「デイリーポータルZ」代表の林雄司です。これまではウェブマスターとか編集長と名乗って、一企業のなかでサラリーマンとしてサイトを運営していましたが、2024年1月にとうとう独立してしまいました。これからは、自分でコンテンツを作るだけじゃなく、営業とか経営をして、きちんとお金を稼がないといけません。
デイリーポータルZは、これまで大きな企業のもとで運営してきましたが、正直なところ20年余りずっと赤字でした。独立して赤字だとサイトを続けられないので、なんとか自分でも稼ごうといろいろやっていますが、けっこう難しいことだと身にしみています。
独立してみたら想像以上に多くの方や企業に応援していただき、驚くべきことに今は何とか黒字を保っています。でも、これからずっとこの状況が続くかどうかは分かりません。だから、もっとちゃんと稼がないとと思って、そのためにはどうすればいいんだろう、といろいろ考えたり、お金が落ちてないか竹やぶを探したりしています。
デイリーポータルZはPV数なんて気にしないぜ! という態度で運営していますが、それはデータを活用できてないからそう言ってるだけです。記事のどこで読者が離脱しているのか、読まれる記事のジャンルとか、そういうデータを現状ちゃんと見ることができてません。
もちろんアクセス解析はやっているんですけど、見ているのは記事ごとのPV数と検索クエリぐらいです。そもそも、データが大事なことは分かるけれど、どうして大事なのか、どうやって使えばいいのか分かっていません。
調べると「データマネジメント」という言葉があるそうですが、データをマネジメントするんでしょうね。私が分かるのはそこまでです。
そこで今回のインタビューです。
「はてなニュース」の編集部がリクルートさんに話をつないでくれました。なるほど……『SUUMO』『リクナビ』『ホットペッパー』『ホットペッパービューティー』など、いくつものサービスを運営されているし、大量のデータをばりばり活用して短期間でPDCAを回しているはずです。
そして、データ活用の話を聞けば、PV爆発、収入増、東証プライム上場、プライベートジェットという未来も開けるはずです。
今回、リクルート流の「データマネジメント」を学ぶべく、データ基盤を構築するアナリティクスエンジニアの新堀秀和さん、開発組織を牽引する執行役員の秋山純さんを訪ねました。
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まるで図書館司書? データを的確に整備するアナリティクスエンジニアのお仕事
林 お話をお伺いするにあたって、少し調べてみたんです。リクルートには、データを集めることを専門にする「アナリティクスエンジニア」という職種があるそうですね。新堀さんは、具体的にどんなお仕事をされているんですか?
新堀 秀和(にいぼり・ひでかず)
株式会社リクルート プロダクト統括本部
データ推進室 HR領域データソリューションユニット
HRデータソリューション部 HRデータマネジメントグループ
兼 販促領域データソリューション1ユニット(住まい) 住まいデータソリューション部 住まいデータマネジメントグループ
兼 データテクノロジーユニット データマネジメント部 アナリティクスエンジニアリンググループ
新堀秀和(以下、新堀) サービス側のプロダクトマネージャーやフロントエンドエンジニア、サーバーサイドエンジニアなどと連携しながら「データを集めるための仕組み」を考え、設計し、開発・実装するのが仕事です。「データの整備人」とも呼ばれています。
林 必殺仕事人みたいな!
