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坂本龍一、アジカン、宇多田ヒカル――Webを通じて音楽を届けるアーティストたち


■“生”の感動を視聴者に届けるUstream

2010年、TwitterやFacebookと並び注目された、ライブ動画の配信サービス「Ustream」。「生の映像を世界中に発信できる」という利点からか、ライブの様子を中継するアーティストが多く現れました。

<視聴者に感動をもたらした、坂本龍一>

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坂本龍一氏のピアノソロコンサート、古川享氏がUstライブ配信へ - ITmedia NEWS

世界中でその名を知られている音楽家・坂本龍一さんは、北米でのソロツアーの様子をUstreamで配信。慶應義塾大学教授の古川享さんら有志の協力のもと、ツアー後半にあたる10月30日のシアトル公演から、バンクーバー、サンフランシスコ、ロサンゼルスと、全4ヶ所でのコンサートを中継しました。平日昼間に配信された公演もある中、多数の視聴者が閲覧し、「千のナイフ」「戦場のメリークリスマス」といった名曲を楽しんでいました。このライブ音源は現在、iTunesでも販売されています。

‎坂本龍一をApple Musicで

UTAU(2枚組)

UTAU(2枚組)


<ASIAN KUNG-FU GENERATIONはツアーの様子を生中継>

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アジカンライブをUstreamで!9日AX公演を生配信 - 音楽ナタリー

音楽フェスの常連アーティストとして、確固たる人気を誇っているロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」。全国75ヶ所を巡るツアー「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2010-2011 “VIBRATION OF THE MUSIC”」の中で、11月9日に行われたSHIBUYA-AXでのライブをUstreamで生中継しました。当日は、全体の様子がわかるメインチャンネルのほか、各メンバーに寄った専用のチャンネル、それらすべてが見られるマルチチャンネルの7つを用意。まるで実際にライブ会場にいるかのような、臨場感のある中継が行われました。

ライブ後、ボーカル&ギターを務める後藤正文さんは、自身のTwitterでUstream配信について言及。「まあ、また皆で面白いこと考えて、それを皆で面白がって、ネガティブなことばっかり言われてる音楽業界だけど、いろいろな場所からポジティブなエネルギーが鳴って、10年後にぶっとい束になってくれればなと思います」と、今回の取り組みと音楽業界への本音を吐露しています。
Gotch on Twitter: "UST配信に沢山のツイートありがとうございます。まあ、また皆で面白いこと考えて、それを皆で面白がって、ネガティブなことばっかり言われてる音楽業界だけど、いろいろな場所からポジティブなエネルギーが鳴って、10年後にぶっとい束になってくれればなと思います。"


<Ustreamでライブ配信の先駆け?七尾旅人>

☆::TAVITO.NET::☆
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七尾旅人×うすた京介コラボライブのUstream中継が決定 - 音楽ナタリー

Ustreamでのライブ中継の先駆者とも言えるのが、シンガーソングライター・七尾旅人さん。Ustreamを使ってみたきっかけは、iPhoneのアプリで簡単に動画配信ができることを知ったからだそう。2010年1月17日の夜に行われた自宅でのライブは、Twitterを通じてみる間に視聴者を増やしました。
その後もたびたび、自身のUstreamチャンネルで動画を配信。さらに、親交の深いマンガ家・うすた京介さんとのライブイベントの配信も行いました。


<ファン大喜び!Coccoのライブ配信> 

Cocco Official site
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Cocco初のUstream番組「Cocco STREAM」明日生中継 - 音楽ナタリー
Cooco主演の自主制作映像集「Inspired movies」、11/3からUstreamで連日配信 - はてなニュース

シンガーソングライターCoccoさんも、今夏、ニューアルバム「エメラルド」の発売を記念して、都内にあるマンションからUstream中継しました。沖縄弁混じりのトークやマイペースな演奏と、終始リラックスモードで進行。途中、マンションの住人から苦情が入るといったハプニングもありましたが、普段メディアでの露出が少ないアーティストだけに、ファンからは喜びの声が上がっていました。
11月には、Coccoさんが主演した自主制作映像集「Inspired movies」が、9日間に渡って同じチャンネルで配信されました。


<音楽界に大きな影響を与えたDOMMUNE>

DOMMUNE
DOMMUNE
もう体験した?ネット&音楽業界を揺るがす「DOMMUNE」とは - はてなニュース

Ustreamでのライブ配信を語る上で、避けては通れないのが「DOMMUNE」。宇川直宏さんプロデュースのもと、今年の3月に始まった同番組は、実力派かつディープな面々が登場するブッキングと、画像や音質、カメラワークなどのクオリティの高さで、今なお高い人気を集めています。


■YouTubeでの配信はもう常識?

