2月27日に南米チリを襲った、マグニチュード8・8の大地震。3月1日18時30分時点で死者が700人を超えたと発表されており、日を追うごとにその被害の大きさが明らかになっています。2月28日には、遠く離れたここ日本でもチリ大地震による津波の危険性が示唆され、各地に警報が発令されました。1993年の北海道南西沖地震以来となる警報発令でしたが、幸いにも被害はなく、3月1日午前10時15分をもってすべての警報・注意報は解除。気象庁は「津波の予測が過大であったこと、警報・注意報が長引いたことをおわびしたい」と謝罪のコメントを発表しました。確かに予想を下回る観測結果でしたが、この謝罪に対しては各方面で疑問の声が上がっています。気象庁から厳重な警告が発令されるほど恐ろしい自然災害、津波。改めてその脅威を考えてみたいと思います。
■津波の基礎知識
▽津波の基本知識
まずは知っておきたい津波の基礎知識を、上記のサイトを参考にまとめてみました。
<メカニズム>
津波は以下のような流れで発生することがほとんどのようです。
海域で大地震が発生
↓
海底地盤が広範囲にわたって破壊
↓
急激な海底の上下運動により海面の凹凸が生じる
↓
津波となって伝わる
また、海底の地滑りや火山噴火が原因となる場合もあるようですが、こちらはレアケースのようです。
<波浪との違い>
一見すると同じように感じる、波浪や高波と津波。しかし、前者は海上で吹く風によるもので、津波は海底地盤が上下して起こる海水全体の動きであり、そのエネルギーは比較できないほど大きいものです。
こちらは、2月28日に青森県・八戸市の新井田川で撮影された動画です。
▽YouTube- Pororoca in Japan
波の動きを見れば、通常の波浪との違いが一目瞭然です。波浪と津波はまったく別のものとして考えなければいけません。
<警報と注意報の違い>
▽気象庁 | 津波予報・津波情報について
気象庁の公式サイトによると、津波には警報と注意報、さらに警報の中で津波と大津波に分類されるようです。
- 津波警報
- 大津波…高いところで3m程度以上の津波が予想される(3m、4m、6m、8m、10m以上)
- 津波…高いところで2m程度の津波が予想される(1m、2m)
- 津波注意報
- 高いところで0.5m程度の津波が予想される(0.5m)
※()内は発表される津波の高さ
■なぜ遠く離れた日本で津波が起きた?
今回地震が起きたチリは下半球に位置する南米地方の国。なぜ、はるか遠くの島国ににまで津波が伝わるのでしょうか。
▽質問なるほドリ:チリの地震で日本まで津波が来るのはなぜ?=回答・河内敏康 - 毎日jp(毎日新聞)
考えられる原因は3つ。
- 地震の規模が大きかった
- チリ沖で発生した津波は分散し、日本付近で再び集まる
- 日本とチリとの間にほとんど障害物となるものがない
2つ目の原因は、地球儀で北極から広がった経線が南極で集まることを念頭に置くと理解しやすいです。チリ沖が日本から見てほぼ地球の反対側に位置する、その位置関係が大きな要因のようです。
■「自分は大丈夫」が生む被害の拡大
避難勧告や業務停止が命じられるなか、住民や企業の危険意識の薄さも報じられた今回の津波騒動。
▽避難所利用は6% 津波到達予想時刻にサーフィンも : ニュース : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
▽NIKKEI NET(日経ネット):社会ニュース−内外の事件・事故や社会問題から話題のニュースまで
生活や業務に支障が出るとはいえ、なぜこのような事態になるのでしょうか。
このように、何かしらの被害が予想される状況で「自分は大丈夫」と思いこむことを「正常化の偏見(normalcy bias)」と言うそうです。
▽人はなぜ「自分は大丈夫」と思うのか,防災研究家の片田群馬大学教授に聞く(前編) - インタビュー:ITpro
▽人はなぜ「自分は大丈夫」と思うのか,防災研究家の片田群馬大学教授に聞く(後編) - インタビュー:ITpro
上記のエントリーでは、防災研究家の群馬大学工学部教授・片田 敏孝氏の災害に対する危険意識の重要さが語られています。この取材の中で片田氏は今回のような「警報の空振り」に触れ「今日警報が外れて住民が『逃げなくて良かった』と思うことは,将来被害に遭うことに直結している」と語っています。
予測が当たるか、それとも外れるか、結果は災害が起きてみないとわかりません。しかし「逃げておけばよかった」という後悔は、災害が起きてからでは遅いのです。どんな勧告も軽視することなく、危機感を感じることが、災害発生時の被害を抑える要因なのではないでしょうか。
■津波勧告が発令されたら…
では、実際に津波の発生が予測された場合はどうすればいいのでしょうか。
▽asahi.com(朝日新聞社):家財あきらめ高台へ/木造建築は危険 津波避難の要点 - 社会
こちらの記事では、気象庁などへの取材をもとにまとめられた、避難のポイントがまとめられています。
- 高台など安全な場所へ
- 木造建物は危険
- 岩場や堤防など堅いものから離れる
- 車による避難は原則禁止
- 家財など貴重品の持ち出しはあきらめる
パニックにならず、地域の人たちと協力して避難することが重要ですね。
今回は遠い地の地震が原因でしたが、日本は地震大国と呼ばれるほど、地震災害が多い国。また、四方を海で囲まれている、津波の被害に遭遇しやすい国なのです。決して他人事とは思わず日々を過ごすことが、一番の対策なのではと筆者は考えます。そして、それは地震だけでなく大雨、台風、地滑りなど、すべての自然災害にも通じる意識ではないでしょうか。
Title Photo by Irish Typepad