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子どもへのITリテラシー教育【前編】 ITエンジニアの親が、子どもたちにITとSNSを使わせるために試みたこと

小中学生でもPCやスマートフォンを持つことが珍しくなくなってきた現代。初めてスマートフォンを持たせるとき、親たちはどのようなことを子どもたちに教育していけばいいのでしょうか。ITエンジニアのしょっさん(id:sho7650)さんが、家庭で実践しているという子どもたちへのITリテラシー教育について紹介します。


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前編のテーマは「どのように子どもたちとITを関わらせてきたか」について。家族構成や関係、背景はご家庭ごとに異なりますので、すべてを受け入れていただけるとは考えておりません。我が家は四姉妹なので、環境としては少し特殊だと思います。一つでもお役に立てそうな事柄があれば幸いです。

ITは私たちに、とても便利で有益な環境を提供してくれました。業務は多様化、生産性と品質は向上し、遠く離れた人たちとリアルタイムで共同作業をすることも容易になりました。ネット上にあるものは、いつでもどこでも誰でも利用することができます。

一方で、ネットのない時代では考えられなかったような危険な目にあう可能性も高まりました。ほんの些細な一つの書き込みや、何気なく撮影した写真・動画は、一瞬で全世界に公開できます。公開された情報をきっかけに、内容によっては取り返しのつかない事態を引き起こすこともあります。

このような環境下にあるためか、保護者の一部には、子どもたちにIT、特にSNSを利用させることは「悪」だと考える方がいます。しかし、しばらくの将来にわたってITを利用しない社会はありえません。私たち保護者は、子どもたちに対して、ITやSNSとの関わり方を指導していく必要があります。

■ 子どもにPC・スマホを与える理由

我が家では、PCもスマホも一人一台以上与えています。その理由は次の3つです。

<連絡を取りやすくする>

子どもたちは、成長につれて友だちといろいろな場所へ出掛けるようになります。

それまでは地元の公園で遊んでいた子どもたちが、突然、電車に乗って気軽に遠出するようになります。携帯電話やスマホのない時代では子どもからの連絡を待つばかりでしたが、今では便利なことに、メッセンジャーアプリでいつでも相互に連絡を取ることができます。GPS機能を利用すると、子どもの所在地も分かります。この機能だけでも、スマホを与える理由としては十分です。

<将来の選択肢の拡大>

子どもたちの将来の選択肢を狭める必要はありません。

社会人のみなさまはご存知のとおり、今の社会では、PCやスマホを使わずに暮らしていくことは難しい状況です。業務ではPCを使って書類を作るでしょうし、スマホで連絡を取り合う企業も少なくありません。PCを一人一台与えているのは、若い頃からITに触れてもらい、抵抗感をなくしてほしいと考えているためです。

<専用のToDoツールを家庭内で共有>

我が家では、お手伝いや宿題の実績によって、お小遣いの金額を変動させるという仕組みを準備しています。

具体的な内容については次回説明しますが、同じくITエンジニアの妻が開発した専用のToDoツールを利用させるために、PCやスマホを使わせています。また最近では、タスク管理ツール「Trello」で家庭内の課題管理や稟議申請などを行っています。他にも家族間で同じシステムを利用する機会があるので、PCやスマホを通して全員が家庭内ツールを操作できることは一つのメリットです。

■ いつから子どもにPC・スマホを使わせるか

次の問題は「いつから」子どもたちにPCやスマホを与えるかです。

我が家では、子どもたちに3歳からPCを使わせています。私が幼い頃に「Macintoshは3歳でも使えるパソコンです」というフレーズを聞いた記憶があり、「将来、子どもができてその子が3歳になったらMacを買い与えよう」と決めたことがきっかけです。

単純すぎる理由ですが、早いうちから慣れておくに越したことはない、が我が家の育児方針です。幼少時からその時代のキーボードやマウス、ウィンドウシステムなどのインターフェースに触れておくことで、後々の抵抗感を排除できるのではないかと考えています。

また「視力が落ちるのではないか」という点について、我が家では「視力は遺伝する」説を受け入れているので、なるようになるものだと思っています。

スマホは中学生からです。小学生の単独行動は活動範囲が狭かったり活動時間帯が限られていたりするので、日常の生活圏内は安全な範囲に収まっていると考えています。

中学生になると、子どもたちは友だちと遠出を始めます。大抵、誰かの親か兄姉がついていくケースが多いのですが、そうではない場合、特に場所が遠くなると、何かあったときに親たちはすぐにそこまで行けません。状況を理解するためにも、スマホは必需品となります。

■ SNSとの接し方・利用の仕方を指導するには

子どもにスマホを持たせることでの一番の危惧は、SNSでしょう。子どもたちが自由にアカウントを作成するのを阻むのは困難です。また、学校の連絡が公式Twitterアカウントで通知されるケースもあり、アカウントを作成しなければならない状況が発生することもあります。そうなると、子どもたちに対してSNSを利用するためのリテラシー教育が必要になります。

我が家は夫婦共にITエンジニアなので、私たち二人の間では特にこれといったガイドラインや教育計画、資料を準備したりはしていません。保護者のいずれかがITに明るくないような場合は、親もしかるべき教育を受けた上で、ある程度のガイドラインや教育計画を準備したほうが良いでしょう。

