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醤油手帖が行く! 宝酒造「黒壁蔵」で焼酎造りのすべてを見てきた

(※この記事は宝酒造株式会社の提供によるPR記事です)

宝酒造株式会社 宝酒造株式会社
最新鋭の酒蔵にドキドキ! 宝酒造「白壁蔵」で“伝統と革新の日本酒造り”を学ぶ - はてなニュース

編集A 宮崎県児湯郡高鍋町にある宝酒造さんの焼酎蔵「黒壁蔵」に向かっています。以前、PR企画で宝酒造さんの日本酒蔵「白壁蔵」を取材しましたが、今度は「黒」です! 今回は、醤油愛好家や料理漫画研究家でもあり、日本酒ライターでもある醤油手帖さんと一緒にやってきました。

醤油手帖 こんにちは! いろいろやっている id:shouyutechou です。

編集A 醤油手帖さんは、もともとブログや同人誌で醤油について取材・執筆活動をされていて、2013年には醤油愛好家としてタモリ倶楽部にも出演されました。さらに商業版「醬油手帖」も出版されたばかり。本日は特別版「焼酎手帖」ということで、よろしくお願いします。

「醤油染みTシャツ」を身にまとい、いざ黒壁蔵へ!

醤油手帖 醤油と日本酒は大好きなんですけれども、実は焼酎はそこまで詳しくはなくて。今回とても楽しみです!

醤油手帖
週刊はてなブログでの醤油手帖インタビュー(2013年)

編集A 醤油といえば、早速、空港の売店で醤油をチェックしていましたね。

空港の売店にて。醤油はまずラベルからチェックする

醤油手帖 宮崎の、というよりも九州南部の醤油って、甘いものが多いんです。これはいろいろな説があるんですが、要は「砂糖が手に入りやすかった」というのが大きなポイントでして。江戸時代には貴重品だった砂糖をふんだんに使えば使うほど「ごちそう」である、というおもてなしの精神によって、郷土料理が甘くなっていったんです。なので、調味料である醤油も甘くなっていったという説があります。

編集A なるほどー。そういえば甘いって聞いたことがあります。

醤油手帖 ちなみに、日本の他の地域では塩・醤油・味噌で味付けする塩辛い料理にあわせて「甘い日本酒」が発展していった一方で、九州では甘い料理に合わせるために「辛い焼酎」が発展していった……という説もあったりします。

編集A おお、まさに今回のコンセプトにぴったりですね! 宮崎と言えば、地鶏にチキン南蛮……ごくり。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともありますし、宮崎流の和食と焼酎との組み合わせも楽しみですね! ……といったところで電車の窓から、黒い建物が見えてきました。あれが「黒壁蔵」です!

車窓から、黒い建物が見えてきた!

本当に黒い壁! 見どころたっぷりの「黒壁蔵」

編集A あいにくの雨ですが「黒壁蔵」に到着です。

醤油手帖 すごい! 本当に真っ黒な外観ですね。これはかっこいい! ところどころから湯気がもうもうと出ていますね。

これが黒壁蔵。本当に黒い

醤油手帖 実は今回、RICHO THETAというカメラを持ってきたんです。

編集A 360度の撮影ができるアレですね!

醤油手帖 これで外観の全天球写真を撮ってみたいと思います。

外観の全天球写真

編集A さて、本日私たちを案内してくださる、「黒壁蔵」の副島さんです。よろしくお願いします!

副島 よろしくお願いします。何でも聞いてくださいね。

<敷地内に巨大なタンクが>

でかい!

醤油手帖 いきなり大きなタンクがありますね。これは、何が入っているんですか?

副島 芋焼酎になる前の“もろみ”が入っています。

醤油手帖 このタンクも温度調節をしてあるんでしょうか。

副島 そうです。分厚くなっているところに水が通って、温度調節できるようになっています。この底は、中は円錐状になっているんですよ。

分厚くなっているところに水が通っている。周りは湯気でもくもく

編集A 円錐状ですか?

