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技術顧問って何する人? flexyで顧問を導入したミイダスの青田大亮さんと、顧問に詳しい増井雄一郎さんに語ってもらいました

よく「技術顧問」と耳にしますが、IT技術者の課題をどのように解決してくれるのでしょう? flexyを活用して技術顧問を導入した「ミイダス」の青田大亮さんと、自身も技術顧問として活躍する増井雄一郎さんに語り合ってもらいました。

three men with flexy logo bords

IT・Web開発のさまざまな領域で、新しい手法が次々と生み出されています。少人数のベンチャーでは全てをキャッチアップすることも難しく、技術の選定や導入における課題に直面するチームも多いことでしょう。

株式会社サーキュレーションが運営するflexyでは、ハイスキルなエンジニアの自由な働き方を提供するなかで技術顧問の紹介も行っています。技術顧問という存在は広く知られるようになってきましたが、果たしてITエンジニアが抱える課題をどのように解決してくれるのでしょうか?

flexyを活用する「ミイダス」の青田大亮さん(冒頭写真右)と、元トレタCTOで現在は自身も技術顧問として活躍する増井雄一郎さん(同写真中央)に、技術顧問についてさまざまな視点から語り合ってもらいました。司会はflexyの野谷勤さん(同写真左)です。

flexy flexy
ハイスキルなエンジニア、デザイナーの自由な働き方を提供するサービス。さまざまな言語による開発系の案件はもちろん、エンジニアの人事評価制度構築や採用支援、アジャイルやスプリントなどのチームビルディング、コードレビューやリファクタリングなどのテーマの技術顧問や外部CTOの紹介も行っている。

※この記事は、株式会社サーキュレーションのflexyによる記事広告です。

ミイダスが技術顧問紹介サービスを選んだ理由

野谷 青田さんに最初にお会いしたのは昨年(2018年)の4月でしたね。flexyで技術顧問を紹介していることは、そのとき簡単にお伝えしたのですが、それをきっかけに今ではミイダスの事業に複数の技術顧問がジョインされています。

まず「なぜ外部から技術顧問を招きたかったのか?」という課題感からお話しいただけますか。

青田 私は2015年の3月にパーソルキャリアに入社して、まだ開発中だった「ミイダス」のプロジェクトに参加することになりました。ミイダスはその年の11月にスタートしたのですが、おかげさまで法人・転職者共に順調にユーザーが増え続け、3年もたつと解決すべき課題や改善点がいろいろ見えてくるようになったことがきっかけです。

増井 サービスリリースから規模が拡大し、一段落したところで課題は見えやすくなりますよね。ちなみに当初の開発部門はどのような体制だったんですか?

青田 私が入社する以前は、社内の情報システム担当がグループの情報システム子会社に委託して開発していました。しかし「もっとスピーディに開発したり、先進的な技術を使っていける体制にしていきたいよね」という話になり、ミイダスは私や上司も含めて7〜8人のエンジニアが集まり、企画担当の社員と共に開発してきました。

ほとんどのエンジニアが当時は人材業界の経験がなかったので業界知識がなかったり、企画もシステムに「何をお願いしていいか分からない」状況だったりしましたが、「とにかく動くものをどんどん作っていこう」ということで開発を進め、それに応じて順調にサービスも大きくなってきたわけです。

野谷 インハウスで初めて開発したサービスということですか。

青田 はい。それでサービスが大きくなると、やりたいこともいろいろ増えます。ところが、システムを改修してサービスを止めてしまったら取り返しがつかないほどビジネスも成長しており、気軽に新しいことを試しにくい状態になってきたんです。

以前は規模も小さく、優秀なフリーランスエンジニアに業務委託することで対応できていましたが、いよいよ「自分たちだけでは解決するのは、時間もかかるし、難しい」というタイミングで技術顧問の方に入っていただくことにしました。

増井 対処療法ではなく、根本的な課題解決が必要になったということですね。確かに技術顧問を頼むタイミングのように思います。

青田大亮さん

青田 大亮(あおた・だいすけ)パーソルキャリア株式会社 ミイダスカンパニー ゼネラルマネジャー

miidas ミイダス 企業向けサイト / 転職希望者向けサイト
採用したい人材に、企業から直接アプローチすることができる中途採用サービス。2015年11月リリース以来、30,000社以上の企業が導入している。登録した転職希望者は、300万人の転職データ(職務経歴や経験、スキル)から自身の市場価値を診断でき、診断結果を企業へ公開することで、適正年収・その他の条件に合致した求人を持つ企業から直接面接のオファーを受けることができる。

