人生で一番高い買い物となることが多い「マンション購入」。購入を一度でも検討したことがある人なら、「このマンションの販売価格、高いの? 安いの?」と判断に悩んだことがあるのではないでしょうか。Webサイト上で簡単に適正価格を把握できるサービスがあると聞いて、マンション情報サイト「マンションレビュー」を運営するグルーヴ・アールさんにお話を伺いました。不動産査定の“プロの視点”から、不動産購入を検討する際のコツや心構え、押さえておくべき情報も教えていただきました!
──まずは「マンションレビュー」の概要について教えていただけますか?
川島 マンションレビューでは多くのコンテンツを取り扱っていますが、大まかに言えばマンションの資産価値情報、相場情報(新築時~現在までの販売価格履歴、賃料履歴、騰落率*1)、居住者の口コミ情報などが分かるマンション情報サイトです。不動産を購入する際の不安を減らし、納得感を高めるために、不動産会社が扱うようなデータ・情報を一般消費者向けに提供しています(※無料会員登録をすると、新築時価格表以外のすべてのコンテンツを閲覧可能)。2017年6月に、新たに「適正価格診断」という機能をリリースしました。
──マンションレビューを立ち上げた経緯を教えてください。
株式会社グルーヴ・アール 代表取締役社長
川島直也さん
川島 マンションレビューは2010年4月にオープンしました。私も仲根も前職では不動産査定業務に携わり、非常に多数の査定を行ってきました。実際に家を購入する方々と何百人も接してきて、「不動産はとても高い買い物なのに、お客様はあまり情報がない中で決断をしている」と感じました。そこで双方の架け橋になって、分かりやすく情報を伝えられる事業をしたいと考えました。
──課題意識について詳しく教えていただけますか?
川島 前職の経験から、不動産取引のプロセスの中で、ユーザーさんがどんなポイントで疑問や不安を持つのか、どんな情報が足りないのか分かってきました。販売価格の妥当性や将来的な物件の資産価値、実際の住み心地などを知りたがっていましたが、それを知るすべはありませんでした。我々は、資産価値がどう決まるか、価格査定はどのように行われるかなど不動産の実務については詳しく知っています。その知識とユーザーさんからの口コミ情報を掛け合わせ、それを全部システム化し、Webを通じて提供していきたいと考えました。
仲根 消費者の方が中古で不動産を買おうと思ったとき、その販売価格が高いのか安いのか判断できないんですよね。そのような適正価格などを簡単に知ることができる中立的なWebサービスが存在することで、不動産取引の一助となるのではないかと考えました。
──オープン時、既に不動産物件情報サイトが多くあったと思いますが、参入をどう考えましたか?
川島 大手不動産情報サイトで自分好みの情報を探して、いいなと思った物件があれば、その物件をデューデリジェンス(資産価値を適正に評価・査定して、価格が適切であるかどうかを判断しやすくすること)するために、マンションレビューでさらに詳しく調べるという使い方を想定していました。たくさんの販売物件情報が集まっている大手サイトと、一つのマンションの情報を掘り下げて確認できるマンションレビュー、一緒に使っていただくのがベストな情報の有効活用だと考えます。
■ 不動産会社と消費者の間には「圧倒的な情報量の差」がある
──「消費者が不動産取引で不安に思うことがある」という点について詳しくお聞かせください。
川島 取引の際、不動産会社は、宅地建物取引業免許を受けた不動産会社のみが閲覧できる「REINS(不動産流通標準情報システム)」というデータベースを使います。REINSには、現在販売中の物件情報と過去の成約価格データがほぼすべて含まれています。そのデータベースを見られるか見られないかの差だけなのですが、不動産会社と消費者の間ではその差が圧倒的に大きいのです。不動産会社側は、決して消費者に対して情報を隠しているわけではないんです。ただ、営業担当者のスキルや気配りなども関係して、お客様それぞれの個別事情に合わせたピンポイントな情報を、知りたいときにすぐに提供できているとはいえないと感じました。
仲根 マンションを買ったことがない場合、消費者の方は「何が分からないのかも分からない」んです。そこが購入時の漠然とした不安感につながっています。でも、それって、不動産会社側から解決していくのはなかなか難しいんじゃないかと思います。もし不動産会社が本当に良い情報を提供していたとしても、お客様側が「結局売りたいだけでは?」と疑念を持ってしまうと、見え方は変わってしまいますよね。
──信頼できる不動産会社探しも大事ですね。どう判断すればいいでしょうか?
