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「さくらがやらねば誰がやる」。さくらインターネットが「さくらのクラウド検定」に込めた熱い思い

さくらインターネットが2024年4月に設立を発表し、同年9月に初回試験を実施した「さくらのクラウド検定」について、担当者のお二人に、検定制度を新たにつくったねらいや作問のプロセスを詳しくお伺いしました。

さくらのクラウド検定企画トップ画像

デジタル人材の育成を目的に、さくらインターネットが2024年4月に設立を発表し、同年9月に初回試験を実施した「さくらのクラウド検定」。デジタル技術の基礎からクラウド技術の枢要までカバーする技術領域の広さで、話題を集めています。

IPA(情報処理推進機構)が主催する「情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験」をはじめ、IT業界でさまざまな資格制度が展開される中、こうした検定制度を新たにつくったねらいはどこにあるのか。

そして作問のプロセスでどのような試行錯誤があったのか。

同社の前佛雅人さんと戸倉大輔さんにお伺いしました。

※この記事は株式会社さくらインターネットによるタイアップ広告です。

「さくらのクラウド」の機能とともにデジタル技術の基礎を学べる、2つのメリット

── まずはお二人の現在のお仕事と、これまでの経歴を教えてください。


前佛さん近影

前佛 雅人(ぜんぶつ・まさひと)
ES本部 教育企画部

前佛 ES本部という、一般的な会社の人事部にあたる部署で、社内教育や人材育成に関する制度設計、計画の立案に携わっています。

専門領域はLinuxサーバの運用や監視で、データセンターでの運用サポート業務もトラブル対応を含め、一通り経験しました。

また、エバンジェリストとして活動していた時期もあり、オープンソースに関わるブログの執筆や雑誌への寄稿、Dockerにまつわるドキュメントの翻訳なども行っています。


戸倉さん近影

戸倉 大輔(とくら・だいすけ)
テクニカルソリューション本部

戸倉 テクニカルソリューション本部という、我々のサービスを広く一般の方にもお使いいただけるようなトレーニング体制の構築をミッションの一つとする部署で、主に社外の技術支援を行っています。

過去にサーバーエンジニアとして10年以上、システムの設計・構築に携わり、現職の前の部署ではセールスエンジニアとしてお客様向けのサービスの紹介や勉強会も主催してきました。

── 社内・外の「教育」に携わる部署が連携して「さくらのクラウド検定」が立ち上がったわけですね。そもそも、検定を作るというアイデアはどんなところから生まれたのでしょう?

戸倉 教育にまつわる施策の「効果測定手段」の一つとして、検定というアイデアが持ち上がりました。

前佛 これまで、さくらのクラウドを使っていただいているパートナーや顧客の皆様のスキルや知識を証明する手段がなかったのですが、検定というスタイルであれば、それが実現できるだろうと。

もちろん、これから新たにさくらのクラウドを使っていただく方にも活用いただけると考えました。学習の成果を本人が把握できる仕組みがあれば、使うモチベーションにもつながりますから。

戸倉 あと、さくらのクラウドはガバメントクラウド*1として条件*2付きで認定されており、デジタル庁が要求する機能要件の中に「トレーニング体制と資格制度の構築」が含まれていたことも背景の一つです。

── IT業界の検定試験といえば、IPA(情報処理推進機構)が主催する「情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験」などが有名ですが、それとはどのように違うのでしょうか?

戸倉 さくらのクラウドの機能を知っていただきながら、デジタル技術の基礎を学んでいただけるという、2つのメリットがあるところです。インターネットの仕組みやソフトウェアとハードウェアの関係性などの「基礎」からきちんとステップを踏んで学びながら、クラウド技術について理解を深めていただけるような設計になっています。

── とはいえ、「さくらのクラウド検定」はさくらインターネットが主催する初めての検定試験ですよね? サービス設計にあたって試行錯誤された部分も多かったのでは。

戸倉 そうですね。他社の事例やインターネット上の情報、高校の必修科目となっている「情報I」の内容も参考にしながら、メンバーの間でディスカッションを重ねました。

そもそも、この検定はエンジニアだけではなく、学生さんからリスキリングを目指す社会人まで、対象が幅広く設定されています。だからこそ、基礎から順序立てて理解していただく必要があると感じ、まず初めに「デジタル技術の基礎」「さくらインターネットのサービス」「さくらのクラウドのアーキテクチャ」という三章構成からなるシラバスを作り、それぞれに対応した問題を作成していきました。

シラバス

── 理解を深めるために問題を体系化しようという意思を感じます。検定の問題を完成させるのに、どれくらいの期間がかかったのでしょう?