配信側がアーカイブを残さない限り、生放送でしか動画を楽しめないUstream。それに対し何度でも動画を楽しめるのが、動画共有サービスの元祖「YouTube」です。サービス開始当初から違法アップロードが問題視されていましたが、現在では、公式チャンネルで映像を配信するアーティストやレーベルも増えてきています。


<活動休止前に大盛り上がり!宇多田ヒカル>

http://www.emimusic.jp/hikki/
Hikaru Utada - YouTube

先日メディアを賑わせたのが、宇多田ヒカルさんの公式チャンネルでのPV配信。11月24日(水)に発売されるアルバム「Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2」の収録曲である「Goodbye Happiness」をはじめ、「Automatic」「First Love」「traveling」など、数々のヒット曲のPVやライブ映像を楽しむことができます。活動休止宣言以降、Twitterの開始やEMI Musicと全世界での契約合意など、ニュースが続いている宇多田ヒカルさん。今回のPV配信も注目を集めており、11月18日(木)現在で、チャンネル登録者が22,512人、動画再生回数が2,831,409回と、多くのユーザーがアクセスしています。

Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2

Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2

  • アーティスト:宇多田ヒカル
  • 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
  • 発売日: 2010/11/24
  • メディア: CD


<昔も今も、変わらず愛され続けているスピッツ>

http://spitz.r-s.co.jp/
spitzclips - YouTube

草野マサムネさん率いるバンド、スピッツも、今春から公式チャンネルでPVを配信しています。「空も飛べるはず」や「チェリー」「渚」といった90年代を代表する名曲から、最新アルバム「とげまる」に収録されている「シロクマ」「つぐみ」「君は太陽」など、たくさんの曲が公開されています。


<若者から絶大な支持!RADWIMPS>

RADWIMPS - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
radwimpsstaff - YouTube

ボーカル&ギターの野田洋次郎さんが書く切ない歌詞で、若者を中心に人気を集めているバンド「RADWIMPS」。2009年3月17日に開設された公式チャンネルでは、「me me she」「いいんですか?」「25コ目の染色体」などのPVが、高画質で配信されています。


公式チャンネルを持つアーティストはほかにもいますが、「UNIVERSAL MUSIC JAPAN」や、「avex」「徳間ジャパン」など、レコード会社自体が公式チャンネルを開設している場合もあります。PVの一部もしくはすべてを配信したり、インタビュー動画を掲載していたりと、手法はチャンネルによってさまざま。しかし、YouTubeでの動画公開がプロモーションの大きなカギとなっていることは、業界の共通認識と考えて間違いなさそうです。


■音楽流通は通さず、本人が直接販売――自宅録音家・まつきあゆむ

まつきあゆむ -ヘッドフォンリスナーズサイクリングクラブ-
まつきあゆむオフィシャルウェブサイト - 1億年レコード -

最後に紹介したいのが、自宅録音家を自称しているまつきあゆむさん。自称通り、自宅録音で作られている楽曲が多く、ボーカルやギターはもちろん、ピアノ、ドラム、ベースなど、さまざまな楽器を一人で駆使するアーティストとしても知られています。

まつきさんはこれまで、自身のWebサイトでフリーダウンロードの曲を数多く配信。2009年12月には28曲もの楽曲を収録した「1億年レコード」を2000円(税込)でリリース。レコード会社や音楽流通を通さず、注文メールのやり取りや入金確認など、すべてをまつきさん本人が担当しました。

まつきさんのこういった音楽活動は、先述したASIAN KUNG-FU GENERATIONなど、他のアーティストにも多大な影響を与えています。

Gotch on Twitter: "それから、所謂メジャー所属のミュージシャン達がネット配信をどの様に行うのが良いのか、契約の問題も含めて、そういうことを考えるきっかけを与えてくれたのは、まつきあゆむ君です。彼の自力配信の様々な番組に敬意と感謝を気持ちを、ここに記します。"



アーティスト個人、もしくはレーベル会社が、WebサイトやUstream、YouTubeなどの“自己発信できるメディア”を所有する昨今。音楽をリスナーに届ける手段が、CDやラジオ、TVだけではなくなり、一昔前とは表現やプロモーションの方法が大きく異なりました。この動きはこれからも大きくなっていくと思われます。

不況が叫ばれている音楽業界ですが、インターネットを用いることで、アーティストはより“個”を極めた表現を、リスナーはより高い満足度を得られる時代へと変わっているのかもしれません。

文: タニグチナオミ

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