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データにまつわる“お悩み”を根こそぎ解決。リクルートのビジネスを支える影の仕事人「アナリティクスエンジニア」の素顔

リクルートの「データを用いた意思決定」を加速させるうえで、必要不可欠な存在が、アナリティクスエンジニアです。彼らは組織のなかでどのような役割を果たし、どのように事業へ貢献しているのでしょうか。そしてどんなキャリアやバックグラウンドを持っているのでしょうか。

新堀秀和さん、山家雄介さんトップ画像

データを利活用してカスタマー・クライアント双方の「不」の解消を目指してきたリクルートが、今注力する領域は「データを用いた意思決定の質向上」とそのための「データの整備」です。

そこにフルコミットするため、新たに生まれた職種がアナリティクスエンジニアです。例えば、図書館を作るのがデータエンジニアで、図書館に収納された本を使って価値を生み出すのがデータサイエンティストだとすれば、本の整理や目録の作成などを通じてさながら司書のような役割を果たすのがアナリティクスエンジニアです。言うなれば「データの整備人」。

リクルートにおいては、データを用いた意思決定を加速させるうえで、必要不可欠の存在です。

とはいえ、まだまだ一般的には知られていないアナリティクスエンジニアの仕事。彼らは組織のなかでどのような役割を果たし、どのように事業へ貢献しているのでしょうか。そしてどんなバックグラウンドを持っているのでしょうか。
そこで今回は、実際にアナリティクスエンジニアとして活躍されている山家雄介さん、新堀秀和さんにご登場いただき、知られざるアナリティクスエンジニアの仕事やキャリアについて深掘りしました。

※この記事は株式会社リクルートによるSponsoredContentです。記事末に、Amazonギフトカードプレゼントの告知もあります。

あなたの会社では誰がやっている? 既存職種の専門性に対応しない「厄介なデータ領域の仕事」

── おふたりの簡単な自己紹介をお願いします。


新堀秀和さんインタビューカット

新堀 秀和(にいぼり・ひでかず)
株式会社リクルート プロダクト統括本部
データ推進室 HR領域データソリューションユニット
HRデータソリューション部 HRデータマネジメントグループ

新堀秀和(以下、新堀) 前職まではWebサービスの開発エンジニアとしてフロントエンドやバックエンド、インフラ開発などを一通り経験したのち、2017年にリクルートにキャリア採用入社しました。

入社当時は、データ職種ではありませんでしたが、データマネジメント組織の立ち上げに参画し、現在に至ります。


山家雄介さんプロフィールカット

山家 雄介(やんべ・ゆうすけ)
株式会社リクルート プロダクト統括本部
データ推進室 HR領域データソリューションユニット
HRデータソリューション部 HRデータマネジメントグループ

山家雄介(以下、山家) 前職では、エンジニアやプロダクトマネージャー(PdM)的なポジションを経験し、最後はデータを使って開発組織の意思決定を支える仕事にも携わりました。その経験から「データマネジメントのスキルを極めたい」と考えるようになり、リクルートへ転職しました。

── おふたりがデータ領域の仕事に興味を持ったり、携わったりするようになったきっかけは何でしたか?

山家 リクルートへ入社する前、所属する事業部が解析ツールとして使っていたGoogle Analytics(旧バージョンのUA、ユニバーサル・アナリティクス)が計測を終了するのにともない、新バージョンのGoogle Analytics 4(GA4)へ移行したことです。

UAとGA4ではデータの互換性がなく、UA時代に取得できたデータの一部はGA4で取得できなくなる一方、うまくログを設計すればUA時代に取得できなかったデータもGA4で取得できる、という前提がありました。

そこで、プロダクトのデータマネジメントに関わってきた経験を活かし、状況把握に必要なログを自分たちで設計し、サイトの状況を継続してモニタリングできるようなデータ基盤を構築しました。それまでも自ら望んで社内ニーズのあるデータの仕事を引き受けていたのですが、この経験こそ、データマネジメントの面白さや醍醐味にはまっていくきっかけとなりました。

