2010年、年初の発表で全世界をにぎわせたiPad。先週末ついにアメリカで先行発売され、初日には30万台の販売を記録しました。4月末とも言われている日本での発売を控えて、待ちきれない人も少なくないのではないでしょうか。これまでのiPadにつながるデバイスの流れ、一足先にiPadを手に入れた方のレビュー、競合製品の動向などまとめていきたいと思います。
■ タブレットデバイスのこれまで
話題沸騰のiPadですが、古くは1970年代にアラン・ケイ氏がコンセプトモデルとプロトタイプを提案したDynabookなどに原形を見ることができそうです。Wikipediaから今の流れに通じるそのコンセプトを引用します。
ダイナミックメディア(メタメディア)機能を備えた「本」のようなデバイスという意味で、ケイが1972年に著わした「A Personal Computer for Children of All Ages」に登場する(中略)。
ケイの構想したダイナブックとは、GUIを搭載したA4サイズ程度の片手で持てるような小型のコンピュータで、子供に与えても問題ない低価格なものである。同時に、文字のほか映像、音声も扱うことができ、それを用いる人間の思考能力を高める存在であるとした。
写真 左:Alan Kay and the prototype of Dynabook, pt. 5 | Marcin Wichary | Flickr 右:The Dynabook prototype, pt. 4 | Marcin Wichary | Flickr
知的で豊かな生活をサポートしてくれそうなデバイスはPC誕生以前から、その黎明期、そして今に至るまで、多くの人の心をつかんでやみません。
iPadを見て筆者は思い出さずにいられない端末があります。今から約6年前、2004年にNECから発売されたVersaProというタブレットPCです。
▽ NEC、「世界最薄・最軽量」のタブレットPC発売 - デジタル - 日経トレンディネット
手でのマルチタッチはサポートされていないものの、当時の「世界最薄・最軽量」の重量885gで最薄部11mmと今でも優秀な数字で、日本製品が広まらなかった残念なパターンの典型と言えるかもしれません。いやいや、それでも6年前にこの製品、これからがんばってくれますよね!
そして、2008年にはTechCrunchでタブレット端末を作ろうと呼びかけるプロジェクトも。
▽ 超シンプルな$200ウェブタブレットが欲しい。プロジェクト参加者募集中
▽ CrunchPadの最終プロトタイプが完成…長い道のりでした
▽ 悲しいお知らせ:CrunchPadは始まる前に終わってしまった…
素敵なコンセプトモデルを見てプロジェクトのアップデートが楽しみだった方も少なくなかったと思います。…が、いよいよリリースという時にプロジェクト崩壊。残念としか言いようがありません。
また、iPadのデザインが自社製品に酷似していることを主張した次のような事件も…。
▽ 中国のPCベンダー、「iPad」のデザインをめぐりアップルを提訴か : Appleウォッチ - Computerworld.jp
さまざまなアイディアや製品が世に出される中、iPod touchやiPhoneから火がついたタッチデバイス。ユーザーを魅了してやまない理由は、今までに築いたブランドはもちろん、技術一辺倒ではないライフスタイルまで含めたデザインと、それを実現してしまう開発力にありそうです。
■ iPadレビュー続々
まずはじめにAppleのお膝元とも言えるサンフランシスコ在住の江島健太郎さんのレビューから。
▽ iPad初体験レビュー:江島健太郎 / Kenn’s Clairvoyance - CNET Japan
「主にデザイナーや技術者など「玄人」向けのこってりしたメッセージ」と断りがあり、さらにボリュームも。「期待以上に良いところ」「時間が解決するであろう課題」「時間がたっても解決しない可能性が高い課題」のリストはライトユーザーにも購入の際の参考になりそうです。称賛に比べて問題点の指摘の方が多いと言っても過言ではありませんが、iPadにとどまらず業界の未来まで読んで書かれたエントリー、腰を据えて読む価値がありそうです。
アメリカでの発売を前にニューヨーク・タイムズとウォールストリート・ジャーナルが出したレビューを元に書かれた記事も。
▽ 米紙の「iPad」レビュー、バッテリーと使い勝手に高評価 | Reuters
軽めの楽観的なレビューで重量やユーザー層が限られる点などが指摘されていますが、使い勝手やバッテリーのもちについては両紙とも称賛しています。バッテリーについてはGIZMODE JAPANも「特筆すべき点」としており、ヘビーなバッテリーテストの記事が参考になります。
▽ 【iPadレビュー】iPadのバッテリーをテストしてみた : ギズモード・ジャパン
「どんな操作をしても最低でも6時間は持つ」とのことで心強いですね。
そしてやはりありました。新しいガジェットといえば、恒例の破壊シリーズも紹介しておきましょう。
▽ Will it blend? iPad edition (update: he cheated!) -- Engadget
続々とウェブ上に現れるレビューを見ると、すぐに手に入れたくなってしまいますが、勢い余って買いに行ってしまうと意外なトラブルが待ち受けているかもしれません。デバイスの面では、初期ロットにトラブルはつきものなのか、「無線LANの信号が弱い、信号を検出できない」といった問題が発生しているようです。
▽ iPadの無線LAN接続に問題? 購入者から苦情相次ぐ(CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース
また、法規の観点から問題を指摘する記事も。
▽ 【やじうまWatch】 US版iPadを国内に持ち込んでワイヤレス通信を行うと電波法違反? ほか -INTERNET Watch
「技術基準適合証明が取得されていない海外製のワイヤレス機器を国内でそのまま使うと電波法違反になる可能性がある」とのこと。ぐっとこらえて国内販売を待つのが吉のようです。
日本での発売に備えたいという方は以下の記事をどうぞ。
▽ ついに米国で発売:行列に並んで「iPad」を買ってきました (1/2) - ITmedia +D PC USER
予約開始から当日までのプロセスが紹介されています。大きな混乱もなくスムーズに購入できたというレポートにびっくり。一読しておくと慌てず手に入れられそうです。
魅力的なiPadですが、他社のデバイスも続々登場しています。次はこれら競合デバイスを見ていきましょう。思わぬ発見があるかもしれません!
