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単なるリアルタイム検索じゃない! NAVERの“総仕上げ”、「トピック検索」に迫る


■「探しあう検索」、NAVER。

1999年に韓国でスタートした、検索サービス「NAVER」。本国では既にトップシェアを誇るこのサービスだが、2009年7月からは日本でもベータ版サイトが公開された。一般的な検索サービスに加え、ユーザー参加型検索「NAVERまとめ」やマルチメディア型マイクロブログサービス「pick」などのサービスが話題を呼び、急速に日本ユーザーにも受け容れられている。

探しあう検索NAVER(ネイバー)
NAVER まとめ
pick(ピック)
また、はてなブックマークのユーザーには、「2ちゃんねる」の元管理人・「ニコニコ動画」へのアドバイザーなどとしてお馴染みの西村博之(ひろゆき)さんに運営上のアドバイスを受けた下の記事が記憶に新しいかも知れない。
西村ひろゆき : NAVERアドバイザリーボード
そんなNAVERが、 3月30日にトップページを含む大幅リニューアルを遂げ、しかも最近注目を浴びている「リアルタイム」に着目したサービスが追加されることを受けて、はてなブックマーク編集部は、東京・大崎にあるネイバージャパンを訪問。新サービスの話を直接担当者に聞くことができた。


<NAVERが打ち出した「いま必要な検索エンジンとは?」> 

「インターネットユーザーが何に注目しているのか、いま本当に話題になっていることを知りたければ、NAVERのトップページやトピック検索を見ればいい、そう言い切れます」(ネイバージャパン株式会社事業戦略室 室長/チーフストラテジスト舛田淳氏)

既にマスメディアでも流行語となりつつある、「Twitter」。このサービスに代表される、「リアルタイムウェブ」と呼ばれる新しいソーシャルメディアの潮流が、ネット上での情報収集の手段を大きく変えようとしている。従来の、検索エンジンを利用した情報収集に対して、ソーシャルメディアで交換される“いまこの瞬間”に何が起こっているかを可視化した情報が、日増しに影響力を強めているのだ。
今回のリニューアルで実装された「トピック検索」は、この「リアルタイムウェブ」をいかに整理すべきかについて、ネイバージャパンが自分たちなりのやり方で提出した解答と言えるだろう。既にこうしたリアルタイムの検索技術は、GoogleやYahoo!、Microsoftの「Bing」なども取り組んで注目を集めているが、NAVERのアプローチは、一体どんなものなのだろうか?

<ネット情報の生鮮食品売り場? 直感的に「いま話題」にアクセス>

まずはリニューアルしたトップページを見てみよう。ネット上で“いま話題になっている”10の事柄が独自のアルゴリズムで導き出され、NAVERトピックとして、画像とキーワードのみによって表示されている。
例えば、下のトップページ画像は、アメリカではゴルフ世界選手権の予選ラウンドが展開され、またタイガー・ウッズの復帰がささやかれた頃、そして日本では民主党の輿石東議員による農地転用問題が取り沙汰されていた頃のものである。


画像は取材時点での開発中画像。「池田勇太」、「復帰、ウッズ」、「民主、輿石」など、キーワードとともにサムネイル画像が表示されている

シンプルなインターフェイスとなっているトップページを一目見てクリックするだけで、ユーザーは直感的に“いまこの瞬間の情報”にアクセスできる。このキーワードは10分ごとに更新・反映され、さながらインターネット上で“いま最も旬な食材”が陳列された、スーパーの生鮮食品売り場のディスプレイのようになっている。

<独自に「注目度」を算出して、情報を最適化>
それらのキーワードをクリックして表示される統合検索結果のページでは、これまでの検索結果では見られなかったNAVERトピックエリアが表示され、その中を見ると、「ニュース」「ホットリンク」「リアルタイム」という3つの項目が存在している。事業戦略室 室長/チーフストラテジストの舛田さんによれば、これらが今回のリニューアルで追加された新サービスの「トピック検索」機能で、それぞれ、大まかには以下のような基準で情報を集めているのだという。

  • ニュース:朝日新聞、時事通信などを始めとした950以上のニュースメディアをソースとする記事の中から、検索項目に該当する記事を抽出
  • ホットリンク:Twitter、はてなブックマーク、NAVERまとめで引用されたページ(リンク)の引用数をもとに抽出し元記事も表示
  • リアルタイム:Twitterやpick、ブログ、ニュース記事など検索項目についての新着記事をリアルタイムに表示

検索項目にはそれぞれ、「注目度」が5段階評価で独自に設定される仕様になっている。しかも、その話題度や内容から換算した重要度によって、上の3つの項目の表示の有無を統合検索の中で最適化し、ユーザーに提供しているのだという。
「トピック検索」を見てわかることは、NAVERが、1つの話題に対し、マスメディアから見た観点(ニュース)、他のサイトでのユーザーの行動をベースとしたBuzz的な観点(ホットリンク)、そして、Twitterなどのリアルタイム的観点(リアルタイム)という3つの観点を、まとめてユーザーへ提供しようとしていることである。

画像は取材時点での開発中画像。最も話題になっていたディカプリオの来日は、「注目度」でも最高レベルの5。

トップページで一番人気の話題となっていた、米俳優レオナルド・ディカプリオの記事をクリックすると、彼の来日会見を伝える「ニュース」の項目が一番上に来ていることが分かる。実は、ディカプリオが来日して会見を行ったのは、この検索をした日の3日前。検索を行った時点で、この話題についてユーザーが最も知りたいのは、「リアルタイム」の速報でも「ホットリンク」から分かるネットユーザーの意見でもなく、会見の様子を伝えたマスメディアの「ニュース」であろうと考えれば、この配置の妥当性がわかるだろう。
リアルタイムで情報をただ単に収集し表示するのではなく、「検索されたキーワードから注目度を自動的に判別し、そのレベルや内容・意味によって項目の配置や表示の有無を最適に変化させる(舛田さん)」というNAVER検索の特徴が効果的に機能していることを、実に鮮やかに示す例と言える。