新堀 自分は、リクルート入社後に担当したあるプロダクトの刷新プロジェクトで、ログに関する要件定義をせず(データの互換性を考慮せず)に開発を進めたところ、プロジェクトの佳境でトラブルが起きてしまったという出来事です。モニタリングの連続性がなくなり、事業を支えるリコメンデーション機能にも影響が出てしまいました。

この経験から「データは壊してはいけない」「壊れたデータは元に戻らない」と痛感し、データマネジメント組織の立ち上げに参画させていただくことにもつながりました。

── おふたりとも仕事の中身は違えど「データを壊さないためにどうするか」という課題意識にたどり着いているところは面白いですね。ところで、ログの設計はデータサイエンティストやデータエンジニアがやっていたんですね。

新堀 かつてのリクルートもそうだったのですが、今もさまざまな企業でデータサイエンティストやデータエンジニアなど他の職種が担当しているケースが多いのではないでしょうか。

山家さんの場合は、PdM。そうした役回りの方は案外相当数いるのではないか、と思います。

── 山家さんは、意識的にアナリティクスエンジニアという職種を目指していたのでしょうか。

山家 意識的に目指していたわけではありません。ただ、データを活用してプロダクトの状況把握や改善を進めるうえで、「既存の職種の専門性に対応しない厄介なデータ領域の仕事」があるのはぼんやりと感じていました。さらに、転職活動を始めてみたら、さまざまな企業でこの職域に対するニーズがあることも分かりました。

これらが「アナリティクスエンジニア」という職種で定義されていることを知るのは、もう少し後の話ですが。

── アナリティクスエンジニアという職種の必要性を感じたきっかけはなんでしょうか?

山家 大きなきっかけはありませんが、PdMとしてプロダクトの成長施策を検討するうえで、「(整備しなければ)使えるデータはかなり限られる」ことに気づいたからかもしれません。例えば、Google AnalyticsだとPV数やセッション数、コンバージョン数といった指標はモニタリングできますが、それらを全部つなぎ合わせて、ユーザーがファネルをどう通ったかサーバサイドに記録されたデータまでつなげて確認するのは結構難しいんです。

施策を正しく振り返るためには、言うまでもなくデータの深い分析が必要です。例えば、PV数が増えた要因は検索エンジンでたまたま評価が上がったからなのか、あるいはプロダクトの改善施策の効果が出たからなのか。そこは自分でログを設計し、分析していくしかありません。

一方で、そうしたデータの整備を片手間で進めるのは非常に大変だったということもあります。前職でもいっそのことプロダクトマネジメントは他の人に任せ、自分はデータマネジメントに携わったほうが、全体としていいアウトプットが出るのではないかとも感じていました。だからこそ、転職してキャリアチェンジしたという感覚もありませんでしたね。

「プロダクトマネジメント組織にいない」からこそ味わえる楽しさとは

── アナリティクスエンジニアは、リクルートではどのようなプロジェクトに関わっているのでしょうか。プロジェクトの内容や思い出について教えていただけますか?

山家 手がけたプロジェクトの一つをご紹介すると、2024年1月にIndeedが提供を開始し、リクルートのATS(採用管理システム)や求人サイトも参画している求人配信プラットフォーム『Indeed PLUS』で、事業がうまくいっているかをモニタリングするデータマート(データ分析基盤)をプロダクトマネジメント組織と連携しながら設計し、開発しました。

Indeed PLUSは『リクナビNEXT』や『タウンワーク』などの複数の求人サイトと、求人情報を載せる企業が利用する複数のATSをつなぎ求職者と求人のより効率的なマッチングを実現する求人配信プラットフォームです。

これまでも応募数をはじめとする基本的な指標は求人サイト単位でモニタリングしていました。しかしながら、ジョブボードの仕様やシステムはサービス間で異なります。それに、これまでの求人とIndeed PLUS求人の効果を詳しく比較するため、新たに計測することになった求人サイト上の求職者のアクションも複数存在しました。

そうした違いがありながらも、検索から応募に至る求職者の行動をうまく抽象化し、一つの統一した指標で比較したいというニーズがプロダクトマネジメント組織にあったんですね。

