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データ分析を軸に、組織や職種の壁を越えて協力し合う環境を作る ~リクルートグループ向けデータ分析プラットフォームCrois~

リクルートコミュニケーションズとはてなの対談企画第5回は、最近整備されたデータ分析プラットフォーム「Crois」(クロイス)をめぐる取り組みに注目します。データアナリストやITプランナーなど「非エンジニア」でも簡単にデータ分析を可能にしたいというその思いは? 記事の最後にはセルフィードローン「DJI Spark」が当たるプレゼントのお知らせもあります。

リクルートコミュニケーションズ(RCO)×はてな座談会
リクルートコミュニケーションズ(RCO)×はてな座談会を過去4回実施してきました。第5弾となる今回は、リクルートコミュニケーションズが最近整備したデータ分析プラットフォーム「Crois」(クロイス)をめぐる取り組みに注目します。専門領域が異なるエンジニアや、エンジニアではないがデータ分析に取り組むスタッフなど、さまざまな人々を「結び付けたい」という思いが込められているそうです。

開発チームの思い、作り上げていくプロダクトへの期待を聞く中から、ビジネスと開発が一体となった同社組織の特徴も見えてきました。構成はITジャーナリスト星暁雄です。

座談会出席者(写真左より)リクルートコミュニケーションズ宮井康宏さん、保坂桂佑さん、阿部直之さん、はてな峰村聡、伊奈林太郎

※この記事は、株式会社リクルートコミュニケーションズ提供によるPR記事です。記事の最後にはプレゼントのお知らせもあります。

■ 料理のレシピのように、データ分析の処理内容を共有、再利用する

──リクルートコミュニケーションズ(以下、RCO)の皆さん、自己紹介と、今回のデータ分析プラットフォームの取り組みにおけるそれぞれの役割を教えてください。

阿部 座談会に登場するのは4度目の阿部です。エンジニア組織のマネジメントをやっています。今回お話しするデータ分析プラットフォームのプロダクト名は「Crois(クロイス)」というのですが、そのV1(バージョン1)の立ち上げを担当しました。

阿部直之さん
阿部直之さん
株式会社リクルートコミュニケーションズ  ICTソリューション局 アドバンスドテクノロジー開発部 部長

保坂 Crois V1からプロジェクトに参加していました。データ処理プラットフォームの開発プロセスなどに関わっています。今はCrois全体を見る立場になっています。

宮井 Crois V2の全体の設計と、実装に参加しました。

──はてな側の自己紹介をお願いします。

峰村 広告関係の基盤のディレクターをしていて、プロジェクト、プロダクト、チームのマネージャーを兼ねています。最近ではアドテク分野のRTB(Real-Time Bidding)に関わっています。はてなに入る前はDMP(データ管理プラットフォーム)のデータ分析担当をやっていたので、データ分析の話は「懐かしいな」という感じです。

伊奈 はてなブックマークのデータを使う部分の開発を手がけてきました。だいたい“難しいこと”全般を担当しています(笑)。社内での教育向けに機械学習の教科書を書いたりもしています。

──まず、「Crois」というプロダクトの全体像を教えていただけますか。

阿部 Croisは、リクルートグループのWebマーケティングなどに活用する目的で開発したデータ分析プラットフォームです。2017年から開発に着手し、現在は複数の領域でデータを活用したビジネス案件に利用されています。

コンセプトは「データソリューションキッチン」。エンジニアではない人でも、広告出稿のための効率的な分析を行うデータソリューションの実現を容易にできることを目指しています。

──「キッチン」が登場するのは面白いですね。

阿部 プロダクトキックオフの時に一緒に立ち上げを行ったプロダクトマネージャが共有したたとえなんです。「レストランのキッチン」と「料理、レシピ、具材」をイメージしています。

