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子どもへのITリテラシー教育【後編】 問題の可視化に情報共有……子育てに利用した、子どもと共に使えるITツール

小中学生でもPCやスマートフォンを持つことが珍しくなくなってきた現代。初めてスマートフォンを持たせるとき、親たちはどのようなことを子どもたちに教育していけばいいのでしょうか。ITエンジニアのしょっさん(id:sho7650)さんが、家庭で実践しているという子どもたちへのITリテラシー教育について紹介。後編では、実際に使っているITツールについて語ります。


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■ ITリテラシーを維持するための制約や、管理するためのツール

ITリテラシー教育を行っていれば、必ず安全に生活できるというわけではありません。子どもは好奇心が多く、いろいろなことを試しがちです。

保護者には、子どもがITに慣れるために「利用を促進すること」と、遊びすぎないように「制限すること」をバランスよく管理する責任があります。我が家で実際に取り入れているITツールなどを紹介しつつ、その利用シーンについて説明していきます。

<家族・家の問題を可視化する>

家族の対話を促すために、家族や家の問題について自由に述べられる環境を用意するのは大事です。また、思いついた問題点を記録する場も必要だと考えています。特に支払い関係は、全員が金銭を正しく管理できていないと「払った」「払っていない」とあとで問題になりがちです。多少回りくどいことになっても、管理ツールを利用して問題・課題の管理やお金のやりとりは記録しておくべきでしょう。

これらの問題の可視化には、タスク管理ツール「Trello」を使っています。以前は「Redmine」を自宅のサーバに入れて使っていましたが、運用が大変になったので、クラウドサービスへ移行しました。

Trelloを採用したきっかけは2つあります。一つは、無料で始められること。もう一つは、視覚的な操作感なので、子どもでも使いやすいのではないかという点です。現時点ではTrelloを使っていますが、ツールに固執することなく、子どもたちの成長にあわせて、試行錯誤しながらみんなでツールを選んでいくことが望ましいと考えています。

タスク管理ツールを利用する場合に重要なのは「カテゴリー」です。「タスクを登録したいけど、どこに登録すればいいか分からない……」となると、問題が発生した際に登録そのものを忘れてしまいがちです。そこで我が家では、主に3つのカテゴリーを作って運用することにしました。

  • 受験
  • 稟議
  • 全般的な課題

受験生が3人いるので、個々人の「受験」カテゴリーを準備して、受験に関するタスクを登録しています。なので、受験がなければカテゴリーは2つだけです。これくらいシンプルにしておかないと、子どもが使わなくなってしまう可能性がありますね。「稟議」カテゴリーでは、お金に関する相談をしています。お金の動きが家族の間で分かるように設定しており、お小遣いとは関係なく、大人も子どもも必要な金銭の請求はここでやりとりしています。

カテゴリー「稟議」の画面

<お手伝いをツールで可視化する>

我が家が子どもたちにお手伝いをお願いしている理由は2つあります。

  • 家族が多いと家事の負担がとても大きく、分担しないと終わらない
  • 自分のことは自分でできるようにする

我が家では、お手伝いの結果をお小遣いへ反映させる方式を取り入れています。そこで妻は、お手伝いタスクとそれに伴うお小遣いが計算できるツールをWebアプリで開発しました。このあたりはエンジニア家庭ならではといったところでしょう。

このWebアプリのポイントは、お手伝いを処理した時刻が想定していた終了時刻に近ければ近いほど、お小遣いにボーナスが追加されるという仕組みです。作業を淡々とこなしていくだけではモチベーションが維持できず、すぐに飽きられてしまいます。このようなゲーミフィケーション要素は子どもの教育には必要不可欠でしょう。

妻が開発したWebアプリの画面。タスクをタップすると確認のダイアログが表示されるので、OKをタップしてタスクを完了させる。完了したタスクはグレーアウトされ「終わったことリスト」に移動する

<PCやスマホの利用をある程度制限する>

子どもにPCやスマホを与えると、親が想定していなかったような使い方をすることがあります。そこで必要になるのが「利用制限」です。勉強や外遊びの時間と、PCやスマホを使える時間は分離させておきましょう。しかし、1日15分だけ使える時間を何度か作る、というような無茶振りは子どもにとって耐え難いものです。お子さんの成長度合いや学年に合わせて、利用できる範囲を少しずつ広げていくことが重要でしょう。

また、誤って危険なサイトにアクセスしてしまうこともあるので、最低限の抑制は必要です。利用シーンの制限のみならず、Webサイトへのアクセス制限やアンチウィルスソフトの導入も忘れずにしておきましょう。

我が家では、Windows PCとAndroidスマホをノートン ファミリーで制限しています。MacやiOSでは、標準のペアレンタルコントロール機能で利用時間を制限しつつ、Sophos Home for PC and MacでWebアクセス制御とウイルス対策をしています。Sophos Home for PC and Macは10ユーザーまで無料で使える上に、Web管理コンソールで一元管理できるというのが採用のポイントでした。

■ 情報の共有がスムーズな生活を支えてくれる

家庭内のタスクや活動を可視化して管理する仕組みとは別に、気軽に情報を共有できる場を用意することも大切です。買い物で購入する物や、家族全員で出掛ける日のスケジュールなど、こうした情報共有にもITの力を最大限に利用します。

