全国の「みどりの窓口」などでも使われているあの分厚い時刻表が、タブレット用アプリ「デジタル JR時刻表」として登場しました。月刊誌「JR時刻表」「My LINE 東京時刻表」2冊分、約2,000ページの情報をぎっしり収録。アプリを開発した理由は? 紙の時刻表とはどう違う? アプリ開発の裏側や利用シーンなどについて、交通新聞社の担当者さんにお話を伺いました!
(※この記事は、株式会社交通新聞社提供によるPR記事です)
■ タブレット用アプリ「デジタル JR時刻表」を開発した理由は?
「デジタル JR時刻表」は、旅行や出張などで使用することの多い「JR時刻表」のデジタル版。といっても単にそのままデジタル化した電子書籍ではなく、アプリならではの機能がたくさん盛り込まれています。
――まず、タブレット向けアプリ制作の経緯について教えていただけますか?
左:時刻情報事業部 企画開発課 釜石直裕さん 右:同 山口幸孝さん
釜石 「時刻表の電子版は出ないんですか?」というユーザー様の要望は以前からあったんですね。ただ、紙の時刻表をそのまま電子書籍にするだけではつまらないと考え、アプリという形にしてさまざまな機能を盛り込もうと。
――こだわりですね!
釜石 ええ、時刻表屋が提供するサービスですから、もっと便利に!と思いました。リリースまでにかかった時間は約2年ですね。パイロット版を開発した後、各機能をブラッシュアップし、そこから1年くらい本格的に開発を進めました。
――アプリのここが一押し!というところを教えてください。
釜石 一番のポイントはやはり「カスタマイズできる」ことです。紙の時刻表はすべての人に提供する情報として作られています。それに対し、このアプリでは自分が使いやすいように、住んでいる地域の路線、よく使う経路検索結果などをブックマークして、トップ画面からワンタップで表示できます。
――紙の場合は、しおりをはさんだりページを折ったりしますが、アプリではカスタマイズした内容をそのままブックマークできるんですね。
よく使う経路検索結果、よく見る路線図や時刻表などをブックマークすると、12件までトップ画面に表示される。もちろん並び替えも可能。
釜石 紙の時刻表に慣れている方は、どの位置にどの情報が載っているか分かっているため、感覚的に見たい路線のページを開けるそうです。その紙の位置感覚に相当する機能として、ブックマークをトップ画面に12件まで表示できるようにしました。
山口 複数の路線の時刻表を同じ画面に3つまで表示する機能も、とても便利です。
釜石 僕自身の経験なんですが、旅行で経路検索サービスを使うと、ある程度決まったルートしか表示されないことが多いんですよね。ホテルに早めにチェックインしてみたら意外と周囲に観光スポットが少なくて、途中駅で時間を作って観光してもよかったな、とか。
――あそこに立ち寄っておきたかった!って後から思うこと、あります。
山口 1つの画面で、複数の路線で発着時刻をあらかじめ調べておいて、乗り継ぎの時間に自由時間を作れる。例えば途中駅ですぐには乗り換えずに、1時間半くらい観光してみよう、何か名物を食べていこう、そしてこの列車に乗り換えよう……と計画してもいいですね。
――時刻表の見方がよく分からない方もいるんじゃないかと思います。そういう人に向けての工夫はありますか?
釜石 はい、アプリならではの機能があります。時刻表の縦方向では列車に、横方向では駅に背景色を付けられるんですよ。画面をスワイプしても縦横の情報を見失いにくいと思います。列車の種別や快速・特急なども色分けしています。
東海道新幹線の時刻表の例。列車の種別が色分けされるなどフルカラーで読みやすくなっている。列車名や駅名を長押しするとそれぞれ最大5つまで色が付けられ、出発時刻や到着時刻を見比べる際に便利。
――長押しで色が付いた! 時刻が分かりやすいですね。
山口 僕は途中から開発チームに加わったんですが、実は時刻表にはそんなに詳しくなくて。そんな自分としては、路線図をおすすめしたいです。
路線図には、各地方ごと(北海道地方~九州地方)に加え、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の近郊区間図も掲載されている。
関東地方の路線図で「札幌」と検索すると、北海道地方の路線図に移動し、札幌駅が赤い線で囲まれる。
山口 「◯◯駅が最寄り駅」と言われても、その駅がどこか、どの路線なのか、パッと分からない場合もあると思います。路線図の検索窓に駅名を打ち込んで検索すれば、その駅名が強調表示されます。どの地方の位置で検索しても、その駅があるエリアの路線図に移動しますので、地理に疎い人でも安心です。
■ 「デジタル JR時刻表」と経路検索サービス、どう違う?