新堀 アナリティクスエンジニアの仕事は「データマネジメント」と呼ばれ、図書館司書の仕事にたとえられます。Google CloudやAWSといったクラウド上に構築されたデータ基盤はさながら図書館です。Webサイトやアプリから得られたデータが、本のように積み込まれていきます。アナリティクスエンジニアは、そうして積み込まれたデータを整理整頓したり、利用者に分かりやすい形で提供したりします。
一方で、とにかく集めればいい、というスタンスではデータ量が膨大になってしまい、結果的に(データを)使いづらくしてしまう。利用者から「読みたい」と申請があった本を図書館に入れたけど、最初は読んでくれたのに1カ月くらいすると誰も読んでいないということがありますが、データも同じです。
だから、利用者、この場合は事業企画の担当者がどんな施策をやりたいのか、開発チームがどんな機能を作りたいのか、を検討する段階からアナリティクスエンジニアが関わり、どんなデータを取ればよいのか、またどうやって取るのか、を一緒に考えます。
林 エンジニアなのに、いろいろな職種と積極的に関わるお仕事なんですね。
新堀 そうですね。いろいろな職種を巻き込んでいくのがリクルートのアナリティクスエンジニアです。
例えば、セールスから「クライアントが『ここにボタンを設置したほうがクリックされるんじゃないですか?』と言っていた」と報告を受けたとします。すでにデータがあれば、その発言が正しいのかどうか、すぐに仮説検証できるのですが、欲しいデータが存在することは実際ほとんどありません。でも、あるデータとあるデータを掛け合わせれば、仮説検証できる精度のデータが作れるかもしれない。そんなふうに、目的を達成するため他職種と一緒に汗をかきます。
林 なるほど、エンジニアといってもセールスの現場にもかなり近い仕事なんですね。
新堀 例えば、あるクライアントと商談するために必要なデータの集計結果が1週間後に出るのと、多少集計のクオリティが下がっても1時間後に出せるのとでは、その後の動きが変わってきますよね。そこも、アナリティクスエンジニアと事業企画の担当者が密に連携しているからこそ検討できるわけです。
林 リクルートらしいというか、うらやましい環境ですね。アナリティクスエンジニアが職種としてちゃんと定義されていて、その価値がちゃんと認められているんですね。
新堀 もちろん、すぐにこういう環境が作れたわけではありません。
リクルートは今から8年くらい前にデータマネジメント組織を作りはしましたが、当時は(事業企画の担当者と)あくまで「受発注」のような関係性でした。データマネジメント組織が、事業に対して案件(分析筋・集計など)の良し悪しを問うような動きがあまりできていなかったことも一因です。結果的に、目の前のタスクをひたすら消化するような状況が続き、組織は疲弊し、次第にデータマネジメントの価値を十分発揮できているとは言いがたい状況に陥っていきました。
そんななか、約2年前にアナリティクスエンジニアリングという専門性を定義したことで、事業により食い込むような形でデータマネジメント業務が遂行できるようになりました。現在ではグループ全体で30名弱のアナリティクスエンジニアがいます。
林 そんなに! うちの会社だと社長(自分)しかデータマネジメントをやる人がいないし、できてもいないのに……。
新堀 あと、意思決定の質やスピード向上という側面以外に、アナリティクスエンジニアの存在意義として「データはすごく壊れやすい(だから専門職がマネジメントすべき)」という事実が挙げられます。極端な話、この写真をずらした方が見映えがいいんじゃないかと、レイアウトを少し変えるだけでログデータって壊れるんです。
というのも、例えばGoogle Analyticsはサイト上のJavaScriptで作られていて、WebサイトもJavaScriptで作っていることが多いので、後者を修正した結果、前者のScriptが壊れてしまうことがある。
特にリクルートでは1週間に1回とか、そんなサイクルで既存のサイトを修正したりしているので、そういったリリースに際してもデータが壊れないか、過去のデータと連続性が保たれているかといった、いわばデータのQA(クオリティアシュアランス=品質保証)を担保しなければなりません。
林 データって時系列で見ることが多いですから、「ここから内容が変わっちゃいました」っていうのは運営側にとって困りますよね。
新堀 ダッシュボードを見て、リリース時刻からデータがゼロになっていると、サイトのトラブルなのか、データが壊れたのか、いずれにしろ心臓がバクバクします(笑)。だから、なるべくデータに関わるようなリリースには、フロントエンジニアやサーバーサイドエンジニアと連携しながら、できるだけすべてのプロセスで関わります。
林 「サイトの見た目をいじることでデータが壊れる」という意識を持っている人は案外少ないかもしれませんね。僕も全然気にしたことがなかったです。
新堀 実はリクルートでも以前は、アナリティクスエンジニアに連絡がないままリリースがなされてデータが壊れ、私が「案件を止めてください」と現場に伝える、みたいなことがありました。