<保育園・幼稚園以後はスケジュール共有が「必須」>

保育園または幼稚園に子どもが入園してからは、少なくとも夫婦間でのスケジュール共有は 必須です。遠足やお遊戯会などイベントはとても多く、保護者会やPTAに入ろうものなら毎週のように活動が発生する月も少なくありません。中高生くらいになると子どもたち自身である程度は管理・実行してくれるようになりますが、園児や小学生の場合は不可能です。したがって、両親が日々の子どもの予定を理解し、行動できるようにしておくことが重要です。

我が家では Google カレンダーを使って家族のスケジュールを共有しています。しかし家族6人分を表示させると、ごちゃごちゃとして何がなんだか分からなくなります。

Google カレンダーで全員の予定を表示

そこで、生活に影響のある予定を入れる際は、家族専用のアカウントを使うことにしました。このアカウントで予定を入れると、全員や指定したメンバーに通知される仕組みになっています。これで、普段は自分の予定と家族専用アカウントさえ見ていれば自分に影響するスケジュールがどれなのか分かりやすくなります。

<エビデンスを残すべく、積極的にチャットを利用しよう>

我が家ではエビデンス(証拠)を残しておくために、日常的にチャットでの会話を取り入れています。これはすべての対話をチャットで済ませるというのではなく、情報を正確に伝達したいときこそチャットツールを利用し、間違いや齟齬をなくしましょうというのが目的です。普段の対話はフェイス・トゥ・フェイスでコミュニケーションをするというのが家族の重要なポイントであることに変わりはありません。

チャットには、Google ハングアウトを使っています。私以外は全員Android端末を持っているという理由もありますが、一番の理由は「Gmailでチャットの内容を検索できる」ということです。一般的なメッセンジャーツールはリアルタイムでのコミュニケーションを重視しているため、中にはあとから見返すことができなかったり、全文検索に向いていなかったりするツールもあります。無料でメッセージのほぼすべてを保管してくれて、かつ過去の内容も全文検索できるとなると、Google ハングアウトはとても重宝します。利用する場合は、「ハングアウトの履歴をオン」に設定するだけです。

我が家では、次のような用途にGoogle ハングアウトを利用しています。

  • 買い物の内容を正確に伝達する
  • 現在位置の情報を連絡する
  • Google カレンダーでは表記しきれない詳細なスケジュールを共有する
  • 画像やURL情報を送る

こうして重要なやりとりを残しておくと、無駄なケンカを防ぐことができますよ。

■ 我が家がITで自動化させていること

ITは、生活の水準と品質を向上させ、生活を豊かにするものでなければなりません。ITエンジニアである私たちは、ITで自動化できるものには多少お金を使ってでもどんどん自動化して、時間を有効に利用すべきだと考えています。以下は、育児の負担を軽減するためのちょっとしたアイデアです。

<忙しいときは定期的に時報を鳴らす>

気がつくと出勤時間を過ぎている……なんていうのは、忙しい朝によくあることです。そこで我が家では、妻と子どもそれぞれの部屋に時報システムを導入しています。朝の時間帯は5分おき、重要なポイントでは1分おきというように、際限なく時刻を通知させるというものです。

時刻を通知してくれる時計を買ってもいいですが、この仕組みはPCがあれば簡単に実現できます。定期的に時刻を通知してくれるアプリを利用したり、エンジニアであれば自分でアプリを開発してもいいでしょう。

<タスクは音声で伝える>

タスク管理を行うプロセスやツールを準備しても、これだけだと子どもはタスク処理を習慣化できません。しっかりと身につけさせるには、やはり親の支援が重要です。しかし共働きの我が家は、日中の時間帯だと、子どもたちに勉強や習い事の練習をするように伝えることはできません。

そこで、タスク開始の合図を音声で通知できるように、タスク管理ツールやスケジュールと連動させた音声通知システムを導入しました。娘たちはピアノを習っているので、設定した時間に練習曲を強制的に鳴らしてタスク開始を促しています。

この音声通知システムは、妻が自動化ツール「UWSC」で実現したものです。このおかげでそれなりにタスクを習慣化させることに成功しました。習慣として身につけさせるには、こうした強制力もある程度必要になってきます。

妻や子どもたちは「自動化しなきゃいけない」という追い詰められた焦燥感よりも、どのようにしたら面白いか、楽しいかをを考えてこれらの仕組みを取り入れています。何においても「どうやったら楽しく安全に生活が送れるだろう」という考えは重要なポイントになるでしょう。

■ ITで手間を削減し、生活を豊かにしていく

育児を「すべて」機械化してしまうということはナンセンスだと考えていますが、機械によってある程度のことを自動化させること自体は必要不可欠です。例えばハードウェアのエンジニアであれば、さまざまなデバイスを自動化して育児を支援できるでしょう。ソフトウェアエンジニアの夫婦である私たちは、情報を共有して、家族間のいざこざを減らして生活にゆとりを作りました。

ご家庭ごとに育児の方針は変わりますし、手をかけたい範囲も全く違うでしょう。しかしITを利用することで、手間がかかる部分は少なからず削減していけると考えています。ITは、根本的な考え方としては「生活を豊かにするもの」であったはずです。ITが多くの皆さまの生活を支援する道具とならんことを願わずにいられません。


前編を読む

■ 著者プロフィール

しょっさん(id:sho7650

過去、金融系の大規模インフラアーキテクチャのデザインを担当するアーキテクトに従事していました。その経験を生かして、2016年よりプラットフォーム専属のエンジニアとして、クラウドプラットフォーム企業へ転職。aPaaSとPaaSを軸とした、マルチクラウドシステムのアーキテクチャ設計に携わっています。


Title Photo by Marco Verch

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