■ 競合のデバイス
汎用機とはやや用途が違うものの、見た目の類似性やポータビリティーなどから比べられることの多い電子ブックリーダーから紹介します。
<電子ブックリーダー>
電子ブックリーダーといえばKindleを思い浮かべる方も多いと思いますが、その他にも多彩なブックリーダーが。アメリカの書店大手Barnes & Nobleの電子ブックリーダーnookやKindleなど5機種を比較できるエントリーがあります。
▽ nookとその仲間たち―最新eブックリーダー、スペック比較表
写真左:Barnes & Noble Nook e-reader is tiny! | In my big monkey paw… | Flickr 右:Amazon Kindle II | A fellow passenger on the train reading T… | Flickr
nookはAndroidベースのOSを採用しており、電子ブックリーダーという専用機の枠を超えて将来が期待できそうです。前掲の江島健太郎さんのレビューの後半にもiPadに対するAndroidの脅威が書かれており、注目したいところです。
何かと取りざたされる電子ブックリーダーですが、AmazonもBarnes & Nobleも自社デバイスがありながら、iPad向けに無料アプリケーションを提供しています。
▽ Amazon.com、iPadに最適化したKindleコンテンツ閲覧アプリをリリース - ニュース:ITpro
▽ 書店大手Barnes & Noble、iPad向け電子書籍ソフト提供 - ITmedia News
ついiPad vs Kindleのような対立の構図でとらえられがちですが、大手書店の両雄はしたたかにコンテンツを販売する路線に移行しつつあるのでしょうか。
ここまで電子ブックリーダーを見てきましたが、iPadと真っ向からぶつかるタッチデバイスも続々登場しています。ここからいよいよiPadと並ぶ汎用デバイスを紹介していきます。
<iPadと並ぶ汎用デバイス>
汎用のタブレットデバイスはiPadだけかというとそんなことはありません。オープンソースOSを搭載したタブレットデバイスも発表されています。
▽ iPadに対抗せよ、Opensource.comが選ぶオープンソースタブレット・ベスト3 - SourceForge.JP Magazine : オープンソースの話題満載
まだ販売は開始されていないものの、Android搭載で、見た目もスタイリッシュなNeofonieの「WePad」に期待が持てそうです。Neofonieはドイツの企業ということで、この分野であまり目にしないヨーロッパ企業の活躍にも注目したいところです。
携帯電話の雄、Nokiaも満を持して参入の構えを示しています。
▽ NokiaもiPad対抗、タブレットを秋に投入へ - ITmedia News
そして、業界の巨人DellとMicrosoftの二社も。
▽ デルのAndroid タブレットは「Streak」、Kindle本リーダーも兼用
▽ マイクロソフトの2画面タブレット Courier 詳細判明&UI 動画
Dellの製品はAndroid OSという点は興味深いものの、記事からはそれ以上の魅力を感じられませんでした。一方で、MicrosoftのCourierは他にはない二画面構成で、本の形とのギャップも少なく手になじみそうです。デモビデオを一度見てみてください。テーブル型タブレットデバイスMicroft Surfaceのデモビデオを見た時以来の衝撃で、わくわくすることうけあいです!
■ おわりに
iPad発売で勢いがつきそうなタブレットデバイス戦線、電子ブックリーダーも織り交ぜて紹介してきました。これはほしい!という一台はありましたか。発売直後でiPadはさまざまな問題が指摘されているようですが、世界に向けて問題提起したという点でAppleはよい仕事をしたと言えそうです。今後、Android OSのタブレットデバイス、MicrosoftのCourierの登場を控え、しばらく目が離せなさそうです!
The Photo by rant_Robertson.