新堀 プロダクトモニタリングの要件を達成するためには、リクルート側とIndeed側の両方で発生するデータに詳しい状態で開発しなければならず、開発は骨の折れるプロセスだったと思います。山家さんはそれを、システムの中身まで深く掘り下げて、どこからどのようなデータが出てくるのかを把握したうえで分析基盤を作っていました。気がついたらIndeed PLUSのシステムにすごく詳しくなっていましたよね。

新堀秀和さん、山家雄介さんインタビューカット

山家 そうですね。この場合、どのタイミングでデータが生まれ、どんなプロセスをたどってIndeed PLUSのシステムにやってくるかを詳しく把握しなければ、データマートは設計できませんでした。

さらに、このプロジェクトでは、出た後の初速もモニタリングしたいというプロダクトマネジメント組織のニーズから、そもそものデータがない状態で開発を進め、2023年9月のサービスリリースの二週間後には(データマートを)ローンチしていました。

新堀 通常、どんなに早くてもデータが発生してから1~2カ月くらいは待つものですが、今回は違いました。

プロダクトのようにワイヤーフレームがあるものと違って、今回の開発はデータマートのうっすら輪郭しかないところから作り始め、そこを埋めるパーツを探し、構造化して埋めていく、というプロセスで設計していきました。そのために、システムの内容を見て理解するだけでなく、ステークホルダーとコミュニケーションを取り「こういうデータが出力されるので、こういうモニタリングになりますよね?」と適切な質問を投げかけるプロセスも必要なんです。

── そうやってさまざまなスキルが要求されるアナリティクスエンジニアの仕事ですが、やりがいを感じるのはどんなときですか?

山家 データにまつわる解決の難しい問いがあったとして、「こうやってデータを見れば解決する」という自分の考えたアーキテクチャが、マーケターをはじめとする社内のデータユーザーに重宝される、「今まで分からなかったことが分かった」といった反応が引き出せる、そこから事業価値のある示唆が導き出せると嬉しいですね。

Indeed PLUSの事例も、今まで比較できなかった指標を比較できるようになることで、プロダクトマネジメント組織に深い気づきを与えられていますし、こういった取り組みはプロダクトの中でさまざまな役割を担当するのとは違った面白さがあると感じています。

今後も、プロダクト開発・運用のなかで、どこでアクセルを踏むのが一番効果的なのか、例えば「ここに力を入れれば、プロダクトの成長により寄与できそうだ」というレバレッジのかかる部分を見つけ出す手助けができたらと思います。

新堀秀和さん、山家雄介さんインタビューカット

新堀 アナリティクスエンジニアに限った話ではありませんが、一つのプロダクトを開発する難しさとは異なり、いろいろなプロダクト、いろいろなステークホルダーがいて、いろいろなKPIがある中で、まさにパズルを解くように入り組んだ状況を紐解き、一つの答えに近づいていくプロセスが楽しいなと思います。

「難しい意思決定」をデータの力で支えるアナリティクスエンジニア

── ここまでアナリティクスエンジニアの仕事内容を概観してきましたが、アナリティクスエンジニアとして働く上で役立つスキルはありますか?

山家 何か一つの指標を計測・集計したら、複数の観点で検算することでしょうか。例えば、自分たちが作ったデータは、部門の売上収益のような、絶対に揺るがない「Single Source of Truth」と呼ばれる信頼できる情報源と比較してチェックする。

そもそも、「正しい見方をしなければ正しい考察は得られない」と思っています。例えば、担当するサービスのPV数増加が、ユーザー一人あたりのページ閲覧数増加など「プロダクトの改善に起因する内部要因」によるものなのか、あるいは検索エンジンからの評価が変わって流入数が増えたといった「外部要因」によるものなのかは分かりません。なので、KPIは意味のある内訳で把握して、正しく見ることが大事です。

