※この記事は、ランサーズ株式会社によるSponsoredContentです。
出演者プロフィール
及川 卓也さん
DEC、Microsoft、Googleを経て、2015年に技術情報共有サービス「Qiita」を運営するIncrementsに入社。2017年6月に独立して技術面での企業支援を行う。2019年1月、テクノロジーにより企業や社会の変革を支援するTably株式会社を設立。
秋好 陽介さん
ランサーズ株式会社代表取締役社長。2005年、ニフティ株式会社に入社。Webディレクターとして複数のインターネットサービスの企画運営を担当。2008年4月に起業。同年12月に国内初となるクラウドソーシングサービス「ランサーズ」を立ち上げる。
倉林 昭和さん
2019年1月いっぱいで18年勤めたITベンダーを退職し、同年2月にランサーズ株式会社に入社。40歳の区切りで「サービス、テクノロジーで社会課題解決に向き合いたい」という思いからランサーズ株式会社を選択し、旧所属会社とは個人として業務委託で関わる。
「スキルがあれば個人でも稼げる!」という驚きがランサーズ起業の原点
──まずは、自己紹介をお願いします。
及川 30年ほどIT業界に関わってきています。最初の会社ではソフトウェアエンジニアとして研究開発をして、その後マイクロソフトに転職。Windowsの国際版の開発を手掛けました。
Tably株式会社 及川卓也さん
次はWebの時代だなと思い、一番面白そうで訳の分からない感じだったGoogleに入って、プロダクトマネージャーやエンジニアリングマネージャーを務めました。その後「ずっと外資系企業にいたけれど、他のこともやりたい」と思い、日本企業かつスタートアップが面白そうだと考え、技術情報共有サービス「Qiita」を運営するIncrements株式会社に“14番目の社員”として入社しました。スタートアップの醍醐味(だいごみ)を味わいつつ、兼業として他の会社をお手伝いしていました。1年半ほどたって「思い切りいろいろな会社を手伝ってみたら、自分自身でどういったことが学べるのか、どういったインパクトを残せるのか」を考え、2017年からフリーランスになりました。2019年からは法人化して、事業のインパクトをさらに上げていくことを考えています。
秋好 主にコンサルティングをされているのでしょうか?
及川 自分の仕事をどう説明すればいいか考えると、結局「コンサルティング」になってしまうんですが……。実は、個人的には「コンサルティング」という言葉は好きじゃないんですが、ITコンサルティングが一番伝わりやすいです。
ただ、実際の業務では言葉のイメージよりも泥臭い部分を手掛けています。組織周りがすべての軸になってくるので、そこをお手伝いすることが多いですね。「採用や育成などの組織作り」「プロダクト化のためにどんな戦略を取ってどうグロースさせればいいか」「技術的なディレクション」、この3つをセットにしています。会社の多くの課題はこの3つに集約されます。この3つを突き詰めれば事業におけるテクノロジー活用もうまくいくので、そこにもチャレンジしていきたいと考えているところです。
秋好 私は、大学生の時にフリーランスとして活動していました。2001年ごろにインターネットに出会って「Webサイトを作ったら報酬を得られた」ということが、ランサーズを起業した原体験になっています。その時に感じたのは「収入がある」ことよりも、自分のような普通の大学生でも、「PCがあって、Windowsがあって、Internet Explorerに表示されるものを作り、それを納品したらありがたいことにアルバイト以外でも報酬がいただけた!」という強烈な感動でした。インターネットってすごいな……と。それがとても新鮮でした。
ランサーズ株式会社代表取締役社長 秋好陽介さん
秋好 新卒時はニフティに入社しました。そこで、大手企業案件の発注先はフリーランスに任されることはなく、大手企業に限られるという制約にある種の可能性を見出しました。学生時代に優秀なフリーランスのエンジニアやデザイナーと仕事をした経験から、「高いスキルを持つ個人にもっと依頼すればいいのに」と思うこともありました。
そこから「もし企業と個人をインターネットで結び付けられれば、もっと仕事の仕方ががらっと変わるのでは?」と考え、他にはまだなかった「個のスキルを最大限に生かせる仕組み」を思い立ち、起業の道を選びました。フリーランス総合支援プラットフォームを立ち上げ、2018年に10周年を迎えました。
──最初の会社では何をされていたのですか?