カレーのオーダーがあったとして、レシピに合わせてそれぞれの具材を集めて料理をすれば、さまざまな組み合わせのカレーが作れる。例えばデータマート(データウェアハウスのデータの中から目的に合わせて取り出したデータのこと)やBI(ビジネスインテリジェンス、データの詳細分析や可視化のためのツール)などの個々のデータソリューションができあがった料理に相当します。レシピに相当するのは、再利用可能なデータ分析処理の「モジュール」。具材に相当するのが蓄積しているデータです。

──エンジニアにいちいち依頼しなくても、手軽にデータを扱えるというイメージなんですね。

阿部 レシピに相当するモジュール、つまり再利用可能な処理の記述がたくさんそろっていれば、エンジニアではない人でも、エンジニアの介在抜きでデータ分析を実施し、また新たなデータ活用を生み出すことができます。例えば、レシピと具材の組み合わせについて、「あの材料があればいい」「この材料があるならこういうレシピもできる」と考えられるようになる。効率的に、より価値の高いものを作り出すことに注力できます。

保有しているデータは、トラッキングログなどのユーザー行動データや配信広告の効果情報などです。

峰村 広告配信データやアクセス解析データの収集機能など、DMPの分野が一式入っているイメージでしょうか?

阿部 DMPというとデータを保持する部分も入るのですが、Croisはデータ分析のプロセスにフォーカスしています。「分析して推定する部分を作れる」といえばイメージしやすいでしょうか。例えば、BIにおける集計や高度な分析、処理を定義して組み直しての再利用も可能です。

保坂 現状では、開発できる人が自分たちのプロジェクトでデータ分析のフローを切り出す仕組みを用意しています。その副産物として別の用途に再利用できるものがどんどん生まれます。今後はプログラミングができない人でも、マウス操作だけでいろいろな実装ができるようにしていきます。

保坂桂佑さん
保坂桂佑さん
株式会社リクルートコミュニケーションズ  ICTソリューション局 アドバンスドテクノロジー開発部 データエンジニアリンググループ マネジャー

──Croisの利用イメージを、教えていただける範囲でお聞きできますか?

保坂 私たちの会社でリクルートグループのCM出稿を一手に担う部署があります。そこで過去のデータからCM枠のパフォーマンスを推定してCM出稿枠を最適化するシステムがあります。そのシステムのデータ処理の裏側でCroisを使っています。非常に速く開発を進められ、マーケティングの人が見やすく、使いやすくするところに注力できました。

阿部 リクルートグループの人たちは、だいたいやりたいことの意思が強くて(笑)、共通化を進め過ぎると押し付けになってしまい求める成果が出せなくなってしまいます。そこでビジネス課題に合わせた個別開発ができるようにしたところに特色があります。データ処理におけるマイクロサービスアーキテクチャ化に近い考え方かもしれないですね。

■ まずMVP(実用最小限の製品)を作り、それを捨てて再開発

峰村 どれくらいの規模のチームで開発しているのですか?

阿部 V1は2017年4月に構想を立てて、当時のコアチームは僕1人。マネージャー業の残りのパワーで3~4カ月ぐらいで開発して、その後半年かけて磨き上げました。いくつか案件を回してみた結果、「プロダクトコンセプトがいけそうだな」という手応えがあったので、宮井さんを中心とした今のチームに「すみません、これをちゃんとしたものに作り直してください!」と渡しました(笑)。そこからV2が開発され、現在に至っています。

峰村 規模の大きさの割には「短期集中」だったんですね。

阿部 そうですね、V1はMVP(Minimum Viable Product。実用最小限の製品)だったので。ターゲットとなる利用者にとってプロダクトを使いたいと思うか? という判断をするためのイメージを固めるのに、必要な部分のみを実装した形になります。

──手渡された保坂さんと宮井さんが大変そうですね。3人そろうと、Crois全部の歴史が分かるということですね。

宮井康宏さん
宮井康宏さん
株式会社リクルートコミュニケーションズ ICTソリューション局 アドバンスドテクノロジー開発部 データエンジニアリンググループ

保坂 僕はCrois V1から参加して、データサイエンティストのCrois上での開発や利用フローの整備を担当していました。

宮井 Crois V2の設計とコアとなる部分の実装を担当しました。

阿部 モジュール1個ずつはDockerコンテナなので、DockerコンテナをAWSのECSで動かす基盤を作り、それを管理するWebサービスを作って動かせるようにした、というところまでがV1です。あとは……細かい設定に必要な部分は、利用者がSlackに投げれば僕が人間BOTとしてやる(笑)。