「経験を買う」ということ

野谷 青田さんから「技術顧問を入れて進めていきたい」ということで、昨年11月にいくつか具体的な課題を伺い、それぞれ専門とする技術顧問の方に12月から入っていただいています。1つは、データベースやインフラの整備。そして、Salesforceの有効活用というものもありましたね。

青田 データベースやインフラについては、先ほどお話ししたようなサービス規模の拡大によって課題となったものです。このままインスタンスを無限に増やし続けるか、それとも設計段階でもっといい方法があるのではないかと考え、その点について詳しい方からのアドバイスを必要としました。

Salesforceでは、やりたいことを実現するために、ツールに詳しい専門家の知見が必要となりました。2年前から導入しているのですが、現在は営業社員も100名に増え、顧客情報の管理や社内他システムとの連携に当たって、「このやり方で良いのかな」と悩むことが増えたのです。最初の設計と、Salesforceの設計コンセプトとが合わないままに開発を進めると、そのままズルズルと取り返しがつかなくなってしまうおそれがあり、それは避けたいと考えました。

増井 基本的に「経験を買う」という感じですね。僕もSalesforceに挑戦したことがあるのですが、「これに手を出すと、永遠に終わらない」と思ったんです(笑)。だから前職のトレタでSalesforceを導入するときには、やはり外部の会社にお願いしました。

増井雄一郎さん

増井 雄一郎(ますい・ゆういちろう)株式会社トレタ 元CTO masuidrive

知見と経験に基づくアドバイスの強さ

野谷 技術顧問が入ったことで実感するメリットはありますか?

青田 やりたいことや企画していることに対して、実績のある方がアドバイスをくれたり、太鼓判を押したりしてくれるのは非常に有益だと思います。

自分で調べても「この方法なら大丈夫だな」というところまではたどり着くのですが、それが本当に大丈夫かどうかは分かりません。そうしたとき、いろいろな事例を紹介してくれたり、より良いやり方についてアドバイスがあるのは心強いですね。

増井 トップを説得するときに「専門の知見がある人がこう言っていた」というのは大きいですよね。説得力が違います。実際、経験のある人が「できる」というのと、調べただけで「できる」というのとでは成功率も異なると思います。

青田 それで思い出しましたが、トップとのミーティングで発表する資料作りで的確なアドバイスをいただけたことも大きかったです。「この案を通したい」という粗筋を伝えると、「こういう情報を入れておくといい」とアドバイスをいただけて、テクノロジーを知らない方にも納得してもらえる資料になりました。

やはり「知見や経験があるって強いな」と思った次第です。

増井 知名度がある人の言葉は信用されやすいのも事実ですから、僕もいろいろな企業からテクノロジーに関する相談を受けるときに「技術に詳しくない人を説得するには、僕みたいな外の人間の口をうまく使うといいよ」と勧めてます(笑)。

伴走してくれる人

青田 もう1つ、事業との関係性を見て優先度を付けていただいたことも大きかったと思います。例えばデータベースのチューニングでいえば、最大の課題は「レスポンスの遅さ」だったので、一番遅いところから順番に対処していくつもりでいました。

ですが、技術顧問の方に「セールスやマーケティングで何か施策を行う予定はありますか?」と聞かれて、われわれ開発側では「遅いものを速くする」ことしか気にしていなかったことに気付いたんです。欠けている視点を補ってくれたことは大きかったですね。

増井 技術顧問は「伴走してくれる人」とイメージすると分かりやすいでしょう。自分の代わりに走るのではなく、伴走して、より良い状態になるようにアドバイスする存在ですね。

