先日、新聞の広告欄に少し奇妙な広告が掲載されました。どうやら書籍の広告のようですが、タイトルは『田中宏和さん』、著者は14人の「田中宏和」、スペース一面を埋め尽くす「田中宏和」の文字。インパクトたっぷりな見た目ですが、なにより驚いたのはその上の「たちまち重版」というアオリ。この出版不況の折に重版がかかるとは、一体『田中宏和さん』という本は何なのでしょうか。
■謎過ぎる『田中宏和』本
▽Amazon.co.jp: 田中宏和さん: 田中宏和: 本「田中宏和運動」の活動報告として発表された、このおかしな本。この『田中宏和さん』、文章、カバーデザイン、編集、撮影、ホームページ制作など、すべての作業を14人の「田中宏和」さんが担当しており、まさに「田中宏和」さんによる「田中宏和」をまとめた一冊なのです。では、「田中宏和運動」とはどんな運動なのでしょうか。謎を解くカギは、「田中宏和.com」というサイトにありました。
■同姓同名を追い求めて…「田中宏和運動」
▽田中宏和.com | 田中宏和宣言!!
▽田中宏和.com | 田中宏和運動の歴史
一介のサラリーマンであった田中宏和さんが、「田中宏和運動」を始めたのは1994年の秋。プロ野球のドラフト会議で、近鉄バファローズの第一位指名が田中宏和さんという高校生であったこと。もともと大の野球ファンであったサラリーマン・田中宏和さんは、第一位指名として自分と同じ名前が読み上げられたことに感動。「近鉄一位指名の田中宏和さん」を翌年の年賀状の題材にしたことから、同姓同名の研究「田中宏和運動」を始めました。
ほぼ毎年、さまざまな「田中宏和」さんの存在を年賀状で報告していたサラリーマン・田中宏和さん。その運動が話題になったきっかけは、『ほぼ日刊イトイ新聞』にて、糸井重里さんの代理で正月留守番番長を務めたことでした。
▽ほぼ日刊イトイ新聞-目次1
もともと『ほぼ日刊イトイ新聞』内で、「感心力がビジネスを変える!」コーナーを担当していたことをきっかけに任命。その企画のひとつとして歴代の「田中宏和年賀状」を紹介、たちまち大反響を呼びました。その後2005年に「田中宏和.com」が始動、同姓同名の田中宏和さんを探す研究が続けられ、現在では11名の田中宏和さんが在籍しています。その中には、伝説的ゲーム「MOTHER」や「ポケットモンスター」の音楽を手掛けた、作曲家・田中宏和さんの名前も。
ちなみに作曲家・田中宏和さんは『田中宏和のうた』もプロデュースしています。
▽YouTube- 田中宏和のうた
■AR三兄弟とのコラボレーションも!
話は戻り今回の『田中宏和さん』本、実は日本初ARの実装も行っています。映像制作はもちろん、映像作家・田中宏和さん。企画・実装は大注目のARユニット「AR三兄弟」が担当しており、田中宏和.comサイトのトップに配置してある「タ・ナ・カ・ヒ・ロ・カ・ズ」ボタンをクリックして田中宏和ARシステムを起動、書籍の中に隠された「タ・ナ・カ・ヒ・ロ・カ・ズ」のマーカーをかざすと、映像を見ることができます。
▽AR(拡張現実)実装本 | 田中宏和さん発売! | ALTERNATIVE DESIGN++
AR三兄弟長男・川田さんは、
「僕たちAR三兄弟は、この田中宏和運動の下らなさ、いや、拡張現実な活動に感銘を受け、書籍のAR実装のお手伝いさせて頂きました。(中略)今まで様々な素材をAR化してきましたが、今回が一番意味のないAR化でした。しなくていいというか、特にAR化する意味がない。無意味から生まれたAR 三兄弟としては最高の仕事です」
とこの本に携わった感想を述べています。
とかくユニークなこの一冊。ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。