秋好 Webディレクターとしてエンジニアやデザイナーを束ねながらサービスの企画・制作に従事していました。その時に、倉林と一緒に仕事をする機会があったんです。
及川 古くからのご友人なんですね。
倉林 2019年2月から、10年ぶりに一緒に仕事をすることになりました。僕は2000年に入社して長くネットサービスの事業部で仕事をしていたところに、秋好が新人として入ってきた、という感じですね。それが出会いのきっかけです。
秋好 倉林がリーダーという関係でしたね。
ランサーズ株式会社 倉林昭和さん
倉林 僕は開発・SI系に近い業務で、フロントエンド、サーバサイド、最後はマネジメント、というようにキャリアを積ませてもらいました。「Webサービスやテクノロジーで社会課題を解決することにもっとどっぷり漬かりたい」という思いを持っていろいろと考えているタイミングで、ちょうど秋好と会話する機会がありました。ランサーズの今後の方向性と自分がやってみたいことが合っていたこともあり、2月からジョインしました。また一緒に仕事ができるのは感慨深いです。
──秋好さんにとっては心強い仲間が増えたんですね。
秋好 そうですね。私は新卒入社時に企画やアイデアがたくさんあって、「あれをやりたい、これをやりたい」って言い続けていたんです。周囲からは「これはできない」「この機能は削ろう」という反応が多い中で、倉林は「こういうプランだったらできる」と実際に進めてくれました。過去一緒に働いたエンジニアの中で「もう一度一緒に働きたい!」と思う人が何人かいるのですが、そのうちの一人が倉林でした。何か一緒にやりたいと思ったところにぴったりタイミングが合った感じですね。
これまでのクラウドソーシングの課題と、クリエイターの価値のひずみ
──ランサーズでは2018年12月にタレントソーシングに特化したマッチングサービス「Lancers Pro」の提供を開始しました。これまでのクラウドソーシングとの違い、ブランドの意図について教えてください。
秋好 クラウドソーシングサービス「ランサーズ」をスタートしたのは2008年でした。その頃はインターネットの性善説の世界にどっぷり浸っていましたから、システムとプラットフォームを作れば、仕事の受発注が自然に健全化されるマーケットプレイスになると見込んでいました。しかし、課題がいくつか出てきました。
秋好 まず、最初は金額の設定です。利用者間にて適切な発注価格ではやりとりされず、「300円でロゴを作ります」「1,000円でExcelのマクロを作ります」というような低単価の案件が出てきてしまい、それが徐々に増えていきました。開始してから2年間、低い単価ではマッチングするものの高価格では全くマッチングしないという状況がありました。
──低い単価でのやりとりが多いと、その相場で仕事できないという方は離れますよね。
秋好 はい。そこで、適切な価格となるよう一定の運用ルールをきちんと整備しなければと思い、物々交換から証券取引所などの金融市場まで世界の取引所のルールを調査したら、それらすべてに最低限を決めるルールがあった。その調査内容に基づき「最低金額制度」を設定しました。そうすると、案件数が10分の1に減ってしまい、一時期は会社経営が厳しくなると危惧した時期もありましたが、徐々に元に戻っていきました。
──クライアント側から来る依頼の内容をすべて把握するのは難しそうですが、これまでどう対処されてきたのでしょうか。
秋好 サービス開始当初は依頼の件数が1日10件程度だったので、依頼があれば通知が来るようにして、目を通していました。さらにサポートチームを立ち上げて対応してきましたが、ありがたいことに、2012年くらいから爆発的に利用者数が伸びていきまして。ニーズが増えてくるとともに、サポートがサービスの成長にだんだん追いつかなくなり、我々のスタンスとは違う依頼が生まれ始めて……。
もちろん、削除対象となる依頼への対応はすぐ行っています。しかし、正直に言えば、問題のある依頼は全体から見ると非常に少なかったんです。具体的には、マルチ商法への勧誘や特定の人への誹謗(ひぼう)中傷依頼などで、当初は1年に数回あるかないかでした。それらはプラットフォームが成長するにつれて、現在ではたとえ全体の1%だとしても結構な量となっていきます。
最初に作ったルールとの乖離(かいり)も生まれてきました。例えば添付ファイルの中に全く違う指示が含まれていたり、LINEを交換してそこで直接やりとりをしたりするなどです。ルールをかいくぐってのいたちごっこも増えました。
──そんなやり方もあるんですね。
秋好 そんな中で2016年、キュレーションメディアのあり方に端を発した記事の粗製乱造問題が起きました。企業がライターを集めるために我々のサービスを利用したことが明るみに出ました。これが課題の2つ目です。
創業時には存在していなかった新しい業態が生まれるとともに、ランサーズの新しい使われ方も生まれてきました。我々は、キュレーションメディアに関する依頼は「ライティングの案件」という認識でした。また、他にも線引きが難しい案件がいろいろ発生するようになりました。例えば「はてなブックマークをしてください」「Twitterに投稿してください」というような内容に対して、問題になった後に対応したことなどです。
それらへの対応が後手に回ったことを深く反省し、今は「品質向上委員会」を社内に設置して、都度議題に挙げています。現在は依頼してくださる方にとって分かりやすいよう、「仕事依頼ガイドライン細則」の中に「Facebookページにいいねしてください」「Twitterをフォローしてください」「はてなブックマーク登録お願いします!」*1など具体的な禁止の例示を盛り込み、改善を進めています。
秋好 3つ目は構造的な課題です。「クライアントが、発注から制作管理・進行までの要件定義をすべて行ってフリーランスに仕事を発注する」ということは難しく、ランサーズではそれがやりやすいデザインやライティング、簡単なシステム開発のような案件に限られていました。我々のビジョンは、誰もがテクノロジーの力で自分らしく働けるような社会を作ることです。マッチングがスムーズにできていなかったことを大きな課題と捉え、今まさに取り組んでいるところです。
──当初の思惑とは違ってきてしまいますね。
秋好 プラットフォーマーとして社会に価値提供をする上では、必ず自浄作用を持たないといけないと思っています。きっとこれからも、新しい技術や業態が生まれれば、これまで想像もしていなかったような依頼も新たに出てくると思うんです。
──変な依頼といいますと?
