地震大国日本。9月1日の防災の日をはじめ、年に一度は防災グッズを見直しているという人も多いことでしょう。最低限の食料や飲料水などに加え、近年は情報インフラを確保するための備えも重要になってきました。情報収集に役立つといえばスマートフォンなどのモバイル端末ですが、これらも充電が切れてしまえばただの“文鎮”になってしまいます。
そこでこの記事では、スマートフォンをしっかりと充電できるモバイルバッテリーの中でも、とりわけ災害時に他の人へ“不安なく”電力を分けられるであろうソーラーチャージャー付きの製品(以降、ソーラーモバイルバッテリー)に注目。太陽光充電を試みつつ、性能や使用感を検証してみました。
■ Amazonで安価に買えるソーラーモバイルバッテリー
Amazonでは、国内外の有名無名メーカーを問わず、さまざまなソーラーモバイルバッテリーを購入できます。今回は、3,000円以下で大容量、Amazonプライム対象商品(配送や返品交換も速やかに対応されるという保証付き)という条件で、以下の3製品をチョイスしてみました。
- EGRD Solar Power Bank
- Akeem 22000mAh ソーラーモバイルパワー
- RUIPU Power Bank
<EGRD Solar Power Bank(2,080円)>
バンパーケースを装着したiPhoneを思わせる、アウトドア向けなデザイン。容量15000mAh、重さは実測値で253g。ストラップやカラビナも付属していることから、常に携帯することを想定した製品であることがうかがえます。
背面には6灯のLEDを搭載。直線的な光を拡散するエンボス加工されたクリアパネルのおかげで、暗闇を強力に照らします。このLEDは、電源ボタンをダブルプッシュすると強めの光が点灯し、その状態でワンプッシュすると弱めの明かりに変化。さらに押していくと、点滅、消灯に切り替えることができます。
Amazonの製品詳細によれば、Micro USBケーブルによる本体充電時間は約10〜12時間とのこと。ソーラーパネルによる充電時間は、購入後にメーカーから送られてきたメールによると「約30時間」だそうですが、実際はどうでしょうか。
「mAh」表示のバッテリー容量を「Wh」にする計算式は「mAh÷1000×V」です。EGRD Solar Power Bankの場合は15000mAh/5Vなので、これをWhに変換する計算式に当てはめると、結果は75Whになります。太陽光充電の入力電流は200mAh/5Vなので、こちらは1Wh。よって、ソーラーパネルによる充電時間は、単純計算で75時間かかることになります。
<Akeem 22000mAh ソーラーモバイルパワー(2,980円)>
容量は22000mAh、重さは実測値で434gとずっしり。長辺が実測値で16.6cmもあることから、普段の持ち歩きにはあまり向いていないと感じます。
特徴的なのは、本体の充電方法が他の2製品に比べてプラスワンされていること。ソーラーパネルとMicro USBケーブルだけでなく、Lightning USBケーブルでも充電可能です。
バッテリーの残量は、ソーラーパネル側にあるLEDの色で確認できるというもの。残り0〜約40%で赤、残り約40〜80%で青、それ以上の残量の場合は白に点滅と、分かりやすく変化していきます。しかし、残量レベルが3段階しかないというところや、残りがまだ40%もあるのに早くも赤で点滅してしまうという点は、ちょっと大雑把な気がします。
大きなソーラーパネルによる本体への入力電力は200mAh/5V。前述のWh換算の計算式に当てはめると、22000mAhのバッテリー容量は110Whです。太陽光充電が1Whなので、単純計算でも110時間かかることになり、あまり期待はできなさそう。ただ、USB出力ポートが3口もあるので、周りの人と電源をシェアしたり、複数のモバイル端末を充電したりといった用途で活躍しそうです。
<RUIPU Power Bank(2,998円)>
モザイクまたはカモフラージュ柄のデザインは、プリントではなく型押し加工によるもの。高級感があるだけでなく、滑り止め効果もあって好印象です。容量は24000mAhもあり、今回試した3製品の中では最大。重さは実測値で433gと、こちらもずっしりタイプです。
3口のUSB出力ポートと2つのLEDを搭載。太陽光だけでなく、室内灯を当てても充電中を示すサインが表示されます。
充電中は、バッテリー残量を示すLEDが4段階で点灯し、残量が減った分だけ消灯します。実際の残量を確認するには、ソーラーパネルを手で隠して電源ボタンを押す必要があります。
RUIPU Power Bankの最大の特徴はその同梱物。どういうわけかUSB扇風機が1本付属しており、搭載のLEDと合わせて災害時に役に立ちそう!?
