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アフターコロナの世界でソフトウェアエンジニアの未来はどう変わるのか? 転職市場動向から見る、企業と求職者の今

ソフトウェアエンジニアの転職支援プラットフォーム「Findy」は、2023年2月にエンジニアを対象としたアンケートを実施し、転職市場の動向をまとめた「エンジニア転職マーケットレポート」を作成。その結果をもとに、ファインディ株式会社CTO・佐藤将高さんと同社エンジニア採用アナリスト・竹内勇稀さんによる対談を実施しました。

Findy対談記事トップ画像

世界に大きな影響を与えたコロナ禍、そしてスマートフォン誕生以来の衝撃ともいわれる「ChatGPT」の登場──。エンジニアを取り巻く環境は、激動の真っ只中にあります。

アフターコロナとも言われる状況になった今、エンジニアの働き方や企業の動きにはコロナ禍とはまた違った変化が見られています。例えばリモートワークからハイブリッド出社、完全出社に切り替えた企業もあり、働き方や技術トレンドの変遷に合わせた対応や、それらに伴いこれからの時代において必要となるスキルセットも注目されています。

経済や市場をはじめとした外的環境の変化に対応し、キャリアを積むために、エンジニアはどのような考えのもとで行動すべきなのでしょうか。また企業はどのようにして優秀なエンジニアを見つけて採用すればいいのでしょうか。

今回はエンジニア転職サービス「Findy」を提供するファインディ株式会社CTO・佐藤将高さん(写真右)と同社エンジニア採用アナリスト・竹内勇稀さん(写真左)に登場いただき、ファインディが定期的に実施する「エンジニア転職マーケットレポート」の結果(以下、マーケットレポート)をもとに、2023年前半におけるソフトウェアエンジニアの転職動向についての対談を実施しました。

※対談内で参照しているマーケットレポートへのリンクは、記事末に掲載しております。記事内に挿入されているスライドは同レポートからの引用となります。

※この記事はファインディ株式会社(Findy Inc.)によるSponsoredContentです。

コロナ禍でもエンジニア転職市場は大きな打撃を受けなかった

竹内 コロナ禍が始まり、約3年が経過しました。あらゆる業種職種がその影響を受けましたが、エンジニアの転職市場に関してはどうだったのかをまずは振り返りたいと思います。

竹内さん近影

竹内 勇稀(TAKEUCHI Yuki) @t_akeuchi

ファインディ株式会社 事業企画/マーケティング

立命館大学経営学部を卒業後、株式会社キャリアデザインセンター、株式会社マイナビにて、主に転職領域の求人広告制作や採用支援を担当。2021年よりファインディ株式会社に入社。カスタマーサクセスを経験後、「エンジニア転職マーケットレポート」をはじめとしたコンテンツ企画・制作、ユーザーマーケティング等の業務に従事。

佐藤 確かにエンジニアへの影響は気になるところですよね。私自身、コロナ禍が始まったときは、今後どうなっていくのか戸惑いを感じていました。マーケットレポートの結果はどうだったのでしょうか。

竹内 実はコロナ禍においても、のべ6割のエンジニアが転職を経験しているというデータが出ています。佐藤さんはファインディの自社エンジニア採用にも携わっておられますが、感覚的にはいかがですか?

佐藤さん近影

佐藤将高(SATO Masataka) @ma3tk

ファインディ株式会社 CTO

東京大学 情報理工学系研究科 創造情報学専攻卒業後、グリー株式会社に入社し、フルスタックエンジニアとして勤務する。2016年6月にファインディ株式会社立ち上げに伴い取締役CTO就任。大学院では、稲葉真理研究室に所属。過去10年分の論文に対し論文間の類似度を、自然言語処理やデータマイニングにより内容の解析を定量的・定性的に行うことで算出する論文を執筆。

