[PR]ライフネット生命 出口社長が訊く!社会派ブロガー「ちきりん」さん10000字対談

ライフネット生命保険

ライフネット生命は、生活者にとって便利でわかりやすく、かつ高品質な生命保険サービスを提供するという理念のもと、インターネットを主要チャネルとして、新しい生命保険を販売しています。
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8月に公開した、ライフネット生命の出口社長×はてなユーザー対談の第一弾では、子どもが生まれてはじめて生命保険のことが気になりだした、はてなスタッフの近藤令子(id:reikon)さんと「保険って本当に必要なの?」というお話をしていただきました。若い人に保険が必要なわけ、ライフネット生命はその人たちが安心して子どもを育てられるような保険商品を作るために創業されたことなどを知ることができました。

(前回の対談記事)
[PR]「保険はチャレンジする若者のためにある!」 ライフネット生命出口社長に訊く(第一回) - はてなブックマークニュース

そして今回の対談のお相手は、グローバルな視点から社会や政治についてユニークな記事を書いていらっしゃるちきりん(id:Chikirin)さん。

日本と海外の保険制度の違いや、会社としての今後のあり方などを聞いてみたいとのことで、どんなお話になるのでしょうか……?総文字数10000字以上にわたる対談を、じっくりとご覧ください。

<目次>

  • ちきりんさんってどんな人なの?
  • ライフネット生命の「これから」を知りたい
  • ベンチャーならではの特色は!?
  • グローバルにチャンスを求めない会社はダメになる
  • 旧来のビジネスモデルがなくなっていく理由
  • 新しいリーダーを生むしくみを作り続けるために

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出口社長とちきりんさん。似顔絵はちきりんさんの自筆


ちきりんさんってどんな人なの?

ライフネット生命の会議室でちきりんさんと挨拶を交わすやいなや、そのまますぐに熱く語りだす出口社長。ちきりんさんが以前書いていた新疆ウイグル自治区の記事についてなど旅行や歴史の話で盛り上がります。

出口社長:「……いきなりお話ししだしてすみません。では、席につきましょうか(笑)。僕は本当に今回お会いするのを楽しみにしていたんです!ちきりんさんが書かれている記事の内容についてはほとんど同感です。それにしても匿名でなぜこんなに有名になれたんですか?」


ちきりん:「いえ、有名というほどでもないんですが。確かにここまで読んでいただけるようになったのはありがたいことです。『自由が大切で、かつ市場主義』という、私の考え方と一緒の方には面白がっていただいているんでしょうか。記事を書き始めたのは2005年なんですが、最初3年くらいは誰も読んでいないのに書いていました(笑)。去年あたり2、3の記事にはてなブックマークがつくようになりまして、そこから読んでもらえるようになった感じがします。でもはてなで書いていなかったらここまで読まれなかった気がしています」


出口社長:「思想が同じ人でなくとも、面白がっていると思いますよ。ちきりんさんの記事は論理がはっきりしていて読みやすいです。それに切り口がとても新鮮ですし、会社を擬人化して物語風に進んでいく記事なんかも実にセンスがあるなぁと。僕はミーハーなのでどういうバックグラウンドをもっていらっしゃるのかとても興味がありますが……」


ちきりん:「日本の組織も外資系の組織もまあ両方分かるという環境ではありますね。あとは単に新聞を読んだり社会の事柄が好きなんですが、友達と飲みに行ったときにわーっと話していることをそのまま書いている感じですよ」


出口社長:「最近では今回の衆議院選挙で落選した議員の年齢を書いた記事(小沢一郎氏の“本当の功績")が面白かったです。生のデータを並べるとこんなにインパクトがあるのかなあと」