ソーラーチャージャー モバイルバッテリー 20000mah大容量 電源充電可 急速充電対応 3USB出力ポート LEDランプ搭載 太陽エネルギーパネル電池充電器 災害と外出に対応(赤)
- 発売日: 2018/01/01
- メディア: Personal Computers
■ 太陽光による充電を試してみる
ソーラーモバイルバッテリーを購入したからには、その性能を試してみないわけにはいきません。そもそも「買ってみたけど使えなかった」では、いざというときに役立たないからです。
検証は、まず各モバイルバッテリーの電池残量を「0」にするところからスタート。外出時だけでなく、就寝中におけるスマートフォンの充電器として使うことで残量を減らしていきます。
電源ボタンを押したときに残量を示すLEDは光るものの、スマートフォンを充電できなくなった段階でソーラーモバイルバッテリーの電池残量が0になったと判断。太陽光での本体充電を開始します。
場所は、東京都内にある自室の、日当たりが良い南側に位置する窓際。充電時間は日が当たり始める午前8時から当たらなくなる午後4時までの、1日8時間とします。最も容量が少ないEGRD Solar Power Bankの場合、メールに記載されていた「太陽光充電は約30時間」が正確であれば、4日で満充電になる計算です。
<結果は……ある意味、説明書通りに>
検証が始まってからどういうわけか曇天続きの空模様となりましたが、5日経過したところで終了。理由は「全く充電されなかったから」です。
どの製品も説明書には「極端に残量が少ない場合、太陽光充電はできません」と書いてあったので、その通りの結果になったといえます。
■ USBケーブルで“レベル上げ”の充電を開始。ところが……
残量レベルが“極端に”少ないと太陽光充電ができないとのことなので、“レベル上げ”のためにUSBケーブルでの充電を開始しました。なお、充電器は「UNIQ 10Port USB3.0HUB」で、各ポートからの供給電流は理論値で最大0.9A。実測値では0.9A以上を確認しています。
開始から3時間。レベルが3段階表示のAkeem 22000mAh ソーラーモバイルパワーだけはレベルアップに成功しているか分かりづらい状態ですが、EGRD Solar Power Bankでは1段階、RUIPU Power Bankでは2段階も残量が増えています。そしてここから再度、太陽光充電を試みます。
翌日もあいにくの曇天。それでも所定の位置に置いたところ、すべてのソーラーモバイルバッテリーで「充電中」のサインが表れました。そのまま1日放置します。……しかし、残念ながら太陽光による充電は確認されませんでした。説明書通りにやっても、うまくはいかないようです。
■ USBケーブルでは残量0から充電に対応 モバイルバッテリーとしては及第点
太陽光充電では残念な結果となりましたが、USBケーブルを利用した場合はどうでしょうか。前述の充電器「UNIQ 10Port USB3.0HUB」(実測値1.1A出力)で充電してみました。
満充電に要した時間 | |||
製品名 | 容量 | 予想時間 | 実測時間 |
EGRD Solar Power Bank | 15000mAh | 9時間30分 | 8時間 |
Akeem 22000mAh ソーラーモバイルパワー | 22000mAh | 14時間 | 12時間 |
RUIPU Power Bank | 24000mAh | 15時間15分 | 13時間 |
充電にかかる時間と本体容量が比例することを考えると、実測の満充電時間がほんの少し短くなっているのが気になりますが、およそ公称値分の電池を積んでいると考えても問題のないレベルだといえるでしょう。
それでは、ソーラーモバイルバッテリーから、スマートフォンへの充電は問題なくできるでしょうか。
「太陽光による充電を試してみる」の項目でも触れたように、3製品とも本体容量を空にするべくスマートフォンと一度は接続しているため、充電そのものができることは確認済みです。では、スマートフォンのバッテリー容量が全くない状態からの充電を試してみましょう。
検証に使ったのは、iPhone 6s、iPhone 6 Plus、GALAXY S8の3機種。結果は……オールクリアー。モバイルバッテリー3製品で、どの機種においてもスマートフォンの電池残量0から充電することができました。
満充電までにかかる時間は、それぞれ2時間半から3時間ほど。モバイルバッテリーの電池残量レベルが1つダウンするタイミングは、EGRD Solar Power Bankの場合だとiPhone 6sを2回充電した後、Akeem 22000mAh ソーラーモバイルパワーの場合はiPhone 6 PlusとGALAXY S8をそれぞれ1回ずつ充電した後でした。RUIPU Power Bankは、iPhone 6sを2回満充電にしてもレベルが下がりませんでした。
■ まとめ:格安とはいえ、どのモバイルバッテリーも性能はまずまず
天候不順が続いたこともあり、太陽光充電の部分では残念な結果となりましたが、ソーラー抜きのモバイルバッテリーとしての性能はまずまずでした。理由は、本体またはスマートフォンへの充電中に高温になったり、コイル鳴きしたりしないということ。また、スマートフォンへの電力供給が充分になされていたからです。
なお、個人的におすすめしたい3製品の順位と理由は以下の通りです。
- 1位:RUIPU Power Bank
- 高級感のある外観で、USBポートも3口あるのがうれしい
- 残量レベルが4段階と分かりやすく、いざというときに役立ちそうなLEDも搭載
- 謎の扇風機付き
- 2位:EGRD Solar Power Bank
- 普段でも使えそうな軽量タイプ
- 搭載されているLEDも明るい
- 3位:Akeem 22000mAh ソーラーモバイルパワー
- 残量レベルが大雑把。「iPhone 6を8.5回フル充電可能」としているが、2回で残量レベル20%以上減ってしまったため不安感を抱いてしまう
- とはいえ、Lightningケーブルでも充電できるのはうれしい
以上、保証付きで格安のソーラーモバイルバッテリー3製品を検証とともにご紹介しました。LED搭載タイプは、災害時だけでなくキャンプなどアウトドアレジャーでも重宝しそうですね。ただし、落として衝撃を与えたり、高温になってしまう場所に放置したりすると、モバイルバッテリーの発火や爆発などの原因になるので、くれぐれも取り扱いにはご注意ください。
※本記事中の内容は2017年10月時点の情報です
※価格は税込みです
■ 著者プロフィール
渡辺まりか