一同 (笑)

阿部 そのV1でいくつかのデータソリューション開発案件を立ち上げてみて、再利用可能なデータ処理モジュールを作る中でいろいろ課題が出てきたので、それらは正式版のV2で機能を磨き上げることで解決してもらいました。例えば複数のモジュールを組み合わせるワークフロー機能です。また、使えるユーザーの幅を広くしたかったので、UIも大幅に改善してもらいました。似たような処理を効率的に記述、再利用できるところを大事にしています。

峰村 ユーザーがダッシュボードを作る形の場合、プロトタイピングで使われるうちに、当初から想定がずれてきませんか?

阿部 もともとV1はMVPとして捨てるつもりだったんです。モジュールを自分で作りながら「やりづらい」と考えたところや実際に使ってみてもらった人に「いまいち使いづらい」と言われたところなど、細かな検証を回しながらプロダクトの方向性を固めていった感じです。ちなみに、いまのV2ではV1のコードは全く残っていません。

■ 専門性が異なる人たちが、越境して協力できる環境を

阿部 Croisに関連する人は、専門性がばらけています。例えばエンジニアでも専門性が高くて「この領域がとても得意です」という人も多い。Croisを作った背景には、機械学習の得意な人、アプリケーション開発が得意な人などが、お互いに協力し合える基盤があったらいいという思いがありました。

RCOの皆さん

阿部 例えば、データ分析の中核的なところは得意だけど、アプリケーション開発につきものの異常系──例えばデータ連携で失敗したときにどう処理するか──という部分が得意ではない人もいます。そこに時間をかけるよりは、コアな部分に注力してもらった方が開発効率は高い。

一方で、システム周りはめちゃくちゃ強いけれどデータ分析は得意ではないアプリケーションエンジニアには「データ転送が失敗したらリトライする」などの共通部分をしっかり作ってもらう。そんな、WebアプリケーションフレームワークでいうところのMVC(Model View Controller)のような、得意な領域で役割分担ができるプラットフォームが作れるといいなと。そして将来的には役割分担がうまくできるようになると、今度はみんな「壁を越えてくる」んじゃないかと思いました。

峰村伊奈 おおー、なるほど。

峰村聡、伊奈林太郎

峰村聡(写真左)
株式会社はてな サービス・システム開発本部 ディレクター

伊奈林太郎(写真右)
株式会社はてな サービス・システム開発本部 シニアアプリケーションエンジニア

阿部 データ分析を手伝っていたら面白くなってやりたくなるとか、エンジニアって興味をもったら実際に手を動かしたくなるじゃないですか。

伊奈 確かに。はてなでも、機械学習をやっている人がサーバ上で動かしてトライアンドエラーしていくうちに、AWS(Amazon Web Services)の設定に詳しくなっていく実例があります。

阿部 データ分析プラットフォームのアーキテクチャのもと、メンバーのそれぞれの能力を発揮し、また幅を広げていけるような組織をつくれるのではないかなと。

──つまり、異なる専門性を持つ人々をくっつけるプラットフォームにしたかった?

阿部 はい。いったん区切りを作って分けた後に協働しやすい体制や仕組みを整備することで、「人々が融合しやすい」という環境を強く意識しています。その結果として他領域理解が進むことで専門性の壁を乗り越えていってくれれば最高だなと。

──Croisがどういう性格のプラットフォームなのか、別の切り口から教えてください。従来あった阻害要因を排除するアプローチと、新しい結合を生み出すアプローチがあり得ると思うんですが、どちらに近いですか?

