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京都の地下鉄キャラクター「太秦萌」はなぜ“進化”した? デザイン会社と交通局に聞く制作秘話


■ 太秦萌の“進化”に込められた交通局のメッセージ

――太秦萌のデザインを変更するに至った経緯を教えてください。

京都市交通局・水川 京都市では、市民の貴重な財産である地下鉄を市民生活と京都の発展のために積極的に活用し、将来にわたって安定的に運営していくことを目指して、2010年に「京都市地下鉄5万人増客推進本部」を設置しました。そして、若手職員にもアイデアを出してもらいたいと思い、推進本部の下部組織として「若手職員増客チーム」を立ち上げました。当時、世間で、特に鉄道ファンの間で「萌え」というカテゴリーがしっかりと形作られていたこともあり、若手職員たちは「燃え燃えチャレンジ班」といったチームを作って、5万人増客に向けたシンボルとなるような、親しみのあるキャラクターを自ら生み出そうと考えたようです。そこで誕生したのが太秦萌でした。

初代・太秦萌

予算があまりない段階だったので、イラストは職員のご家族が描いてくれました。チーム自体は順繰りに変わっていくので2年後に解散したのですが、太秦萌にはその後も駅のポスターなどに登場してもらっていました。その後、この取り組みを交通局全体の取り組みとして、さらにステップアップが図れないかなと。その時にちょうどポスターで地下鉄の利用促進を呼び掛けるという企画があり、「太秦萌を使って、地下鉄の利用促進を図る」とのテーマで、京都市の指定業者向けにポスターデザインのコンペを実施しました。

審査員チームには元のイラストを描いた原作者にも入ってもらい、ほぼ満場一致でGK京都さんに決まりました。GK京都さんは、とても細かいところまで作り込んでくださっている。今回、交通局が大事にしたのはこのポイントです。とりあえずこれで、というのではなく、とにかく時間をかけていいものを作っていこう。そうすることで、地下鉄への信頼や、私たちが本来発信していきたいメッセージを、間接的に伝えられるのではないかと思ったんです。

地下鉄がPRしたいポイントの一つは「安心・安全」です。ポスターの細かな部分まで丁寧な作業がなされていれば、自然と「信頼」につながるのではないかと、そのように期待しました。

太秦萌は原作者が存在するキャラクターなので、私たちが簡単に手を入れていいものではないと思っていました。ですが、太秦萌をこの先ずっと大事にしていきたいとなると、ここでいったん真剣に考えなければいけないなと。なので、これを機にしっかり太秦萌という1つのカテゴリーを固めていこうと考えました。

■ スパッツの丈1つでも、激論を交わしながら作り上げた

――GK京都さんはこのポスターを作るに当たって、どのようなイメージで進めていったのでしょうか?
GK京都・名倉 最初に考えたのは、このキャラクターたちが万人に受け入れられるにはどう変身させればいいのか。そして、地下鉄を使うメリットをどうやって伝えるかということです。どんなふうにキャラクターを作り変えるかは、かなり心血を注いで考えました。
水川 コンペで提出していただいた企画書には、交通局が今後どう展開していくかを含めた提案も書かれており、ビジョンがとても明確でした。地下鉄の利用促進ポスターを作りたいというシンプルなお願いに対して、かなり熱を込めて提案していただいたように思います。とにかくコンセプトがしっかりしていました。コンペでも2年後、3年後につながるような内容でとお願いしていたのですが、GK京都さんは本気の度合いが違って見えました。

――イラストレーターに賀茂川さんを選んだ理由は?