ちきりん:「今までだったら新聞を読んでメモして整理してというところですが、今はネットで探してコピーするだけでリストができます。情報自体も新聞記者じゃないと手に入れにくかったものがネットで探せばすぐ見つかりますし。私は下書きをしてから書くタイプではなく、画面に情報を集めて遊んでいるとなんか言いたいことが浮かんでくるというタイプなんです。あの記事はお酒を飲みながらその情報を並べて見ていたら、それだけでものすごくインパクトがあるなぁーと自分で思ったんですよ。そうするとこのまま情報を出すのが余計なことを書くよりパワーがあると感じたのでそのまま貼ってみたんです」


出口社長:「僕は勝手にちきりんさんはどこかの新聞の論説委員をされているんじゃないかと思っていました」


ちきりん:「いや~それは言いすぎですよ(笑)」

ライフネット生命の「これから」を知りたい

ちきりん:「ライフネット生命については個人的にも興味がありまして、色々記事などを拝見させていただきました。やはりまず、将来的にどんな会社を創りたいのか、そのためになにを実行されているのかということをお伺いしたいと思います。そもそも日本の生命保険の市場って、保有契約高が1500兆円くらいですよね。でも確実に縮小していくじゃないですか。15年後20年後には具体的に、どれくらいまで縮小するとお考えですか?」


出口社長:「年々減少してきているんですが、個人的な意見でいえば、女性の社会進出が増えるに従い減少傾向は加速するでしょうね。例えばフィンランドでは死亡保険がほとんど売れていません。男性も女性も全員働いていて、しかも教育費も無料ですからね。死亡保障のニーズが少ないんです。人口が減れば市場も小さくなりますが、実はそれよりも、こういった国の社会政策による影響のほうが大きいのではないでしょうか」


ちきりん:「でも、普通起業するときには、マーケット自体の将来性も考えるじゃないですか。出口さんもおっしゃるとおり保険業界はこれから縮小していくのは明白なわけですよね」


出口社長:「それを言っちゃうと、生命保険業界だけではなくて、このままでは日本全体の人口が減るわけですから、日本で起業する人は全てバカだという結論になりますね(笑)」


ちきりん:「ではそれなりに巨大なマーケットなのでそこで勝負できれば十分とお考えなのですか?」


出口社長:「日本は保険料ベースでは毎年40兆円の売上がある市場ですが、保険会社はわずか47社しかありません。平均で割っても一兆円近くあります。ドイツやフランスでは日本より市場が小さいのに、100社以上が存在しているわけですから」


ちきりん:「小さい会社にもチャンスのある市場だと考えられたのですね」


出口社長:「しかもみんな同質の競争をやっていますし。僕は異質の競争こそがその業界を発展させる原動力だと考えていましたので」


ちきりん:「そこです。一定の条件でアクチュアリーの方が保険料を計算するので、一定のところまでは商品の条件が揃ってしまうじゃないですか。そういう意味では100社くらいが出ている国と50社くらいの国では規制のあり方が違うんですか?」


出口社長:「違わないと思います。ただ日本は自由化がすごく遅れたんです。1990年頃までは、大蔵省が金融行政を一元化していて商品内容やプライスを全部決めるから、銀行も信託も証券も保険もそれをひたすら売ってくれという政策でした。

1940年体制の世界です。その結果世界第二位の経済大国になった。じゃあここまで成熟したのなら、普通の商品と同様に自由化しようということになったんです。外為法の自由化から始まり、金融ビッグバンがあり、保険業法の改正が行われたのです。 95年に保険業法が全面改正されて自由化路線が鮮明になりましたが、そのあとに次々と破たんや保険金不払いが明るみになったせいで自由化はあまり進みませんでした。やっと2006年の4月になって保険料の手数料部分が自由化されたんです」


ちきりん:「2006年まで自由じゃなかったんですか! それは法令で禁じられてたんですよね?」


出口社長:「手数料の自由化はつい最近のことです」


ちきりん:「反対にいうと自由化されたからこそライフネット生命の起業が可能になったんですね」


出口社長:「おっしゃるとおりです。それをみてSBIの北尾さんも、これはビジネスになるぞと考えてSBIアクサ生命ができたわけです」


ちきりん:「95年の保険業法改正のポイントって言うのは、ひとつは業務を自由化することと、あとは何だったんですか?」


出口社長:「健全性の確保、公正な事業運営の確保ですね」


ちきりん:「あー保険業法の改正があったから株式会社化とかその辺の話が盛り上がったんですね」


出口社長:「その通りです。この中で『健全性の確保』が破たんでつまずき、『公正な事業運営の確保』が相次いだ不払い問題でつまずき……。このふたつに時間が掛かってしまったので自由化がすぐにはできなかったのではないかというのが僕の仮説なんです」


