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フリーランスのお金の心配事を減らすサービス「フリーナンス」はなぜ必要?漫画家・田中圭一さんと考える、フリーランスのお金の事情

「お金のこと」と「安心して働けること」という、フリーランスの方の心配事を減らすサービス、「フリーナンス」が誕生しました。漫画家の田中圭一さんがこのサービスを見て思うところ、そして漫画業界のリアルを教えてくれました。

発注先の企業の支払いサイトは? ちゃんと支払ってもらえる? そもそも、自分になにかあったらちゃんと売り上げは立つの? などなど、お金にまつわる問題は、毎月の給与が存在しないフリーランスとして働く方にとって、切実です。

こうしたフリーランスの方の仕事をする上での心配事を少しでも軽減したい、という思いから、あるサービスが生まれました。GMOクリエイターズネットワーク株式会社が2018年10月にローンチした「フリーナンス」です。同サービスはフリーランスの方にとっての収納代行用口座としての機能が基本ですが、同時に、無料の損害賠償保険や、ギャランティの即日払いといった、お金にまつわる心配事が低減される機能を備えるのも特徴です。

では、なぜこうしたサービスが生み出されたのでしょうか? サラリーマンとして働きつつ、紙媒体、Web媒体で幅広く活躍する漫画家、田中圭一さん。そして、かつて田中さんの編集担当を務めたこともある、「フリーナンスの中の人」である、GMOクリエイターズネットワークの次松武大さんが、「フリーナンス」が必要とされる背景、フリーランスやクリエーターの方にとってのお金の問題と、働く上での課題を語り合いました。

※この記事は、GMOクリエイターズネットワーク株式会社の提供によるPR記事です。

freenanceFREENANCE(フリーナンス) | フリーランスを、もっと自由に。

かなりシビア!漫画家のお金の事情

次松 田中さんとは、Webメディア「みんなのごはん」の連載『ペンと箸』を僕が担当させていただいた以来のおつきあいなんです。当時、僕は漫画編集に関しては完全に初心者で、原稿の吹き出しの中のネームは、漫画家さんではなく別の人が入れるっていうことも知らなかったんですよ。田中さんに原稿をいただいたら、吹き出しの中が真っ白なのにびっくりして「セリフが入ってないんですけど」と聞いたくらいで……。

田中 そんなこともありましたね(笑)。『ペンと箸』は5〜6回やって終わりくらいのつもりでしたしね。単行本化するまでよくたどり着きましたよね(笑)。

田中圭一さん:1962年大阪府生まれ。1984年、『ミスターカワード』で漫画家デビュー。以降、紙媒体、Web媒体で幅広く作品を発表する。近作『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(角川書店)はWeb媒体で掲載後、書籍化されヒットを記録。同作はその後ドラマ化もされる。漫画家として活動するかたわら、会社員も務める兼業漫画家としても知られ、近年では京都精華大の教員としてマンガコースで教鞭も振るう。


次松 その節はどうもありがとうございました(笑)。今日は、弊社で始めたフリーランス向けの金融商品「フリーナンス」について、漫画家としての立場から意見をお伺いしようと思っています。

田中 僕はサラリーマンをやりつつ漫画を描く、という二足わらじの状態をずっと続けてきたんですけど、漫画家は基本的にフリーランスの人が多いですよね。僕の周りの漫画家さんからも、漫画1本でやっていくための経済状況というのは、思っている以上に大変だという話をよく聞きます。漫画家の立場から見ると、フリーナンスの「即日払い」という機能には興味を感じます。

次松 それはなぜでしょう?

田中 漫画を描くのに、アシスタントさんは欠かせない存在ですけど、アシスタントさんへのギャラは仕事をしてくれた当日とか翌日に支払うことが多いんです。

次松 漫画家さんに原稿料が入ってきてから支払うわけではないんですね。

田中 そうなんです。支払いのための資金は原稿料だったり印税だったりしますが、基本的に後払いです。しかも、なかなか支払われない、ということもよくあったみたいですよ。ある漫画家さんが「原稿料を払ってほしい」と出版社に直談判に行ったら、その会社の社長さんが「じゃあいくらほしいんだ」ってポケットから現金を出してきた、なんていう話を聞いたことがあります(笑)。

次松 なんと! ラフな世界なんですね……。

田中 だから支払いは“そもそもいつになるか分からない”可能性があるんです。お金に関しては他にも悩むところがあって、「半年後から連載をお願いしたい」っていう依頼が来たのに、その話が直前になってたち消えになってしまう、ということもありました。6話分くらいネームを書いて、さあ連載を始めようっていうタイミングでなくなってしまったんです。

次松 ええー!