秋好 例えば、今はVR(バーチャル・リアリティ、仮想現実)に関連する依頼が増えてきているんです。それらの中で、今この瞬間には顕在化していなくても、いつか社会的に問題となるような依頼が出てくるかもしれない。そういうところも先回りして見ていかないといけないと考えています。
今取り組んでいるのは、先ほど紹介した「品質向上委員会」での監視の他に、メキシコやアイルランドなど世界各地のユーザーさまに依頼して24時間の監視体制を作り、違反レポートを出してもらうこと。また、AIや機械学習などを活用し、違反対応チームによる案件データを教師データとして依頼を排除するといったことを実施しています。
──変な依頼といえば、「このゲームと同じものを10万円で作ってくれ」という案件がネット上で話題になっていたこともありました。
秋好 そんな依頼は成立する訳はありませんし、相場も全く折り合わないですよね。それがランサーズで依頼されると、普通の案件とあたかも同じように見えてしまう。そのような案件に対しても、適切な価格でマッチングができるよう、重点的に改善を続けています。
及川 今秋好さんが言われたことは、非常に難易度が高いことだと思っています。ランサーズさんの努力だけではなく、日本の社会・産業界が解決しなければならない問題が含まれています。つまり、多くのクリエイターたちの価値やクリエイターが作るものの価値を、事業側が分かっていないし、それに報いてこなかったという状況です。
いびつな階層構造の下に生まれてくる日本のIT分野の価値は、海外と比べるとやはり低かったと思うんですね。ユーザー体験や品質が低ければ、その結果に流されてしまった人は、新たなものを作る際に「もっと安くできるでしょ?」と言いがちです。例えばデザインは非常に分かりやすいジャンルですね。素人でも口出ししやすいために「こういうのをささっと作っておいてよ」と言われた経験のあるデザイナーはものすごく多いわけです。
そういったマインドのままで、ランサーズというプラットフォームでも依頼をしてしまう方がいる。もちろん秋好さんが挙げられたランサーズさん側の課題への対策も必要ですが、そういうところで、実は日本の社会がクリエイターの価値を分かっていないということが顕在化してしまった。ランサーズさんの努力にプラスして、社会がものづくりの価値を理解するというところが必要になってくると思いますね。
ランサーズの考え方や理念を発注側にも受注側にも知ってもらうために
及川 お話を聞いていてもうひとつ思ったことがあるのですが、「何が正しくて何が正しくないのか」という判断は非常に難しいですね。例えば、ユーザーがコンテンツを生成するサービスでは、創業者や作り手側が思い描いた用途や思いが伝わらなければ、勝手な方向に育っていき、手が付けられなくなる……ということが起きてしまう可能性があります。
Yコンビネータという会社が運営するソーシャルニュースサイト「Hacker News」では、創設者のポール・グレアムが、自分が作り上げたい世界を明確に記したガイドラインに反したものに対し、自ら出ていくことも厭わず、記事をBAN(アカウントの停止・剥奪)したり、ふさわしくないと考えた記事をテクノロジーの力を使って検出したり、評価のランクを下げたりということをしていたんですね。ランサーズさんが始めている対策とほぼ同じような内容です。ランサーズさんは、プラットフォームをこんなふうに活用してほしいという宣言のようなものは出されているんですか?
秋好 以前、健全化を図る意味でのリリースは出しましたが、サービスの活用という観点では出していないですね。
及川 そこをもっと強く言ってもいいと思うんですよ。
秋好 なるほど。それはいいですね。
及川 新しくタレントソーシングとして「Lancers Pro」を前面に出すとお聞きして、「ランサーズというプラットフォームはこうあってほしい」というお考えを打ち出そうとしているのかな、と感じていました。
例えば、ランサーズにログインした時に、目立つ場所に何かのタイミングでランサーズさんのメッセージが出てきて、ユーザーさんは常にそれを見る。ちょっと厳しい言い方になりますが「私たちと違う考え方を持つのは自由です。でも、私たちはあなたたちにそれを求めていません。それが我々の考えです」ってはっきり宣言してしまっていいと思うんですね。
秋好 我々のサービスを信頼してご利用いただいているクライアントさまやユーザーさまには賛同していただけるかもしれないですね。
及川 さまざまな考え方を持つ方はいらっしゃいますが、プラットフォームの提供側として「同じ考えを持った人たちのためのサービスだ」と言い切ってしまってもいいと思います。何か問題が起きたものをBANする際に、声を上げる人は必ずいます。その人たちはボーカルマイノリティ(声の大きな少数者)なんです。サービスに満足している方は、だいたいサイレントマジョリティ(物を言わない一般大衆)なんですね。そちらの方々がプラットフォームから去ってしまうのを避けるために、ボーカルマイノリティの言葉に引きずられないようにするという強い意思が必要です。
秋好 ありがとうございます。ぜひ検討させてください。
──ユーザーの声を聞こうとすればするほどその声に引きずられて、サービスそのものにも影響が出るということなんですね。
及川 あくまでもインターネットの中の1サービスという立ち位置なので、違う目的をお持ちの方は、別のサービスを使えばいいと思うんですね。
──「Lancers Pro」の立ち上げから3カ月半ほどたちましたが、何か変化はありましたか?
秋好 これまでランサーズでは匿名のIDも可能としていたのですが、「Lancers Pro」では実名と顔写真の登録を前提として、個人認証の仕組みも用意しました。クライアントさま側に対しては、要件定義のスキルをいきなり上げていくのは難しいため、いったんそこを我々がお引き受けして、その案件をフリーランスのユーザーさま側にマッチングするということを始めています。クライアントさま側に対し、継続してこれから新しい形での依頼を働き掛けていきたいです。
──ランサーズさん側で要件定義をマッチングするまでまとめるには、結構パワーが要るのではないかと思うのですが、そこはどうされているのでしょう?