ちきりん:「なるほど。では10年後、15年後など中期的な会社の経営目標としては何を掲げてらっしゃるんですか?」


出口社長:「ライフネットの場合、経営データを全部公開してるんです。あるとき勉強会で『これだけ情報公開していれば誰でも損益分岐点を計算できますね』と言われました(笑)。僕は開業してからずっと、5年以内に15万件の保有契約を獲得することが経営目標だといっています。ひとまずこの目標件数を一日でも一ヶ月でも一年でも早く達成したいですね」


ちきりん:「その15万件を達成すれば黒字になるということですね」


出口社長:「そうです。今の伸び率で計算すると、まあどういう平均値を取るかにもよりますが、十分早期に達成できそうな感じがするので少し安心していますが、ただ経営としては一日も早く15万件を達成したいと思っています」

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「すごく勉強になります!」とお話に興味津々のちきりんさん

ベンチャーならではの特色は!?

ちきりん:「保険業法が改正された機会に、ベンチャーとしてライフネット生命を立ち上げ、生命保険料を半額にされた。経営としての当面の目標は黒字である。と、ここまではお話を伺いましてよく分かりました。せっかくなのでもっと色々な特色ある会社にしていけば面白いなと思うんですが。例えば、運用の部分で独自のカラーを出していくという考えはないんでしょうか?」


出口社長:「すごく簡単な話なんですが、初めて決算をした会社というのは、いわば初任給を貰った新入社員と同じですよね。初任給を貰ったサラリーマンが給料でFX(リスクの大きい外国為替証拠金取引)をやるというのはあまり感心できません。なので、当面は国債と格付けの高い公社債しかやらないということにしています」


ちきりん:「生命保険という性質上、20年後この会社は大丈夫かなとか、加入を考えている人は最初に思うでしょうね」


出口社長:「社員がみんなしっかり仕事をやってくれていますし、もちろんビジネスモデルも骨太で、経営内容については自信を持っているんですが、良い経営をやっていると口で言ってもなかなか信じてもらえません。なので『しくみ』できちんと説明することが我々の義務だと思っています。安全運用に徹しているということがまずひとつ。またたとえライフネット生命が明日なくなっても、加入者の契約は生命保険契約者保護機構というセーフティネットがあります。更に取り扱い商品も掛け捨てのものばかりなので、ほぼ100%保護されると考えています」


ちきりん:「主力商品が死亡保険で、あとは医療保険ですよね。次の商品展開についてはどうお考えなんでしょうか。 若い人が、子どもも小さいのに収入がなくなって……そこのところの保障は絶対必要だと思うんですが、もっと細かいところを言うと今若い人が働けなくなる、働き方を制限しなければならない理由として心配してるのは、うつ病だったりメンタルヘルス的な部分が増えてきていると思うんです。本当に思いつきの例えなんですけど、若い人たちに向けてメンタルヘルス保険ってニーズがあるんじゃないかなって。医療保険の中でもこういうアイディアがうまく商品になると、ベンチャーとして面白いかなと考えたりするんですが」


出口社長:「そうですね。シンプルで分かりやすい商品作りという理念は変わらないのですが、年にひとつは新しい商品を作ろうとしています。できれば、どこにもないような商品を」


ちきりん:「以前、家族の入院保険を請求したのですが、お金をもらう手間ひまがすごく大変だなと初めて知ったんです。まず病院の先生のサインが必要で……診断書をもらうのに時間が掛かって……それを送って審査が通ってやっと支払い。そのときお金がない人はそれまでどうすればいいんだろう?って思ったんです」