GK京都・磯貝 イラストレーターはpixivで探しました。京都に絡んでいる方がいいだろうなと思っていたのですが、賀茂川さんは名前が京都らしい方だったので、もしかしてと。絵柄としては、あまり萌え系を前に出すと汎用性が失われてしまうし、女性に嫌悪感を抱かれてしまうのでは、という懸念がありました。賀茂川さんは、幅広い層に受け入れられる絵柄で表現されていたので、そこが決め手ですね。

賀茂川さんがpixivで公開しているイラスト

キャラクターのイラストを見ていても、絵というよりは、1枚のデザインとして描いているのが感じられました。他の自治体のポスターを見ていると、絵を打ち出しただけでポスターの役割を果たしていないケースがいくつかあります。なので、ポスターのクオリティーを上げるという面では、デザイン的に描かれたキャラクターの方が合っているだろうなと。

――なるほど。3人のキャラクターデザインで、こだわった点はありますか?

名倉 原作の絵と同一のキャラクターであるという認識を持てるかですね。
磯貝 原作をリスペクトしつつ、いかにうまくリファイン(進化)させるかというのは念頭に置きました。
名倉 後は、もう一度性格の部分からかみ砕いたり。もともと、彼女たちには設定があるんですけど、それをベースにした裏設定を事細かに考えました。
磯貝 それが服装や持っている小物にも反映されるように、一貫性を持ったキャラクターとして整理し直しています。例えばもともと、太秦萌はニーハイで、松賀咲はルーズソックス、小野ミサはハイソックスだったんです。でも各キャラクターの性格や嗜好(しこう)性を考えると、萌はどちらかというとハイソックスだよねと。松賀咲はスポーツ少女だから、スタンダードなソックス。小野ミサは少しオタクっぽいからニーハイかなとか。そういうふうに小物を整理していきました。

――それぞれの個性が分かりやすくなっていますよね。整理していく中で苦労したキャラクターはいますか?

名倉 松賀咲です。磯貝と意見が合わなくて苦労しました(笑)。性格については交通局と相談しながら考えていったのですが、実際に絵を起こしたときに、そのキャラクターらしさとポスターにしたときの収まりのよさ、2つを同時に表現するのが難しかったです。どちらも兼ね備えていないといけないので。そこで……争うんですよね。
磯貝 ラフ絵でデザインを組んだときに「こっちのパターンの方がキャラクターを表している」「でもそれじゃロゴが入らない!」とか(笑)。3人のポスターを並べたときのバランスも考えましたね。

左から太秦萌、松賀咲、小野ミサ。3人とも京都市内の学校に通う女子高生という設定

太秦萌 | Facebook

名倉 細かい部分に関しては、キャラクターの設定にのっとった上で、ノリで作った部分もあります。靴はこういうメーカーのこういうモデルがいいよねとか。松賀咲の場合、この子はがさつな性格なので、定期券をパスケースに入れて持っていてもなくしやすそうだなと。なので、首から下げるタイプのパスケースを持っています。

磯貝 定期券の持ち方も、もっと男っぽくしようとか。この子はこういう持ち方しないだろうと。そういう細かいところでも激論を交わしました(笑)。

――そんなところまでこだわっていたんですね! これらはすべてGK京都にお任せ、というわけではなく、交通局とも相談しながら作り上げていったんでしょうか?

京都市交通局・須貝 一緒に作り上げていく、というイメージが近いですね。
水川 専門的なところはもちろんお任せしていたのですが、一緒に作り上げていくというのを、GK京都さんは本当に大事にしてくださっています。私や須貝に「こういうふうに考えているんですけど」というのを、かなり綿密に連絡していただきました。
須貝 細かい部分やキャラクターの個性だったり、いろいろな人の意見を吸い上げようとしてくださっているんだと思うんです。
名倉 例としては、スカートの丈ですかね。一般的に見て、この短さはどうだろうとか。
水川 そうですね。そういう点もかなりこだわってくださっている。絶妙なラインといいますか、ここしかないというところを常に探求し続けてくださっているという印象でした。
名倉 あと、松賀咲のスパッツの丈についても2人でもめました(笑)。

――意外とスパッツ派は多いですもんね。

名倉 磯貝と賀茂川さんは、決定したデザインよりも短い方がいいと言っていたんです。でも僕は「この長さじゃないとだめ!」って。ここは最終的に僕の判断です(笑)。

――押し切ったんですね(笑)。

名倉 ところで、ポスターに描かれている定期券の中、見たことありますか?