林 セキュリティエンジニアみたいで大変そうだな……と思いました。
新堀 でも、ちゃんと話すと、皆さん同じ課題意識を持っているので、話を理解してもらえるんですね。
林 技術的なところもそうですが、お仕事をする上でコミュニケーションの比重がスゴく大きそうですよね。何をするにしても議論や話し合い抜きでは前に進められない。
新堀 そうですね。私自身、前職でエンジニアとしてWebサービスの開発に携わっていたので、あるべき開発プロセスやタイミングごとに必要なアクションが分かっているのも大きいですね。だから、一方的に「なんで言うことを聞いてくれないんだ」みたいに思わず、一緒になってサービスを良くしよう、カスタマーに貢献しよう、となれる。あと自分の場合は、ほどほどに「飲みニケーション」も大事にしていますね。
林 そうなんですね(笑)。でもそういうところまで積極的なエンジニアの方って珍しいかもしれません。
新堀 やっぱり仲良くなれるじゃないですか(笑)。さっきもお話ししたように、データが壊れるから案件を止めろ、と言われたら開発チームはいい気がしません。ただ、お互いカスタマーのベネフィットを考えているからこそ、話し合いで同じ方向を向けるんです。
データにまつわる「気軽な相談相手」が必要な理由
林 デイリーポータルZの場合、データに関しては何から手を付けたらいいのか分からない状況なんです。そもそも、「予想外のモノを見せる」という基本方針がまずあるので、それを変なところで発揮してしまうこともあって……。例えば、会員限定のメルマガに記載された購読解除リンクを押せば、1クリックで確認もなく解除できちゃったり(笑)。
読者がビックリするだろうなと思ってやったら、うっかりボタンを押してしまった人から「間違えて解除しちゃったんですけど」っていうメールが何通もきたので、その対応で逆に手間が増えて(笑)。だから、そういうUIのところでふざけるのはやめようと思いました。
新堀 それはすごいですね。読者の方もビックリするはずです(笑)。
林 これはさすがに相談するまでもないんですが(笑)。でも、もっと気軽に「ここにこういうボタンを設けて大丈夫ですか?」みたいな感じで、相談できる相手がいてほしいですね。
あとは例えば、「このデータが見たい」と思ってアクセス解析ツールでダッシュボードを作っても、途中で見なくなってしまって、「林が試しに作った版」みたいな適当な名前が付けられたダッシュボードの残骸が残っていたり……。
新堀 そのケースは案外“あるある”かもしれません。ただ、そもそも、一般的なアクセス解析ツールで標準的に取れるデータだけを使ってできることは限られていますからね……。リクルートであれば、必要なダッシュボードやデータの加工・集計方法、ログの取り方といった部分からアナリティクスエンジニアが事業企画の担当者と一緒に考えるので、無駄なダッシュボードが量産されることもないんです。
林 データにまつわる細かい悩みに親身に寄り添ってくれる新堀さんみたいな人が、うちの会社にもいたらな〜!!
正しいデータなくして事業成長なし。なぜリクルートはデータを重んじるのか
林 新堀さんから、2年前はアナリティクスエンジニアという職種も存在しなかったと伺ったのですが、そもそもアナリティクスエンジニアを「作ろう」と思ったきっかけって何だったんですか?
秋山 純(あきやま・じゅん)
株式会社リクルート
執行役員(プロダクト本部 販促、開発)兼 プロダクト開発統括室 室長
秋山純(以下、秋山) 数年前、僕が『SUUMO』の責任者をやっていた頃の話です。当時は、『SUUMO』のデータを補完する仕組みが整っておらず、例えばABテストをやってもその結果に信頼が持てなかったんですね。
ある部署では「ものすごく良い効果が出た」と言っているのに、別の部署では「データが間違っているから、あの結果は信用できないかもしれないよ」と言っている状況でした。
林 1つの結果を各部署でバラバラに解釈しちゃっている。
秋山 そうなんです。「データが本当に正しいのか」が常に疑問視されてしまう状況でした。だから、これは根本から正さないと、データをもとに事業判断ができないな、と思ったんです。
例えば、エンジニアがWebサイトを開発する時、ログデータの中身や形式を各エンジニアがそれぞれ好きなように設計するとします。そうすると、分かりやすいたとえで言うなら、同じページや機能でもスマホとPCで見た時に、ログデータの中身が微妙に違う、ということが起きたりしてしまいます。見るデバイスでログが異なるのでは、事業判断はおろか、短期的な成功や失敗すら正しく判断できません。
林 あまり気にしたことがなかったけど、言われてみればそうですね……。
秋山 そこで当時「(あらゆるサービスの)データにまつわるお悩みを解決する人」だった新堀さんたちが持てる力を発揮できるよう、「彼らが認める仕様じゃないとリリースしてはいけない」と現場に伝えたんです。つまり、「Webサイトから信じられるログデータが吐き出される状況こそ事業に不可欠である」というメッセージを発信しました。