阿部 どちらかといえば、新たな結合を指向しています。プラットフォームの役割としては、データを処理して流す基盤であること。シンプルですが汎用性が高く、何にでも使えることを目指します。

一般的にデータプラットフォームというと、エンジニアが使うものだと考えられがちです。Croisは、ITプランナーのような比較的ビジネスに近いロール(役割)を持つ人たちを想定ユーザーとしています。そこで、エンジニア向けのツールよりもユーザビリティを高くし、またセキュリティ面でもより注意深く配慮する必要があります。

【RCOのITプランナーが果たす役割については、以下の記事をご覧ください】

阿部 我々が扱う広告のデータは個人情報を含まない、基本的には安全なものです。ただし、他のデータとの組み合わせによっては取り扱いが危険になる可能性もあります。そのため意図しない領域までデータが流れるのは防がないといけない。データリテラシーやセキュリティ、データベース管理の権限、そうした部分には非常に気を遣います。

例えば、複数のデータを使うサービスがあった場合、異なる種類のデータの突き合わせができてしまうとまずい場合があるため、特定のグループごとに閉じる仕組みが必要になります。Croisではそういった部分も考慮して開発を行っています。

伊奈 はてなでも、エンジニアが触るデータでも「いったんマスクしておこう」と判断することがあります。

宮井 Croisには、データベースのパスワードやAWSのアクセスキーを保存する機能が存在します。データベースに平文で保存するとアクセス権限のある開発者は閲覧できてしまうので、AWSのKMS(Key Management System)で管理された鍵で暗号化してSecretsManagerに保存しています。KMSの鍵のポリシーを適切に設定することで、ワークフローのオーナー以外は情報を復号できず、たとえCroisの開発者であっても復元できなくしています。モジュールが出力するデータについても同様の仕組みを取り入れています。データソースへのアクセス権の設定に加えて、これらの対策を施すことでセキュリティを担保しています。

■ 社内で「草の根」型のCrois普及活動が発生!

峰村 お話を聞いていると、モジュールを作って行うCroisでのデータ分析は、ITプランナーなど「エンジニアではない人」が関わるにはかなり難しいのではないか? と感じました。

阿部 そういう世界観を支えるための技術・システムなんです。「こういう処理ができます」というモジュールのカタログがあって、その中から「この処理をやりたい、こういうデータを連携したい」と指定するだけでデータ分析が可能になります。ITプランナーのようなエンジニアではない人でも、データを使うことに専念できます。

Croisの全体像

Croisの全体像

保坂 Croisのゴールはビジネスやマーケティングに関わる人たちが使うことです。その一方で、機能の汎用性が高く、カスタマイズもできるので、エンジニアでももちろん使えます。エンジニアにもファンがいて「使いたいです」と言ってきてくれたことがあります。

峰村 それはいいですね。

保坂 その人たちが、自分たちにとっても他のプランナーにとっても使いやすくなるよう、草の根的にエバンジェリストのような活動をしてくれています。データの加工や分析のレシピをどんどん作って登録してくれたり。結果としてビジネスに関わる人とエンジニアとの連携がかなりスムーズになりましたね。

峰村 「DMPは使っていて楽しいな」と思い出しました。プランナーがエンジニアリングに手を出したくなる気持ちはちょっと分かります。僕はエンジニアではないのですが、はてなに入る前に、SQLでデータを引いていて何かが足りなくなる瞬間があって、Pythonを勉強し始めました。ですが、本来やりたい処理自体ではない“周辺のゴニョゴニョ”をいじるのに時間がかかってしまって。ドキュメンテーションがきちんとされている状況で効率的にデータを扱える環境はいいなと思います。

阿部 地味に欲しいデータって結構ありますよね。例えば、自動的に日次や月次の定期レポーティングをする機能を作りたい場合、エンジニアの手を借りずにプランナーだけで完結できます。

峰村 プランナーがエンジニアリング分野に越境しやすい感じがしますね。

阿部直之さん

伊奈 開発の段階で、コア機能の部分に外部サービスを利用することは検討しなかったのでしょうか。

宮井 ジョブスケジューラーに既存のOSSを使えないかどうか検討はしました。結果としてフルスクラッチで書いています。認証や権限管理のことを考えると、セキュリティ要件を満たすには既存プロダクトを使うより自分たちで作る方が早かったためです。ただ、運用負荷を下げるためにAWSのマネージドサービスはかなり使っています。

伊奈 何人で開発したのですか?