――乗り換え検索サービスやアプリが多く提供されていて、デジタル JR時刻表は後発となりますね。特色を教えてください。
釜石 時刻表と経路検索サービスなどを比べた際に大きく異なるのは、一度に表示できる情報量の多さです。列車の候補も多く、比較が簡単です。時刻表データをオフラインで閲覧できるのもアプリならではですね。
――電波が届きにくい場所でも、端末の電池さえ気を付ければ時刻表をチェックできますね。
釜石 鉄道旅行の場合、10分くらいトンネルの中、なんていうことは結構あります。例えば新潟県を走るほくほく線はトンネルがかなり多くて。電波が届かない場所では、経路検索など通信を利用する機能は使えませんが、時刻表はきちんと見られます。
――アプリの価格は30日960円で、紙の「JR時刻表」は1冊1,183円(税込)ですね。価格面で比較されることは?
デジタル JR時刻表の利用価格。利用開始日からの連続日数でカウントする。
釜石 価格については「高い」という声もありますが、「安すぎる!」と言ってくださる方もいる、という感じです。電子書籍は紙より少し安めに価格設定されることが多いので、参考にしています。
山口 アプリでは、最新の時刻情報をご利用いただくため、時刻表データを更新すると過去の時刻表が見られなくなります。バックナンバーとしては残しておけませんから、その点も考慮に入れました。
釜石 「JR時刻表」「My LINE 東京時刻表」の2冊を紙で買うと2,201円(税込)。それをアプリなら30日960円で使えるというのは、毎月紙の時刻表を買う方にとってはかなりお手頃かと思います。アプリ本体は無料でダウンロードできて、初回のみすべての機能を14日間無料で使えるので、まずはお試しいただきたいです。
――これまで時刻表を使う機会がなかった人も、旅行の際にアプリを触ってみるとよさそうですね。時刻表データの情報収集は、紙とアプリでは別でやっているんですか?
釜石 同じです。時刻表データを収集・整備するチームが集めたデータを、紙の時刻表とアプリ、両方に活かしています。
列車編成表は、一覧からタップで見やすく展開できるようになっている。
山口 集めたデータを紙の時刻表にするチームと、デジタル JR時刻表にするチームがあります。デジタル JR時刻表チームでは、データをどう加工すればより分かりやすくなるか工夫を重ねています。
――紙の時刻表に詰まっている情報を編集し直すのは、相当大変だったんじゃないかと……。
釜石&山口 はい、そうですね!(口をそろえて)
――情報の見せ方がだいぶ変わりそうです。苦労したところがあれば教えていただけますか。
釜石 紙の時刻表に慣れている方はたくさんいます。いかに紙の良さをアプリで表現するか、そして紙だと面倒だと感じる部分をいかにデジタルで解決するかがやはり難しいですね。
山口 開発の最初の段階では、時刻表の紙面上で案内している文章をそのままアプリに流し込んだんです。でも、紙の時刻表を開けばパッと見てすぐ分かるところが、アプリとなるといまひとつ内容が伝わらない。また、文章を置き換えるだけでは意味が通らないケースもあって、アプリ向けに文章を書き直すなど、いろいろ試行錯誤しました。
■ 紙の一覧性をタブレットの画面の広さで再現。スマホ対応は検討中!
――対応端末は「iOS 7.0以降のiPad・iPad mini、Android 4.2~4.4、解像度1200×1920ドット以上のタブレット端末」で、現時点ではスマートフォンには対応していません。あえてタブレット向けアプリにした理由は何でしょう。
釜石 最大の理由は画面の広さです。紙の時刻表の一覧性にこだわり、それに使い勝手を近づけようとすると、タブレットの大きさじゃないと厳しかったです。
山口 「スマホではだめですか?」「Android 5.0では使えないんですか?」「自分のタブレットだと使えない……」など、リリース後に対応端末に関する問い合わせをユーザー様から多くいただきました。
――今後、スマホ向けアプリを作る予定は……?
釜石 ユーザー様の期待を裏切らないよう検討しています!
