作りたてよりも一晩たったほうが美味しいと感じる「おでん」。しかしなぜ一晩冷ましておいたほうが味がしみ込んで美味しくなるのか、不思議に思いませんか?そんな素朴な疑問に対し、ある中学校の生徒が実際に実験を行い、「冷ますと味がしみ込む」メカニズムを科学的に解明したエントリーに注目が集まっています。
▽第46回入賞作品 中学校の部 オリンパス特別賞 | 自然科学観察コンクール(シゼコン)
オリンパスが全国の小・中学生を対象に行っている理科自由研究コンクール「自然科学観察コンクール」。2005年度の第46回のコンクールにおいて、中学校の部・オリンパス特別賞に入賞したこちらの研究は、愛知県の刈谷市立富士松中学校で当時1年生だった鈴村直之さんと早川優輝さんによるもの。研究のきっかけは、「何でも、一晩たって冷ました方がおいしいのよ」という母親の言葉だったそうです。
研究ではまず予備実験として、色々な調味料で煮た食材を冷ます前と冷ました後で食べ比べをし、冷ました後のほうが味がしみ込んでいることを確認。そこから人の味覚に頼らない科学的な方法を話し合い、色の変化や塩分・糖分の濃度から判定することに決め、次の7つの実験を行っています。
- 1.加熱時より冷却時の方が本当に味がしみこみやすいのか
- 2.冷却時間を長くしたとき、味のしみこみ具合はどうなるのか
- 3.加熱することで、味のしみこみ具合はどう変わるのか
- 4.加熱すると、食材の固さがどうなるのか
- 5.加熱時、冷却時の食材の重さはどのように変化するのか
- 6.温度によって浸透圧がどのように変化するのか
- 7.加熱したとき食材の表面はどのようになっているのか
これらの実験の結果、確かに食材を加熱している時よりも冷める時のほうが味がしみ込みやすく、冷却時間が長いほど、また一定温度以上に加熱するほど、味がしみ込みやすくなることが判明。さらには、過熱時に抜けた食材の水分が冷却時に戻る際、“味の成分”も一緒に取り込まれることや、過熱時には食材の表面にも劇的な変化が起こり、水分や味の成分がしみ込みやすくなることなども分かったそうです。
普段の生活で当たり前に思いがちなことも科学的な目線でとらえ、実験する中で生まれた疑問もさらに掘り下げていくことで、「冷めると味がしみ込む仕組み」を見事解明したこちらの研究。はてなブックマークのコメント欄でも、「たいしたモンだ」「富士松中学校科学部煮物班GJ!! 」「『加熱』にどういう意味があるのかという着眼点と、浸透圧の変化を定量的に示す『実験5:加熱時、冷却時の食材の重さはどのように変化するのだろうか』がいいなあ」といった声が集まっていました。