宮井 V2は3人ですね。インフラからUIまですべて3人で実装しました。

阿部 大規模な商品にも耐え得るスケール性を持ったV2を3人が半年で作ったスピード感は、RCOならではだと思っています。

■ プロダクトに名前を付けると効果大

──Croisを作ったことで、どんなうれしいことがありましたか?

保坂 データソリューション関連の開発のハードルが下がりました。プロダクト開発の仕掛かりが早くなりましたね。

伊奈 確かにエンジニアにとってはモジュールだけ書けばいいので、より気軽に開発できますもんね。

阿部 初期段階のある事例では、通常1~2週間ほどかかる開発を3日でやりました。そのようなCroisを使ったいろいろな事例が出てきて、それを見た他の人たちも「Croisでやれるよね」というムードが出てきました。

──「やりやすくなる」と分かれば、やりたくなりますよね。

阿部 それと、変な話ですが、名前が付いているとみんなやりたがるんです(笑)。「データ分析プラットフォームがありますよ」と言ってもなかなか通じないですが、「Crois」という名前が付いたことで「Croisを使えばデータ分析でこんなことができるんですか?」と聞いてくれる。名前、重要です。

峰村 あー、なるほど。確かに愛着が湧きますよね。

宮井 エンジニア視点でも使いやすいです。「100並列で分析したい」のような並列度の大きいジョブを投げたい、500個くらいのジョブを一気に投げたいというような、無茶な要求でもきちんと処理できる基盤になっているので。

RCOの皆さん

峰村 普通なら「やめて」と言われそうですね。

宮井 対応できるよう頑張りました。

阿部 リクルートグループの営業の皆さんはすごくて、彼らが頑張るといきなりスケールしちゃうんです。あのパワーはサービス的には大変ありがたいものの、システム的には怖い部分もあります(笑)。とはいえサービスのスケールはタイミングも重要なので、やりたいときにスケールできるようにしてもらったV2にはとても感謝です。

──スケーラビリティのための工夫はどんなものが?

宮井 アーキテクチャとしては、AWSのマネージドサービスをフルに使っています。特にAWS Step FunctionsとAWS Batchですね。そこにジョブの実行ロジックを寄せているので、高いスケーラビリティを実現できています。

阿部 あと、モジュールという形でデータ分析の単位を区切ったことで、システム開発におけるコードレビューのようなことをデータ分析でもやってもらえるようになりました。若手やITプランナーがある程度作ってみてから、上位者によるレビューを受けることで信頼性を担保することができる。その結果、利用のハードルが下がってきている部分もあると思います。

保坂 他のチームが作ったレシピを見て、そのテクニックを自分たちのプロジェクトで使うような流れもできています。

──プロトタイプを作り始める時点でCroisというプロダクトのイメージはすでに出来上がっていたのでは?

阿部 プロトタイプのV1は、僕らの持っているいろいろなプロダクトを切り売りできるようにしたら楽しそうという発想からのスタートだったので、まさに作りながら方向性を固めていった感じです。もうひとつ、個人的にGo言語を書きたかった(笑)。なので、Go言語と相性の良さそうなDockerなどを活用したプロダクトになったという側面もあります。使ってもらえるようになった今となってはあまり大きな声では言えないですが(笑)。

■ 組織や職種の壁をどんどん越えて、技術でコミュニケーションを取る

阿部 Croisのもう1つの狙いであったスキルを越境してくる人も徐々に増えてきています。アプリケーションエンジニアがデータ分析をしてくれたり、データ分析専門で入ってきた人が「もっと幅広くやりたい」とアーキテクチャもやり始めたり。エンジニアの組織としてはとても良い効果が出てきています。

──お話を聞いてきて、データサイエンティストが活躍する土壌ができているように感じます。

保坂 この短期間に、職種の枠を超えた知識の共有が増え、データサイエンティストもエンジニアも全体的にレベルが上がっています。例えば、Croisのコアチームとデータサイエンティストがお互いにプルリクエストのレビュー依頼を出し合うことが増えています。知見を共有する意味でもコードレビューが活用されていて、データサイエンティストとエンジニアが互いに知見を吸収し合っています。

伊奈 レビュワーのアサインもチームをまたいで飛んでくるのでしょうか?

