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「自分は優秀」 心理学の“優越の錯覚”はなぜ起きる? 放医研がメカニズムを解明



http://www.nirs.go.jp/information/press/2013/02_26.shtml
Superiority illusion arises from resting-state brain networks modulated by dopamine | PNAS

人には自分の能力や性格について「自分は平均より優れている」と思う傾向があります。この現象は、心理学では認知バイアスの一種「優越の錯覚」として知られています。過剰な優越感は無謀な行動につながる危険があり、適度なレベルの優越感を持つことが望ましいとされています。

実験では男性被験者24人に対して、性格を示す「正直」「怒りっぽい」などの言葉に対して自分が「どれくらい平均より優れているか・劣っているか」を質問。これにより、優越の錯覚の程度を定量化しています。次に、抑うつの度合いを調べる時に使う「ベック絶望感尺度」という質問紙に記入してもらい、抑うつの程度と優越の錯覚の程度との関係を分析。絶望感の低い人ほど優越の錯覚が強い傾向にあると分かりました。

さらに、PET(ポジトロン断撮像法)とfMRI(機能的核磁気共鳴画像法)の2つの画像診断装置で脳の動きを計測。その結果、行動や認知を制御する、ドーパミンが多く見られる「線条体」と前頭葉にある「前部帯状回」の結び付きが弱い人ほど、優越の錯覚が強くなることが分かったそうです。

研究グループは、うつ状態の診断や治療の現状について「多様な要因によって生じ、症状も多様であるため、一筋縄ではいかない」としています。抑うつの脳内メカニズムを解明した今回の研究成果は、新たな治療技術や治療戦略の開発への貢献が期待されています。

文: 古関崇義

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