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宮崎駿と養老孟司が特別対談 “体験することで学んで欲しい”――京都国際マンガミュージアム


二人は以前から何度か対談を行うなど親交を深め、その様子は2002年に出版された「虫眼とアニ眼」という対談集にも収録、宮崎作品を通じ、自然について、子供たちについて、人間について語り合う内容になっています。

今回の京都での対談は、対談集「虫眼とアニ眼」のその後を中心に、仲の良い二人が日頃聞けない本音を語り合うというもの。BGMに秋らしい虫の音が響く会場は満席、高まる期待が伝わってきました。

大人が教えなくても、子供たちはちゃんと大切なものを持って生まれてきている

まずは対談集でも中心になっている子供たちの話題に。養老さんはよく子供たちと一緒に虫取りやカニ取りに行くそうで、つい最近もせっかくカニ取りに行ったのに台風に遭い、あきらめてイルカショーを見て帰って来た話を披露しました。そして宮崎さんからは、ジブリのスタッフのために作ったという社内保育室の話が。保育室には、天井に続くはしごを作ったり、肝だめしができるような暗がりを作ったり、縁側を高くしたり、池を作ったりしたそう。高いところによじ登ってみるなど、子供たちが自ら「体験」することで、目の前にあるものを自分で考えて対処できる力をしっかり身に付けてほしい、そういう力は人間の根本としてあるはず、という宮崎さんの気持ちが込められているそうです。

しかし子供たちが自分の思い通りの動きをすることもあれば、意外に高い縁側から落ちなかったりと、予想外の動きをするのが面白いと語る宮崎さん。そんな環境ではしゃぐ子供たちを見て、「いちばん喜んでいるのは大人たち。」と話していました。また、よく「うちの子はトトロの映画を100回見ました!」と言ってくる人がいるそうですが、「見るのは年に1回くらいにして、あとの99回は外に出て遊んでほしい。」といつも思うそうです。

二人が夢中になっているものは?


マンガ・アニメ文化に長年携わってきた宮崎さんですが、最近のあらゆる文化がマンガやアニメの影響を受けている状況は、あまり嬉しくないそう。養老さんも「マンガやアニメはサブカルチャーでとどまっているからこそいいのであって、そうでなくなってしまったら、表現の自由度も落ちてしまう。」と語っていました。

宮崎さん自身、最近はテレビやマンガをあまり見ないそうですが、「僕は模型雑誌での連載を持っていて、読者の大半がガンダムやマクロスのファンの雑誌で、そのうち僕が書いてるような飛行機の模型に興味がある人なんて、30人くらいしかいないんじゃないかと思いながら、本当に道楽で、楽しんでやっています。」「道楽もホビーって言うとかっこよく聞こえますね。」と話していました。

そして、「僕よりも養老さんのほうがもっと変わったものに夢中になっていますよ。」ということで、養老さんが夢中になっているという「ゾウムシ」の話に。元々虫が大好きで、色々な虫を集めたり、虫好きな仲間と集まることもあるそうですが、「『虫を採集するには人の家がいちばんいい』って、虫を持っていかれる。」「そうすると、ゾウムシばっかりが残る。」「とにかくゾウムシの数が多くて、神様はよっぽどゾウムシが好きなんだと思った。」そんなふうに思ったのがきっかけで、ゾウムシの研究を始めたという養老さん。「興味がある人なんて、きっと世界に3、4人ですよ。」と話しつつ、二人とも、自分が夢中になっているものについて語る様子は本当に楽しそうです。

スタジオジブリにも変化が

対談では、もちろんスタジオジブリの話も。「今、仕事は休憩中?」という養老さんの質問に、「ホビーのせいで忙しいんですが…」と答える宮崎さんですが、実は最近スタジオジブリに変化があった様子。今年の4月、愛知県のトヨタ自動車本社内に新スタジオを設立、22人の新人と、東京から7人のスタッフを派遣し、ジブリ美術館で上映するための作品作りに取りかかっているそうです。以前ジブリの鈴木プロデューサーがトヨタの開発現場を見学したことや、「長年の澱が溜まってネットリしてきたので…空気を変えるために東京を離れてみようか」という宮崎さんの思いが新スタジオ設立のきっかけになったとのこと。新人スタッフはほとんどが女性だそうで、男性スタッフにも来てほしいと願っているそうです。「結局東京は7人出ていってさらにネットリしているんですが。」と笑いながらも、新人に作品を作らせるのが楽しみだと語っていました。

客席からの質問も

対談の最後には客席からの質問を受け付ける時間も。「ジブリ作品には草木をはじめ自然を描写することが非常に多いですが、女性スタッフが増えることで支障になることは?」との質問には、「全く問題はありません。むしろ自然に興味を持ったり、うじゃうじゃしたわけの分からないものが好きなのは女性が多いですよ。」と宮崎さん。「ナウシカの続編を作ろうと思ったことは?」という質問には、「あの時の追いつめられた気分とスタッフだからこそ出来た作品なので、作るならあの時。今作れるものではないです。」と話しました。

また「ジブリ美術館にあるネコバスに乗りたい!」という声に対し、「あれは自由に乗れるようにしたかったんですが、めちゃくちゃになってしまうので、子供たちだけ順番に、ということにしました。でも子供たちの汗とよだれで大変なことになっているので、やめたほうがいいですよ。」との答えに笑いが起こっていました。

そして「今20代で今後の将来を決められる時期だとしたら?」という質問には、「まず食べていけるかどうかを考えます。食べていけるかどうかを考えないほどひねくれてはいないので。ただ、仕事をするうちにひねくれていくんですけどね。」と養老さん。宮崎さんは、「アニメはやっていないと思います。間違って農業をやって挫折しているかもしれません。」と話していました。質問をするお客さんに宮崎さん自らマイクを渡す場面もあり、非常に和やかなムードの質問タイムでした。


冒頭の子供たちの話のほか、宮崎さんはアニメ制作の現場についての話でも「東京の人なら赤土というように、皆土を描く時は自分の生まれた土地の土を描く。」「夕日を描く時、都会の人は自分が見た風景がないので描けない。」「CGが得意でPhotoshopが使えますとか、重要なのはそういうことじゃない。それは鉛筆を握れるかどうか、というのと同じこと。」と話すなど、終始「自ら体験することで得るものの大切さ」を語っていた二人。およそ1時間半の対談はリラックスしたムードの中、めったに聞けない貴重なお話に、皆じっくりと聞き入っていました。

「虫眼とアニ眼」宮崎駿イラスト展が開催中



また現在、京都国際マンガミュージアムでは今回の特別対談を記念して、10月4日(日)までの期間、「虫眼とアニ眼」宮崎駿イラスト展を開催しています。展覧会では、宮崎さんのイラストの複製画13点を見ることができます。宮崎さんが描く、子供たちが夢中で遊び、大人たちも皆のびやかに暮らせる街の風景を、ぜひ見に行ってはいかがでしょうか。

  • 特別対談記念 「虫眼とアニ眼」宮崎駿イラスト展
  • 期間:2009年9月12日(土)~10月4日(日)
    • ※休館日: 9/16(水)・24(木)
  • 会場:京都国際マンガミュージアム 2階 ギャラリー4
  • 料金:無料
    • ※ミュージアムへの入場料は別途必要です
  • 内容:宮崎駿氏によるイラスト13点の複製画の展示
  • 主催:京都国際マンガミュージアム
  • 詳細は京都国際マンガミュージアムHPにて


虫眼とアニ眼

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宮崎駿の雑想ノート

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文: 飯塚朋子

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