――いえ、まだ見ていませんでした。

水川 彼女たちが持っている定期券なんですが、中にきちんと駅の名前が書いてあるんです。彼女たちは京都市内の学校に通う高校2年生で、幼なじみ同士なんですが、全員が違う学校に通っているんですよね。
磯貝 実際の定期券を見せてもらって、その通り絵に起こしています。

左から太秦萌、松賀咲、小野ミサが持っている定期券

水川 全部、実際に発行してほしいという依頼がGK京都さんからありました。それくらいこだわって絵を作り上げてくださっています。
名倉 ちなみに、太秦萌は太秦天神川駅(東西線)から北山駅(烏丸線)まで通っているので、その定期券を持っています。松賀咲は松ヶ崎駅(烏丸線)から丸太町駅(烏丸線)。小野ミサは小野駅(東西線)から今出川駅(烏丸線)です。

――そうだったんですか! 設定がとても細かいですね。

水川 どこの高校に通っているということは明らかにしていないのですが、彼女たちはあの辺りの高校に通っているんだな、という想像を膨らませていただけたらなと。こうやって、みなさんにも彼女たちの世界観に触れていただけたらと思っています。
名倉 松賀咲は陸上部なので、陸上が強い高校はどこだろうとか、最初の頃はそういう部分もいろいろと考えました。

水川 今年度は、こうした表に出ていない設定の面白さをうまく出していきたいですね。

――ストーリー性がありますね。デザインについて、周りの職員に意見を聞くことはあったんでしょうか?

須貝 基本的に営業課が代表して意見を述べるという感じなんですが、悩んだときは周りの職員にも相談しました。でも、あまり広げてしまうと収拾がつかなくなってしまうので……。地下鉄の安全で厳密な運行を現場と調整して守っている部署があるので、そこへの配慮はしっかりとしています。
名倉 キャッチコピーの部分とキャラクターの設定に関しては、よく相談していました。最初、うちからは「松賀咲は活発なので、エスカレーターを使わずに階段を駆け上がるんです!」と提案していたんです。でも階段を駆け上がるのは、安全面を考えるとNGですよね、と。
須貝 「交通局がこういうことを言っていいのか?」という反応が返ってくるのは現場なので、その点には神経を使うようにしています。

■ 都くんは鉄道運行を見守るAIなんです

――3人のキャラクターが出そろいましたが、3種類のトラフィカ京カードに登場している「都(みやこ)くん」も気になるところです。

名倉 都くんの設定、実はもぐらなんですよ。前面にある手のような部分が前足なんですけど、この設定をキャラクターとして起こしたときに、もう少し動きを出すにはどうすればいいかなと。都くんはすでに着ぐるみ化されているのですが、それを見た個人の意見として、前足じゃなくなっていることに衝撃を受けたんです。「普通の手が出ている、納得いかん!」と(笑)。

左が都くん、右が京ちゃん。都くんの手はもぐらという設定だったが、着ぐるみでは普通の手に

でも逆に、今回はそれを利用しようと思いました。もぐらではなく、この着ぐるみのような方向性で新しくキャラクターを作ったら“あり”なのかなと。ただ、賀茂川さんがかなり苦労していたようでした。キャラクター1点を描くのと同じくらいの労力をかけてくださったようです。

――そうだったんですね。今回の都くんのデザインを提案したのは?

名倉 ラフ絵は僕が描きました。手と足は宙に浮かせたほうが動きも自由にできそうなので、賀茂川さんにもそれは伝えました。こちらも従来のデザインから崩さず、同じキャラクターであるというのを認識できるレベルでリファインしています。……実は僕が考えた裏設定があるんです。都くんは、鉄道運行を見守るAIだという。

――AIですか……!

名倉 ホログラムで投影されているから空中に浮く。本体のAIは衛星にあるので、体が消えても代わりはいるという……。常に複製が作られていくんです。「私が死んでも代わりはいるもの」という。

――そんな裏設定があったんですね。……ちなみに、これが公式設定になる可能性は?

