すっかり秋らしくなり、読書の秋ももうすぐ本番。2010年10月20日から10月26日までの一週間で出版された新刊の中から、はてなブックマークで注目を集めている書籍を紹介します。マルクスの資本論に10分の1足らずのページ数で挑む入門書から、イノベーションには必要不可欠とされてきた知的財産権を考え直す経済書、コンピューターやプログラミングについて考えを深められそうな古典言語「Scheme」の入門書まで、重めの3冊をピックアップしてみました。
■ 古典2500ページのエッセンスを一冊で 『一週間 de 資本論』
- 作者:的場 昭弘
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2010/10/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
格差や貧困といった問題が取りざたされる中、今再び注目を集めるマルクス著『資本論』。19世紀に出版された古典的大著のエッセンスを全4章、200ページ強で伝えようという意欲的な書籍が出版されました。本書は、「未来を読み解く鍵はあるのか」と4夜連続でNHK教育で放送された「一週間 de 資本論」が書籍化されたもの。著者は、マルクス研究一筋40年の神奈川大学教授・的場昭弘さん。各章末尾には番組にゲストとして招かれた森永卓郎さん、湯浅誠さん、浜矩子さん、田中直毅さんとの対談が収録されているとのこと。現代の視点で『資本論』を読み解く本書は、難解な古典を知る手助けをしてくれることでしょう。
■ 過剰な知的財産権は有害?『〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学』
- 作者:ミケーレ・ボルドリン,デイヴィッド・K・レヴァイン
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2010/10/22
- メディア: 単行本
『Against Intellectual Monopoly』の邦訳、『〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学』が、NTT出版から出版されました。これまでイノベーションに欠かせないとされてきた「知的財産権」を問い直す経済書。「特許も、著作権もいらない」と様々な事例を紹介しながら、議論が展開されていきます。著者のある種過激ともとられかねない主張から、時代を読み、新しい時代の潮流を垣間見ることができそうです。
2010年11月26日まで、出版元のNTT出版のウェブサイトで、目次、第一章、第二章を収録した無料PDF版をダウンロードできます。
▽ http://www.nttpub.co.jp/pr/pdf_dl/
また、著者のウェブサイトで原作の英文全文を読むことができます。
▽ Against Intellectual Monopoly
■ 深まる秋に古典プログラミング言語はいかが?『Scheme手習い』
- 作者:Daniel P. Friedman,Matthias Felleisen
- 出版社/メーカー: オーム社
- 発売日: 2010/10/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
1995年に出版されたプログラミング言語「Scheme」の入門書『The Little Schemer (The MIT Press)』。その邦訳版、『Scheme手習い』がオーム社から出版されました。本書で学べるSchemeは、2番目に古い高級言語「LISP」の方言。計算機科学の話題と共に、Schemeの基本を学ぶ体験は、プログラマにとって、「プログラムを書くとは?」と深く考えるよいきっかけとなりそうです。こう書いてしまうと少し堅苦しくなりますが、「*すごい*星がいっぱいだ」「このすべての値は何だ」といった独特の章タイトルのほか、イラスト入りで対話的に進んでいくという構成になっており、この分野のユーモアを楽しみながらSchemeの世界に入門できそうです。
多くの考えるべき問題を突き付けてくれそうな、今までになく重めの3冊をピックアップしてみました。次回はどのような新刊が登場するでしょう。はてなブックマークならではのピックアップをどうぞお楽しみに!
The Photo is by "boltron-".