出口社長:「医療保険の将来はキャッシュレスになるべきですね。保険会社から病院に直接お金を支払う。お客さまは何も払わなくていいという姿がひとつの理想です」


ちきりん:「病院からの請求にすべきですよね。そういう意味で国民統一ナンバーが出来て、その番号に保険の情報が入っていて、病院は参照できるというシステムにすればより簡潔で便利ですよね。というのも家族とはいえ一緒に住んでいないので、本人は病後で非常に辛い時期に、まず保険に入っているかどうかを確認しなければならなくて。こんな手間がかかるのかというのを体験すると、個人的に『自分が入るかどうか』というところに影響してしまうわけですが……。

御社のように画期的なことにチャレンジする会社がそこのところを思い切って変えてくれたらなあと思っています。そしたらライフネット生命に入ろうという大きな動機付けになりますよね! せっかく新しい会社なのだから、チャネルをインターネットにして値段が安いということだけでない、もっと画期的なことにチャレンジしていただけたらと期待しています」


出口社長:「少し時間はかかるかもしれませんが、頑張りますので楽しみにしていてください」


素人考え的には「今までなんでライフネット生命のような保険料の安い会社が生まれなかったんだろう」と素朴な疑問を持っていましたが、日本経済の自由化の波に伴った業法改正がきっかけとなったということが分かりました。全世界的に見たら自由化は遅かったのかもしれないけれど、今その恩恵にあずかれる世代で本当に良かった……。

また若い人の気持ちや実情を汲んでくれ、面白い新しい保険商品が生まれたら、更に、若い人がライフネット生命を応援するきっかけとなりそうです。

グローバルにチャンスを求めない会社はダメになる

ちきりん:「話は少し戻るんですが、国内の保険市場が縮小し続けるだろうという予測の中で、ライフネット生命はアジア展開など海外進出は考えてはいらっしゃらないのですか?」


出口社長:「これからは生命保険会社に限らずグローバルにチャンスを求めていかない会社はダメになると思います。経済がグローバル化していく中で鎖国をやっていれば落ち込むのは当たり前です」


ちきりん:「大手の保険会社も中国などに積極的に進出しようというところがあったはずなんですが、その後あまり進んではいませんね」


出口社長:「それは経営者の哲学や世界観の問題でしょうね。いいとか悪いとかではなく、企業とか国とかの運命だと思います。どういう世界観のリーダーを持つかということは、人智を超えたところにあるような気がしますよね」


ちきりん:「でもねーあれだけの余剰利益が出ていても外に出て行こうとしないのって、……安泰だからなんですかね?」


出口社長:「……まあそれも考え方じゃないですかね……。

信長と家康はほとんど同時代人ですよね。でもあれだけ方向性に違いがあるのはなぜでしょう? 2人の個性とか世界観の違いとしか言いようが無いですよね。歴史を見ても、リーダーが違うだけで10年後、片方はがたがたになり、片方は立派になるという例はいくらでもあります。まだ契約は一万件ちょっとしかないのになにをあほなことをと言われるかもしれませんが、ライフネット生命は世界に出て行こうと思っています」


ちきりん:「消費財の会社だったら中国なりインドなり人口の多いところにということになると思うんですけど、中国って非常にいびつな人口構成じゃないですか。一人っ子政策を採っていることもあって、人口構成や高齢化の推移が特殊で、生命保険に重要な人口の予測が難しいんじゃないかと。でもアジアで一番重要なマーケットは保険業界も中国なんですか?」


出口社長:「そうですね、やっぱり中国じゃないですかね。中産階級の数が桁違いです。一般的に海外進出では中国の本土からやっていくか、まずは小さい国からやっていくかの選択があります。でもアジアって、経済を動かしているのは華僑が多いじゃないですか。そうであればメインランドで始めるほうが話が早いのではないかと考えますが。ただ世界進出の時期は常識的に考えても、単年度黒字が見えるようになって、上場して、それから考えるというのが普通でしょうね」