戸倉 新たな検定制度を設けるというプレスリリースを発表したのが2024年4月で、その5か月後には初回の検定を実施することが決まっていましたので、実質的には半年ほどかもしれません。

── では、検定の問題作成にかかりきりの時期もありましたよね。

戸倉 そうですね。前佛や私を含む4人のメンバーでそれぞれ分野を決めて問題案を作成し、互いにレビューしていくような形で進めたので、決して一人で抱え込んだわけではないのですが、夢に出てくることもありました。夜、寝床に入って目をつぶると、「あ、こういう選択肢にしたほうがいいな」と思いついたり……。

戸倉大輔さんインタビューカット

暗記力ではなく実践力を問う「運転免許」のような検定に

── 具体的な問題作成のプロセスについても掘り下げたいのですが、特に難しかったポイントはありましたか?

戸倉 選択肢の作り方でしょうか。基本的に四択の問題なのですが、間違っていることが明らかな選択肢ばかりでは、簡単過ぎて解き甲斐が薄れてしまいます。その意味で、前佛の作成した問題は「引っかけ方」が工夫されていて、とても勉強になりました。

前佛さんの作成した問題
前佛さんの作成した問題

── 「どう引っかけるか」もポイントになるんですね。

戸倉 そうですね。一方で、あまりに奇をてらうような問題もまた、避けるべきだと思っています。例えば、さくらのクラウドの仕様の細かい部分ばかりを問うような検定では、果たして受ける意味があるのか、と思われてしまうかもしれません。きちんと学んでほしい基礎を網羅的に反映できるよう意識していました。

前佛 この検定は単純なクイズではなく、あくまで実践につなげていただくことを企図しています。だからこそ自分は、さくらのクラウドを使っている方であれば分かるような、いわば「こういう場合にこの技術をどう活用するか」という“現場力”を問う視点を問題作成時に意識していました。

同時に、先ほども触れましたが、さくらのクラウドに特化したベンダーロックイン的な内容になっていないか、サーバやネットワークの一般的な知識があれば解ける汎用性があるか、ということも重視していました。

戸倉 問題の内容は、現在も細かくマイナーチェンジを加えています。これまでに検定を2回実施する中で正答率が低い問題、逆にほぼ全員が正解できる問題などの傾向が見えてきました。そうした問題は問題文や選択肢を調整しながら、より本質的な理解度をはかれるよう改善しています。

── なるほど。お二人それぞれに、何か思い入れのある問題はありますか?

戸倉 パブリッククラウドに共通の、オートスケールという機能*3に関する問題でしょうか。セールスエンジニア時代に、お客様向けの勉強会で紹介したり教則動画を作成したりしたこともある、個人的に思い入れのある機能です。

オートスケール問題

前佛 私は、データセンターに関する問題ですね。特に、データセンターのセキュリティ面には必ず触れなくてはならないと思っていたので、出題方法と選択肢にとても悩みました。

データセンター問題

── 「触れなくてはならない」と考えたのはなぜでしょう?

前佛 「現場力を問う」という検定の趣旨にも関係してくるのですが、何かを動かすためのノウハウだけでなく、その背景にある技術や仕組みも含めて学んでほしい、と考えたからです。

車にたとえるなら、ペダルを踏めば進む、という動作方法やカーナビの指示を理解する能力だけでなく、エンジンや駆動系の仕組みも知ってほしいわけです。

車の運転に限らず、トラブル対応にあたっては技術の背景やその技術を支える仕組みまで知っておく必要があります。

少し話がそれますが、僕は実家が稲作農家だったので田植え機やコンバインを運転できます。でも、故障しても自力では修理できないんですよね。これは農機具の仕組みを知らないから。

同じように、クラウド環境上でボタンをポチッと押してできあがったものを指示に従って動かせるだけでは、現場で活用できない。むしろ、クラウドがなくてもネットワークの環境を自力で組めるようなアーキテクト的な要素や障害対応力こそ、現場で必要なものだと思います。

前佛雅人さん・戸倉大輔さんインタビューカット

── 日々の仕事に追われていると、目の前のことをこなすのに精一杯でなかなか基本的なところを学ぶ時間がなかったりします。検定を一つのきっかけにして、そういったところに目を向けられるといいですね。