山口 なるべく多くの端末でご利用いただけるよう、ご要望にお応えしたいです。
――アプリのレビューに、路線図のタブの並び方について書いたユーザーさんがいました。紙の時刻表とアプリとでは順番が違いますね。
釜石 アプリのタブでは北海道が一番左にあって、北から南へと順番に並べています。紙の時刻表では冒頭の「さくいん地図」が南から順にスタートします。そこまで見てくださっているのかと驚きました。
アプリの路線図では北海道地方が一番左。
紙の路線図を左からめくっていくと、最初に登場するのは九州地方。
山口 紙の時刻表では掲載順と東西の位置関係が同じなので、紙の時刻表のユーザー様は違和感を持たれるかもしれません。アプリでは路線の目次を五十音順にしてあって、路線に詳しくない自分にはとても便利です。
釜石 紙の場合、路線によっては「以下◯◯頁」「前掲載××頁」というように違うページを参照することがあるんですが、アプリでは矢印をタップするだけで次のページに遷移するようにしました。ページをめくる必要がないのも、デジタルならではの良さだと思っています。
アプリでは「前の区間」「次の区間」欄にある「↑」「↓」をタップすると、当該ページに移動する。
紙の時刻表では参照するページが記載されている。
――アプリに入れなかった情報はありますか?
釜石 基本的には紙の時刻表の内容をすべて収録しているんですが、載っていない情報が少しだけあります。実は「駅弁」については掲載していないんです。
――欄外の駅弁情報! “ザ・旅情”っていう感じでいいですよね。
釜石 どう表示するかが難しくて泣く泣く削りました。欄外の注意書きなどは全部アプリにも載っているんですが……。今後のユーザー様からのご要望によっては、掲載するかもしれません。
JR時刻表の欄外にある「駅弁」情報。残念ながらアプリには収録されていない。
■ アプリさえあれば、タブレットひとつで旅に出られるようにしたい
――時刻表、もっとこんな使い方があるよ!というポイントはありますか?
山口 旅行の行程を組むのに最適だと思っています! 鉄道の情報だけではなく、国内線の航空ダイヤも収録していますし、バス、ケーブルカー、ロープウェイ、船・フェリーの運行情報もあります。旅行の予定を立てる際にぜひ活用していただきたいです。
釜石 単線(1つの線路のみで双方向の列車が運行する区間)の場合、列車の待ち時間があったりします。そういうときに到着時刻をチェックしておくと、その時間を活かしてちょっと写真を撮ったり、風景をじっくり眺めたり、旅に“自分だけのひと味”を加えられるのではないかと思います。
――今後のデジタル JR時刻表の展開を教えてください!
釜石 このアプリさえあれば旅に出られるという部分をもっと強化して、さらに旅行を楽しんでいただきたいと思っています。
山口 弊社は『散歩の達人』『旅の手帖』など旅行関連の雑誌も出しているので、そのコンテンツとも連携して、列車を降りた後の行動やスポット情報など、アプリの中で周辺情報を多角的に見せていきたいです。
――駅を検索すればお店の情報や散歩のルートが一緒に出るかもしれないんですね。
釜石 デジタル JR時刻表の目標は旅行情報のポータルになっていくことです。「タブレットひとつで旅に出る」。
――タブレット片手にさっと旅立つ……かっこいいですね。アプリ、紙の時刻表それぞれの利点がありますが、どのように使っていってほしいですか?
釜石 「紙の時刻表はやめちゃうんですか?」という質問があったんですが、それはまったくありません(力強く)。
――おおー!
釜石 紙には紙の良さがあります。1つは保存できること。バックナンバーを集めたいという方もいらっしゃいます。もう1つは端末を必要とせず、誰にでも使えるということです。その上で、アプリではデジタルデータだからこそ表現できる部分でもっと便利にしていきたいです。
山口 紙はやはり視認性に優れています。半面、持ち歩きにはやや不便で、使うページだけ切り取るという使い方もありました。アプリなら情報すべてを持っていけますし、紙も切り取らずに済みます。紙の時刻表をパラパラと眺めて楽しんでいただき、調べた情報をアプリで持ち歩きながら使う、ということも可能です。
――両方の良さをうまく組み合わせられますね。
山口 シチュエーションやライフスタイルに応じて、選んでいただければと思います。
――ありがとうございました! 2015年7月31日(金)まではリリース記念キャンペーンとして、30日480円、180日2,800円、365日4,800円で提供されています。この機会に試してみてはいかがでしょうか。
▽ デジタル JR時刻表 (iOS)
▽ デジタル JR時刻表 (Android)