水川 交通局としてはあらゆる可能性を視野に入れて事業を進めていきたいと思っているので、ゼロではないですね。都くんも歴史があるキャラクターなんですが、もっとここに力を注ぐことができれば面白くなりそうだと思っています。GK京都さんがたまたま、都くんにも熱意を注いでくださったということもありますし(笑)。このデザインは内部でも好評でした。都くんは「市営地下鉄1dayフリーチケット」のデザインになっているのですが、実はこのデザインで出す予定はなかったんです。このフリーチケットは、松賀咲のポスターの中で都くん自身も持っているんですよね。

都くんが持つ「市営地下鉄1dayフリーチケット」の都くんデザイン

――都くんのリファインは、太秦萌のプロジェクトに含まれていたのでしょうか?

水川 まったくなかったですね。
名倉 太秦萌たちをリファインしたところで、これが交通局のポスターだと認識してもらえるだろうか、という懸念がありました。そこに都くんという長い歴史があるキャラクターを登場させることで、交通局のポスターだというメッセージになるかなと思い取り入れました。

■ 職員たちも“かなり盛り上がっている”

――絵のテイストががらっと変わることになりましたが、京都市交通局の職員に戸惑いはなかったのでしょうか?

水川 当初は「太秦萌ってこんな雰囲気だったっけ?」というようなくらいでしょうか。マイナス面での戸惑いはなかったと思います。その後徐々に広がり、「いいじゃない!?」という雰囲気になりました。
須貝 コンペの審査員チームに入ってもらっていた原作者には、「ぜひお願いしたい」という感想をその時点で頂いていました。
水川 出来上がりを心待ちにされていたぐらいでしたね。
須貝 太秦萌がこうして発展しているということを、すごく喜んでくださっているようです。最初は控えめの展開だったのが、今ではここまで大きくなっている。今は次のステージに上がろうという話も進んでいるので、こちらも含めて楽しみにしてくださっています。

――そうなんですね。職員のみなさんも盛り上がっていたのでしょうか?

水川 かなり盛り上がっています(笑)。ただ、話題になったことでこちらに注目が集まるようになりましたが、前作のデザインが良し悪しの「悪し」にならないようにという気配りは重ね続けてきました。メディアに取り上げてもらう際も、進化を意味する「リファイン」という表現を使っていただいたり。前のデザインがだめだったからやり直したのではなく、太秦萌というカテゴリーを、より発展的に作り直すという意味合いで私たちはこの取り組みに着手しています。原作があるからこそ、今回のデザインがある。前作は初代・太秦萌、今作は2代目・太秦萌というイメージです。

――前のデザインも引き続き大事にしていきたい、という考えなんですね。

水川 駅によっては初代・太秦萌を描いたポスターも残っています。それはそれで、見ていただく対象としてそのまま大事にさせてもらいたい。丸ごと前のデザインを淘汰(とうた)するということはしたくありません。残しつつ、新しいデザインを発展させていければと思っています。
須貝 おかげさまで、職員の中でも「この展開でいいじゃないか」という話が出て、太秦萌をこういうふうに使いたいという声が押し寄せてきました。でもそれは、本当にこのキャラクターたちに合ってる使い方なんだろうか?と。やはり、使い方がぶれてはいけない。そういう意味では違った戸惑いがあったかもしれません。
水川 外部から「タイアップできませんか?」とお声掛けをいただく機会もありました。太秦萌については長期的な計画を考えていたことから、少なくとも昨年度内は「『地下鉄に 乗るっ』キャンペーン」でキャラクターを動かしていきたいという思いがあり、丁重にお断りしました。

これまではアイデアを出すことしかしてこなかったので、こうしてたくさんの提案を頂ける状況はまさにうれしい悲鳴です。新年度に入って、戦略をある程度明確にした上で、またご相談してもらえないかとお願いしたケースもありました。これまで手掛けてきた事業の中でも、太秦萌に関しては非常に反響の大きい取り組みになったな、というのは実感しています。

――反響といえば、ポスターが欲しいという声も多いのではないでしょうか?

