全国の「みどりの窓口」などで使われているあの分厚い時刻表が、スマートフォンアプリに収まった! 「デジタル JR時刻表 Lite」は時刻表2冊分のデータをそのままデジタル化・収録しただけではなく、さまざまな利用シーンに合わせて使い勝手に工夫を凝らしています。以前紹介したタブレット版アプリの登場から7ヶ月、スマホ版も開発した理由は? 紙の時刻表はどうなるの? 利用シーンやこだわりポイントについて、交通新聞社の担当者さんにお話を伺いました!
(※この記事は、株式会社交通新聞社提供によるPR記事です)
――タブレット用アプリのリリースから約7ヶ月後、2015年12月25日にスマホ用アプリが出ました! まずは前回のおさらいです。
《タブレット用アプリ「デジタル JR時刻表 Pro」紹介記事》
――今回も山口さんと釜石さん、そして新たに横田さんに登場していただきます。スマホ用アプリがついに来た!という感じですが、展開がだいぶ速いのでは……?
横田 前回釜石がお話しした通り、紙の時刻表のキーポイントである「一覧性」は、スマホの画面で再現するのは難しいと考えていました。しかし、ユーザー様から「スマホ版は出ないんですか?」という声を多く頂戴して、これはやはり挑戦しなければと考えました。
釜石 月刊誌「JR時刻表」「MY LINE 東京時刻表」2冊分、約2,000ページの情報をアプリ1つで見られる点は、タブレット版と変わりません。タブレット版と大きく違うのは、スマホ版では常に最新の情報が見られることです。その都度通信して時刻表データを取得します。
――タブレット版ではオフラインで閲覧することを意識されていましたね。
山口 タブレットとスマホでは利用シーンが異なるだろうと考えて、スマホの特性を強く意識しました。時刻表を今すぐ見たいというときにいきなりデータの更新がかかると使い勝手が悪いですし、データ通信量が一定量を超えると通信速度制限が課されることもあります。
▽ デジタル JR時刻表 Lite (App Store)
対応端末:iOS 7.0以降を搭載した、iPhone、iPod touch
■ GPS機能の活用で、路線検索に新たな表示方法を
――スマホ用アプリの開発でこだわった部分についてお聞かせください。
横田 スマホの画面の中でどの機能をどのように見せるかについて、一番苦労したように思います。
釜石 タブレット版にある機能を整理したり、スマホ用に見せ方を変えたりしました。タブレット版ではかゆいところに手が届くようなカスタマイズが可能なんですが、スマホアプリは移動中に使う想定なので、そこまで必要ないかも?という話になって。
山口 新たにGPS機能を搭載しました。これは既にタブレット版でも改修したところです。路線図で画面右上のGPSアイコンをタップすると、最寄りの駅が赤い線で囲まれた状態で点滅して表示されます。土地勘がない場所を移動している場合に便利ですよ。
――旅行先などで駅名をはっきり覚えていない状態でもすぐ分かりますね。
釜石 経路検索でGPSをタップすると、候補駅を10駅まで表示します。近い駅、自分が探している駅をすぐに見つけられます。
はてな東京オフィスで路線図を表示した状態でGPSアイコンをタップすると、最寄り駅である「表参道駅」が赤い線でフォーカスされる。
経路検索画面で同様にすると、付近の駅が10駅表示された。
横田 時刻表を以前からお好きな方にも楽しんでいただけそうな「路線一覧」というコンテンツもあります。こちらもGPS機能を活用して最寄り路線を表示できるんです。
山口 現在地の近くを走っている路線を一覧表示して、路線をタップすると時刻表を開けます。
――永田町駅と赤坂見附駅のような同一駅扱いの場合や多数の路線があるターミナル駅などで、役立ちそうですね。
釜石 さっき新宿で「路線一覧」を開いたら大変なことになりました(笑)。地下鉄も京王線も小田急線も西武線も、とにかく全部出る。
横田 人によっては、最寄り路線から調べる方が早くて分かりやすそうです。これまでにない、新しい時刻表の表示方法になるかもしれません。