保坂 はい。かなり柔軟にゆるくつながっています。

阿部 レビュワーを指名するケースもありますね。「これ見てください!」というのが許容される文化なので。

伊奈 おお、チームをまたぐのは面白いですね。さすがにプルリクエストをバイネームで、ということはあまりないです。

RCOのお二人とはてなの伊奈

峰村 はてなでもチームそれぞれでレビューの仕組みが違っていて、「これはこの人が見るのがいい」ということはたまにあるんですが、指名は面白いですね。

阿部 組織間の壁が低くて、「この人が一番詳しい」という人が見えやすい形なんです。

峰村 僕のような“非エンジニア”がSQLを書いたりプログラミングをしたりする最初の一歩って結構難しいと思うんですが、どうやって覚えていったらいいんでしょうね。個人的には、はてなに入ってから実はあまりSQLやスクリプトを書かなくなったんですよ。チームのエンジニアが優秀なのでやってもらえるし、僕がテストのない中途半端なことをしようとしたら怒られそうなので(笑)。

一同 (笑)

峰村 社内でエンジニアリングができる環境がちゃんとあると、逆に手を出しにくいな……とちょっと思う瞬間があるんですが、どうされていますか?

阿部 そこはシステム側がある程度カバーできると思うんですよね。変なものがまぎれこんでもちゃんとシャットアウトできると、チャレンジがしやすくなる。「やったことはないけどやってみたい」と思った人は、その処理のSQLを書いてどんどん試してみればいいと思うんです。

峰村 やりたいことさえベースにあれば、勉強する素材はいくらでもありますもんね。

阿部 「このデータとデータをつなぐともっと面白いことができそう」と思っているのに二の足を踏んでしまう人がいるのは一番損失だと思っています。そこを踏み込んでもらえるようにするのが、僕らのシステムの役割です。

保坂 例えば、やりたいことがある人はどんどんそのクエリを書いてもらいます。クエリの内容はデータサイエンティストにレビューしてもらい、品質を保ちつつシステムに組み込めるようにしています。

伊奈 処理がめちゃくちゃに走ってどんどん課金されるのを阻止するんですね。

峰村 「やばいアンチパターン」が分かれば、事前に「やばい」ことが分かりますしね。

阿部 もともと、Croisというプロダクトで開発プロセスを加速できるという思いはありました。触る前はハードルが高そうに見えてても、やり始めるとそんなに大変じゃないと分かってもらえるような。

峰村 僕は何か新しい機能要件を立てる時に、事前にGitHubを調べておいて、チームのエンジニアに「間違っているかもしれないけどプルリク作っておきました、申し訳ないけどレビューしてそのまま直して、ごめん!」って投げるんですね(笑)。モジュールがたくさんある状態で、自分のやりたいことに近しい事例を見て、最初のプルリクエストが作れさえすれば、意外と転がり始めるかもしれないですね。

保坂 最初が結構大事ですね。プルリクエストでコードをやりとりする方が、言葉で議論するよりスピード感が出ることも多いです。

峰村 チームやプロジェクトを越境する時に「まずミーティングから始めましょう」となると時間がかかりますしね。

伊奈 はてなの場合、JavaScriptが書けるデザイナーが結構いるので、動きを伝えたい時に「雑にJavaScriptを書いたんですが、こういうイメージです」と説明してくれることがあります。