対比するなら、外部の会社に頼む場合は、その会社の人が先に走ってしまうイメージです。その方が早くゴールできるんですが、自社に何も残らなくなってしまうんですよね。

野谷勤さん

野谷 勤(のや・つとむ)株式会社サーキュレーション flexy事業 リーダー コンサルタント

課題解決は「3カ月を1クール」で考える

野谷 技術顧問と仕事を進める上で、難しいと感じた点についてはいかがですか。

青田 当初はペースが分からなくて、悩むことがありました。例えば最初の数カ月はいろいろな相談をして、話も非常に盛り上がるのですが、そのうち調査や準備、修正の時間を要するようになり、こちらの対応が間に合わないケースが増えてきたんです。

次の回までに修正する作業が間に合わず、ミーティングで何も提出できないこともありました。データベースのチューニングにしても、課題を洗い直してみるとどんどん深みにはまっていって、どこを優先して、どこまでをお願いすればよいかで困ったことがあります。

増井 最初の段階では課題自体が不明瞭なので、相談に時間を費やします。そこから実際に手を動かすフェーズに移ると、今度は自分たちで動かないといけない。だから、技術顧問の方にお願いする仕事量には、“波”が出てきます。

個人的な実感値ですが、たいていの課題は「3カ月を1クール」として対応できると考えています。そのため僕の場合、顧問や相談の契約を3カ月区切りにしてるんです。なぜなら、だいたい3カ月たつと課題そのものが一段落するから。

また、解決に向けて手を動かすフェーズに入ったら、これまで週1回の対面ミーティングだったものを、チャットやビデオ会議に変えたり、頻度を減らしたりするなど、少しトーンダウンすることも必要だと思います。

フリーランスエンジニアと技術顧問は何が違うのか?

増井 ところで、僕もひとつ疑問があるんですよ。先ほど青田さんも「優秀なフリーランスエンジニア」と言ってましたが、職種として「技術顧問」と業務範囲が似てますよね。いい機会なのでお二人からも意見をもらいたいのですが、どういう違いがあるんでしょう。

僕もそういう仕事をしているのですが、企業がどんなきっかけで「技術顧問にお願いしよう」と考えるか、それとも「フリーランスのエンジニアに業務委託しよう」となるのか、そのあたりの違いがよく分からないんです。

野谷 「技術顧問」と「フリーランスエンジニア」の違いについては、1社の課題にお付き合いしている「時間の差」もあるかと思います。

増井さんのように独立して複数の会社から相談を受ける方もいますが、企業で現職のCTOとして活躍する傍ら、他社の技術顧問を兼務する方もいます。私の感覚では後者が多く、現職CTOが6割くらいと考えています。そうなると、他社の相談に乗れるのは1〜2時間のオフラインミーティングが限界ということになるでしょう。

一方で、完全にフリーランスのエンジニアならば、1日原則8時間、少なくとも4〜5時間の時間をかけて、かなり踏み込んだ領域までお手伝いできるのではないでしょうか。

青田 自分の手を動かすかどうかの違いもありますね。当社が技術顧問に期待していることは、施策に対して客観的な視点から批評やダメ出しをしてくれたり、ヒントやアイディアを出してくれたり、事例を紹介してくれたり、といった実践的なアドバイスをいただくことです。

増井 「顧問」と名乗っているからには、手を動かすよりもやはりアドバイスが基本ですよね。そうなると「他社でやってきたキャリアや知見に基づいて、成功事例も失敗事例も踏まえつつ、的確にアドバイスできること」が技術顧問のミッションになるんでしょうか。

同じことを学ぶのであれば、自社でPDCAを回して検証するより、経験を基にしたアドバイスから学習できると早いですね。

青田 そうですね、時間とお金がもったいないので(笑)。

経営と技術顧問の関係も成功のポイント

野谷 お二人にお伺いしますが、企業として技術顧問を導入するに際して、成功のポイントやルールがあればお聞かせください。

増井 うーん、難しいですね。僕の場合、CTOやプロダクトオーナー、場合によってはCEOクラスの方とも数カ月に1度は1on1で面談しています。

現場で決めたことを承認するのは上なので、そのパイプをしっかりつなげておくことは重要だと思っていますし、決定権のある方と話した方が物事が速く進むからです。

一方で、現場のメンバーと会うことは、あまりありません。単純に、それだけの時間が取れないからでもあるのですが。

青田 うちは本当に幸運なことに、ミイダスのトップが技術顧問の必要性に理解があったことが大きかったですね。もし「それはどんな効果があるのか」を根掘り葉掘り検証され、資料を作って稟議(りんぎ)を通して……となると、大半のエンジニアは心が折れると思うんです。

