言わずと知れた、少年漫画の金字塔『ドラゴンボール』。その人気は日本に留まらず、全世界の累計コミック発行部数は優に3億5000万部を超えるとも言われ、アニメは40カ国以上で放映。Wikipediaの記述によれば、フランスでは最高視聴率87.5%という驚異的な数値を叩きだしたとか。まさに80年代後半から90年代前半にかけての日本の子ども文化を代表するお化けコンテンツですが、今日公開された実写版ハリウッド映画「DRAGONBALL EVOLUTION」が、先行上映を見た観客たちの間で、微妙な内容になっていると評判になっています。
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もともと、この映画の広報活動には、どこか奇妙な空気が流れていましたように思います。映画の感想そっちのけで何故かホイポイカプセルについて男性が語るテレビCMや、原作者の鳥山明氏による「別次元の『新ドラゴンボール』として楽しむのが正解かもしれません」というコメントが大きく掲げられた新聞広告に、なぜか筆者は関係者たちの無言のメッセージを聞き取っている気がしてなりませんでした。上で紹介したエントリーを見る限りでは、あながち妄想ではなかったのかもしれません。
それにしても、一体どういう経緯で、こんな評価を受ける映画になってしまったのでしょうか。ちょっと時系列を簡単にまとめてみます。
2002年、20世紀FOXが製作に向けて動き出す
まず、20世紀FOXがドラゴンボールの映画化権を買い取り、制作に向けて動き出していることが最初に伝えられたのは、2002年のこと。この時点では、監督候補に、「ターミネーター2」や「タイタニック」で有名なジェームズ・キャメロンの名前も挙がっていたようです。実際にやってきたのは、同じジェームズでも「ザ・ワン」のジェームズ・ウォンだったわけですが、日本のマンガに詳しいキャメロンが監督していれば、その後の展開は随分と違っていたのかもしれません。
それからしばらくは、動静が殆ど伝えられなくなりますが、2007年頃から断続的に製作の進行状況が漏れ伝わってくるようになります。しかし、その内容はというと、なんだか昼間にテレビ東京で流れていそうな、C級ハイスクール映画のテイスト。新しいニュースが出てくる度に、原型をほとんど留めていないストーリー展開と腰が砕けそうな安っぽい映像の数々が伝わってきて、原作ファンの阿鼻叫喚の巷がネット上に展開されたのでした。この時期の流れと雰囲気は、2ちゃんねるスレッドのまとめサイト「痛いニュース(ノ∀`) 」が丁寧に追いかけています。
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製作が迷走?別次元の作品に
原作の設定をハリウッド映画の文法に翻訳しようと試行錯誤しているうちに、「別次元」の作品になっていったのでしょうか。いずれにせよ、公開日が発表される頃には、すでにネタ映画としての評判が確立していました。それを知ってか知らずか、配給会社も原作を愛するファンに配慮した鳥山明の声明を発表してみたり、評論家向けの試写会を開催しないという異例の措置をとったりしていましたが、逆に別の意味で観客の期待を盛り上げる結果になっていた気もします。
制作費1億ドル超という費用で作られた、この『DRAGONBALL EVOLUTION』。同じく高い制作費をかけながら、原作と大きくかけ離れた内容になってしまい、その出来映えに悲嘆したファンが多かった、故・那須博之監督の「デビルマン」を引き合いに出して語られているのをしばしば見かけます。筆者も知人と一緒に観に行く予定なのですが……不安です。
(タイトル画像は映画「DRAGONBALL EVOLUTION」オフィシャルサイトより)