田中 自分だけじゃなくて、アシスタントさんの予定も確保していますから、アシスタントさんたちのギャラも保証もしなくちゃいけない。僕はサラリーマンをしていたから、そちらの蓄えから全額ギャラを出しましたし、ヒット作を描いている漫画家さんだったら、自腹を切っても痛手ではないかもしれなせん。でも、大変なことには変わりはありません。

良いアシスタントさんと長く仕事を続けようと思うと、お金のことをちゃんとするのは絶対に必要なことです。それでこそ自分の仕事を優先してくれるようになるわけだし、信頼関係を強固にしていけますから。

次松 アシスタントさんのギャラのように、クライアントからの入金よりも出金が先に発生する方にはフリーナンスの「即日払い」機能をぜひ利用してもらいたいですね。

僕がWebメディアの編集担当をしていたときも、ライターさんやカメラマンさん、デザイナーさんから「もう少し早く払ってほしい」という相談をいただくことは多かったです。でも、支払いサイトを早くしようとしても、発注元の会社の規定によって手続きが煩雑だったりする場合があります。だから簡単に支払える仕組みを作りたかったんです。「即日払い」を活用して、余裕をもった資金計画に役立ててもらえるといいと思います。

次松武大さん:大学卒業後、映像作家として海外の国際映画祭やアートフェスティバルなどに多数参加した経験を持つ。2006年、フランスより帰国後に伍福星ネットワーク(現GMOクリエイターズネットワーク)に入社し、2014年から取締役副社長を務める。

田中 もう一つ、フリーランスにとってリスクなのが、何かトラブルがあったときに矢面に立ってくれるものがない、ということですね。僕の絵柄を見て「著作権侵害をしている! けしからん!」と電話をかけてきた人もいましたから(笑)。

会社という後ろ盾がなく、自分で全て解決しなければならないというのは厳しい。なんらかの過失があり高額な賠償責任を負う可能性もあるわけで、それを個人で負担するのは難しいですよね。

次松 フリーナンスの「あんしん補償」は、そういったフリーランスに起こり得る業務過誤も補償しています。例えば病気などの理由で納期が遅れてクライアントから損害賠償請求の訴えを起こされた場合にも、対応することができます。

田中 漫画のように、ゼロからお話を作っていかなければいけないっていう職業は、メンタルをやられて書けなくなるっていう可能性だってありますからね。今も忘れられないですけど、東日本大震災の翌日があるギャグマンガのネームの締め切りだったんですよ。あれだけの混乱の中でもギャグをまとめなければいけないというのは、精神的にかなりきつかったですね。プロの作家とはつくづく因果な商売だとあらためて思いました。

後にドラマ化もされたヒット作『うつヌケ』(角川書店)は、田中さん自身がうつ病に苦しんだ経験を持つことから、執筆が始まった。

次松 漫画家さんの場合だと、連載の締め切りに遅れたからといってすぐに賠償を求められることは少ないかもしれませんが、業種やプロジェクトによってはシビアに請求されることもありますからね。「あんしん補償」は、「即日払い」を使う時に必要なアカウント開設をしただけで自動的に付いてきます。

田中 保険料を別途支払わなくてもついてくるんですね。

次松 保険料はフリーナンスで負担しています。僕たちとしては、フリーランスの方が安心して働ける環境を提供する、というのがまず先にありきで、そのためには「即日払い」と「あんしん補償」はセットだと考えています。

変わっていく、個人の仕事の仕方と対価の受け取り方

次松さんが編集として田中さんとタッグを組んだ『ペンと箸』(小学館)。

次松 さて、『ペンと箸』はWeb連載から単行本になりました。いまでこそ、Webも漫画家さんの活躍の場として認知されていますが、かつては漫画雑誌が主流でしたよね。こうした市場環境の変化は、漫画家さんのお仕事にも影響を与えたと思いますか?

田中 以前は週刊誌や月刊誌に連載して原稿料をもらって、そのあと単行本になって印税が入ってきて、というサイクルがありました。しかし、いまは雑誌を取り巻く状況は厳しくなってきましたし、漫画も売れなくなっていますよね。つまり、一発当てて大儲けできる、という状況ではなくなりつつあります。こうした状況にあるので、出版社の編集さんも血眼になって売れそうな素材を探しています。だから、アマチュアの漫画家さんがSNSに漫画を上げてバズると、その方にすごい数のオファーが来るんですよ。

次松 ある意味、可能性は広がりますね。

田中 それがいいことばかりでもないんです。出版社から発売が決まり、単行本用に描き下ろしの原稿を描いても、描き下ろし部分には往々にして原稿料は出ません。さらに、単行本が出たら、それ以前までネットに上げていた原稿の掲載をやめてください、という条件がつくこともあります。こうしたやり取りを経て、実際に発売してみると思ったより売れなかった、ということもあります。すると、他の出版社の人からも「あの人はネットでは人気があるけど単行本は売れない人なんだ」と認識されてしまい、その後、依頼はこなくなってしまう。印税はちょっとしかもらえないし、何のために単行本を出したんだろう……、ということもあり得ますよね。