秋好 いわゆるPM(プロジェクトマネージャー)が作る要件定義書の作成まではやっていませんが、「その業務をする人は、これくらいの相場です」と伝える、該当しそうな登録者の方の過去の実績をご紹介する……それだけで発注側とフリーランス側との信頼感が増すので、成約数が向上しています。
直接交渉する場合、フリーランスの方々にとって交渉の負担があるのですが、第三者が入ることでその負担を解消することが可能になります。及川さんくらいの方であれば、お名前で分かると思うのですが……。
及川 いえいえ(笑)。
秋好 我々が間に立ってお互いのエビデンスを取ることで、信頼性をカバーしているイメージですね。
及川 クライアント側にとっては要件定義やマッチングの精度を高めてもらうという意味で「Lancers Pro」を利用しない手はないと思うんですが、使わない人がいるのはなぜなんですか?
秋好 要因は2点あります。要件定義に際して手数料をいただいているということ、そして「ランサーズはデザインやライティングだけを依頼するための場だ」と思われていることです。例えば、“超イケてるReactのエンジニア”が実は数十人も登録されているのに、全然知られていない。
及川 まだ本来の価値が伝わっていないということなんですね。
──今後価値が伝われば、マッチングサービスとして適正になっていていくというお考えでしょうか。
秋好 はい、品質と価格が共に上がっていくと考えています。また、特に地域の企業さんの場合に顕著なのですが、仕事を依頼したいエンジニアを探してもなかなかマッチングできないケースがあるんです。我々のサービスを使っていただくことで、例えば北海道の企業さんが山口県のエンジニアと一緒に仕事をすることができる。適正な価格で仕事がマッチすれば、お互いに満足していただけると思います。
──遠距離でのマッチングでも事前に要件がまとまっていれば安心できますね。
秋好 案件そのものも多様化しています。今増えているのは広報や採用、アシスタント業務。実は私の秘書も、今タイのバンコクに住んでいる方なんです。バックオフィスの仕事がオンライン化していけば、企業にとっても社内のプロに頼む仕事と社外のプロに頼む仕事を分けることができます。企業がスマートに経営できる世界を作っていきたいです。
及川 フリーランスの立場から見て、各企業との契約書があり得ないぐらい重厚なものだったり、「どう考えたって3ヶ月で終わる仕事の内容じゃない」ということが記載されていたりしますよね。企業側はおそらく悪意があってやっている訳ではないのですが、個人やフリーランスと契約した経験がなく、社員や契約社員と締結するものをベースにして契約書を作ってしまい、その結果遵守事項がとても多くなってしまうと思うんです。
ランサーズさん側で基本となるテンプレートを用意して、企業側で本当に必要な要素を足してもらうようアドバイスをしてもらえると、双方にとって非常に助かると思います。その後は「ランサーズでいつもやっているから大丈夫だね」と簡略的に判断できると思うのですが。契約周りに関しては日本ではまだまだ個人に負担がかかっているので、ぜひランサーズさんに業界内のスタンダードを作っていただければいいなと思いました。
秋好 「Lancers Pro」では契約書のテンプレートを用意していて、そこでは改善価値を出せると思います。フリーランスの方にとっては納品後にお金を払ってもらえないということが一番のリスクですので、そこを担保するために我々の提供できる価値をしっかり高めていきたいです。
Lancers Pro 解説画面
倉林 海外の企業や外資系企業では、関わるメンバーのジョブディスクリプションが明確にあって、「あなたの役割はこれで、このアウトプットです」と決まっていますよね。日本のIT事業におけるカルチャーというのは、ある意味“丸投げ”といいますか、メンバーに対してまるっとお願いしてしまうという印象があります。今後日本の労働人口が減っていく中で、外部に業務をアウトソースする流れは間違いなく増えていくと考えています。依頼先の選択肢が減っていくという状況であれば、改善のサイクルは徐々に回り始めていくんじゃないかと考えています。
及川 私がフリーランスになった当初のクライアントはスタートアップだけだったんですね。スタートアップ企業の場合は、ランサーズさんもそうですが、創業者の方々の「こういうふうに社会課題を解決したい」という強い思いがしっかりあるので、開発業務の丸投げは絶対しません。内製化が前提ですし、それができなかったとしても業務委託先の開発に対してかなり関与しますよね。毎日心配で見に行ったりとか(笑)。
大規模な事業会社の場合はあまりそういうことはありません。ただ、それが良くないということに気づき始めた企業も増えてきています。そうすると、すべて内製化まではいかないとしても、明確にオーナーシップを持つようになってきている。それができる会社とできない会社とでは、明暗がはっきり分かれるのではないかと思っています。
倉林 企業業績にも後々影響が出てきそうな話ですね。
及川 今気づいている会社と気づいていない会社とで、5年後、10年後にそこが大きく効いてくるはずです。
キャリアに悩むエンジニアへ「多様性に触れよう、他の世界を見よう」
──いろいろな生き方・働き方が生まれてくる中で、キャリア形成に悩むエンジニアの方もいるかと思います。迷いのあるエンジニアに対してアドバイスを送るとしたら、及川さんは何を伝えるでしょうか。
及川 まず「手段」と「目的」を明確にした方がいいと思います。もし新卒で入った会社で、収入を増やしたいから副業を選ぶという場合は、おそらく就職する会社を間違えているんですね。
──確かにそうですね。
及川 入った場所で、社会人、エンジニア、プロフェッショナルとして認められるにはとても大変ですから、そこに100%コミットすべきなんです。その上で「多様な価値観に接することができているか?」ということを考えます。その手段の一つとして、「副業や兼業の選択肢がある」「そこからさらに軸足を移してフリーランスになることができる」など、キャリアパスが多様であることを認識しておく必要があります。