ちきりん:「そこが実は私は一番楽しみで。大企業よりベンチャーのほうが下手をすると外に出てグローバルなプレーヤーになるスピードが速いんじゃないかと。投資家としてはベンチャーを応援したほうがいいんじゃないかと思っているんですが」


出口社長:「日本の大企業がある国、例えばベトナムにしましょうか、に行くと仮定しまして、最初に何をすると思います?」


ちきりん:「まず市場調査してレポートを書くとかですかね?」


出口社長:「その通りです。次に誰を駐在させるかを決めるんですよ。アクサという会社は最初は小さかったんですが急激に成長して、今や世界一の保険会社です。その創業者に会いに行ったことがあります。アクサの本部はパリにあるんですが、200人くらいしかスタッフがいないんですよ。アクサが国際展開を活発にやっている頃だったので『どうやって海外進出を行っているんですか?』と聞きました。

そのときの話を単純化して言うと、まずベトナムでオフィスを開くと宣言する。その次にベトナムのアクサの社長を公募する。希望者は、ベトナムのマーケットの分析と将来展望をフランス語で書いて提出しろと。提示される給与は、たとえばベトナムの平均の5倍とかありますから、ベトナムの保険マーケットに自信がある人は全員応募して来るんですよ。そしてレポートの出来がいい人、たとえば上位5名を身元調査して、パリに呼んで面接し、その中から一人を選んで、予算をつけてその人物にやらせるというんです。

マーケット調査などしなくとも、自然に最高のレポートと人材が集まるようなしくみになっているんです」


ちきりん:「そこが大きく違いますよね。日本の会社ってまず外の人に責任者をやらせない。人材の内製化っていうか、中の人から選んじゃう。たとえその人がよく現地の事情を知らなくても。これじゃスピードがついていけなくなるんじゃないかなあ……。だって現地の人のほうがはるかに良くその国を知っているわけでしょ。結局そういう開かれた合理的な考え方ができるかどうかですよね。保険会社の海外進出についてなんですが、統計がしっかりしていれば純保険料は計算でおのずと決まってくるとして……ライフネット生命の売りになるのはなんですか?」


出口社長:「ネット生保の経験でしょうね。今までものを売るにはまず全国に支店を出してという発想から始まっていたと思うんですが、支店を出すという大前提には道路があって、鉄道があって……。でも中国やインドとかアジアのことを考えるとインフラが心配ですよね」


ちきりん:「まあ非効率ですよね。国土も広いし、人口もバラけているし」


出口社長:「インターネットを使える、PCを持っているというのは、中産階級なので、支店など持たなくともターゲッティングがおのずとできてくると思うんです」


ちきりん:「なるほど」

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出口社長の著書を始め、たくさんのデータを見ながら対談が進んでいきます

旧来のビジネスモデルがなくなっていく理由

ちきりん:「御社はネットを使ってコストを大幅に下げて開業したばっかりの新しい会社だからいいんですけど、コスト構造が高い大手からしてみればライフネットのような会社が現れてシェアをとると、消費者も賢くなってしまって、彼らのビジネスモデルを変化させることになるんでしょうか」


出口社長:「僕が考えるに旧来のビジネスモデルはもうすでに終わっているかもしれません」


ちきりん:「銀行も一緒ですね。銀行も実際に倒産し始めたのはここ10年くらいですが、もうずっと前からあのビジネスモデルは終わっていたかもと感じます」


出口社長:「保険業法が改正になった時点で昔のビジネスモデルというのは終わっていると僕は思っているんですよ。だから、メディアの方から日本の保険業界でライフネットは反逆児とか異端児とか言われていますが、僕は正当な嫡出子だと思っています」


ちきりん:「当たり前のことをやっているだけということですね」


出口社長:「今生命保険業界がやっていることは、全国に2000以上も作ってしまった販売店を維持するためのシステムです。いわばセールス組織を維持するための商品開発をずーっとやっているわけですよ」