副島 はい。円錐状になっていることで、最後まで出し切って、底に焼酎が溜まらないようになっているんです。

醤油手帖 おお、なるほど。確かにこれだけ大きいと、上からすべて吸い出すわけにはいきませんよね。

<おいしい焼酎になる芋とは?>

副島 これが、芋焼酎造りに使うサツマイモです。これは皮が赤いですよね。今は、いわゆる青果用の紅さつま(筆者注:関東でいうところの紅あずまに近い)という紅芋系のものを仕込んでいます。

芋です

醤油手帖 やっぱりサツマイモは糖度が高いほど良いお酒になるのですか?

ワンポイント解説

「糖度が高いほど良いお酒になる」 - お酒を醸造するときは基本的に、酵母が発酵して糖分を分解し、アルコールと二酸化炭素ができる。なので、特にワインなどでは、ブドウの糖度が高い(甘い)方が良いワインになるといわれている。

副島 基本的にはでんぷん質が高い方が良いお酒になりますね。この時期のサツマイモは収穫してからだいぶ経っているので、甘くて糖度が高いんです。でも、焼酎にするにはでんぷんがあればいいので、甘くて糖度が高ければ良いというわけでもないんです。

醤油手帖 なるほど。でんぷんを糖に分解して、そこから発酵させるからですね。

副島 通常は白い皮の「黄金千貫」という品種がメインなんですよ。こちらは甘くありません。でも、でんぷんが多いんです。じゃあちょっと芋を洗っているところを見てみましょうか。

<1日に数十トンもの芋洗い!>

芋が運ばれていきます

副島 芋を洗ったら、このままベルトコンベアで運んで、カットします。

編集A おお、これが本当の芋洗い!

みんなでカット

醤油手帖 これは、発酵を均一にするためにカットして大きさを整えているんですか?

副島 いいえ、しっぽの部分とか悪い部分とかを見て、そこを取り除くという意味合いの方が大きいです。

醤油手帖 やっぱり人間の目でやるのが一番なんですかね。

副島 そうですね。これは機械化できないです。

「すごいなあー」

編集A ここでは1日にどれぐらいの芋を処理しているのでしょうか?

副島 日によってさまざまですけれども……数十トンというレベルですね。芋の入っていた袋は1袋で500kg、2袋で1トンになります。

醤油手帖 数十トン?! すごすぎる。あ、芋を切っている方の手元のまな板、真ん中がだいぶ凹んでいますね。日々、数十トンを処理していたら、こうなるのかあ。

まな板の中心部が凹んでいる

副島 続いて、芋を蒸す工程を見てみましょう。

<たくさんの芋を蒸す!>

圧倒的芋……ッ!

編集A わーー! これはすごい! 芋だ!

醤油手帖 湯気がもうもうで……でも、芋のすごく良い香りが! ここで糖化もやっているんですか?

ワンポイント解説

「糖化」 - でんぷんの状態では発酵ができないので、酒造りではでんぷんを糖に分解する必要がある。これを糖化という。ごはん(でんぷん質)をよく噛んでいると甘くなるのと同じような原理。

副島 いや、ここでは芋を蒸して、でんぷんをアルファ化(筆者注:水分と加熱でいろいろ変化しやすくなった状態)しているだけですね。

醤油手帖 芋の甘い香りがすごいですね……!

芋を割ってみた。甘い香りがすごい!

副島 紅芋系ですから、だいぶ甘くなっていますよ。ここで芋を砕いて、仕込み水と酒母とを混ぜて“もろみ”にします。

醤油手帖 ここで混ぜちゃうんですか?!

副島 そうです。これを強力なポンプを使って、タンクに送るというわけです。では次のところへ行きましょう。

<タンクをのぞくときは酸欠注意!>

副島 この下にタンクがあります。物を落とさないようにしてくださいね。

足の下には、タンクがたくさん

編集A タンクの中を見ることはできますか?

副島 ちょっと待ってくださいね。明かりを入れます。

奥の方で、もろみが投下されているのが見える

醤油手帖 うわー、すごい! 先ほどのもろみがどぼどぼ入っていってますね。発酵の温度はどのぐらいでしょう?

タンクを見るために階段を登る筆者。なぜか神々しい感じに

副島 30度くらいです。南九州ですので、結構暖かいんです。温度が高くなっても腐敗しないよう細心の注意を払っています。

醤油手帖 日本酒の場合、吟醸仕込みとかで低温長時間発酵させたりするんですけれども、焼酎でもそういうことはするんですか?