戸倉 そうですね。こうした機会が一つあると、自分の知識を見つめ直すきっかけにもなるのではないかと。もちろん、エンジニアの方にとっては既知の内容も含まれていますが、体系的に学んでいただくことで新たな気付きも得られるように思います。

── その意味では、検定で満点を取ると、コンピュータやクラウドの仕組みを人に分かりやすく説明することもできそうですね。

前佛 はい。特に最近の10代、20代の若い方は、物理的なサーバを触ったことも見たこともない方が少なくないので、自分が扱う技術の裏側まで知ってほしい、というメッセージを検定を通して伝えていければと思っています。

そして、裏側まで知ると、難しく抽象的なイメージのある技術も深いレベルで理解できるようになります。

そもそもクラウドは決して特別なものではありません。案件やお客様のニーズに応じて、物理サーバが良いかもしれませんねとか、仮想化するのが良さそうとか、そういったさまざまな技術選択の一つとして、クラウドを認識していただきたいなと思っています。そうすることではじめて、クラウドならではのメリットも理解できますから。

── 戸倉さんはセールスエンジニア時代に、クラウドの仕組みやメリットをお客さんに説明することの難しさに直面したことも多いのではないでしょうか?

戸倉 そうですね。クラウドに関する知識の少ないお客様に、クラウドのメリットを理解してもらう難しさは何度も感じました。そもそもクラウドがどういう仕組みで成り立っているのかが分からないままクラウドを使うと、オートスケールをはじめとするクラウドならではの魅力が直感的に分からないのかもしれません。

併せて、障害対応時に「利用者と事業者の責任分解点があまり理解されていない」と感じたことも数多くありました。

こうした経験が、検定というプロダクトに結実したのだと思います。

前佛 そう考えると、この検定は車の仕組みや事故のリスクをルール、法律とともに学ぶ「運転免許試験」のような立ち位置に近いかもしれません*4

前佛雅人さんインタビューカット

「国産クラウドサービス事業者」としての矜持

── この検定に限らず、全国の高校で出前授業を行うなど、さくらインターネットはIT教育に大変力を入れているイメージです。その背景には何があるのでしょうか?

前佛 いわゆるインターネット文化、オープンソースの文化が根っこにあるのかもしれません。知識を独占するのではなく共有し、より良いものを作っていこうという。

戸倉 さくらインターネットの事業領域の広さにも由来しているかもしれません。データセンターの運営からクラウドサービスの設計まで垂直統合型で事業を展開し、インターネットにまつわる総合的なナレッジを持っていますから、発信できる内容も盛りだくさんなんです。

── そう考えるとこの検定は、AWSなど海外勢のクラウドサービスも浸透するなか、国産のクラウドサービスを提供してきたさくらインターネットだからこそ作れるものなのかもしれませんね。

戸倉 そうですね。ここまで大規模なパブリッククラウドサービスを展開する会社は国内だと少ないですし、ガバメントクラウドとして認めていただいているのも国産企業では弊社だけですから。「さくらがやらねば誰がやる」という思いもあります。

前佛雅人さん・戸倉大輔さんインタビューカット

── 熱い思いを伝えていただきありがとうございます。最後に、この検定に限らず、今後インフラに関する知識や技術の基礎をどのように伝えていきたいと考えているか、展望をお聞かせください。

前佛 検定はあくまで入り口でしかなく、ゴールは検定で得た知識を現場で活用していただくこと。検定で高得点を取れるようになれば、自由に環境を構築し、自分でサービスを運用することも可能になるはずです。ぜひこの機会に「何でもできる」ようになるための知識を身に付けてはいかがでしょうか。

戸倉 日本国内に目を向けると、IT人材が足りない、先進国の中でもデジタル化が遅れている*5という現状があるように思います。そんななか、ITインフラの基礎技術が学べるこの検定を、世の中のスタンダードにできればうれしいです。

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[タイアップ広告] 企画・制作・取材:はてな
構成:高橋睦美
撮影:曽我美芽

*1:正式名称は「ガバメントクラウド整備のためのクラウドサービス」。地方自治体や政府機関の業務システムをクラウド上に集約した、政府共通のサービス利用環境。詳細はデジタル庁の公式サイトに記載あり

*2:2025年度末までに技術要件を満たすことを前提とした条件

*3:サーバのスペックや台数を自動的かつ柔軟に変更できる機能

*4:学科教習においては車の構造に関する項目も存在する

*5:スイスの国際経営開発研究所が2024年に発表した「世界デジタル競争力ランキング」で日本は67か国中31位と主要先進国の中で最低レベルとなった