須貝 これは職員の中でも多くて……(笑)。すみません、とお断りしている状況です……。
水川 予算の中でやっている取り組みなので、印刷枚数にも限りがあるんです。年度内に予定していたPR用しか刷っていないので、多くを用意できない。一般の方たちを含め、行政内部でもポスターが欲しいという声はあるのですが、お断りしなくてはいけない状況になっています。

――Twitterを見ていると、ポスターが欲しいという声はちらほら見かけるのですが、職員の方たちでも手に入らないんですね。

水川 実は、ポスターが貼ってあった場所からなくなっている……ということもありました。破れてどこかへ行ってしまっただけかもしれないし、持ち去られたかどうかは分かりません。行方不明になって「うちの子、どこに行ったんや……」ということもしばしばあるのですが、基本的には、みなさんとても大切に見てくださっているなという印象はあります。
須貝 第2弾、第3弾とポスターを貼り替えるタイミングを狙って「もらえませんか?」と聞きに来る方も何人かいるみたいですね。

■ 太秦萌は今「ステップ」の段階にいる

――3月に東京で開催された「AnimeJapan 2014」で、京都からは京都国際マンガ・アニメフェア(京まふ)がブースを出展していました。ここで太秦萌のクリアファイルが配布されたとのことですが、この時の反響は?

須貝 京まふは京都市産業観光局の取り組みになるのですが、東京で出展するという話があった際に「では萌ちゃんのこともよろしくお願いします」と、ポスターをお渡ししました。その際に配布物があるということだったので、それらを入れるものがあるといいんじゃないかということで、クリアファイルを作成しました。京まふの担当者には「300枚ほどあればいいのではないか」と言われていたのですが、多めに500枚ほどお渡ししたところ、両日とも午前中にはなくなってしまった。後日、担当者から「すみません、萌ちゃんなめてました」というお言葉を頂きました(笑)。
名倉 クリアファイルは、アンケートに答えるともらえるというものだったのですが、実際に僕もアンケートに参加してもらってきました。

――来場者の反応はどうでしたか?

名倉 しばらくブースの周りにいたのですが、「あの子知ってる」というような声はちらほら聞こえました。
水川 配布したクリアファイルでは、キャッチコピーの内容も変えて「京都に行きたい」というふうに変えているんです。
須貝 このクリアファイルは限定として作成したので、交通局の取り組みに参加した人に景品としてプレゼントするという取り組みはやると思うのですが、広く配布するという展開は考えていないです。

「AnimeJapan 2014」で配布されたクリアファイル。ポスターとは違うキャッチコピーが使われている

――なるほど。京まふは2014年も開催されますが、太秦萌関連のものが出展されるということはありますか?
水川 京まふはもちろん、いろいろなところで展開していきたいと考えています。太秦萌は今「ホップ・ステップ・ジャンプ」でいうところのステップの状態です。京まふも大きなステージですので、こちらからも参加したい意向を見せていますし、ぜひ出展したいと思っています。京都市にはいろいろなキャラクターがいますが、同じジャンルでみなさん頑張っている。特にこれだけを取り上げるということは京まふもできないと思うので、私たちは私たちで、存在感を出して頑張っていきたいと思っています。

■ グッズ、フィギュア……悩ましい次の一手

――今後についてですが、太秦萌たちが地下鉄のPRキャラクター以外の場で登場する機会はありますか?