副島 8月のお盆終わりから12月ぐらいまでが芋の収穫時期なのですが、ここはすごく暑いんですよ。なので、低温でやるというのは考えたことがないです。そのかわり、麹はいろいろとやったりしていますね。

醤油手帖 おお、面白いですね。

副島 香りが変わったりするんですよ。よかったらこっちの別のタンクの香りもかいでみますか? 空気をすくうようにして香ってみてください。直接顔を突っ込むと、酸欠になってしまう危険性があるので注意してくださいね。

ワンポイント解説

「酸欠注意」 - 発酵によって糖分が分解してアルコールになるのだが、このとき正確にはアルコールと二酸化炭素になる。なので、タンクの中には炭酸ガスが充満している。

醤油手帖 おお、確かにさっきのとは違う感じですね。

<単式蒸留機:蒸留して透明な焼酎へ>

副島 次は蒸留です。これが単式蒸留機。さきほどのもろみをここで加熱して、「ネック」という細くなったところに、もろみから蒸発したアルコールなどの湯気が通っていき、ここに溜まります。

単式蒸留機。大きくてかっこいい

醤油手帖 これは芋焼酎専用のものなのでしょうか? それとも、芋とか麦とか米とか、すべての焼酎をここで蒸留するのでしょうか?

副島 これは芋専用ですね。この手の蒸留機だけでも工場内には10台ほどあります。芋の場合は常圧蒸留なので加熱していてちょっと暑いですが、減圧でやるものもあります。温度が全然違うので分けているのです。

醤油手帖 あれ、これはもろみからそのまま加熱するんでしょうか? つまり、もろみをしぼったものを加熱するのではなく、もろみからそのまま蒸留?

副島 焼酎の場合は日本酒のようにもろみを絞ってやるのではなく、もろみから加熱します。

醤油手帖 じゃあ、焼酎粕というのはこの段階でできるのですね。

副島 そうなります。これが最初に出てきた芋焼酎の原酒みたいなものです。

アルコール度数60度くらいの原酒

副島 だいたいこの段階ではアルコール度数60度ぐらいになります。もとのもろみが15度ぐらいですから、だいぶアルコールが凝縮されています。最初に集まってくるものは実は70度ぐらいで、だんだん蒸留液のアルコール度数が下がっていきます。なので、全部集めると最終的には40度ぐらいになりますね。

編集A 段階によってアルコール度数が違うのですね。面白い! ちなみにこれは、飲んだらおいしいでしょうか?(笑)

副島 飲んでみます?(笑) この段階でもおいしいとは思うのですが、まだ香りとかがちょっと荒々しいと思います。

銅の蒸留機。かっこよすぎる!

副島 蒸留機の形が微妙に違っているのが分かりますか。実は、それぞれの蒸留機で味が変わります。

左右で形が違う

醤油手帖 形状によって不純物が付着しやすいとか、そういうことでしょうか?

副島 一度加熱して上にあがったアルコールの蒸気が、冷えてまた釜に戻ってもう一度加熱されます。これを環流(かんりゅう)と言うのですが、蒸留機のネックの表面積などによって変わります。表面積が多いとたくさん環流するので、不純物がどんどん少なくなっていくんです。

醤油手帖 おお、雑味を蒸留機の形でコントロールできるんですか!

副島 そうです。単式蒸留機の場合は、形状によって味が変わると覚えておくとよいと思います。

圧倒的かっこよさにつき、写真多めでお送りしました

<連続式蒸留機:複数の蒸留機が連なっている長~いタンク?!>

副島 先ほどまでは本格焼酎の製造設備でした。今度は甲類焼酎などを造る設備を見ていきましょう。

ワンポイント解説

「本格焼酎」と「甲類焼酎」 - 簡単に言うと製造方法に違いがある。本格焼酎は単式蒸留で、1回蒸留させて造る。甲類焼酎は連続式蒸留で、何度も連続して蒸留させて造る。

連続式蒸留機は「大きい」というレベルではない。階段でどんどん登っていく

副島 こちらが連続式蒸留機です。長~い筒のようなタンクになっています。

醤油手帖 中でそれぞれ1工程2工程と、筒の中で工程が分かれているんですか?