林 事業判断の基になっているデータそのものが実は正確ではなく、正しい意思決定ができなくなるって、いろいろな会社でありがちですよね。
秋山 そうですね。一部の企画・開発サイドからは「新堀さんたちの言うことを聞いていたら、スピード感が損なわれる」という声も出ました。でも、事業の中長期的な展望を考えた時、やっぱり正しくて信じられるデータがあって、それをもとに何かを判断したり、プロダクトにフィードバックしたりする、このループが回らないと成長はないと思ったんです。だから、「データ基盤を司る人の声を聞け」ということを社内に喧伝する必要がありました。
当時はアナリティクスエンジニアという言葉もなかったので「新堀軍団」って呼称を付けて、「この軍団の話を聞こう」ということにして。
林 どんな会社でも「軍団」と名付けられるグループがありますよね(笑)。
秋山 軍団が、最近になってアナリティクスエンジニアと呼ばれるようになりました(笑)。
林 データが大事だというメッセージの背景には、中長期まで見据えてよりよいサービスを提供すべきだという前提がありますよね。つまり、リクルートの経営者はデータに対して理解がある。
秋山 そうですね。事業判断においてデータを最も重視する、という認識は経営層も共有しています。
林 データがグチャグチャでよく分からないけれど、売り上げが伸びているからいいか、とはならないんですね。
秋山 勝っているか負けているか分からないけれど、なんか勝っている風だからいいか、みたいな判断は実はメチャクチャ危なくて、気を付けなければなりません。
林 デイリーポータルZの場合、だいたい「なんか分からないけれどウケてます」ってことが多くて(笑)。なんかよく分からないから、似たようなことをちょっとずつ変えた打ち手を「全部」やろう、みたいな判断になりがちです。自分も「じゃあ試してみよう」って言っちゃうクセがあったりして、結局気合いで全部やろう、とデスマーチに陥っちゃう。
秋山 逆に、私たちは「全部やろう」とならないんです。データがあるのでやらないことを決められる。
林 それはいいですね! インターネットって、なんとなく「全部やるのがいい」みたいな風潮があるじゃないですか。コストも掛からないからって。でも、そこで働く人は疲弊しちゃう。データを使えば、そういう「気合いでなんとかしよう」ということにはならないんですね。
秋山 もちろん、会社を経営していく上でツラいことはいっぱいありますし(笑)、やっぱりやってみないと分からないこともあります。でも、「なんでもかんでもとにかく全部やるから」みたいな非効率性に発するツラさは感じないです。
林 経営者になったからこそ分かるのですが、すべてのリソースを本当にやるべきことに集中できるのはとても大きいですね。
秋山 結局それが一番大事といっても過言ではないくらいです。限られた開発リソースでビジネスの成果を最大化しなければならないので。
林 データの利活用っていうと、なんかクレバーで冷たい印象もするんですけど、もちろんクレバーなんですけど(笑)。でも、正しいアクションにリソースを割くための準備だと考えると、すごく堅実ですね!
「やらないことを決められる」 経営者としてのデータの向き合い方
林 実は僕、今まで「データなんて過去のものだし……」と思っているフシがありました。どうせならデータなんて参照せず、過去に誰も見たことがないものを作って、皆をビックリさせてやろうと。
秋山 素敵だと思います。でもせっかく何かを作るなら、成功確率をなるべく高めたいですよね。
林 そう、できれば全打席ホームランを打ちたい。でも、だからといってむやみにバットを振るのは、若くないのでもう無理です(笑)。たぶん、リクルートの人から見ると、デイリーポータルZはまだまだ無駄なところが多いと思うんですよね。
秋山 もちろん、データだけで全部の答えは出ません。でも、ストライクゾーンはある程度規定してくれるのではないかと思っています。
林 会社を経営していると、みんな好き勝手なことを言ってくるんですよ。どこかの企業みたいに「手帳を販売すればいい」とか(笑)。そういうのを一応メモに書くと、どんどんやることが増えていって、今度はどれをやればよいか分からなくなる。
やることはいっぱいあるけど、でも寝なきゃいけない。でもやることは無限にあって、どうしたらいいんだろうな……って最近思ってたんです。
今日秋山さんから、「正しいデータがあればやらなくていいことが分かる」と言われた。
読者にウケないものがあらかじめ分かって、その分のリソースでウケそうなものを作ることに集中できる。イベントをやるにしても、開催場所が「遠い」と言う人に対して、データをもとに「遠くてもここが一番良いんです」と主張することができる。
新堀さん、秋山さん、データを扱うことに対して前向きになれそうなお話の数々をありがとうございました!
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構成:青山祐輔
撮影:関口佳代