──倉林さんも長く勤める中で多様なお仕事をされてきています。
及川 もし多様なことができる環境にいるなら、副業を無理に始める必要はないです。最初から多様性だけを求めるのは、「手段」と「目的」を取り違えているんじゃないかなと思います。自分がどんなエンジニアになりたいかというイメージも人それぞれなので、一つの技術を深掘りして複数の案件で試すという方法もありますよね。
例えば収入を上げることを目的とするのであれば、自分の人材価値、率直に言えば「単価」を上げる方向を考えるといいと思います。若い時は自分に投資して、そこからテコの原理でさらにどう価値を上げていくか。そこで多様な技術的環境に触れてその機会を増やす「手段」として副業・兼業を捉える方が、楽に、技術的なコンフリクトもなく進められると思います。
秋好 僕はお二方と違って、職業としてのエンジニアをずっとやってきたわけではないのですが……個人的には、エンジニアはあえて「エンジニア以外の仕事」をやってみると、自分の能力に対して掛け算になる効果があると思います。例えば財務モデリングを僕はプログラミングで作っていますし、総務の分野であれば入社管理をシステムで組みますし。「すごいコードを書くエンジニア」も良い道ですが、他の分野との掛け合わせでも価値が生まれやすくなると思います。エンジニアリングの世界では僕のコードは普通のレベルかもしれませんが、バックオフィスではしっかりエンジニアとしての力を発揮しています(笑)。
──エンジニアリングの価値を分かる経営者という立ち位置にもなりますね。
及川 経営にもプログラマー的な思考は大事だと思います。財務モデルを作る際にもプログラミング的発想は大事です。例えばKGIやKPIを作るときに、KPIツリーをちゃんと作って、自分たちがどのパラメータを上げようとしているのか語れる人って、実はそんなに多くないと思うんです。でも、プログラマーとして設計に慣れている人なら、そこはしっかりできるはず。プログラミングで最適化することの応用は、実社会のいろいろなところでできるんです。
倉林 多様性という言葉で表せるような、「自分のスキルが生かせる、選択肢が多く用意されている世の中」にだんだん変わってきました。大企業に属している人にとっては、なかなかいきなり会社を辞めるタイミングはないと思うんです。自分も18年勤めて辞めようとする時に、「その一歩って何だったの?」と聞かれました。自分にとってはちょうど新しい波が来ているように感じた、というのは理由の1つです。自らの道を考えるための一歩を気軽に踏み出しやすい世の中になってきていると思います。
──ここまでのお話でいろいろな働き方の例が出てきました。及川さんはまさにその働き方を体現されてきていますが、及川さんご自身の「エンジニアの働き方」に対するお考えをお聞かせいただけないでしょうか。
及川 たくさんあります、話します(笑)。
──ぜひお願いします。
及川 まず、僕はエンジニアのキャリアという点では繰り返し「多様性が大事だ」という話をしています。どんなに大きい会社であっても、1社にずっと所属していると、残念ながら技術スタックが多様化している環境ばかりではありません。例えばこの会社ではJavaを使っていて、このフレームワークで、RDBはこれで、だいたいこの基盤を使いましょう……ということになっていると、そこに所属する技術者はなかなか他の技術に触れる機会がないんです。
それでも、積極的に他の技術にも触れていった方が良いです。もし業務ではメインの技術が決まっていたとしても、他の技術に触れると学べることがとても多いんですね。Javaがメインのエンジニアに「最近話題の関数型言語を触りました」「Scalaをやってみました」という経験があれば、もしかしたらJavaのどこかでも役立てられるかもしれない。会社の人に「こんなふうに使ってみると良いですよ」と提案できるかもしれない。事業単位で見ても、BtoBをずっとやってきた人がBtoCのプロダクトの作り方を学んだら、絶対に生かせると思うんです。もちろん逆もしかり。大学生って、インターンシップでいろいろな経験ができるじゃないですか。副業や兼業は、社会人としての一種のインターンシップだと思うんですね。
倉林 ああ、なるほど。
及川 社会人になると、他の会社の中に入って実際に業務を行う機会はそうそうありません。SIerや受託という構造は「悪いもの」と見られがちですが、事業の形態としてたまたまそうなっているだけで、実は1つの事業会社よりも受託の方が、他の技術や事業に触れていける可能性はあるんですよ。副業や兼業という働き方が登場してきたことによって、さらに可能性が増している。そこで思い切り舵を切るのが、メインの業務を辞めてフリーランスになって個人事業として働いていくということだと思うんです。
倉林 よくわかります。
及川 「半年~1年くらいのプロジェクトをやりました」「金融機関で安全性の高め方が分かりました」「次の仕事はスマートフォンアプリのバックエンドをやることです」となると、もう何もかも違うわけです。SIerや受託ではいろいろなものに関われると先ほど言いましたが、そこで問題となるのが、多くの方は「完全に受け身」となってしまうところです。
日本では、企画を立てる人が「これ作っておいて」と言って、その仲介役になる人がいて、最終的にエンジニアのところに案件が降ってくる頃には「決まった通りやればいい」となっていて、一切意見を言わせてもらえず、それをよしとしてしまっている、あるいはそれに慣れ過ぎているケースが多過ぎると感じています。
秋好 確かにそうですね。
