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プライバシーの侵害も?DPIの広告利用とその問題をわかりやすく解説



DPIとは何なのか、今回の議論の経緯、今後の懸念点の順番で、DPIとその周辺を見ていきましょう。

■ DPIとは何なのか?

DPIについて大まかに言うと「インターネットを利用する際に送受信するパケットと呼ばれる小さなデータの塊をつなぎ合わせることで、通信内容を解析してしまう技術」のことです。この技術自体は、これまでにもセキュリティやトラフィック制御といった分野で応用されてきましたが、こと広告提示に利用するとなると、プライバシーの問題が関わってきます。

では、誰にどうやって閲覧したサイトや、検索した内容がわかってしまうのでしょう?少し回り道をすることになりますが、DPIを知る上で肝になるインターネットの仕組みについて引用します。

http://www.komakusa.net/internet/provider-setuzoku.html

インターネットの全ての利用者はいずれかのプロバイダーに接続します。プロバイダー同士が繋がっていますので、いずれかのプロバイダーからインターネットへ接続すれば、世界中のコンピュータと繋がることになります。

普段意識することはあまりないものの、私たちはプロバイダーを介してインターネットに接続し、通信し、コンテンツやコミュニケーションを楽しんでいます。

ある書籍の情報をチェックするケースを考えてみましょう。まず、URLを入力したり、ブラウザでリンクをクリックするなどして、「この本のウェブページのデータをください」とインターネット上のサーバーにリクエストします。リクエストはプロバイダーを通って、サーバーに届き、サーバーは当該のページのデータを返してくれます。このデータもプロバイダーを通って、私たちのパソコンに届き、最終的にブラウザにウェブページが表示されます。

「プロバイダーを通って」という部分が重要で、通信を中継しているプロバイダーは、ユーザーの通信内容を知り得る立場にあります。どんなページを閲覧したか、どんなキーワードで検索したのかわかってしまうのです。ここがまず懸念される点で、さらに、プロバイダーの持つユーザーの個人情報と関連付けられると、「どこの誰が何に興味を持った」という情報になり、プライバシーが侵害されることが懸念されます。

■ DPIの広告利用に関する議論の経緯

5月末にアサヒ・コムに掲載されたセンセーショナルなタイトルの記事をきっかけに、DPIの広告利用に関する議論が波紋を呼びました。

http://www.asahi.com/business/update/0529/TKY201005290356.html

この記事を受けて、DPIの広告利用について懸念点を議論するまとめスレッドも。

どんなエロサイト閲覧したのか、どんな検索をしたのか…全てチェックされるようになるぞー【働くモノニュース : 人生VIP職人ブログwww】

憶測も飛び交っていますが、疑問やその回答はもちろん、「朝日新聞の図だとプロバイダーから直接業者に情報が流れててワロタ 」といった指摘まで、興味深い内容になっています。

そして、電波の日の6月1日、原口一博総務相が会見の中でDPIについての見解を示しました。

総務省|原口総務大臣閣議後記者会見の概要(平成22年6月1日)

「DPI広告は通信の秘密を侵害するものである」とし、名言してはいませんが、「総務省がDPI広告を容認した」という報道は牽制したい様子。同日アサヒ・コムでは、この発言を受けて以下の記事が掲載されました。

http://www.asahi.com/national/update/0601/TKY201006010123.html

ただし、明確にDPIの広告利用に関して否定するものではなく、今後も議論を注視していく必要がありそうです。

■ 今後の懸念点

前掲の原口総務相の会見の概要ページで「オプトイン」「オプトアウト」という耳慣れない言葉が出てきます。DPIの文脈で、オプトインとは「ユーザーの明示的な同意をDPIへの同意とみなす」こと、オプトアウトとは「利用者が拒否しないことを同意とみなす」ことと捉えることができます。

オプトアウト、オプトイン問わず、DPI自体に抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。筆者もそのひとりです。ただ、オプトイン方式を前提として、そのメリットを挙げる声も少なからず出てきているようです。

DPIは悪なのか?「ネット全履歴もとに広告」総務省容認 課題は流出対策」について思うこと。:ASSIOMA:オルタナティブ・ブログ
http://google-and.meblog.biz/article/2736205.html

「プロバイダーは定額制ビジネスでの行き詰まりを解消できる」「ユーザーはプロバイダーに対する支払を軽減できる」といった点をメリットとしてあげていますが、二つ目のエントリーの補説にもあるように、ユーザーが数百円の節約のために個人的な趣味嗜好を晒すとは考えにくく、DPIの広告利用はそもそも現実的ではないのかもしれません。

■ おわりに

DPIの広告利用に関する議論を見聞するも、どのように行動すればいいのかわからないという方も多かったのではないでしょうか。本記事で、DPIが広告に利用されるとどうなるのか、何が懸念され議論されているのか少しでも伝わればと思います。そして、少なくともオプトアウト方式が容認されるようなことのないよう、一インターネット利用者として、今後の政府やプロバイダーの動向を注視して、必要に応じて声をあげていくのが賢明と言えましょう。


The photo is by "r.f.m II".

文: イノアキ

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