■ スマホの利用シーンを吟味してスマホ画面に時刻表を納める
――スマホアプリで時刻表の情報や機能を納めつつ動作させるのはかなり大変だったのでは……
横田 移動中に使うことを想定した中で、「いかに速く時刻表を開くか」をテーマにしました。実際は通信環境によりますが、理論値としては経路検索と変わらない速さを目指しました。
――時刻表や路線図の文字は細かいですが、拡大・縮小もできて、描画でつっかかることもないですね。
横田 描画にはかなりこだわっています。時刻表のデータをストレスなく見せないと、他のアプリに対抗できない。スマホは片手で操作することが多いので、画面領域をどう活用できるか、ボタンをどう配置したら使いやすいか、いろいろ研究しました。
よく検索する経路検索をいくつかブックマークしておけば、画面の下部をワンタップするだけでその時刻での検索が可能。
山口 経路検索でも、普段使う場面でより速く操作ができるようにしました。出発駅や到着駅を選ぶ際に、表示された利用履歴から選んでタップすることが多いと思うんです。「デジタル JR時刻表 Lite」では、よく使う経路検索の結果をブックマークしておけば、それが経路検索画面に出ます。ブックマークをタップすると現在時刻ですぐに調べられます。
横田 例えば電車を乗り逃がしたとか、終電ぎりぎりのときとか、アプリを起動していちいち履歴から選んで……となると面倒ですよね。路線検索画面で1回タップするだけで済みますよ。
山口 小さい画面の中でなるべく速く、大きく情報を見せることを考えました。例えば、各地方ごとの路線図で、路線が少ない場所を拡大してしまうと分かりづらい。そこで、画面をダブルタップすると全画面モードに切り替わって、右上にミニマップが出るようにしました。スクロールしているときだけ表示されて、その地図の中でどこを指しているか、赤点で見えるようになっています。
――おおー。知らない土地を旅行しているときなど、場所の見当がつくと安心できますね。
山口 同じくスマホ版ならではのUIとして、時刻表上で画面の移動ができるスライダーを付けました。時刻の領域の中で画面を長押しすると、指の位置にスライダーが表示されます。そのまま指を動かせば端から端まで移動できるようになっています。
路線図をダブルタップすると全画面モードになり、右上にはミニマップが表示される。
初電から終電まで指1本で確認できてしまうスライダー。
――画面に機能がぎっしり入っていますね。
横田 また、タブレット版にはない機能として、編成ロゴの表示/非表示の切り替えを追加しました。新幹線の時刻表を見ると分かるんですが、グリーン車のロゴや指定席・自由席のロゴなどが表示されます。
山口 タブレット版ではこれらのロゴがデフォルトで表示されるんですが、スマホの画面いっぱいで時刻表を見たい場合に、ロゴが割と場所を取るという話が出まして。
編成ロゴを表示させた時刻表。
編成ロゴを非表示にした時刻表。
――おおなるほど!
山口 “時刻表らしさ”を出すデザインの1つなので、すべて表示しないというのは味気ない(笑)。時刻表屋としてはやはりそこも見せていきたいんです。
横田 編成ロゴが役に立つのは新幹線の時刻表を見るときですね。東海道新幹線に乗るときなどは「コンセントがあるしN700系に乗りたい……」って思うんですよね。選んで乗りたいこともある。
――N700系、便利ですよね。電源がないとつらい……
山口 時刻表では「乗りたい列車を見たい」という視点が肝だと思います。スマホ版では「のぞみ」「ひかり」のように列車名で絞れば、その列車が止まる駅だけ表示します。列車の写真を撮る方などは、時刻表を利用して列車がどこを通過するか把握することがあるんですが、普段使わない人にとっては通過駅は必要ないだろうと。
■ スマホで時刻表を見れば“寝過ごすリスク”も始発列車も把握できる!
――「スマホで見る時刻表」はこんなシチュエーションで便利!という利用シーンはありますか?