株式会社グルーヴ・アール 専務取締役
仲根臣之介さん
仲根 不動産会社を信頼できるかどうかの判断基準は、物件や契約などの説明の際に、根拠立てて説明してくれるかどうかだと思います。例えば、資産価値が高いとされているマンションを紹介されたら「なぜ資産価値が高いのか?」と聞き、販売価格の妥当性が分からない時には、「このマンションの販売価格、相場から見ると割高ですか? 割安ですか?」と尋ねるといいですね。
川島 あとは、「その地域の不動産情報に精通しているかどうか」「このエリアの不動産のプロだと思えるくらいの知識を持っているか」を判断基準にするといいと思います。
- その地域での過去の取引事例
- ネットでは未公開となっている販売中の最新物件情報
- マンション別、町名・丁目別(土地・戸建ての場合)の相場観
理想を言えばこれくらい把握している担当者だといいですね。学区の評判などの地域にひも付く情報は、実際に住んでいる人の話や地域情報サイトなどの方が正確で良いものを得られるので、個人的にはそこは不動産会社に求めなくて良いかと思います。
──相場観……。「高いお金を払ってでも住みたいと思える価値があるかどうか」が大事なんですね。
川島 結局は実際に住む人の主観という話ではあります。それぞれのマンションにはそれぞれに良い点があり、その良い点を気に入って生活を営む人がいます。住んでみて「この物件を選んで良かった、いい買い物をした」と思えれば全く問題ないのですが、価格が適正かどうか確認できていないと、後で「住んで良かったけど、すごく高い買い物をしちゃったね」と残念な気持ちになってしまう。要は、不動産においても他の買い物と一緒で、「価格と価値がきちんとマッチしているかどうか」に尽きます。
■ 不動産選びは「情報の定点観測」がポイント。そこでマンションレビューを使ってほしい
──消費者の立場からすると、不動産の勉強ばかりするわけにもいきません。不動産査定の経験という観点から、情報の集め方についてアドバイスをお願いします。
川島 不動産はその名の通り、動かすことができないものなので、基本的にはその地に店舗を構えている会社に一番情報が集まります。
もし私がマンションを買おうとするなら、中古マンションに関しては、その地域に強い不動産仲介会社さん何社かに、「この4つのマンションで売り物件が出たらすべて送ってほしい」とお願いしておきます。また、新築マンションに関しては、そのエリアで販売中の新築マンションすべてについて各売主のディベロッパーに資料請求します。新築マンションの資料には部屋別の販売価格が載っていないので、モデルルームに行って販売価格も把握します。すると最新の物件情報や価格改定情報を送ってくれるので、それを見て都度「住みたいか、住みたくないか」「割高か、割安か」を判断します。Excelなどで「何月何日、◆◆マンションの何階、広さ、価格、坪単価……」などデータをまとめておくと理想的ですね。
仲根 物件の定点観測が重要です。いつ、いくらで、どんな物件が売りに出ていたかを見続けることによって、相場観を養えます。相場観を持っていれば、安い物件がぽんと出てきたときに、それが高いか安いかすぐに判断して購入の意思決定ができます。割安な物件はいろいろな人が注目しますから、いち早く手を上げられるかどうかが大事です。
川島 同じマンションでも、70平米の部屋であれば当然、50平米の部屋よりも高いですよね。そこは坪単価に割り直して見ていきます。単価を出せば、適正相場を把握できます。間取りも同様に定点観測すれば「この前の物件と広さも階数も坪単価も同じだけど、間取りはこちらの方が横長のリビングで、部屋が明るく価値が高いな」と判断できる要素がそろいます。さらに、不動産会社さんに実際の成約事例を過去1~2年分聞くと、かなり情報の質は変わってくると思います。
──相場観を持つのは結構難しそうですね……!
川島 個人でそこまでやるのはなかなか大変ですが、時間をかけてじっくり購入を検討するなら、チャレンジしても損はないと思います。自分自身の指標で「この物件は◯点」と点数を付けておいてもいいですね。自分が買おうとしている物件が「高いか、安いか」「住みやすそうか、そうでないか」を判断して、自分できちんと納得できて住みたいと思えるようにするという流れです。
仲根 不動産会社によって得られる情報の種類、情報提供スピードが異なりますので、何社かに並行してお願いしておけば、そのエリアの最新情報がいち早く届くはずです。1つの会社のみに人気物件の売却依頼が来て、それがネットなどに公開される前に売れちゃうケースもあるんです。そのような情報を逃さないためには、複数の不動産会社に「●●マンションの5階以上で、価格がマッチしていれば絶対買いたいので、ぜひ最新情報を紹介してください!」というふうに声を掛け、「買う人」だと思ってもらい、仲良く付き合っておく……というのは大事ですね。
──物件の数が多いと結構大変なのでは?
川島 実はそこでマンションレビューを見ていただければ、それらの情報がほぼ分かるんです!
──なるほど!
川島 マンションレビューでは、過去5年以上の販売価格や賃料履歴などの情報がマンション別に分かりますし、適正価格もピンポイントで調べられるんです。今住んでいるマンションの情報を試しに検索してみてください。
▽ 中古マンション検索|偏差値・価格相場・自動査定・口コミ|マンションレビュー
──「適正価格がピンポイントで調べられる」というのは?