山家雄介さんインタビューカット

新堀 エンジニアとしての基礎的な知識や開発経験も強みになります。例えば、Webビーコン型(ページに埋め込まれたタグからアクセスデータを取得する)解析ツールを扱ううえではフロントエンドの知識が必要ですし、サーバのログの仕組みを知るにはApacheやNginx、Tomcatといった技術を知っておかなければなりません。さらに言うと、営業の行動が蓄積されているSalesforceなど、データベースの仕組みにも明るくなっておいたほうがいいでしょう。

山家さんの場合は、PdMとサービス開発の両方の経験があるため、そこがうまくつながったのかなと。私自身も、サービス開発を経験するなかでKPI測定のためのダッシュボードを作った経験があり、データの収集方法について勘所があったことが今の仕事に役立っていると思います。

── では、アナリティクスエンジニアに向いているのはどんな人でしょうか?

新堀 ハードスキル的には、サービス開発に携わっている人や、今まさにデータサイエンスやデータエンジニアリングをやっている人ならフィットするとは思います。

また、アナリティクスエンジニアだけではないのかもしれませんが、ソフトスキル的には「泥臭いこと」が好きな人でしょうか。

データサイエンスにおいてモデルを適用するところは1割に過ぎず、データの準備が8割、9割を占めるとも言われています。その8割、9割に目を向けて、サボらず愚直にデータと向き合える人は非常に向いていると思います。

アナリティクスエンジニアって、サボった分だけ、後で自分にきっちりしっぺ返しがくるんですよ。データが合わないことは、意思決定の遅延や非効率、失敗に直結します。しかも、冒頭でも話した通り、データは一度壊れると二度と修復できないので。

また、データを整備することがゴールではありません。それによってどんな気づきを提供し、PdMの意思決定を支援し、事業や社会に貢献したいかという思いを持っていることも重要です。極端な話、PdMの役割を奪うような形にはなりますが、意思決定を自動化することも可能なのではないかな、と考えていたりもします。

アナリティクスエンジニアは時に「十徳ナイフ」にたとえられます。一つひとつのナイフの切れ味が鋭いわけではありませんが、複数の機能があることで、その分いろいろなプロダクトを生み出せる。この便利さや柔軟性を活かせれば、活躍の機会はまだまだ広がるはずです

新堀秀和さん、山家雄介さんインタビューカット

── ありがとうございます。最後に、おふたりがこの先やりたいことや目指すキャリアを教えてください。

山家 より難しい意思決定を手助けできるようなポジションにいきたいですね。

例えば、複数の広告媒体に、広告予算をどう配分すれば最も効率的に求職者を集められるか、という課題があるとして、現時点はマーケティング部の担当者が利用できる限られた分析のデータソースから各広告プラットフォームの今後の広告効果を推定して予算計画を立てるしかありません。そうではなく、各広告プラットフォームから集客した後のプロダクト側への効果をより深く分析できるようなデータ基盤を提供することで、より確信を持って、あるいは今までになかった視座で広告予算を配分できるようにする。最終的に、広告予算という投資を、よりプロダクトの成果につながり、それが詳細に把握できる形で振り分けることができたらいいなと思っています。

また、プロダクトの理解はあるもののSQLのスキルはそれほど高くない人が、業務に必要なプロダクト分析を苦労せず行えるデータ基盤を作ったり、複数あるデータ基盤について「どんなときにどれを使うべき」といったドキュメントを整備したりと、より多くの人がデータを活用して意思決定できるよう支援していきたいですね。

新堀 データ基盤の統廃合を進めていきたいです。アナリティクスエンジニアという職種を定義する前は、ステークホルダーからの要求にこたえるだけの形で分析環境を提供していました。その結果、プロダクトに関わる人以上のデータマートを開発/運用している、という笑えない状況になったこともありました。その状況を、ビジネス理解とエンジニアリングの力で打破しようとしてきましたが、最近ようやく適切なデータ分析基盤が整備できてきたと思っています。

今後はそれをさらに加速させ、ステークホルダーの期待に応えつつ、どう統廃合していくかを模索していきたいと考えています。

新堀秀和さん、山家雄介さんインタビューカット

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取材・文:高橋睦美
撮影:曽我美芽