副島 そうです。さっきの単式蒸留機が1段とすると、これは筒の中に複数の蒸留機が何層にも連なっているタイプで、高さは6階建てのビルと同じくらいでしょうか。

醤油手帖 6階?!

副島 先ほどの単式蒸留機だとアルコール度数は高くて60度ぐらいだったのですが、この手の蒸留機をフルに使うとアルコール度数は96度までいきます。では階段を上っていきましょう。

この段ひとつひとつが蒸留機。これが何層にも積み重なっている。だから「連続式蒸留機」

醤油手帖 ひょ、ひょっとして、この段ひとつひとつが蒸留機ですか?

副島 そうです。ひとつひとつ、環流しながらどんどん上に登っていきます。沸点が低いものほど上へいきます。一番下に残るのは“お湯”になるんです。

醤油手帖 途中の段階で、この辺がおいしそうなので抜く、みたいなことはしないんですか?

副島 ありますよ。味の成分が残っている途中の部分を抜くことができるようになっていて、おいしいところを逃さないようにしています。

副島 ちなみにこの蒸留機の中には、それぞれキノコみたいな形状がたくさん入っていて、キノコの傘より上にたまったものが下に落ちていく、という構造になっています。

編集A だからグラデーションのある、それぞれの段階のお酒を取り出せるんですね。

<貯蔵:圧巻の樽貯蔵熟成酒>

副島 こちらが貯蔵庫です。黒壁蔵では、さまざまなタイプの樽貯蔵熟成酒を約2万樽、貯蔵しています。すべてコンピューターで管理されているので、どこに何があるのか把握できています。

醤油手帖 うわー! これはすごい!

樽を見上げて呆然

貯蔵庫の全天球写真

醤油手帖 空調はどうなっているのでしょうか? 常時室温でしょうか。

副島 室温ですね。夏でもひんやりしています。

中に焼酎が入っています

<瓶詰め:最後は人の目でチェック>

副島 瓶詰めも見ていきましょう。ここでは1日に約1万本の瓶詰めができるようになっています。

醤油手帖 1万本?!

副島 瓶を洗浄し、お酒を詰め、そして人の目でひとつひとつ不純物がないか確認します。

醤油手帖 これも人の目でチェックするのが大事なんですか。

ひとつひとつ、瓶をチェック

副島 やっぱりここも機械化できない部分ですね。検査にパスしたらラベルを貼ります。今日は「黒よかいち」ですね。ラベルを貼ったら、その瓶の写真を撮ります。

醤油手帖 ラベルが歪んでいないかを画像処理で調べているんですか?

副島 それもあるのですが、全部記録を取って、いつでもトレースできるようにしているんです。

醤油手帖 なるほど!

副島 箱に詰めて、まとまったら運び出して出荷です。

<分析、そしてテイスティング!>

副島 続いては成分などを分析するところをご案内します。担当の郷司が解説します。

ガスクロマトグラフィ

郷司 これはガスクロマトグラフィといって、成分を分析する機械です。主に香りの分析を行います。ここで香りを嗅げるようにもなっていて、成分だけではなく自分の鼻でも確認します。

くんくん

醤油手帖 こちらでは香りがメインなのでしょうか。

郷司 そうですね。味の方は液体クロマトグラフィという別の機械で行います。

副島 ではテイスティングをしてみましょうか。原酒と、それぞれ水で割ってアルコール度数を下げたものとを用意してみました。

醤油手帖 待ってました!

原酒はとても濃い色をしている

副島 一番左のものは原料アルコールと言って、連続式蒸留で不純物を取り除いたものです。

醤油手帖 おお、これはひょっとして、いわゆる「醸造アルコール」ですね。25度に薄めたものをいただくと……甘い! 甘みを感じるんですね。これはすごい。

副島 そうです。同じものですね。

醤油手帖 他のもいただくと……うわ、これもおいしい! あ、しまった。飲まないでおこうと思っていたはずなのに、ついつい飲んでしまった……

ふむふむ

編集A 醤油手帖さん、自分で気付いていないかもしれませんが、そのグラス、3回ほど口にしていますよ……

醤油手帖 あれ、いや、でもおいしいです!