では、どのようにSNSのリテラシー教育を行っているか。我が家では、普段の生活の中で、必要に応じてSNSに関する話題を子どもたちとやりとりしています。たとえば、テレビのニュースなどをきっかけにして、SNSを利用したことによる炎上事例やセキュリティー事例などをその都度話すようにしています。

ある程度の年齢になれば、子どもたちはこうした教育の必要性も理解してくれます。ですが、まだ幼い小中学生に対して仰々しく教えようとすると、「つまらない」と言って話を聞いてくれなかったり、反抗心を抱いてしまったりします。ですので、普段の会話の中で自然に伝えることを意識しています。

内容としては「身バレしないこと」を重点的に繰り返し説明しています。特に次の2点です。

  • 個人・家族の情報(氏名、住所、自撮り写真、家族構成、連絡先)を書き込まない
  • 個人・家族の行動を正確に載せない
    • 1日の詳細の行動計画……☓
    • 過去の旅行・行動に対するコンテンツの公開……○
    • 現時点の場所(GPSの場所情報)を含むコンテンツ公開……△

その他のセキュリティー事象などについては、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が子ども向けに面白い動画コンテンツを作成していますので、それらを用いて説明しています。たとえば、次のようなものが我が家ではウケが良いです。


https://www.youtube.com/watch?v=k2VT6x4wBSk


https://www.youtube.com/watch?v=f7DbLwEGX-Q

また、SNSを通して危険なコンテンツへアクセスしてしまう可能性もあります。フィッシングや詐欺などで意図せず誘導されてしまうかもしれません。普段からセキュリティー意識が高ければ回避できますが、まだ経験の少ない中高生では、自分が騙されているかどうかを判断するのは困難です。したがって、教育と合わせて親がコンテンツの利用制限を行うことが重要になります。

我が家では、導入できるアプリを制限し、G Suiteを使って子どもたちのAndroidスマホをすべて妻の管理下に置くようにしています。また、撮影した写真はすべて妻のDropboxへと転送されるようにもなっています。原則、GoogleのアプリやAndroid端末を利用していれば、不測の事態が発生したときでも妻側で状況を確認できるというのが利点です。

子どもたちからPCやスマホを取り上げて暮らしていくことは、これからの時代を考えると安全な策ではありません。したがって、安全かつ楽しく利用するための関わり方を正しく教育していくことが親の務めになってきます。まず、PCやスマホを使わせる理由を明確にすること。そして、PCやスマホを利用する場合の危険性について事例と共に説明することが重要です。利用にあたり、必要最小限の制限や管理を行うことも大事でしょう。

■ リテラシー教育に大事なのは親子の関係性

さらっと「教育は親の務めです」と記述したものの、親が信頼されていない限り、どのような方法をとっても反発されてしまい、子どもに話を聞いてもらえない場合があります。

ITに限りませんが、親が子どもを教育する際には親子の信頼関係が育まれていることが重要なポイントです。信頼関係がある親子だと、SNSのアカウントを相互にフォローし合って、お互いの活動状況を共有できます。教育のためだけでなく、良好な関係を築くことでお互いの隠し事を減らし、困っていることがあれば話し合うような環境を作ることができます。我が家でもお互いにアカウントをフォローし合っていますが、特に不便だと感じることはありませんし、子どもたちも同様のようです。

さらに、我が家では「対話」を意識しています。その中でも「挨拶」「感謝」「謝罪」は特に重要で、これらはすべて「対話」につながっています。挨拶も感謝も謝罪も、自分から話し始めないと先に進みませんし、それらの後に本当に重要な対話が始まります。親として、私は子どもたちに誰とでも仲良くなれるコミュニケーション能力を身につけてほしいと考えています。それには「挨拶」「感謝」「謝罪」ができるということが大前提です。人と人とが接するために必要なプロトコルを持った上で、対話ができることを望んでいます。

では、いつ「対話」を持つか。我が家では、食事の時間を対話の時間としています。かといって、食事中にテレビを付けておくことを悪とはしていません。それどころか、ゲームをしていることも、ライブビデオを流していることも、映画を観ていることもあります。それらは話のきっかけにすぎず、目的は対話をすることです。家族でなるべく長い時間を共に過ごし、そして対話をすることが、親子の信頼関係を育むのに必要不可欠な時間であると考えています。


§


私と妻は今の状態が“最高で理想的な家族の形”というにはまだまだ遠いと考えていますし、子どもたちも同様に捉えているようです。各々の考える理想があって、そこに到達していないことも理解しています。それでも我が家には必要十分の信頼関係があり、家族が長く共に過ごすことを当たり前のように感じている節があります。これは、普段からお互いをよく理解するために対話を重ね続けてきた結果です。


家族はできる限り、共に過ごす時間を持って、対話をしていくこと。
PCやスマホを持たせる以前に、まず、この関係性を築いていくことが重要だと考えています。

後編を読む

■ 著者プロフィール

しょっさん(id:sho7650

過去、金融系の大規模インフラアーキテクチャのデザインを担当するアーキテクトに従事していました。その経験を生かして、2016年よりプラットフォーム専属のエンジニアとして、クラウドプラットフォーム企業へ転職。aPaaSとPaaSを軸とした、マルチクラウドシステムのアーキテクチャ設計に携わっています。


Title Photo by Hamza Butt

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