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小説好き以外にもおすすめです 「小説の読み方~感想が語れる着眼点~」



小説の読み方~感想が語れる着眼点~ (PHP新書)

小説の読み方~感想が語れる着眼点~ (PHP新書)

平野さんの新刊です

デビュー作『日蝕』で芥川賞を受賞して以来、精力的に執筆活動を続けておられる平野啓一郎さん。その平野さんが新刊を出されました。『小説の読み方 感想が語れる着眼点』という本で、前著『本の読み方 スロー・リーディングの実践』の続編にあたります。
『本の読み方』は、情報が溢れかえるインターネット社会での読書のあり方を説いた本でした。いわく、ゆっくりと内容を味わおう。誤読したっていいじゃないか、創造的に読もう。作者の意図を知ろうと積極的に関ってみる。すると、その本はあなたに語りかけてくるよ、と。今回の『小説の読み方』もそれと同じ考えを踏襲しています。前回と違うのは、小説の文章に限っているところ。

小説好きにオススメです

本書で平野さんは9つの小説を題材に、読書の仕方を展開します。目的は批評ではなく、小説家の読み方を私たちに提供することです。
第1部と第2部に分かれ、第1部では小説の読み方の新たな視点が提示されます。とても簡潔な切り口です。そして、この視点を用いて第2部の9つの小説たちを楽しみます。その楽しみ方がすごいんですよ。「えっ、こんなとこで立ち止まって考えるの?」という驚きの連続で。
例えば、登場人物の名前で平野さんは立ち止まり、「どうしてこういう名前が付いているのだろう?」という疑問を読者に投げかけます。登場人物の名前の由来なんて考えたことがなかった私のような読者にはこの質問自体がまず驚き。さらに、この疑問への答えを小説家としての立場から提供したあと平野さんは、どんどん「こう読んでみたらどう?」というのを展開していくんですね。すごいです。しかもその読書方法は、第1部で提示した切り口を使う。その絶大な威力と、使いこなす平野さんの力量に感嘆しきりです。
本書で書かれる読書の仕方は小説家でなければ思いつかないようなもの。なので、小説家になりたい方はもちろん、小説好きの方にも有益でしょう。
また、本書はネットで活動するひとにも有益な情報が満載なんです。

ブロガーにもオススメです

例えば、小説のプロットについて述べるなかで平野さんはスリリングなことを述べます。

小説が、どこまで読者との相互協力的なものとなってゆくかは分からないが、雑誌連載などの場合、ブログで読者の感想を読みながら、プロットを変更するということも、これから増えてくるかもしれない。
好きな小説家が連載を始めたならば、毎回熱心に感想をブログに書き、ついでにプロットの提案までしておくと、気がつけば、自分の思ったとおりに話が進んでいたようなことも起こりうる話だ。(46頁より)

……ブログをちゃんと書こうと思いました。また、平野さんは綿矢りささんや金原ひとみさんの「一筆書きのような」文章のうまさを評した後、こう述べます。

小学生の頃から毎日ブログを書き、膨大な本を読み、創作を行っているような世代は、二十歳にもなる頃には相当な文章の達者になっているだろう。(98頁より)

……もっとブログを書こう。もう二十歳とかずいぶん前に越えちゃったけど。
小説家になりたい方、小説が好きな方、そしてブロガーなどネット上で積極的に活動している方。そんなあなたにぴったりの本です。
さらに、オススメしたいのが平野ファンの方。

もちろん、平野ファンにもオススメです

第1部で紹介される視点のひとつに「発達」という考え方があります。この作家の人生でこの本はどういう位置づけなんだろう。そういう疑問を持つ読み方です。作家にスポットを当て、文学的な視点を持つ読み方ですね。で、この読み方で平野啓一郎さんの小説を読むとどうなるんでしょう。
私には分からないんです。平野さんのバックボーンって何なんだ、っていつも疑問に思います。それは平野さんが若くして老成しすぎなためか、あるいは実験的な作品のためか。平野さんを知りたいのに、平野さんが見えてこない。小説を読んでいてそう思います。
そんな平野ファンに本書はたまらない逸品なんです。9つの小説を読んでいくなかで、ところどころベクトルが平野さん自身に向いている箇所があるんですね。それは平野さんが現在悩んでいること、考えていることだと思います。いずれ小説になるかもしれない、そう考えると楽しくなります。平野ファンには自信をもってオススメします! (ファンならもう読んでいるかしら。)

私が本書を読むきっかけとなったのは平野さんご自身の紹介。
『小説の読み方~感想が語れる着眼点』刊行! - 平野啓一郎公式ブログ
大好きな作家さんから直接「この本を読んでみてね!」というメッセージが届くのって、幸せですよね。ブログ時代に生きててよかったと、心底思います。
本書を読んだ方はブログにレビューを投稿してみてくださいね。その文章はきっと、平野さんにも届くはずです。

文: 北村さらら

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