水川 難しいところです。3人が登場した当初、年度内は少なくとも「『地下鉄に 乗るっ』キャンペーン」からぶれないようにと考えていました。何でも使ってくれというふうにしてしまうと、ここまでうまくきているものがぶれてしまうことになる。そこは少なくとも、地下鉄関係、地下鉄にご乗車いただくことをみなさんにPRできる関係というところで、しっかりと活躍の場を選んでいかなければいけないと思っています。外部からお声掛けいただいたときも、地下鉄の利用促進という側面を大事にしていただけるようなところで、できるだけ広く出ていきたいとは考えています。
須貝 地下鉄に乗る、という部分がぶれなければ、いろいろな広がりがあると思います。地下鉄のPR、乗客1日5万人の応援キャラクターというところから外れないように、どういう形で広くステップアップしていけるのかというのが今後のポイントなのかもしれません。
水川 GK京都さんがしっかりと作り込んでくださっているものなので、このテーマで一緒にやっていけるような事業であればタイアップもできると思います。ライセンス料を取ってコラボレーション、というのは考えられませんし、こちらの目的もはっきりしているので、今年度もキャッチコピーは「地下鉄に 乗るっ」のままで、この世界観を大事にしていきたい。行政の予算も、この事業に関しては前年度より増額したので、昨年の「ホップ」に比べて「ステップ」になっているのは確実です。新しい取り組みとしては、グッズの展開を考えています。昨年度はポスターだけの展開でしたが、今年はグッズという軸も増やして広げていきます。

――グッズについては、どういうものを出していくか検討していますか?

水川 それがとても悩ましいところです。まずは取り掛からないといけないかもしれませんね。検討を重ねているところなのですが、混沌としている状況でして……。
名倉 デザイナー個人の意見としては、フィギュアができればいいなと。
水川 フィギュアは確かに思いつきますよね。ただ行政側としては、フィギュアを作ることにどうしても目的を探してしまう。なぜフィギュアなのか?と。
須貝 フィギュアと地下鉄、どうつながるのかなと考えてしまうんですよね。安易には動けない部分があります。やはりみなさまに広く愛していただける地下鉄でありたいと思っているので、できるだけ広く、みなさまに手に取っていただけるグッズが好ましいのではと。グッズのジャンルが一定の層に偏りすぎるということはあってもいいかもしれないけれど、目的があってしかるべきだと。
水川 本当はやりたいんですけど、どうすればみなさんに喜んでもらえるだろうかと。いつも難しい選択に迫られています。

――確かに、利用者が幅広いからこそ難しい問題ではありますね。弊社のスタッフからは、キャラクターソングを出してほしい、という意見もありました。

須貝 そういう意見をいただければ、こちらもそれを踏まえてどうしていこうかな、と考えていけそうですね。提案していただいたアイデアはストックしておいて、グッズ展開をどうするかという話し合いの場に、話題として持ち込めればいいなと思っています。

――ポスターやトラフィカ京カードはグッズともいえるような存在ですが、問い合わせなどはありましたか?

須貝 ポスターはありましたね。トラフィカ京カードも少し分かりにくい売り方になってしまったので、「どうやったら買えるんですか?」などの問い合わせがありました。何か手元にお届けできる媒体として、交通局にもメリットのあるトラフィカ京カードを選んだのですが、急きょ選んだということもあって、こちらの想定が少し甘かったです。

順次発売された、3人のトラフィカ京カード。京都市営地下鉄の烏丸線と東西線で使用できる

――太秦萌たちのトラフィカ京カードは、他のデザインと比べて売り上げが好調だったということはあったんでしょうか。

須貝 トラフィカ京カードは、すべてのデザインをまんべんなく販売しているので、個別にどれがどれだけ売れたかというのは計れないんです。
水川 ですが、窓口で「太秦萌のトラフィカ京カードが欲しい」と、デザインを指定して購入していく利用者は多かったです。

――なるほど。ちなみに5月29日の地下鉄の日にも、太秦萌に関連する取り組みをされたと伺いましたが、いかがでしたか?