次松 うーん。

田中 ただ、SNSで話題になっていて何十万人もフォロワーがいる作家さんが本を出して売れないというのは、出版社側のプロデュースの方針も間違っているんじゃないかと思うんですよね。出版社の中の編集者さんもいろいろで、作家さんに適した手腕を持った方と組めば大ヒットした可能性もある。僕ら漫画家にとって編集者さんの実力のありなしは死活問題なんです。

次松 しかし、漫画家さんが優れた編集者さんをみつけるのは難しいですよね。

田中 そうなんです。編集者さんと漫画家の相性の問題もあるとは思いますけど、編集の人の力量がもうすこしオープンになる仕組みがあったらいいですよね。最近、漫画を自由に投稿できるWebサイトで、人気のある漫画に複数の編集担当者が立候補して、漫画家の卵の人の側から編集者を選べるような仕組みができています。漫画家が一方的に選ばれる時代は変わってきているとは感じます。

次松 力のある個人が才能を発揮して、その対価をちゃんと受けられる時代になってほしいですね。

田中 そうなんです。それは漫画家だけでなく、編集者さんにも言えます。フリーの編集者さんで、担当作が大ヒットしたけれど、正規の社員ではないばかりに自分の報酬は全然増えなかったということがあったそうです。その方は、出版社とも交渉して、今後、作品がヒットしたときはインセンティブがもらえるようになったそうですけども。

次松 フリーランスの方たちが適切な仕事の対価を得られないのは、契約にも問題があると思います。契約条項にはないけれど、大きな成果が出たからボーナスが欲しい、と後から要求することはできませんよね。

実は、フリーナンスを立ち上げようと考えたとき、最初はフリーランスの方の契約に関するエージェントをやりたいなと思ったんですよ。僕自身、十数年、制作畑で仕事をやってきて、フリーランスの方、クリエーターの方と契約関連で齟齬(そご)が生じてしまうことがあったからです。発注する側はお金に見合ったものを得られる、クリエーターさん側も権利や対価が守られる、その落としどころを調整することが大切だということを感じていたんです。

田中 企業とフリーランスやクリエーターの方の間で交わされる契約で、納品と同時に著作権や著作人格権をクライアント側に移譲する、という条件が組み込まれていることがあります。「こうした条件はひどい」と炎上しているのを目にしたことがありますが、発注する側からすれば、例えば自社のマスコットキャラクターとして制作してもらったのに、使用するたびにクリエーターに許諾を求めなくてはいけない、という状態になってしまう。

発注側の企業の意図を考えれば、そこまで無茶な契約上の要求ではないということは分かります。しかし、双方の立場を理解して説明できる人がいないと、なかなかお互い納得できないですよね。

求められる、発注者とクリエーターのつなぎ役

次松 田中さんは会社員経験が豊富なので、企業側とクリエーター側、双方の事情がよく分かっていらっしゃいますけど、クリエーターさんが企業の意図を誤解してしまうことは多いと思います。

田中 双方の意図を間に入って説明してくれる人がいるとありがたいですよね。

次松 はい。まだ今は実現できていませんが、今後、契約を仲介するような仕組み作りも進めていきたいと改めて思いました。フリーランスやクリエーターの方が活躍できる場は増えていますが、僕らの役割は、仕事をお願いする側とフリーランス/クリエーター両方が働きやすくなるサービス作りだと思います。いわばインフラ、環境づくりですね。

田中 インフラは大事ですね。僕が教えている大学で学生と話していると、会社員としての生活に期待が持てず、フリーランスを選択する若い人が増えていると感じます。だけど、フリーランスというのはやはり立場が不安定ですから。

次松 フリーナンスの即日払いサービスを利用してもらうには専用口座を開いてもらう必要がありますが、ゆくゆくはこの口座の利用実績を銀行の与信にも利用したいと考えています。「フリーナンスで家が建つ」っていうところまでいきたいですね(笑)。

田中 それはいいですね。漫画家の場合、作品はすごく人気があるのに家を買うのにローンが組めないという話はよく聞きますからね。それどころか、アパートを借りるのも大変です。地位向上って大事ですよ。

次松 いま、僕たちのフリーナンスには、資金繰りの改善に役立つ「即日払い」と、業務を行う上での安心を担保する「あんしん補償」がありますが、これ以外にもフリーランスの方々が働きやすくなっていくようなラインナップを、どんどん増やしていきたいと考えています。僕たちのサービスで、フリーランスやクリエーターの皆さんが、ご自身の創作活動に集中して取り組めるような環境づくりを手助けしていきたいですね。

[PR]企画・制作:はてな

取材・執筆:森嶋良子