ちきりん:「やはりそれが大きいんですか。本社じゃなくてセールスのチャネルを維持することがすごく重要視されていると」


出口社長:「そうですね。でもそれは気持ちとしてはよく分かるんです。たとえば5万人のセールスがいたとしましょう。一人当たり2件でも契約を取れれば何とかやっていけるので、お尻さえたたけば毎月10万件だって取れるんですよ。だからそのセールスの人数が減っていけば、売り上げも減って行くかもしれないという恐怖心があって新しいことに踏み切れないという気持ちはよく分かります」


ちきりん:「そういう意味ではゆっくり沈下することを受け入れているんでしょうか」


出口社長:「セールスの拡大をしたいと思いながらできない現状維持がやっとというのが実情だと思います」


ちきりん:「当然ながらネットで新規事業を始められるかといえば自分のところの既存商品と共食いするようなことはできないと。最近は昔ではありえなかったような合併もありましたけど、その部分ではみな将来に対しての懸念を認識しているんでしょうか」


出口社長:「逆になぜ簡単に合併できるかといえば、まったく同じことしかやっていないからですよ。ある意味1940年体制が残ったままだからともいえるんです。おんなじことをしているから規模を大きくして経営コストを下げるために合併という発想が出てくるのです。アメリカはバランスシートが痛んでる。ヨーロッパはアイスランド現象で金融機関が痛んでる。日本は家計も金融機関も企業もそこまで痛んでいないのになぜ経済が一番落ち込むのか。それは日本社会が同質性を求めるからだと思うんです。100年に一度の経済危機だと言われて、企業のトップがみな急ブレーキを踏んでしまった」


ちきりん:「行動がみな同じだから一気にスピードが落ちてしまったんですか?」


出口社長:「『本当に100年に一度の落ち込みだったら、落ち込む過程で大もうけしてやろう』とか、逆張りする人がいればこんなにひどくなっていないと思うんです。みんながサラリーマン経営者で他人と同じことしかやらないことが日本の病根だと思います。多様性や異質の競争が何よりも大事です。これは生態系と同じことです」

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新しいリーダーを生むしくみを作り続けるために

ちきりん:「大きい組織が変われないというのはリーダーが変わらないからというお話ですよね。だとすれば、新しいリーダーを作るにはどうしたらいいんですか?」


出口社長:「新しいリーダーを生み出すには、しくみ作りが何よりも大事です。オバマ大統領のようにこれはと思う有望な新しいリーダーがきちんと浮かび上がってくるようなしくみですね。日本はいわば田舎のおじいさんが仕切っている構造になっていたと思うんです。これは結局は一票の格差がもたらしたものです。都会の若い人が選挙に行かないのは、意識が低いとか時間が無いとか言うけれどそれば違う。都会の若い人は休日はデートや仕事などで忙しくて、投票に行く機会コストが高いんですよ。なのでそのコストを下げるために、ネット投票とかケータイ投票があってもいいじゃないですか。そういうしくみを作ることが基本ですよ」


ちきりん:「では、そういうことを言い出す若手政治家がでてくれば彼らもまた可能性がありますよね?」


出口社長:「政治や世の中がよくならないのは、国民の意識が低いから、政治やリーダーがダメだからとか、そんなはずはないんです。しくみを創りだす能力が欠如しているのだと僕は思います。だから常に古いしくみをどんどん捨てて、新しいしくみを作り続けていくことがこの先の社会を変える唯一の方法だと思っています」


ちきりん:「それを比較的よく分かっているのがアメリカですよね」


出口社長:「例えばアメリカの大統領選挙というのは非常によいしくみですよね。ある新聞記者と冗談で言っていたんですが『日本の首相を40歳くらいの若さでこの世に甦らせて、アメリカの大統領選挙に出馬させたらどうなるか』と。きっと一ヶ月ももたないだろうと(笑)。みんなの見ている前で過去の行いや言説が全てレビューされるんですよ!」