水川 一般の方や子どもたち、イラストレーターの方などから公募でいただいた「太秦萌ぬりえ」作品の展示会、「地下鉄の日」限定トラフィカ京カードセット(特製台紙付き:100組)の特別販売を行いました。当日はおかげさまで大盛況で、塗り絵作品は120点超が集まり、カードセットご希望のお客様については、販売開始の午前10時を待たずに100人のお客様が並ばれ、完売となりました。早い方ですと、前日の夜から並ばれていたとのことですから、本当にありがたいお話です。

市バス・地下鉄案内所や定期券発売所で配布されていた塗り絵のデザイン

■ 太秦萌は、みんなで育てていく

――今後、太秦萌たち3人以外のキャラクターが増えることは?
水川 実は、太秦萌には当初から家族がいます。原作者もこれらのキャラクターを大事にされていますし、当然リファインすることも検討しています。ただ、出し方がどうなっていくか、あるいは本当にやるかどうかなどは、可能性を残しながら考えていきたいと思っています。

太秦萌は4人家族

また2015年に、京都学園大学が太秦天神川駅の近くで新キャンパスを開設されるのですが、この時に太秦萌と一緒に大学をPRできないか、という話を持ち掛けていただきました。太秦萌は地下鉄オンリーでやっていく方針だということをご説明したところ、他にどのような方法があるかということで、大学側で太秦萌の世界観を踏襲したキャラクターを新しく生み出してみるのはどうだろう、とご提案をいただきました。そこで誕生したのが「太秦その」です。京都学園大学に通う大学生で、萌の従姉妹(いとこ)という設定です。この子は太秦萌の世界観から新しく出てきたキャラクターの第1号ですね。今後は大学のキャンパス移転に合わせて、彼女たちを連携していきたいと考えています。

京都学園大学PRキャラクター「太秦その」

太秦その | Facebook

――なるほど。太秦萌の周辺にいるキャラクターとしては、正体不明の男子もいましたよね。このキャラクターがリファインされる可能性もあるのでしょうか。

水川 視野には入れています。女子高生3人ときていますから、バランスを取る意味ではどこかの段階で男性キャラクターは欲しいなと思っているところです。
名倉 男性キャラクターに関しては、単体で出すのか、それとも2人組で出すのかなど、いろいろと試行錯誤しています。ただ、当初からいたこの男子が出るかどうかはまだ分かりません。

初代・太秦萌と共にポスターに登場していた謎の男子

――ポスターが貼り出された時は、この男子と太秦萌がどういう関係なのかと気になっていました。

名倉 紹介ページとかはあるんでしたっけ?
水川 この男子に関しては絵だけです。ただ、今でも記憶に残っているという方が少しでもいるなら、その思いを個人的には拾いたいですね。このキャラクターを作り上げた原作者の思いも絶対にあると思うので。

――いつのまにかポスターがなくなったので、この男子がその後どうなったのかと気になっている人もいそうですね。私服を着ていますが、これは休日の服装で、普段は制服を着て学校に通っている高校生なのかもしれないですし。

名倉 ひょっとしたら、先生かもしれないですしね。僕の周りでは、先生を出してほしいというアイデアがあるんです。年上の男性という。でも太秦萌と恋愛関係には発展させたくなくて(笑)。
水川 見ていただいている方には、ちゃんと記憶に残っているんですね。とにかく全方面、前向きに検討していきます。可能性は一切否定したくありません。

――次にどんなキャラクターが登場するのか、気になるところです。では最後に、太秦萌たちには今後、どのような存在になっていってもらいたいですか?

水川 GK京都さんの企画書にもあったんですけど、一番の目標は、みなさんに「あ、萌ちゃんだ」というように、地下鉄を宣伝している子たちだと認識してもらうということ。何年もかけて、手堅くしっかりと積み重ねていきたいと思っています。この取り組みの中で、3人以外の新しいキャラクターが出てくるのか、あるいはこの3人を軸にして背景をもう少し出していくのか、可能性はまだまだ無限大にある状態です。今後新しい取り組みが表に出たときに、地下鉄のお客様に「新しいのが出た!」と反応してもらえるといいなと思っています。
磯貝 1つのキャラクターというよりは、京都市交通局のイメージアップにつながるような、ブランド力を持った存在になっていってほしいですね。みんなで一緒に育てていくような、親しみのあるキャラクターになってほしいです。
名倉 このキャラクターを通して、交通局のファンになる人が増えていけばいいなと。あとは、やはり地下鉄に乗ってもらいたいですね。

下記の記事では、新しいイラストを担当したイラストレーター・賀茂川さんにインタビューしています。貴重な初期段階のラフ絵も! あわせてご覧ください!
「太秦萌」のイラストレーター・賀茂川さんに聞く! ラフ絵を交えた制作エピソード - はてなニュース

■ アンケートに答えてブックマークすると、抽選でとってもレアな太秦萌たちのポスターをプレゼント!