真ん中にあるのは、新発売の宝焼酎「ゴールデン」。奥にいるのはガンガン飲んでいる筆者

編集A いやーしかしおいしいですね……。このままだと酔っ払ってしまうので、場所を移してインタビューにいきましょう。

「蒸留・ブレンド技術は当社の強み」工場長インタビュー

編集A ここからは「黒壁蔵」の工場長、大槻達也さんにもお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

大槻 よろしくお願いします。

醤油手帖 そもそもこの「黒壁蔵」の由来について教えていただきたいです。白壁蔵と黒壁蔵はどちらが先にできたのでしょうか?

大槻 白壁蔵が先ですね。黒壁蔵は、もともとは官営の工場だったのですが、1952年に宝酒造に払い下げられました。そして2004年に、それまでの「高鍋工場」から「黒壁蔵」という名前になりました。もちろん白壁蔵があったこともありますが、ご覧いただいたように壁が黒いこともあって、この名前になりました。ちょうどここは「ななつ星」が通る土地なので、車窓から黒い建物が見えるようになっています。

工場長の大槻さん、黒壁蔵を熱く語る

編集A 見せ方にもこだわっている蔵ってあんまり聞いたことがありませんね。衝撃です。

醤油手帖 確かにかっこいいですよね。僕は醤油蔵や日本酒蔵は見学によく行くのですが、その中でもトップクラスでかっこいい蔵でした。

<毎時4トンで造り続ける>

醤油手帖 今回一番驚いたのは連続式蒸留機でした。

大槻 国内でも持っているところは少ないですね。出来上がる量が桁違いなので。一度稼働させると、連続して稼働させ続けないといけないんです。

少しお酒の入った状態でインタビューする筆者

醤油手帖 どれぐらいできるものなのですか?

大槻 だいたい1時間あたり4トンですね。それが、最低でも4日か5日は動かし続けなければなりません。

編集A 毎時4トンですか?!

大槻 それだけ連続して入れないと蒸留できないんです。

副島 ちなみに連続式蒸留機のところで、それぞれグラデーションができるという話をしましたけど、あれができるようになるまでも、動かし続けて5~6時間はかかります。

醤油手帖 そんなにも……! やはり巨大な装置だけに、スケールが桁違いですね。連続式蒸留機で造られた醸造用アルコールに近いものも少しテイスティングさせていただいたのですが、甘みがあって驚きました。

大槻 連続式蒸留機を使って造るアルコールで、味わいを残しつつ原酒にするノウハウは、当社ならではの技術力だと思います。

醤油手帖 あとはやっぱり、樽がたくさん並んでいるところが大迫力で壮観でした。ウイスキーだと年数が経ったものをブレンドして「何年もの」って売りますよね。焼酎の世界には熟成酒という概念はあるのでしょうか?

大槻 多くはないですが、ありますよ。長期熟成で3年物とか5年物も出ています。でも、焼酎は「手頃な価格でおいしい」というのも特長なので、そこはウイスキーとは違いますね。1本10万円の焼酎って、買いますか?

醤油手帖 いやー、さすがに買えないです(笑)

<地元・九州で、芋焼酎を飲んでもらう>

醤油手帖 先ほどテイスティングさせていただいた中で、いろいろな原料のものをブレンドしたものが印象的だったのですが、焼酎の世界ではそのようにブレンドしたものが多いのですか? あまり味わったことがないのですが。

大槻 他社のことは分かりませんが、蒸留・ブレンド技術は当社の大きな強みであると思います。

醤油手帖 農作物を発酵させるので、それぞれタンクごとに味が微妙に異なるということはあると思うのですが、焼酎って味わいの差が少ないという印象があります。それもブレンドで調整しているのかなと思っていました。

九州限定の芋焼酎「紅彩」のロゴを背景に語る大槻さん(右)と副島さん

大槻 本格焼酎はタンクごとに味わいが違ったりしますね。原料で使うものの収穫時期でも違ったりします。例えば芋が良い時期は焼酎もおいしくなるわけです。でも、甲類焼酎は味わいのバラツキが少ないですね。その辺はしっかり調整しています。

醤油手帖 分析ですとか、最後は人がきちんと調整するところは、実際に見させていただいて、とても興味深かったです。ちなみに、本格焼酎では、芋焼酎だけではなく、麦焼酎や米焼酎でもバラツキはでるのでしょうか?