阿部 越境して協力し合うには具体例が役立ちます。たとえ雑であろうとプロトタイプがあれば、できる人がそれを直す形で開発を進められる。とりあえず議論が成り立ちますから。

座談会参加者の5名

保坂 クエリの場合でも、やりたい処理のクエリを雑に書いてみて、クエリマスターのような人がそこをチェックするというような分業があるといいですね。

伊奈 全員がクエリマスターを目指していたら時間がいくらあっても足りないですしね。

阿部 雑でもいいからドメイン知識を形にして、それを特定の専門性がある人がレビューして本番に持って行く。そういうプロセスが成立して開発のスピードがみるみる速くなりました。プルリクなどのレビュー文化がチームビルディングの手段になったのがとてもうれしかったところです。

──Croisの開発を振り返ってみた今回の感想をお願いします。

阿部 RCOでは個人の「Will」を大事にし、本人が価値あると思ったことにはチャレンジできる空気感があります。その中からCroisができていきました。また、RCOのエンジニアは高い技術力で難しい課題を解決することをとても楽しめる人たちなので、データを活用して新たな価値を生み出したいプランナーやデータサイエンティストに来てもらえると、専門性を補い合えるメリットがあると思います。そんな環境で協働していくことで、例えばSQLが書いたことのない人でも興味があればSQLって書けるようになると思うんですよね。

峰村 SQLって英語ですもんね(笑)。“非エンジニア”でもスピード感をもってプルリクエストでやりとりできるのは、楽しくて効率が良いですね。

伊奈 細かいところなんですが、AWS Step Functionsを使っているところに目が留まりました。機械学習を実際にやろうとすると、どうしても大がかりじゃないですか。そこで基盤が作ってあると乗っかりやすい。似たようなことをやろうとしている身として、そこはうらやましいと思いました。

宮井 クラウドサービスを組み合わせてプロダクトを作るのは、パズルを解くような面白さがあります。セキュリティ、スケーラビリティ、考慮すべき要件の中でピースを当てはめて解いていく。エンジニアにとって楽しい環境だと思います。

保坂 自分はデータエンジニアリンググループのマネジャーなのですが、もともとデータサイエンス寄りの仕事をしていて、そこが円滑に進むようになるとうれしいと思っていたことがCroisにより実現できています。Croisでスペシャルなエンジニアの行動をチラ見して学べますし、データサイエンスに注力するもよし、エンジニアに染み出していくもよしです。やりたいことに突き進みやすい環境なので、興味がある方にはぜひ来ていただきたいですね。

──皆さん、ありがとうございました。

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    • DJI Spark:1名様
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  • 応募方法
    • Twitter連携した上で、この記事をはてなブックマークに追加
    • 3/26追記:当初の応募条件で該当する方がいなかったため、抽選条件を変更し、「この記事をはてなブックマークに追加」した方全員を抽選対象といたしました。
    • ※プライベートモードでご利用の方は対象となりません
  • 当選発表
    • キャペーン期間終了後、厳正なる抽選の上、本記事にて当選者様を発表いたします
  • 賞品発送
    • 当選者様には、送付に必要な情報を確認するため、はてなから登録メールアドレス宛てにご連絡します。取得した個人情報は本キャンペーンのみに使用します。詳細は当選連絡メールをご確認ください
    • なお、賞品の送付先は、日本国内に限らせていただきます

本キャンペーンは株式会社はてなのキャンペーンです。
SparkおよびそのロゴはDJI JAPANの商標です。

■ 2019年3月29日追記:プレゼント当選者発表!

厳正な抽選の結果、当選された方を発表します。おめでとうございます!

セルフィードローン「DJI Spark」1名様

当選者の方には、送付先情報を確認するメールをお送りいたします。

  • ※期日までにご返信をいただけなかった場合は、再度抽選を実施し、繰り上げ当選者へ当選権をお渡しします。
  • ※繰り上げ当選が発生した場合、発表は、はてなからの当選連絡をもって代えさせていただきます。ご了承ください。

[PR]企画・制作:はてな
取材・構成:星 暁雄
写真:小高雅也