佐藤 私の感覚も近いものがあります。また他社のCTOと話しても、それほど大きな打撃を感じている人は少なかったように思います。求職者の動きが鈍くなっているようには感じられませんでした。

業績が苦しくなりエンジニアを採用しにくくなった企業がいる一方で、逆にコロナ禍において成長をしたことで以前よりもエンジニアを求めるようになった企業もあります。

全体としてはエンジニアの採用ニーズが減ったのではなく、エンジニアを求める企業や、エンジニアに求める要件が変化したという印象です。

「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.27
「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.27

リモートワークと“成長環境”が企業選びのポイント

竹内 コロナ禍前後で求職者の転職動機に変化は感じましたか?

佐藤 コロナ禍初期は純粋な環境の変化を受けて転職を希望する人が一定数いましたが、最近はリモートワークの可否を重視するケースが増えていると感じます。

企業としてはやむを得ずリモートワークを導入したのだとしても、自宅で集中して仕事できる環境を整えたエンジニアは、コロナ禍が収束してもリモートワークを望むケースが多いです。そちらの方がコーディングといった業務に集中できる方は多いですからね。

そうなると企業としても、優秀なエンジニアを採用するために、今後もリモートワークを容認するケースが出てきました。

竹内 多くのエンジニアがリモートワークのメリットに気づいたという点が大きいようですね。

佐藤 ええ。コロナ禍以前は、転職時にリモートワークを希望するエンジニアは半数以下でした。しかし、マーケットレポートを見ても約8割がリモートメインの働き方を希望するようになっています。今やリモートワークの可否が企業選びの重要な指標となりました。

竹内 一方で、一度はリモートワークを導入したものの、感染状況の落ち着きを見て出社に戻す企業も一定数見られます。その影響を受けて、転職に踏み切るエンジニアも多いようです。今後、エンジニアの定着を図るために、企業はどのような対応を取ればよいのでしょうか。

佐藤 リモートワークの可否も重要な条件ではありますが、一番のポイントは「エンジニアとして成長できる環境かどうか」だと思います。優秀なエンジニアほど、優秀な人たちの中に身を置いて生産性の高いプロダクト開発に従事できる環境を求めているのではないでしょうか。そのような環境を提供できる企業はエンジニアに受け入れられやすいはずです。

「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.29
「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.29

オフィスの重要性とオフラインだからこそのメリットとは

竹内 今回のマーケットレポートではリモートワークに関して興味深い結果が出ています。前回(2022年9月調査時)と比較して、フルリモート勤務者/フルリモート希望者の割合がやや減っているのです。基本的にはリモートワークで働きたいと考えつつ、人と会わない生活が続くとさすがに誰かと会いたい気持ちが出てくるのでしょうか。

佐藤 一定期間リモートワークを経験したからこそ、オフラインでのコミュニケーションの価値を見出したと考えられそうです。弊社はフルリモートを可能としていますが、四半期に一度、オフィスがある東京にメンバーが集合する機会があります。そのときよく聞かれるのが「オフラインで会う機会は大事なので定期的に出社したい」という声です。

オフラインコミュニケーションの機会があることで、その後のリモートワークでの連携のしやすさが変わってくるのだと思いますし、実際に「オフィスに行ってコミュニケーションを取ったことで仕事が捗るようになった」とメンバーから言われました。リモートワークが主流になったとしても、密に連携することが大事なのは変わらないですよね。

竹内 おもしろいですね。リモートワークを選択できる状態でありつつも、「好きなときにいつでも集まれる場所」としてのオフィスの存在も重要ということでしょうか。

佐藤 そう思いますね。

「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.20
「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.20

竹内 まだ経験が浅く自走に不安があるエンジニアは、むしろオフラインでのサポートを必要としているケースもあるように思えます。

佐藤 その通りだと思います。与えられたタスクや課題をまだこなせないメンバーは、メンターやリーダーのサポートが必要でしょう。リモートでも質問はできますが、「何が分からないのか分からない」というレベルだと、オンラインではサポートしきれないこともあります。

