• Twitter
  • Facebook
  • Google+
  • RSS

“たまには演歌もいいでしょ?”――石川さゆり登場に観客総立ち、くるり主催『京都音楽博覧会』レポート


会場となった梅小路公園は京都駅近くにある都市公園。すぐ隣には「JR梅小路蒸気機関車館」があり、時折汽笛や汽車の走る音が聞こえてきます。またステージのバックには京都タワーも見えるなど、「京都」を感じさせます。
イベントは、まず主催であるくるりの岸田さんと佐藤さんによるオープニングトークでスタート。浴衣で登場した2人は、「梅小路公園にようこそー」と挨拶。毎年雨に悩まされてきたこの「音博」ですが、この日もあいにくの曇り空。「もはや音博名物ですね。」との言葉には笑いが起こります。そして「大団円で終われるようにしたい。」「一緒に楽しみましょう。」というメッセージとともに、今年の音博がスタートしました。

ふちがみとふなと

トップバッターの「ふちがみとふなと」は、第1回の音博にも出演した、京都在住の渕上純子さんと船戸博史さんによるユニット。ボーカルとウッドベース(ときどき、ピアニカやカズー)というシンプルかつユニークな構成。ささやくような歌声、覚えやすいメロディーに、シンプルな言葉ながらも不思議な歌詞と、全てが独特な空気感。一度聞いたら耳から離れません。
普段はあまり客席に一緒に歌ってとは言わないそうですが、「今日は特別だから、もし歌いたくなったら、歌って下さい。」と披露された「いとしのロール」では、サビの「ロール♪」の部分で客席から大合唱が巻き起こり、メンバーも本当に嬉しそう。終了後に登場したくるりのメンバーからも「ナイスロール!」という声が。

Ben Kweller

続いて「コンニチハー、キョートー!」とご機嫌に登場したのはアメリカからのゲスト、ベン・クウェラーさん。先日結成20周年を迎えたバンド、the pillowsとのコラボレーションなど、最近は邦楽ファンの間でも注目を集めている彼。とにかく楽しそうにギターをかき鳴らし、曇り空を吹き飛ばすような、心地良いメロディーと伸びやかな歌声を響かせます。客席からは自然に手拍子が起こり、言葉は通じなくても音楽ではしっかり繋がっていることを感じるステージでした。
MCでは「今日のイベントに参加できて嬉しい」「京都は世界の中でもお気に入りの街」と嬉しそうに話し、音楽はもちろん、そのフレンドリーな人柄がとても魅力的でした。

矢野顕子

鮮やかなビタミンカラーのノースリーブで登場したのは矢野顕子さん。くるりとは何度もコラボレーションを行うなど親交が深い矢野さんですが、この音博はずっとオファーを受けていたもののなかなかスケジュールが合わず、今回念願叶ってようやく初参加できたとのこと。終始笑顔で歌う矢野さん、この日は「ごはんができたよ」などの名曲をはじめ、10月発売のくるりのトリビュートアルバム「くるり鶏びゅ~と」でカバーしている「Baby I love you」も披露。矢野さんが「こんなめでたい日なのに寂しい曲を…」と語っていた弾き語りによる静かなアレンジは、矢野さんのオリジナル曲かと思うほど、彼女らしい1曲になっていました。

BO GUMBO3 feat.ラキタ

岸田さんが「京都にはBO GUMBOSに憧れているバンドがいっぱいいた」と紹介したのはBO GUMBO3。この日はfeat.ラキタということで、BO GUMBOSのメンバーに加え、亡くなったどんとさんの息子であるラキタさんがギターで参加していました。くるりのメンバーもお気に入りだという「夢の中」、また「ゆ~らゆら祭りの国へ」ではラキタさんがボーカルを取る場面も。ラストの「孤独な詩人」では、以前「どんと祭り」というイベントで今年の5月に亡くなった忌野清志郎さんがこの曲をカバーしてくれたと紹介。この曲の「星になったのさ」という歌詞がより印象深く響きました。

奥田民生


AC/DCのTシャツで、オレンジのギターを抱えて登場した奥田民生さん。客席からの歓声の大きさはさすがです。1曲目「さすらい」では、歌い始めようとした絶妙なタイミングで汽笛が鳴り響き、思わずしかめっ面。客席からは笑いが巻き起こるというハプニングも。この日はソロでの出演となった民生さんでしたが、ギター1本と歌声だけで聞かせるには充分。その「声」の迫力には圧倒されるばかりです。続いて矢野顕子さんの「ラーメンたべたい」のカバー、そして岸田さんを交えてのセッションというイベントならではの嬉しいサプライズも。お互いに広島カープファンでもある2人は、「頑張れカープという曲です」という紹介で「息子」をセッション。
そして「次は勝て勝てカープという曲です」と紹介されたのは、民生さんがくるりのトリビュートアルバムでカバーしている「ばらの花」。MCでは冗談を言いつつも、ファンにはたまらないこの選曲。客席からは歓声が起こり、皆じっくりと聞き入っていました。「この形態(ソロ)ならいつでも出られます。」と話す民生さん。退場のBGMにも手拍子が起こっていました。