大槻 麦は原料自体が安定的なので、味わいのバラツキは少ない方です。芋は季節性があるんですよ。収穫する時期が限られているので。なので、おいしい芋で造るとおいしい焼酎ができると思います。

醤油手帖 見学後に芋を食べさせてもらったのですが、とてもおいしかったです。

大槻 あれは九州限定で販売している「紅彩(べにいろ)」という本格焼酎を造っている芋ですね。宝酒造=甲類焼酎のイメージが強いようで、地元の方に「本格焼酎もやっていますよ」と言うと意外と驚かれたりするんです。ですので、地元の方にしっかりと飲んでもらおうということで造りました。おかげさまで好評をいただいています。

<容器イノベーションは起こせるか>

醤油手帖 醤油の世界では最近、空気に触れないパッケージなどの新しい容器がトレンドになっていて、広まりつつあります。お酒の世界ではどうでしょう。

同人誌版「醤油手帖」をお渡ししたところ。醤油について興味津々に逆インタビューされる一幕も

大槻 当社では最近、焼酎や日本酒、みりんなどでパウチ容器の製品を発売しています。冷蔵庫などの狭いスペースでも入れやすいですし、捨てるときに分別や解体の手間もかからない優れものです。容器に関してはもっとイノベーションを考えたいと思いますね。

醤油手帖 いつかいろいろと技術的な問題がクリアされて、空気に触れないものが出るのを楽しみにしています。

<やっぱり焼酎は和食と合わせて>

編集A 広く焼酎の楽しみ方を伺いたいです。かつては本格焼酎ブームがあって、今はいろいろな種類のものができて。若い人に焼酎を楽しんでもらう上で、オススメの飲み方などはありますか。

大槻 焼酎の楽しみ方はさまざまです。飲み方も水割り、お湯割り、ロック、ソーダ割りなどがありますし、原料のバリエーションも豊富で、さまざまな風味を楽しむことができます。若い人には、いろいろなタイプの焼酎を自分好みにアレンジして楽しんでもらいたいですね。

醤油手帖 日本酒は今、イベントなどで若い人がたくさん来ていますね。

大槻 日本酒は若い人がどんどん入ってきていますよね。オススメの飲み方という点では、やっぱり焼酎は和食に合うと思います。ユネスコ無形文化遺産にもなった和食と、ぜひ合わせて飲んでみてほしいです。

編集A では、続きは和食と焼酎を合わせていただきながら伺いたいと思います。

宮崎地鶏×甘い醤油×焼酎お湯割りで乾杯!

黒壁蔵の皆さんと

編集A ということで、高鍋町のおいしいお店、お食事処「石河内」にやってきました。九州限定で販売されているという「紅彩」で乾杯したいと思います。乾杯!

醤油手帖 うわっ、これはおいしいですね。

副島 お湯割りの方が香りがフワッと広がっていいかもしれません。

醤油手帖 おおお、これはおいしい。僕お湯割りの方が好きです!

編集A 醤油手帖さん、さりげなく醤油をチェックしていますね。

焼酎と醤油の話が混ざり合いながら、酒宴は続く

大槻 本当に醤油が好きなんですね(笑)

醤油手帖 すみません。いやでも、甘い醤油の味付けには、やっぱり焼酎がよく合いますね。この刺身醤油は混合醤油ですね。

大槻 えっ、どういうところが違うんですか?

