「自分語り」とは対照的に、近ごろは好きなグループやタレントについてのデータを並べて分析する研究者系ジャニヲタも多くなってきた。KAT-TUNの歌詞について分析したり、「アンダルシアに憧れて」という楽曲の歴史を紐解いたりと、研究対象としてジャニーズを見つめるエントリーが増えてきている。

彼らは「今」をうたう ‐KAT-TUN楽曲の歌詞を抽出・分析してみました‐ - リチア電器

我々はいつからアンダルシアに憧れていたのか - over and over

ジャニヲタのイメージを表面的な部分でしか知らない人にとっては、こんなにジャニヲタは勉強好きだったのかと衝撃を受けて貰えるのではないかと思っている。「自分語り」と「研究語り」の両方が同時に発展してきている今のジャニヲタのブログ文化には、今後も是非注目してほしい。

あやや

筆者:あやや(id:moarh
はてなブログ:それは恋とか愛とかの類ではなくて

2001年夏、堂本光一さんプロデュースのジャニーズJr.内期間限定ユニット「☆☆I★N★G★進行形」を見てジャニヲタデビュー。各グループのファンを転々とした後、2015年現在はジャニーズ事務所DD(誰でも大好き)として活動している。グループの最年少が大好物な高知在住26歳。

Twitter:@hraom

文: あやや

関連エントリー