石川さゆり

なんといってもこの日いちばんの注目はこの人、石川さゆりさんです。セッティング中からどことなくそわそわした雰囲気が漂う客席。あまりロックフェスでは耳にしない三味線の音も聞こえます。そして1曲目「津軽海峡冬景色」のイントロが流れた途端、客席は総立ちに。大歓声の中登場した石川さん、歌い出すとさらに歓声が大きくなり、曲中何度も「おおおおお!!!」という声と拍手が。
少し照れくさそうに「来ちゃいました。」と話す石川さん、ロックフェスに演歌という組み合わせに「場違いじゃないかな」と心配したそうですが、客席からの暖かい声援に笑顔で応えます。SLファンでもあるとのことで、この会場に来られること自体も楽しみだったそうです。デビューから37年という彼女、歌唱力はもちろん、MC含めそのステージングは「さすが」の一言。特に圧巻だったのは韓国の舟歌と日本のソーラン節を組み合わせて作ったという「舟歌組曲」。ステージ狭しと動き回り、「ソーラン!ソーラン!」という掛け合いの部分では客席を煽る煽る!観客も大きく手を振り上げてそれに応え、そのあまりにも見事なコール&レスポンスはまさに「ロックフェス」の風景。
石川さんといえば、やはり「天城越え」。MCではイチロー選手がこの曲を試合中に流しているということを紹介、「実はさっきイチロー選手から電話がかかってきて、今日はくるり主催のロックフェスに出るんだって話したら『マジすか!?』と驚かれました。」というエピソードには、客席から驚きの声が。そしてイチロー選手の9年連続200本記念も兼ねて、この日はイチローバージョンの「天城越え」を披露。途中、イチロー選手が打席で見せるポーズを真似る場面も。「たまには演歌もいいでしょ?」という彼女の一言に誰もがうなずいたであろうこの日のステージ。いちばん「ロック」だったのは、間違いなく彼女だったように思います。

くるり

だんだんとあたりが薄暗くなってきた頃、トリで登場したのはもちろんくるり。「雨降らへんかったね。」と岸田さん。この日はどんよりとした天気が続いたものの、奇跡的にも雨が降ることはありませんでした。ライブは「太陽のブルース」からスタート。「自分たちで立ち上げたイベントですが、みんなが来てくれるからあります。」と感謝の気持ちを延べる岸田さん。
「今日は色々なサプライズを用意していますが、ここで目玉を。」という紹介で登場したのは、先ほど見事なステージを見せた石川さゆりさん。「しげ、まさ、さゆりです。」と自己紹介し、くるりがこの日のために書き下ろしたという「夜汽車はいつも夢を乗せて」をセッション。「津軽海峡冬景色が上野発の列車なら、この曲は青森発で」と岸田さんが紹介したこの曲は、石川さんらしいしっとりと落ち着いた雰囲気と、「シュッシュー、ポッポー」というにぎやかな掛け合いのコントラストが印象的な1曲でした。
続いてくるりは「三日月」「魂のゆくえ」など最新アルバムの曲を中心に披露。この頃にはあたりはすっかり暗くなり、夜空にぼんやりと光を放つ京都タワーをバックに見るくるりのステージは、このイベントでしか見られない特別なものだなとあらためて感じました。出演者、スタッフ、観客それぞれへの拍手を求める岸田さん。アンコールではなつかしい2ndシングルの「虹」、そしてラストはおなじみの「宿はなし」を披露、最後は全出演者がステージに登場し、岸田さんがライブ前に言っていたとおり「大団円」での終了となりました。


7時間に及ぶステージは、終わってみればあっという間、終始まったりと和やかな雰囲気で、まさに「くるりのメンバーの人柄そのまんま」なイベント。客席からはどのアーティストに対しても暖かい視線が向けられていたのも印象的でした。「3年続いてきて、来年もできるかはわかりませんが、せっかくこれだけの人が来てくれたので、またやりたい。」と語っていた岸田さん。来年の開催を期待せずにはいられない、大成功のイベントでした。


石川さゆり ベスト・コレクション

石川さゆり ベスト・コレクション

魂のゆくえ

魂のゆくえ

文: 飯塚朋子

関連エントリー