オフィスなら横でメンバーの手が止まっていることに気づいて話しかけることもできますが、オンラインではそうした“察する”ことが難しいからです。メンバーとしても「いつ相談すべきか」を見極めるのが難しく、相談するのが遅くなってしまうこともあります。弊社でも、エンジニアリングスキルやチーム開発を進めるにあたって、自走できるレベルかどうかがリモートワークの可否判断の1つになっています。

転職後のミスマッチを未然に防ぐには

竹内 マーケットレポートによると、エンジニアが転職時に参考にする情報として多かったのは「企業HP」「テックブログ」「カジュアル面談」でした。この点について、採用する側として佐藤さんはどう思われますか?

「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.14
「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.14

佐藤 転職を考えるエンジニアとして気になるのは、「その会社に優秀なエンジニアがいるかどうか」「最新の技術に挑戦しているかどうか」「エンジニア組織はどうなっているのか」などの点が大きいのではないでしょうか。そうした職場環境が、「エンジニアとして成長できる環境かどうか」という条件に直結するからです。

ですから、テックブログを書く際もそういった観点が大切です。ただ情報を発信するのではなく、求職者が気になるであろう情報を加味した上で、自社がどれだけ良い企業であるかをしっかりと伝えるような発信が大切になるでしょう。

竹内 そうした情報を得ないままに転職してしまうと、「こんなはずではなかった」というミスマッチが転職者・企業ともに起こりそうですね。実際にマーケットレポートでも「転職後にギャップを感じた場面」として、「組織風土やカルチャー、周囲の人との人間関係のミスマッチ」が多く挙げられていました。

佐藤 よくある悩みですよね。転職者としてミスマッチを防ぐには、まずは徹底した自己分析を行うことが大事です。転職活動で過去にマッチした企業や、逆にマッチしなかった企業のカルチャーを言語化し、自分自身がどんな環境に身を置きたいのかをはっきりさせていく必要があります。

ただし1人で考えているだけでは、案外自分のことは深く見えてこないものです。そこでカジュアル面談などの機会を活用して、その企業の想いを確認しながら自分自身についても掘り下げて考えていくのがおすすめです。

竹内 カジュアル面談での対話を通じて、自らのキャリアについていろいろな視点から考えられる機会になるということですね。エンジニアのキャリアとしては、技術スペシャリストを志す方が圧倒的に多く、組織マネージャーやプロダクトマネージャーなどの選択肢は少数派という結果がマーケットレポートで出ています。こうしたエンジニアのキャリアについて佐藤さんはどう見ますか?

「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.19
「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.19

佐藤 スペシャリストを目指す人が大多数なのは事実です。一方でマネジメントをしてほしい企業も多く、そこに葛藤が生まれることが多いですね。エンジニアとしては「エンジニアリングに時間をとれないことで、スペシャリストの道が途絶えるのでは」と不安を覚えるのでしょう。

ただしこれからの時代を考えると、エンジニアもピープルマネジメントなどに一度チャレンジしてみるのもありだと思います。期間を区切ってトライしてみてはどうでしょうか。

竹内 「エンジニアが転職時に詳細を知りたかったこと」としては、「売上、利益」「開発工数(人工)」「CI/CD」「デプロイ頻度」が挙げられていました。特に「売上、利益」に関しては半数以上が挙げています。

「エンジニア転職レポート」(2023年2月実施)p.24
「エンジニア転職レポート」(2023年2月実施)p.24

佐藤 売上を気にするのは、自分が開発したプロダクトがきちんと存続できるかどうかに直結するからでしょうね。いくらスケールするプロダクトを開発しても、企業として赤字が続くようだと、すぐクローズすることにもなりかねませんから。またデプロイ頻度については、一般的に考えると高ければ高いほど効率的な開発ができていると判断できることから、1つの指標として見ているのだと思います。

実力主義の世界で今後エンジニアが価値を発揮していくには

竹内 ここまでコロナ禍前後におけるエンジニア転職市場の現状と、転職活動の実情について深掘りしてきました。最後に今後のエンジニア転職市場を見据えて、エンジニアがどのように価値を発揮していけばいいのかについて聞きたいと思います。

例えば今後習得したい技術として「Go」「TypeScript」「Rust」が前回に引き続き上位に挙げられています。この点についてはどう捉えますか?

