京都大学は10月5日(金)、斎藤通紀医学研究科教授と林克彦同准教授らのグループが、マウスを用いてES細胞とiPS細胞から卵子を作製することに成功したと発表しました。また、それらの卵子から子どもを生み出すことに成功しています。 研究成果がアメリカの科学誌 「Science」のオンライン速報版で公開されています。
▽ 多能性幹細胞から機能的な卵子を作製することに成功 — 京都大学
▽ Offspring from Oocytes Derived from in Vitro Primordial Germ Cell–like Cells in Mice | Science
発表によると、メスのマウスのES細胞やiPS細胞を、卵子や精子の元となる始原生殖細胞によく似た始原生殖細胞様細胞(PGCLCs)に分化させて将来の卵巣になる体細胞と共に培養したあと、メスのマウスの卵巣に移植することで未成熟卵子を得たとのこと。また、それらの未成熟卵子を受精可能な卵子にまで成熟させ、体外受精させることでマウスを得ることに成功しています。さらに、生まれたマウスは正常に成長し、子どもを作る能力もあることが分かったそうです。
同研究グループでは、これまでにオスのマウスのES細胞やiPS細胞からPGCLCsへ分化させ、それらを元に精子と子孫を得ることに成功していました。しかし、卵子への分化が可能かどうかについては不明で、精子と同様の方法で卵子を作成する培養技術の研究を進めていたそうです。
▽ 多能性幹細胞で作製した生殖細胞に由来するマウスの産出に成功-生殖細胞形成メカニズムの解明、不妊症の原因究明などに貢献- — 京都大学
研究成果は、始原生殖細胞の発生メカニズムの解明や卵子形成の初期段階の解析といった基礎面や、不妊症の原因究明のような応用面での研究に大きな効果があると期待されています。一方で、卵子は生命の根源となる細胞であるため、倫理的な課題を慎重に検討する必要があるとしています。