川島 中古不動産の売買には「成約価格」と「販売価格」の2つがあります。売買する際には販売価格通りに成約する以外に、価格交渉が入るケースが多くあります。例えば、4,480万円で売りに出ていた物件に「4,300万円で買いたい」という申し込みがあって、成約したとします。この場合、成約に至った4,300万円という価格は、先ほど紹介した不動産会社向けデータベースのREINSでしか見られません。しかし、マンションレビューでは、4,480万円という正確な販売価格は閲覧できるんです。
仲根 だいたい中古マンションの価格交渉では販売価格の2~5%ほど値下げされて成約に至るケースが多いので、マンションレビューで販売価格を調べてから「販売価格×95~98%」を目安に成約価格を推定すれば大きくずれることは少ないと思います。もしそれよりとても高い販売価格の物件の購入を検討している場合は「これは割高かも?」という判断ができますね。
販売価格の履歴の一例。「販売価格×95~98%」で計算してみればだいたいの目安となるとのこと。
川島 複数の物件を比較検討したいときに、不動産会社さんにいきなり「このマンションの成約事例を全部欲しい!」なんて言い出しにくいと思うんです。そこでぜひマンションレビューを活用していただきたいです。
仲根 そもそも、買おうと思った瞬間にすぐ過去の情報を調べるのは不可能ですよね。消費者の代わりに定点観測の役割を果たすのがマンションレビューなんです。しかも、冒頭でご紹介した「適正価格診断」という機能を使えば、30秒で適正相場まで把握できます。
──Webであれば何件でもチェックできますね。
仲根 定点観測や適正相場の把握は、不動産会社の営業スタッフが相場感を養うために常に日々の業務の中でやっていることなんです。同じようなことを消費者もできるようになれば、不動産会社と消費者の間の「情報の非対称性」が解消されて、不動産リテラシーの向上につながると考えています。
川島 これまでも販売価格の履歴を一覧で見られるようにはなっていたのですが、一般の消費者の方にとっては、どうしてもそれを見るだけでは適正価格まで分からない。そこでリリースしたのが「適正価格診断」です。ここで「何平米」「何階」「向き」など検討している物件の条件を指定すれば、簡単に推定相場と価格帯別判定(割安ゾーン、適正ゾーン、割高ゾーン)が表示されます。
適正価格診断の一例。「専有面積」「バルコニー面積」「角部屋かどうか」「リフォーム実施有無」など条件を変えると、推定相場と価格帯別判定がすぐに表示される。
■ 不動産購入で良い判断ができるかどうかは、良い情報が得られるかどうかにかかっている
──マンションレビューを使ったユーザーさんの反応はいかがですか?
川島 特に会員向けのアンケートなどは実施していないのですが、「資産価値のことは分からなかったので参考になった」「無事買うことができた」「ここはこうした方がいいんじゃないか」などのご感想をいただくことはあります。もちろん、わざわざ送ってくださるユーザーさんのご意見なので、偏りはあると思うのですが……。
仲根 たまに電話でも問い合わせが来ます。「こんな情報が無料提供でいいの?」なんて言われることもありました(笑)。実際にマンションレビューを見てから価格交渉に臨んだという方のお話も聞いています。
川島 基本的な情報は無料会員登録で閲覧できますが、「このマンションの新築分譲時の価格を知りたい」という方には新築時の価格表を有料で提供しています。
また、物件を買う方は、物件を売る方でもある場合が多いです。家族が増えた、介護、転勤など、いろいろな事情で住み替えが発生します。「マンションレビューを見に来る」ということは「住み替えを検討している」ということなんですよね。売却を検討する際にマンションレビューを経由して査定していただければ収益になるという、長期的なビジネスモデルで運営しています。
──「適正価格診断」の他におすすめの情報は何でしょう?
川島 ユーザーさんに一番見ていただけているのは「マンション偏差値」ですね。マンションの資産価値を判断するための情報です。
仲根 不動産査定のロジックを基に、駅距離や築年数などの物件概要情報から独自のポイント計算をして、全物件で比較した上で、指標として提供しています。駅距離、築年数などパラメータはいろいろあります。
「マンション偏差値ランキング」
戸数や築年数などの情報を、不動産査定のロジックを基にマンションレビュー独自の計算で提示している。
──今後の展望について教えてください。
仲根 マンションレビューのコンセプトは「情報の非対称性を埋める」です。データを持っている他の企業さんと連携しながら、価格に関する情報で公開できるもの、購入の意思決定に役立つ情報はどんどん公開していければと思っています。
川島 不動産は非常に高い買い物なのですが、価格や資産価値に関する情報は全く足りていないと感じています。良い判断ができるかどうかは、良い情報が得られるかどうかにかかっています。今後も、良質な情報に簡単にアクセスできるようにすることを追求していきたいです。また、「不動産の資産価値の判断ポイントはここだ」というような“プロの視点”から見たコンテンツもさらに織り交ぜていきたいですね。
──ありがとうございました!
[PR]企画・制作:はてな
*1:とうらくりつ。新築時と現在の中古価格の価格変動率のこと。