及川 そこで、自分自身で何かをやろうとすると「それだけじゃだめなんだ」ということに気が付きやすいんです。自分の価値を知り、必要があれば企画に対して意見を述べることによって、本当に目的とするものに対して自分の技術で何を貢献できるかについて考え、意見を述べない限り、市場におけるその人の価値は低いままです。いくら技術力が高くても、です。
──自分の価値を知るためにも多様な環境に触れるということなんですね。
及川 さらに、僕は日本では人材流動化がもっと進んだ方が良いと思っています。
多くの人は自分の使っている技術・培ってきた技術がどこまで他社で通用するのか分からないため、いきなり転職するのは大きなリスクですし、不安にもなります。それならばランサーズに登録して、週末の時間を使って「私はこういうところができます」という積み重ねを得ればいいと思うんですね。最初は単価を抑えめにしてもいいと思うんですよ。ちゃんと自分の価値があると分かったら、単価を上げればいいし、将来的に自分は人材市場に対してこれくらいの価値がある! と主張しても構わない。副業や兼業はその一歩目になるかもしれません。
実際に今僕がそうなんですが、パラレルキャリアみたいな生き方を始めると、名刺を複数持つようになるんですね。例えば誰かと飲み屋で隣になったという場合に、僕にはお手伝いしている先の企業の名刺をいきなり出す勇気はありません。なぜならそこではその立場で話していないから。個人の名刺であれば、比較的自由に自分の話ができます。
倉林 そういうことは確かにありますね。
及川 パラレルキャリア的な生き方をしていない人で、1社に所属しているという人の場合でも、自分の会社の名刺を出して話すのは、本来は結構怖いことです。発言がすべてその所属の立場であると受け止められてしまっても仕方ないですよね。そのことを、1企業にだけ所属されている方はあまり感じていないように思います。みんながどのような立場で今世の中に生きているかということを、パラレルキャリアになってすごく意識して、勤めている会社に対して「どのように貢献できるか、どんな価値を提供できるか」についてとても考えるようになりました。
フリーランスの値付けとは? そこをランサーズが仲介する意義とは?
──兼業や副業、フリーランスで自身の価値を知る場合、どうしても値付けは必要になります。及川さんはご自身で値付けをする時にどうされていたんですか?
及川 僕は先駆者の方々の意見を参考にしました。知り合いが何人か既にやっていらしたので。率直に「いくら?」って聞いて「だいたいこの辺だよ」「この人もだいたいこれくらいだよ」と回答をもらって、そこからスタートしました。
──相場感はつかめたと思いますが、その後の値上げ交渉などは?
及川 ちょっと価格を上げた際には、案件をいただいた会社の方に聞いて判断しました。その時僕は手一杯で案件を受けられなかったんですが、「僕にどれくらい価値があると思いますか?」って率直に聞いたんですよ。そしたら「これくらいです、全然大丈夫です」って。
交渉の方法は2つあって、1つ目は他社の価格をベンチマークにすること、データを持っている人に「自分はいったいいくらで売れるのか」を聞くこと。もう1つは、まあ実はたまにやっちゃうんですけど(笑)、「価値を下げない、安くしない」ということです。ちゃんと価値を下げないように努力しないと、クリエイターの価値が全体的に下がってしまいます。僕が価格を安くしてしまったら、後から同じ道に続く人が安い価格からスタートすることになってしまう。僕よりもっとばりばり開発している友人には、「絶対価格を下げるな、下げると他の人もそこからスタートする。後輩に迷惑をかけることになるのだから、必要以上に下げるな」とアドバイスしました。
──ランサーズさんの「適正な価格を付ける」というお話と連動しますね。
秋好 まさにおっしゃる通りです。ただその一方で、フリーランスで働いている方の多くは、値上げにものすごくストレスを感じる方が多くて……。ですので、我々としては、初期の値付け、それをどう担保するかスキルテストをすること、継続しているクライアントさまに対してはその方の価値を的確に伝えるための勉強会実施やコンサルティングに力を入れています。
及川 代理に立ってくれる人の存在は大事ですよね。働く本人もどこまで強気になっていいか、価値はどれくらいなのか分からないですし。特に日本人の場合は賃金交渉、報酬交渉が苦手です。そこはランサーズさんの価値になると思います。
秋好 「Lancers Pro」で実現しようとしているのはまさにそこでして、我々がいったん介在して適正な価格でクライアントさまに提案します。もちろんそこで提案を受けないクライアントさまもいらっしゃいます。クライアントさまにとっても、変に安い価格でまだスキルの低い方とマッチングしてしまうと「ランサーズを経由すると結果としてクオリティが悪い」という印象になってしまいます。そのため、クライアントさまにとって中期的に見て適正な価格で、クオリティのバランスの良い案件を仲介するようにしていこうとしています。
秋好 基本的にはリピートするクライアントさまの場合、クオリティに満足していらっしゃるので、値上げの話をしても「それならOKです、むしろもっとこれくらいやっていただけるように単価を上げます」という話をいただくこともあります。クライアント側、フリーランス側、どちらも満足できるように仕組み化していきたいですね。
及川 事業者側や発注側は「お金がないから買いたたく」のではないんですよね。これまで別の会社に頼んでみたら見積もりでとんでもない額をふっかけられるというケースも経験していると思います。そこで、「個人だったら安いでしょう」という誤解で安い単価を付ける場合もあると思うので、そこをランサーズさんが適正にしていくのは非常に価値のある行為だと思います。そして「こういうプラットフォームにしたい」ということを認められるクライアントさん、タレントソーシングに登録する方々に加わっていただけると、双方の価値を高められる世界ができあがっていきそうですね。
秋好 そういう世界を作れるといいなと思っています!