※募集は終了しました。たくさんのご応募、ありがとうございました。

太秦萌、松賀咲、小野ミサのポスターを、抽選で計6名様にプレゼントします。応募方法は、この記事をはてなブックマークに追加して、3問すべての回答をブックマークコメントに書き込むだけです。

アンケートと応募要項の詳細は以下をご覧ください。

アンケート

  • Q1:太秦萌、松賀咲、小野ミサのうち誰が一番好きですか?
  • Q2:下記5人のうち、今後デザインをリファインしてほしいキャラクターは?(各キャラクターの詳細は下記の一覧に記載)
    • 萌の父・太秦太(うずまさふとし)
    • 萌の母・太秦華(うずまさはな)
    • 萌の姉・太秦麗(うずまされい)
    • 萌の叔父・太秦次郎(うずまさじろう)
    • 謎の男子
  • Q3:太秦萌たちを使ったグッズはどんなものが欲しいですか?
  • アンケートの回答例
    • 太秦萌/謎の男子/パスケース
    • 小野ミサ/太秦華/フィギュア

リファイン希望のキャラクター詳細

  • 太秦太(うずまさふとし)50歳
    • 萌の父。最近はダイエットのために通勤中の地下鉄構内で階段を登るよう心掛けている。
  • 太秦華(うずまさはな)45歳
    • 萌の母。東京生まれだが、着物の着付けも自分ででき、日常は着物で過ごすなど立ち振る舞いは生粋の京都人。萌の天然は母ゆずり!?
  • 太秦麗(うずまされい)25歳
    • 萌の姉。語学が堪能で、すべてのことをそつなくこなし、萌の憧れでもある。太秦家の“ツッコミ”担当。
  • 太秦次郎(うずまさじろう)45歳
    • 萌の叔父で太の弟。趣味は花のスケッチを描くこと。
  • 謎の男子 年齢不詳
    • 萌の……? かつて地下鉄駅構内における階段利用の促進PRに頑張ってくれていた、萌の前に現れた男の子。結構イケメン。

応募要項

  • 応募期間
    • 2014年7月4日(金)から2014年7月10日(木)24時まで
  • 賞品と当選人数
    • 太秦萌/松賀咲/小野ミサ B1サイズポスター各1枚ずつ(計3名様)
    • 太秦萌/松賀咲/小野ミサ B3サイズポスター各1枚ずつ(計3名様)
    • ※絵柄やサイズはお選びいただけません
  • 応募方法
    • アンケート3問すべての回答をブックマークコメントに記載した上で、はてなブックマークに追加
    • ※プライベートモードでご利用の方は対象となりません
  • 当選発表
    • 厳正なる抽選の後、本記事で当選者様を発表させていただきます
  • 賞品発送
    • 当選発表後、はてなよりメールをお送りし、送付先情報(送付先住所、受取人氏名、電話番号)をお聞きします

読者プレゼント当選者発表!(7/14)

たくさんのご応募をいただき、ありがとうございました! 厳正な抽選のうえ、当選された方は以下の皆様です。おめでとうございます!

当選者の皆様には、はてなより詳細を記載したメールをお送りさせていただきます。楽しみにお待ちください!

※期日までにご返信をいただけなかった場合は、再度抽選を実施し、繰り上げ当選者へ当選権をお渡しします。
※繰り上げ当選が発生した場合、発表は、はてなからの当選連絡をもって代えさせていただきます。ご了承ください。

文: あおきめぐみ

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