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映画「ノルウェイの森」の感想&考察まとめ


■日本で最も読まれている小説「ノルウェイの森」

この映画の原作となった村上春樹さんの著書『ノルウェイの森』が発刊されたのは、1987年でした。初版から20年以上たった現在も世界中で愛読され続けており、累計発行部数は1000万部を突破、日本の国内小説累計発行部数歴代第1位に輝いています。

物語に登場するのは、自殺した親友「キズキ」とその恋人の「直子」、そして主人公の「ワタナベ」――。そのほかにも、「ワタナベ」に好意を寄せる大学の同級生「緑」やプレイボーイの先輩「永沢さん」、「直子」と同じ精神病院に入院している「レイコ」さんなどの個性豊かな人物が登場し、思春期の葛藤や恋愛、生と死に対する思いを描きます。

なぜ村上春樹は映画化を認めた? 『ノルウェイの森』は村上文学の香り漂う傑作 - 日経トレンディネット

このエントリーによると、『ノルウェイの森』は「映像化は不可能」と言われていたそうです。しかし、「青いパパイヤの香り」「夏至」を手掛けたトラン・アン・ユン監督が映画化を熱望。村上さんはもともとトラン監督の作品を好いていたことから、少しずつ話が進んだようです。脚本やキャスティングなど、さまざまな壁を乗り越え、2008年7月にようやく映画化が正式発表されました。

■はてなブックマークで注目されている感想と考察【ネタバレ注意】

日本国内はもちろん、世界中にも多数のファンがいる作品の映画化。果たして、公開後の反応はどうなのでしょうか。はてなブックマークで話題を集めている、5つの感想&考察エントリーを紹介します。

※以下の文や紹介するエントリー中には、映画「ノルウェイの森」の作品内容・結末に触れる情報が含まれています。

<原作ファンにすすめたい>

超映画批評『ノルウェイの森』75点(100点満点中)

まずは、映画ライターの前田有一さんによるサイト「超映画批評」のレビューを紹介します。前田さんは映画「ノルウェイの森」を「100点満点中75点」と評価。辛口の評価が目立つ同サイトの中で、なかなかの高評価を下しており、特に原作ファンににすすめたいと述べています。主な感想は以下の通り。

  • 「原作と比較すれば当然いろいろ省略されているが、違和感はない。むしろ、よくこれほどに原作のムードに忠実に映像化したものだと驚かされる」
  • 「(菊地凛子が)透明感と陰の両方を併せ持つ直子というキャラクターを、完全にものにしている」
  • 「『ノルウェイの森』は、いくつもの三角関係が雪の結晶のように複合したドラマなのだが、いろいろ省略したといってもそのあたりの根本的な構造は映画版でもしっかり構築されている」


<原作のイメージとは違うからこそ、原作ファンにとっては、興味深い作品になっている>

2010-12-12

高校生のころに原作を読んだという、id:fujiponさんによる感想がこちら。菊地凛子さんが演じる直子の違和感や、小説の独特な言い回しをそのまま再現している点、ワタナベと寮で同室になる突撃隊の出番がほとんど無いこと、レイコさんの「内面」が描かれていないことなどに戸惑った気持ちが、率直に記されています。

しかし「まあ、こういう解釈というか、映像化も有り、なんだろうな」とも書かれており、「あの小説を2時間・このキャストで映画にしろと言われたら、これ以上のものを作るのは、たぶん、すごく難しいと思う」「未読の人には、説明不足で“不親切な作品”だと思われそうですけど、僕にとっては、非常に興味深い映画」など、原作ファンならではの思いも述べています。



<おそらく映画化がもっともむずかしい部類の原作>

2010-12-13 - 空中キャンプ

上記と同じく「映像化の難しさ」を指摘しているのが、id:zoot32さんによるこのエントリー。「声にするとリアリティがなくなる」「あらすじだけを抜きだすと身も蓋もなくなる」「物語をシームレスにするとテンポが失われる」という3つの視点から、小説『ノルウェイの森』の映像化の困難さを考察しています。

さまざまな考察を重ねながらも、最後には、「ワタナベ」役の松山ケンイチさんや「緑」役の水原希子さんの好演を高く評価。また、時代考証やレコード店内でかかる音楽、エンドロールで流れるビートルズの「ノルウェーの森」、ファッションやヘアスタイルなども良かったとまとめています。


<トラン監督による「二次創作」とも捉えられかねない>

『ノルウェイの森』 性欲を持て余した彼岸と此岸の強引な選択。 (2010/日本 PG12 監督:トラン・アン・ユン 原作:村上春樹『ノルウェイの森』) - 1953ColdSummer

鋭い視点で、辛口かつパワフルな感想をまとめているのが、禍津ヒノワさんによる上記のエントリーです。禍津さんはこの中で「トラン監督による“二次創作”とも捉えられかねない」とし、監督の意思や「緑」の撮り方などを尊重しながらも、原作を読み込んだ人間がこれを観てどう思うか、原作も読みたいと思う人間が何人いるのかという疑問を投げかけています。また、エントリーの最後には、以下のようなコメントが残されています。

トラン・アン・ユンが強引に生ける者の視点を採択してリ・イマジネーションされた『ノルウェイの森』は、作中に歌われる『ノルウェーの森』と同じように拙さを隠し切れず、また周囲によるフォローも利かなかったものなのだなあと深甚に思う


<「忠実度を見る」か「裏切り度を見る」か>

映画「ノルウェイの森」を見ました (内田樹の研究室)

最後に、思想家でエッセイストの内田樹さんの感想を紹介します。試写を見て、一足早い10月末に感想のエントリーを公開していた内田さん。「好きな小説が映画化されたとき、どこを見るか。これはなかなかむずかしい」とし、「忠実度を見る」と「裏切り度を見る」という視点から、映画「ノルウェイの森」を評しています。その主な内容は以下の通り。

  • 主演の松山ケンイチさん、緑役の水原希子さんは素晴らしいが、玉山鉄二さんふんする永沢さんと霧島れいかさんふんするレイコさんの描き方はあまり良くない
  • 1968年の早稲田大学のキャンパスの再現度は高い
  • 色っぽいシーンが原作以上に付加されているが、すべてが成功しているとは思えない

このように辛口のコメントを残しながらも「最後にジョン・レノンのあのしゃがれた声で『Norwegian wood』が流れると、そういう細かな瑕疵は全部どうでもよくなっちゃいました」と記しています。


大ベストセラー『ノルウェイの森』の映像化は成功だったのか、否か――。原作ファンはもちろん、未読の方もぜひ劇場に足を運んで、その目で確認してみてください。


ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

文: タニグチナオミ

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