ウイルス感染症の一種「風疹」が、過去最悪のペースで流行しています。厚生労働省の発表によると、2013年3月末時点で、過去5年間で最も多い報告数の2,353件を記録した2012年を上回りました。患者の約7割は男性で、そのうち8割が20代~40代。症状や注意点、ワクチンの疑問など、子どもはもちろん大人も注意したい風疹のエントリーを集めました。
■ 風疹はどんな病気?
国立感染症研究所(NIID)の公式サイトには、風疹に関するQ&Aが掲載されています。風疹は春先から初夏にかけて流行する病気で、咳やくしゃみなどにより飛沫(ひまつ)感染します。潜伏期間は2~3週間。発症すると、発疹、発熱、リンパ節の腫れなどの症状が出ます。一般的に1~9歳ごろに感染・発症しやすい病気と考えられてきましたが、近年は成人男性の患者が急増しています。
また、妊娠初期の女性が風疹にかかると、胎児に感染し、難聴や心疾病、白内障などの「先天性風疹症候群」を引き起こす可能性があるとされています。
■ ワクチン接種で風疹を予防
風疹の流行を受け、厚生労働省は予防接種を奨励しています。1歳児および小学校入学前1年間の幼児は、多くの自治体で無料接種を受けられるとのこと。加えて、妊婦を守る観点から「妊婦の夫、子ども、その他の同居家族」「10代後半から40代の女性」「産褥(さんじょく)早期の女性」のうち、風疹の抗体価が十分であると確認できない人に向け、任意での予防接種を検討するよう呼び掛けています。
成人の場合、予防接種にかかる費用は基本的に自己負担ですが、独自に費用を助成する自治体が増えています。東京都感染症情報センターは、把握した自治体のサイトをリンク集としてまとめているほか、どの自治体が助成しているか塗り分けた地図を公開しています。
▽ http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/rubella/vaccine/
▽ 東京都感染症情報センター » 自治体別予防接種助成実施状況
<ワクチンの副作用は?>
ワクチンの研究開発、製造を行う北里第一三共ワクチンの公式サイトでは、風疹ワクチンの接種に関する疑問と回答をまとめています。ワクチンの副作用には発疹やリンパ節腫脹があるものの、軽度で、頻度も1~2%以下と説明。ごくまれに髄膜脳炎やギラン・バレー症候群の症状報告もありますが、風疹ワクチン接種との直接的な因果関係は分かっていないとのことです。
■ 妊娠を希望する女性と家族は“2度目の予防接種”を
妊娠している女性が風疹ウイルスに感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群が起こる可能性があります。また、妊娠中の女性は予防接種を受けられないため、周囲の人は風疹を発症しないよう予防することが重要です。NHKのニュースサイトでは、妊娠を希望する女性とその家族に向け、特設ページ「ストップ風疹」を公開しています。
一般的に、風疹は一度かかればもう発症しないと考えられていますが、抗体ができないケースや、時間が経つにつれて抗体が減少するケースもあるとのこと。現在の子どもは2回接種を受けて、ワクチンの効果を高めています。しかし、1990年(平成2年)4月1日以前に生まれた人は、接種が1回だったため、妊娠を希望している女性に対して2回目の接種を受けるよう呼び掛けています。
<ワクチンの接種後に妊娠が分かったら?>
▽ 妊娠中に風疹含有ワクチン(麻しん風しん混合ワクチン、風しんワクチン)を誤って接種した場合の対応について(PDF)
▽ http://www.asahi.com/national/update/0522/TKY201305210562.html
日本産婦人科医会は、風疹含有ワクチン(麻しん風しん混合ワクチン、風疹ワクチン)の接種後に妊娠が分かった場合について説明しています。ワクチン接種による先天性風疹症候群の発症は世界的に報告例がなく、人工中絶などを考慮する必要はないとのことです。
ワクチンの添付文書には、あらかじめ1ヶ月間避妊したあとに接種し、接種後2ヶ月間は妊娠しないように注意するよう書かれています。
■ 「もやしもん」作者が風疹をマンガで説明
▽ Twitter / ishikawamasayuk: 風疹 誤字修正版です
▽ http://homepage2.nifty.com/mmmasayuki/fuushin.jpg(高画質版)
「もやしもん」などの作品で知られるマンガ家の石川雅之さんは、神戸大学医学部付属病院の岩田健太郎さん監修のもと、風疹にまつわるマンガを無料で公開しています。風疹ウイルスを主役にしたストーリーで、風疹の恐ろしさや予防接種の大切さを訴えるとともに、品薄状態が続くワクチンの安定提供を呼び掛けています。
石川さんはTwitterで、マンガの公開について「解決策を提示するものではありませんが、これにて現状どうなっているかを知る一助になればいいなーと思います」とコメントしています。
Title Photo by Sean Michael Ragan