横田 首都圏では複数の路線がつながって長距離で運転されるようになりました。上野東京ラインや湘南新宿ラインなどですね。上野から北方面に向かうとき、次の電車は東海道線の熱海駅から来る電車だった、それならきっと座れない、でも1本後なら上野始発だから座れるかも?――ということが時刻表を見ればすぐ分かります。経路検索だけだと列車がどこから出発したかは分からない。
上野東京ライン(北行)の始発駅は熱海駅、小田原駅、平塚駅とさまざま。
横田 出張が多い方は東海道・山陽新幹線で新大阪駅へ行く機会があると思うんですが、博多駅行きの列車でうっかり寝過ごして、気がついたら岡山駅だった……ということもあり得ます。時刻表を見れば、1本後は新大阪駅止まりで、万が一寝過ごしても大丈夫、という判断もできます。
――朝早くの移動で眠いときや、夜遅くに列車内でビールを飲んでうとうと……という場合でも有効ですね。
山口 要素や情報を詰め込む分、デザイン面では苦労しました。GPSのような一般的なアイコンではない、このアプリにしかないようなボタンについては、「これはどういう意味に見えるか」などアンケートを取りながら試行錯誤しました。ヘッダに5個あるアイコンの並び方も、結構意見が割れたんですよ。
釜石 右手と左手どっちで操作するだろうか、アイコンはどちらが押しやすいだろうか、とかですね。
山口 実現はしなかったんですが、使いやすさを探る中で、横田は「左利きモードも出せばいいんじゃないか?」なんて言っていたり。
横田 左利きの人は自動改札を通るときに大変だろうな、アプリでも配慮しないと、とか……。
■ Android版もリリース! スマホ用アプリで、時刻表の面白さを伝えていきたい
――スマホ版の価格設定について教えてください。
デジタル JR時刻表 Liteの利用価格。利用開始日からの連続日数でカウントする。
釜石 1ヶ月間360円(自動継続)なのですが、2017年1月31日までは、キャンペーン価格「1ヶ月250円」でご提供します!
山口 アプリ本体のダウンロードは無料で、初回起動後7日間は、全機能を無料でお使いいただけます。
横田 気軽に試していただきたくて、「7日間で120円」という短期プランも追加しました。旅行や出張の際などにぜひお試しください!
――今後のデジタル JR時刻表の展開をお聞かせください。
山口 タブレット版のユーザー様から、全画面で情報を見たいなど、いろいろな声をいただいています。スマホ版の全画面モードをうまくタブレット版にもフィードバックして使いやすくできるよう今後検討していきます。
横田 今(編注:取材時)Android版の開発がピークを迎えていまして。そちらが一段落してから本格的に着手しようとしています。
――Android版! リリースはいつですか?
釜石 2016年1月末を予定しています。基本的な機能はすべて同じです。
――タブレット版に、スマホ版がiOS、Android両方そろうとなると……前回もお聞きしましたが、紙の時刻表、やめないですよね?
横田 やめないです(力強く)。
山口 時刻表になじみのない人に「これは良い、便利だ」なんて言っても、すぐに役立つかどうかわからないものにいきなり月額1,000円は出しづらい。だったら、気軽に短期プランを“入門編”のような感じで試していただいて、時刻表の良さを知ってもらえるとうれしいと思っています。
――紙の時刻表とデジタルの時刻表、それぞれ「どのように使ってほしいか」をあらためてお聞かせください。
横田 よくお客さまに「紙は残る」と言われます。古い時刻表をとっておく場合もあると思いますし、紙ならではの質感、味もあります。端末を持っていなくても買えるのは大きな魅力です。
その良さをベースにして「デジタルで表現するとこういうところが使いやすい」を体現したのがタブレット版です。普段持ち歩けるサイズなので、旅行などで紙の時刻表と同じようにお供できますし、特性を活用する機能も入っています。
(写真左から)時刻情報事業部 企画開発課 山口幸孝さん、釜石直裕さん、企画開発課課長 横田貴史さん
横田 スマホ版はさらに身近な存在になると考えています。時刻表を使う機会がこれまでなかった方に、経路検索と同じように気軽に時刻表を使ってもらって、「面白い」「役に立つ」と体験していただきたい。そのために必要な情報を吟味しました。時刻表の便利さを分かりやすく伝えるために、新しい機能で「時刻表って良いものなんだよ」ということを広く伝えていけるのが、このアプリだと思っています。
――Android版のリリースも楽しみです。ありがとうございました!
▽ デジタル JR時刻表 Lite (App Store)