「変革が急務」となっている業界では、危機感を持ち、変化を遂げつつある
──フリーランスが案件の中に入っていく時に、企業から見ると「外部の人が入ってきた」という見え方になるかと思います。及川さんが技術顧問で企業にコミットすることを例として、ランサーズを使って発注するクライアント側に対してどのような関わり方が適切なのか、アドバイスをいただけないでしょうか。
及川 一般的には、要件定義がきちんと書いてある方が良いですね。エンジニアが関わる開発案件であればその辺りはそんなに難しくないのではないかと思います。ランサーズさんで発注する企業側も、クリエイティブが確実に生まれるもの、例えばライティングやコーディング、デザインに関しては固めやすいのではないでしょうか。
自分の場合でいうと、技術顧問業では結構曖昧なところがあります。そこは正直に言うとまだ自分の中で整理できていませんし、発注する側もあまりきちんとできていないかもしれません。
秋好 タイにいる私のアシスタントの場合は、時間報酬制を取っていて、アウトプットではなく時間に対して適切に払うというやり方にしています。業務によってかなり違いますね。
及川 技術顧問に関する報酬体系では、稼働時間に応じて価格を設定する場合もあれば、プロジェクト単位で契約する場合もあります。プロジェクトの場合は目に見える制作物に近いですね。例えば、組織変更をする場合に、その変更した組織で新しい評価体制を3ヶ月間一緒にやる、プロダクトの最初の仮説検証をして最終的にローンチするまでを3ヶ月間一緒にやる、これらは分かりやすい。曖昧になりがちなのは、その中間のような業務です。
クライアントもこちらも、時間で区切ることはあまりしたくないんです。例えば、月に1回ミーティングをする場合に、「ストップウォッチでかっちり時間を計ってここまでで終わり」ではないですよね(笑)。最初は「最近どうですか?」みたいに雑談から入って、最後も「まだ時間があるから、ちょっとここまではちゃんと決めちゃいましょう」など、柔軟に対処するじゃないですか。もしそれをすべて時間で定義すると、「最初のおしゃべりの時間は成果に入りますか?」という話になっちゃうので……。時間の価値で定義したいところですが、なかなかできかねているところです。
倉林 確かにそうですね。そこには見えない信頼関係が大事なんでしょうね。
及川 「私が顧問として入った」ということ自体に価値を感じていただけるケースもあるんです。そこには有形無形のバリューが存在する。でも、実働するタスクもいくつか走っている。そこでタスクごとに厳密に条件を決めた方がいいのかもしれないですが、実際の事業というものは非常にダイナミックですよね。「昨日決めたものは来週までにお願いします!」というスピード感の中で、それぞれに契約書を作るなんてやっていられないので、「だいたいこれくらいのタスクがあるでしょうからこれくらいでどうですか。時間はたぶん月にこれくらいになるので、稼働時間を確保してください」というように、厳密には決めず、大きく逸脱した場合には調整する契約にしています。
倉林 そうしないとなかなか大局的な見方での関わりはできないですよね。
及川 マネジメントの分野も、実はフリーランスが入っていく部分がすごく大きくなっていて、引く手あまたなんですよ。私と同じような形態で他の会社を手伝っているエンジニアリングマネージャーが何人もいて、彼らは自分がスタートアップで「0→1」「1→10」「10→100」まで立ち上げたそれぞれのステージでの経験を、もう少し高いレイヤーの方に伝授しています。ここにはめちゃくちゃ価値がありまね。
──及川さんが多くの企業と技術顧問として関わる中、働き方が多様化しているという手応えはありますか?
及川 変化は確実に起きています。スピード感はもっと早くてもいいかなと思うくらいですが。個人的に観測しているWeb・IT系の業界においては特に人材流動は加速しています。流動が多ければいいというものでもありませんが、本当に自分が活躍できる場所を見つけるのは正しいことです。日本でのクリエイターの価値がこれまで低かった分、自分をきちんと評価してくれる場所、より貢献できる場所へ移るのは、起こるべくして起きていることだと思っています。
一方、大規模な事業会社でも、倉林さんが先ほど言われたように“丸投げ”をしなくなっているところも多いです。いわゆる「デジタルトランスフォーメーション」の動きと比例して、自社での内製化を進める企業も増えています。自分たちが練った開発戦略に基づいて、「この部分は専門性が高いので、外部の優秀な方にサポートに入ってもらおう」「この部分は別の会社にお願いしよう」というように自ら主体性を持って、内部と外部の力を結集する形で開発を進める会社はいくつも出てきています。ただ、この流れはもっともっと増えていかなければならないと考えています。
倉林 変わり始めている会社さんにはどのような特徴があるのでしょうか?