ちなみに、検索ワードから「来日」を外し、「ディカプリオ」に限定して検索してみると、より興味深い検索結果が出てきた。「ニュース」「ホットリンク」の下に「リアルタイム」の項目がされることで、より一般的な検索結果が導き出され、しかも「注目度」が”3”に低下している。つまり、「ディカプリオが来日した」という事実に比べ、「ディカプリオ」本人そのものに関する話題は低いという判断である。

画像は取材時点での開発中画像。話題度は3に低下し、項目の配置も変化している。
注目度が高いからといって、必ずしも「リアルタイム」が表示されるわけではなく、仮に注目度が低くても、その時点で「リアルタイム」性が高い内容だと判断された検索ワードには「リアルタイム」が表示されるという点が面白い。
刻々と変化をしていく「注目度」という項目、自分が入力した検索対象が、いまこの瞬間にはどういう風に話題になっているのかを判断できる指標としての機能も期待できそうだ。

■リニューアルは、現在までの取り組みの「総仕上げ」

NAVERは、今年の1月から“第2フェーズ”として、オンラインストレージ「Nドライブ」やマイクロブログサービス「pick」などを立て続けにリリースしてきた。それぞれのサービスは、ユーザーの評価は高いが、いずれも「検索サービス」とは関係がなく、「NAVERは検索サービスと名乗らないほうがよいのでは?」「ただ単に流行りモノをサービス化しているだけでは?」など、戦略性が読み取れずにいた方も多いのではないだろうか。
その辺りについて質問をぶつけてみると、「確かにそれぞれのサービスは検索とは関係のないように思われるかもしれません。でも、私たちはサービスローンチ以降、着実にユーザーとの対話を続けながら、第2フェーズとしての“あるべき姿”を目指し、戦略的ストーリーを持って進めてきました。Nドライブやpickなどは、それだけでは1つの“点”に見えたかもしれませんが、それぞれの点は結ばれて“線”となり、“円”になるためのもの。NAVERまとめを成長させ、Nドライブやpickを展開することで、NAVERの全体コンセプトである“探しあう検索”や“サーチコミュニケーションプラットフォーム”を強化し、NAVERとしての基盤を作り上げることに注力してきました」と熱く語る舛田さん。今回のトピック検索やトップページリニューアルは、そうしたネイバージャパンの第2フェーズの取り組みの「総仕上げ」なのだという。



大崎のThinkPark Towerにあるネイバージャパン

「もともとNAVERプラットフォームのコアには、人が集まることにより、情報が生成され、集積され、磨かれ、整理され、それが新たな付加価値をもって検索結果(情報)として返ってくるというある種のエコシステムがあります」と、NAVERの仕組みを明快に説明した舛田さんは、第2フェーズの取り組みについてこう語る。「今回の取り組みは、このシステムの中で、特に、話題・イシューという観点の強化を行いました。pickは、社会やインターネット上の情報を“点”として磨きあげる、NAVERまとめは“集合体”として整理する役割で、これはいわば、話題・イシューをソーシャル・フィルタリング(ユーザー間における情報の評価/伝達による情報の取捨選択)によって抽出するものです。これらは、トピック検索やその他の検索サービスへ反映され、ユーザーへ検索結果(情報)として提供されます。また、この検索結果は再びpickやNAVERまとめでフィルタリングされていきます。その中で、Nドライブやフォトエディターなどのツール系サービスは、話題の生成を支援する役割として提供しています」

また、舛田さんはNAVERのエコシステムについて「今回のエコシステムを語る上で大事なことは、NAVERというプラットフォームに依存をしないということ」と意外な点を口にした。「1つのプラットフォームで集積・抽出できる情報には限りがあると考えています。pickやNAVERまとめなど、自社で集積・抽出する仕組みに加え、ブログやマイクロブログ、ソーシャルブックマークを始めとしたインターネット上で行われるユーザーのソーシャル活動をエコシステムに組み込む仕組みとして、先述したホットリンク、ブログやTwitterなどのネット上に存在する有名人の発言を収集する『有名人のひとこと』を用意しました。現在は一部だけですが、将来的には全てのソーシャル活動を対象とすることを目指したい」
マスメディアのニュースから、個人が発信を行うソーシャルメディアまで、NAVER内外のあらゆる情報を対象にして検索結果を表示することにより、「世の中やインターネット上で、今、話題になっている情報」を全て提供する。そんなアプローチの「新生」NAVER検索が、他社の検索サービスとは一線を画す「人間」の参加を織り込んだ構想の下、誕生したのである。

■「かわいい!」とはてなブックマークでも話題の“あの人”に、会えた!

舛田さんとの話が尽きないまま、会議室から場所を変えてインタビューを続けていたところ……何と“あの人”を発見してしまった。ネイバージャパン ユーザーコミュニケーション担当の金子さん――NAVER関連のTwitterのつぶやきやブログ上の記述に対し丁寧で細やかなコメントをつけてくれることで、話題沸騰中の女性だ。
NAVER関連のコメントにレスしてまわる「金子さん」って? - ITmedia News

舛田室長の向こうには話題の金子さん!
思いがけない金子さんとの出会いに、「先日は筆者のつぶやきにコメントいただきまして…」とのやりとりも繰り広げられ、貴重な機会となった。話題のつきないネイバージャパンの“第2フェーズ”、今後も注目していきたい。


[PR]企画・制作:はてな
文: 稲葉ほたて

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