ちきりん:「過去の発言から投票行動まで全部分かってしまうし、ネットで比較もされる。しかもその間人々の信望とお金をずっと獲得し続けなければいけないという、まさに全国総合リーダー選抜システムという感じですね。多分アメリカって大統領だけじゃなくて一定以上の大きさの会社のトップを選ぶときも同じようなことをやっていますよね。4人くらいの常務をきちっと一定期間競わせている。それと日本のリーダーは、きちんと理念を語れる人がいない」


出口社長:「フランスは少子化対策に成功しましたが、最初にまずフランス文化を後世に残したいか否かを決めたんです。残す、という意見でまとまったら、次に『フランス文化を残すためにはフランス語を話す人口を増やすべきである』と決めた。国全体で理念をはっきり掲げ、コンセンサスが取れているので、政策がぶれないんです」


ちきりん:「日本も今子ども手当てをひとりずつ支給することについて、所得制限を設けろという話になっていますが、民主党の人がきちんとみなに言うべきなのは、子どもは社会で育てるべきという理念ですよ。金持ちだろうが貧乏だろうが、子を育てるのに親の金をかけさせないということでしょう。 それを話さないからけちな議論になってしまう。理念を語る人が少ないですね。あとは、リーダーの最も大事な仕事は決断をすることなんですが、本人も、とりまきの周辺も分かってないですよね。これも鎖国的な発想があるからなのかな。同質な人ばかりだと、どうしよっか~と言い合っているうちになんとなく決まってしまいます。それが、それぞれ違う人がいると、誰かがリーダーシップを発揮して論点をまとめて決定していかないと話が前に進まないんですね。なので違う人がたくさんいるところにまず放り込まないとだめですね。

日本には優秀な人材が多いと思うんですけど、ライフネットで採用される方はどの辺を重視されているんですか?」


出口社長:「やはり多様性ではないでしょうか。大学を出た時点の能力は前いた会社のほうが優秀かもしれませんが、勉強するというのは異質で多様な経験をするということでしょう。その点ではライフネット生命は社員の出身業界もバラバラですし。たとえば毎晩酒を飲むといっても、よく聞いたら大企業の社員は結局全部会社の上司とか同僚とかと飲んでいるんですよ。それでは賢くなるチャンスがないですよね。たぶんだんだん馬鹿になっていくと思います(笑)」


ちきりん:「大企業では、入ってから30代まではとっても優秀だったのに、40代50代となると、『どうしちゃったんですか!?』という感じになっちゃう人、周りでもよく見かけます」


出口社長:「鎖国をしていたら、黒船が来たときに、あわてて質屋に刀や甲冑を引き取りにいく羽目になったという話と同じことですよね。開かれた環境で、異質なものを受け入れていかなければ進歩はありえません」


ちきりん:「そうですね。出口社長をはじめ、多様性の中で揉まれた優秀な人たちの集まるライフネット生命が、今後どのように成長していくかとても楽しみになりました。これまで色々初めてのことにチャレンジされていらっしゃいますが、もっと面白いことをしてくれるんじゃないか、その先を期待しながら拝見させていただきます!」

この後も、好きな歴史の時代のお話などで、盛り上がった出口社長とちきりんさん。ライフネット生命のオフィス内もご案内していただきました!

透明性が高くすっきりとしたオフィスはとても働きやすそう。

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ライフネット生命オフィス。ガラスの向こうはコールセンター

今回のお話では、ちきりんさんが次々とつっこんで質問をしていただいたおかげで、ライフネットの起業が実現した裏には大きな変革があったことが分かりました。出口社長のお話の中では「新しい会社の経営の健全性は、口でだけでなくしくみで説明するのが義務」という部分が、経営論だけではなくものの考え方の基本としてためになりそうです。

また既存の業界のビジネスモデルが変わりつつあることも……。

大きく世の中が変わりつつある今、新しいしくみから新しいことを考える人がたくさん出て、より楽しい日本になったらいいな、と思います。

では、次回の対談も是非お楽しみに!


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