及川 「危機感があるかどうか」です。変革が急務になっている業界では、大変革が身近に迫っていて、かつその内容が業界構造を壊すほど破壊的である、というところなんですよ。
私が関与している自動車業界は、100年に一度の変革期と言われています。EV化もシェアリングも進み、コネクテッドカーが当たり前になり、自動運転が主流になる……という急激な変化が、5年後かもしれないし、10年後かもしれないけれど、いつか確実に到来します。目の前に変化が今すぐ来るかもしれないとなると、当然危機感を持ちます。業界によっては「いつかは来るかもしれないが今すぐではない」と考えているところもあるでしょう。危機感が他人事ではないと強く考えている業界ほど変化していっています。
──ランサーズのサービスを使って発注する側となる企業側が直面すると予想される課題はありますか?
及川 ほぼすべて「人材不足」ですね。
倉林 ずっと「人材不足」がキーワードかもしれないですね。私の前職はどちらかといえばレガシーな企業で、自分自身も発注側にいたので、発注側が使いやすくなるような視点でサービスに付加価値を付けようとしています。「もっと人がいたらこの案件が獲得できたのに」ということはずっと感じてきていました。その食い違いをテクノロジーで解決したいという思いは非常に強く持っています。
及川 やはり人材の問題は顕著で、エンジニアの採用にずっと苦労しながら「あと何人いればもっと早く進められる」と悩む会社さんは多いです。「エンジニア採用をすぐには進められない、怖い」と感じる会社さんもいますね。その理由はというと、「今はリニューアル案件があって5人のエンジニアが必要なことは分かる。しかしリニューアルが終わったらその5人を食わせ続けられるかどうか分からない」というんです。
及川 実はそれはばかげた悩みなんです。案件には常に変化が必要ですし、その案件が終わったとしても、採用したエンジニアは次の事業で引く手あまたになるはずなんです。それでも不安だとしたら、自社で採用せずにフリーランスなどいろいろな雇用形態で入ってもらって構わないと思うんですよ。多様な働き方の一環として「パートタイムでも大企業の案件に関わってみたい」という人はたくさんいます。ですので、ランサーズさんのようなマッチングプラットフォームの取り組みは、クライアントとなる企業側にも今後ますます価値を与えると思いますね。
倉林 お客さま側の要望として「アジャイルで開発したい」というケースが増えてきたことは感じていました。アジャイル開発の難しいところは、企業側と外注先が一緒に進めるため、個人のスキルが明確になってくるというところなんです。従来のやり方であれば、要件を受けたら外注先がチームを組み、その中で初心者も交えつつ納品するという方法だったのですが、アジャイルでは個々人の能力がより明確になっていく。その現状で、社外の優秀な人材が活躍する場面がゆくゆくは多くなる、高いスキルを持つ人をプロジェクトに招き入れるというケースは増えると思うのですが。
及川 ランサーズさんがサービス展開する際に、要件定義などに加えて、アジャイル開発やスクラムを回すところまでフリーランスの人員に積極的にサポートに入ってもらうということを考えても良いのではないでしょうか。プロダクトオーナーはさすがに発注側にいると思いますが、スクラムマスターやそこに必要なエンジニアはネット上でのつながりでも全部できると思うんです。今は特に「アジャイルコーチ」が引く手あまたで、会社に勤めながら他の会社のお手伝いをしている人も多くいます。
秋好 それはすごくいいですね。アジャイル開発を経験した人がチームに入るのと、初めて取り組む人が入るのとでは、プロジェクトの深さも変わってきますし、お客さまの求めるものに近づくスピードも相当早くなると思うので。
及川 発注側も、外部から招いたアジャイル開発に詳しい人たちと一緒に働くことで、アジャイル開発のやり方や進め方を覚えられます。それを基にエンジニア採用を進めたり、社内の人員の育成をしたりすることで、徐々に内製化に向けての土壌作りを進めていけると思うんです。アジャイル開発の場合、正直「同じ場所にいるのが大事」という点もありますので、最初からフルリモートでフリーランスがメインで、というのは難しいかもしれません。しかし、そのうち洗練されてうまくいく可能性もあると思います。
倉林 他の会社の支援やコンサルティングを簡単にできる世界はとても魅力的ですね。ランサーズが介することでその世界を作っていきたいです。アジャイルの世界がオンラインで回っているのは、エンジニアとして見てもとてもきれいに感じます。
──最後に、「Lancers」を使うであろう発注側の方、「Lancers」に登録される方へのメッセージをお願いします!
秋好 ランサーズを一度ご覧になって、ライティングやデザインの案件ばかりだったと思われた方もいらっしゃると思います。しかし、今は大手企業からの開発案件、エンジニアが必要とされる案件も増えてきています。「Lancers Pro」のような高品質・高単価な案件をそろえて、我々がその仲立ちをお手伝いしています。受発注の両側で見ても、「フルコミットする案件」から「週1日だけアドバイザーで入る案件」など多様化しています。ぜひランサーズのサービスを活用していただければと思います。
倉林 ここまでのお話でも何度か出てきた「人材不足」の面をテクノロジーでカバーして、良いマッチングを実現させていくというのが、私がランサーズで一番やりたいことです。案件を発注していただく方にも、キャリアを広げたい方にも、活用していっていただけるとうれしいです。
──本日はありがとうございました。