醤油手帖 ええとですね……(以下しばらく醤油トークが続く)

編集A すっかり醤油の話になってしまいましたね(笑)

醤油手帖 お酒に話を戻しましょう(笑)。今、お湯割りを造っていただきましたが、普段からあまり焼酎を飲んでない人が飲もうと思っても、そもそもお湯割りがおいしいとか、前割りがいいのかとか、どれぐらいの分量がいいとか、分からないですよね。

編集A たしかに、よく分からないです。

醤油手帖 飲み方は宝酒造さんでもWebなどで発信されていますけれども、もうちょっと手軽に知ることができると、もっと面白いのかなと思います。

チキン南蛮、地鶏の炭火焼、焼酎。宮崎の甘い食べものと、焼酎がとてもよく合う

大槻 そういう面はあるかもしれませんね。ちなみに手軽にというのは、例えばどんなものが?

醤油手帖 そうですね。例えばお湯割り用のカップで、ここまで焼酎を入れましょう、ここまでお湯を入れましょうみたいなラインがあったりすると、分かりやすいんじゃないかと思うんです。この紅彩のカップとかの内側に線がいくつかあるイメージですね。

大槻 なるほど。そういう意見は貴重ですね。僕の仕事のひとつは「環境作り」だと思っているんですよ。工場長に就任して最初にやったのは5S(整理、整頓、清掃、しつけ、習慣)を徹底することでした。良い環境を造れば、新しい発想が浮かびやすいんじゃないかと。もっと若い人にイノベーションを起こしてほしいんです。もっとアイデアはないでしょうか(笑)

醤油手帖 じゃあそのためにも、おいしい焼酎を飲んで、おいしい料理を味わって考えます!

副島 先ほどテイスティングのときにおいしいと言われたとうもろこしの焼酎でオススメなのが「黒よかいち」<とうもろこし>です。これもお湯割りがオススメですよ。

醤油手帖 うわっ! おいしい! これまた甘い醤油とも、他の料理とも合いますね!

編集Aの編集後記

ということで、醤油手帖さんによる楽しい黒壁蔵見学記、いかがでしたでしょうか。たくさんの芋にかっこいい蒸留機、大量の樽と、盛りだくさんの内容でお送りしました。

黒壁蔵自体も去ることながら、工場長の大槻さんがしきりに「焼酎以外の世界を見て、新しいことを取り入れていかないといけないんだ」とおっしゃられて、醤油手帖さんに醤油業界のことを逆インタビューしているのが印象的でした。

ぜひ皆さんも、この記事を思い出しながら焼酎を飲んでみてくださいね。ということでここまでお読みいただいた皆様には、宝酒造から4月1日に新発売の宝焼酎「ゴールデン」と、記事中でも飲んでいる本格焼酎「黒よかいち」<とうもろこし>をセットでプレゼントします。さらに、発売されたばかりの醤油手帖さんによる商業版「醬油手帖」も! 詳細はこのすぐ下です!

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※キャンペーンは終了しました。たくさんのご応募、ありがとうございました。
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さらに、Twitter連携してブックマークいただいた方には抽選で、上記の焼酎セットにプラスして、河出書房新社から刊行されている商業版「醬油手帖」(特製ステッカー付き!)も加えたスペシャルセットを3名様にプレゼント! 詳しくは、下の応募要項をご覧ください。

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応募要項

  • 応募期間
    • 2014年3月31日(月)から2014年4月13日(日)24時まで
  • 賞品と当選人数
    • 宝焼酎「ゴールデン」&本格焼酎「黒よかいち」<とうもろこし>セット:20名様
    • 宝焼酎「ゴールデン」&本格焼酎「黒よかいち」<とうもろこし>&商業版「醬油手帖」(特製ステッカー付き)スペシャルセット:3名様
  • 応募方法
    • 焼酎セット:この記事をはてなブックマークに追加
    • 焼酎&醤油手帖スペシャルセット:Twitter連携した上で、この記事をはてなブックマークに追加
      • ※応募は20歳以上の方に限らせていただきます(当選者様には年齢の確認をさせていただきます)
      • ※いずれもプライベートモードでご利用の方は対象となりません
  • 当選発表
  • 賞品発送
    • 当選発表後、はてなよりメールをお送りし、送付先情報(送付先住所、受取人氏名、電話番号)をお聞きします
    • ※プレゼントの発送は日本国内に限らせていただきます

※お酒は20歳になってから。適量を守って楽しみましょう。

[PR]企画・制作:はてな
写真:赤司聡

文: 醤油手帖(杉村啓)