「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.37
「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.37

佐藤 「Go」「TypeScript」「Rust」に注目が集まるのは、これら“静的型付け言語”が生産性を上げやすいからというのはあるかもしれませんね。型があることでバグに気づきやすいですし、プロダクトをいかにすばやく提供できるかという点でもメリットが大きいです。

静的型付け言語に注目が集まるようになったのはここ5年くらいで、10年くらい前までは動的型付け言語にチャレンジされている方が多かったかと思います。マーケットレポートの結果からは、技術トレンドの変化を感じますね。

竹内 技術カテゴリで注目を集めているものといえば「ChatGPT」をはじめとしたAI・機械学習です。こうした技術との付き合い方についてはどう思いますか?

「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.34
「エンジニア転職マーケットレポート」(2023年2月実施)p.34

佐藤 エンジニアの仕事としては、変化する部分と変化しない部分があると思います。例えば過去はいかに効率よくコードを書くのかがエンジニアに求められるスキルでした。

しかしChatGPTの活用が当たり前になると、今後はむしろ要件定義を行ったり、作成されたコードの良し悪しを判定したりといった意思決定こそがエンジニアに求められるスキルになっていく可能性があります。

一方で変化しないのは“何かを一から生み出すこと”です。これはまだ人間にしかできません。あるいはピープルマネジメントで人に向き合うことも人間の役割として残り続けそうです。

竹内 先ほど組織マネージャーを目指したいエンジニアは少ないという話が出ましたが、今後はマネージャーの価値がさらに高まることになりそうですね。

佐藤 そうですね。もちろんスペシャリストの価値は今後も落ちません。ただし求められるスキルは変わると思います。現在はスマートフォンが登場したときのように、世界が変化するタイミングに差し掛かっていると思います。そうした変化にいかに対応するのか、転職者も企業も問われることになるのではないでしょうか。

竹内 変化に対応するのは大変ですが、これまでにないワクワク感もあります。

佐藤 ええ。すでにエンジニアの領域については境界が曖昧になっている部分もありますよね。例えばフロントエンドやバックエンドなど複数の領域に1人で対応できるエンジニアも増えています。

弊社でも「フロントエンドエンジニア」のような肩書ではなく、「フロントエンドを中心にしているエンジニアの○○さん」のような呼び方をしています。かといって過去のようなフルスタックエンジニアの時代に戻ったわけではなく、専門領域を持ちながらそれ以外の領域も含めて掛け算で力を発揮できる“T字型人材”のイメージです。

これまで以上に広く技術力が求められる「実力主義の世界」になるかもしれませんね。

Findyにて「エンジニア転職マーケットレポート」の最新版を公開中!

Findyでは、定期的にユーザーアンケートを実施し、エンジニアの転職や働き方、技術トレンド等に関する調査・分析レポートを公開しています。

今後もエンジニア向けコンテンツを充実させていく方針であり、今まで以上に多くのエンジニアにとって有益な情報をご提供できるような体制を構築中です。

本記事の対談でご紹介いたしました「エンジニア転職マーケットレポート」については、Findyサービス内にて全ページを閲覧可能です。ご興味いただけましたら、ぜひご覧ください。

なお、エンジニア転職マーケットレポートの全貌をご覧になるには、Findyサービスへのご登録が必要となります。

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[SponsoredContent] 企画・制作:はてな
取材・構成:山田井 ユウキ@cafewriter
撮影:曽我美芽