技術顧問の導入を投資として考えるなら、仮に“失敗”しても、その知見が現場に蓄積されれば、次に生かすことができます。確かにコストに対して成果が目に見えにくいし、経営サイドとしては判断が難しいとは思いますが、そこを了解して投資してくれるチームや会社は強いと思います。

増井 逆に、福利厚生の一環として著名な技術顧問を招くという施策もあります。上司には言いづらくても、外部の方になら相談できることもありますから。

実は僕も、トレタではそんな感じで動いています。査定には何の関係もないので(笑)。メンバーもいろんなことを相談しやすいのでしょう。

課題を認識したときが技術顧問を導入するタイミング

野谷 最後に「技術顧問の存在が発揮されるには」という点について考えてみたいと思います。冒頭の青田さんのお話では、「サービスインに向けてエンジンをフル回転しているフェーズから一段落し、規模が大きくなったときに課題に突き当たった」ということでしたが、技術顧問を導入する最適のタイミングなどはあるのでしょうか。

増井 「チームで認識できる課題があるかどうか」だと思います。例えばスタートアップでエンジニアが見つからないときに、業務委託のフリーエンジニアと技術顧問を入れて組織を作ることもありますが、それは「システム人材および知識の不足」という課題があるから、外部の人材にお願いするわけですよね。

青田 当社の場合では、私はずっと「働きやすいチームにしたい」と考えていて、そのためには「いろんな人が来て、いろいろなアイディアを出してくれた方が、絶対にいい環境が作れるはず」という思いがありました。基本的には「知らないから教えてください」というスタンスだったわけです。

増井 実際にものを作っている間は、課題は案外見えにくいものなんですよ。誰かが課題に気付いても、全員で共有できていない状態なら、突っ込んだ対応はまず不可能です。

何らかのタイミングで「これがまずいのでは」という共通の認識ができたときに、技術顧問に頼るという方法がベストだと思います。ミイダスさんの場合、課題の認識と共有がすごくうまくいったケースだと思います。

青田 でも、全ての課題をきちんと認識していたわけではありません。先ほどもお話ししましたが、データベースのチューニングについては、技術顧問の方に課題認識をインプットしていただいてスタートしましたから。

野谷 ありがとうございます。増井さんにお伺いしますが、「課題を認識していない企業」が、技術顧問の必要性に気付くにはどうしたら良いのでしょうか。

増井 そこはコンサルタントの出番かもしれませんね。課題を引き出すことはたいへん難しく、専門知識が必要です。ただ、最近では「デザインシンキング」のようなフレームワークもあるので、それで課題の引き出しを一度やってみてもいいかもしれません。どんな企業も、何らかの課題を抱えているはずです。

ただ、「課題を見つけましょう」ということすらなかなか言い出せない会社では、そこを進めるために「技術顧問に頼みたい」というニーズもあるかもしれません。経営者によっては「それこそ自分たちのチームで解決しろ」と言うかもしれませんが、全体を見て課題を定量的に洗い出す人は必要だと思います。そういう人が一人いれば、物事が回るようになるんですよ。

青田 振り返ってみると、当社でも「いろいろな知見を持つ人」が最初からいたら、と考えることもあります。もちろんそれでうまくいったかどうかは分かりませんが、もし立ち上げ時からそういう方にアドバイスをもらえれば、全体的にもうちょっと違う展開があったかもしれません。

増井 いずれにせよ、先ほどの青田さんの話にもあったように、「完全な失敗」ということはありませんし、3カ月を1クールという形で技術顧問を招いてみると、思わぬ課題発見につながると思います。

野谷 なるほど。課題の発見と解決の両面からサポートできることが技術顧問にはあるようですね。今回は興味深いお話をありがとうございました。

flexy
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対談の会場になった「テックプレイ渋谷」は、パーソルキャリア株式会社が運営するITイベント情報サイト「TECH PLAY(テック プレイ)」のイベント&コミュニティスペースとして2015年8月にオープン。多くのITテクノロジー系セミナー等に利用されている。

[PR]企画・制作:はてな
取材・構成:岩崎史絵
写真:赤司 聡