宇宙航空研究開発機構(JAXA)、情報通信研究機構(NICT)、日立造船株式会社(Hitz)、東京大学地震研究所(東大地震研)、高知工業高等専門学校(高知高専)の5つの機関によるチームは10月24日(水)、高知県室戸沖のGPS津波計で観測した情報を、技術試験衛星VIII型「きく8号」を用いて茨城県鹿嶋市のNICT鹿島宇宙技術センターに伝送する実験を開始しました。
▽ 技術試験衛星Ⅷ型「きく8号」を用いたGPS津波計からのデータ伝送実験を開始|最新情報一覧|きく8号(ETS-VIII)|人工衛星プロジェクト|人工衛星を開発するJAXA宇宙利用ミッション本部
▽ 室戸沖GPS津波計沖合実証実験データ公開ページ
GPS津波計は、宇宙技術を用いて海面の変位を計測する装置です。東日本大震災時には、国土交通省港湾局が整備した釜石沖のGPS波浪計が津波の高さを6.7mと観測し、このデータなどを根拠として気象庁は津波警報を引き上げました。しかし、被災地域の停電で第1波以降のリアルタイムデータが発信されなくなりました。また、これまでの計測方法では陸上の基準局で計測されたデータを必要とするため、基準局との離岸距離が20km程度に限定されるという課題がありました。
今回の実験では室戸岬沖にあるGPS津波計で観測したデータを茨城県鹿嶋市へ伝送できることが確認されました。計測方法に関しては、既存の手法を改良することで沖合100kmを超える地点での測位の安定性を確保し、さらには洋上のGPSブイの観測データのみで海面の変位を計測可能な「PPP-AR法」を確立しています。
今後、衛星回線を用いたデータの伝送手段が確保されれば、衛星の届く範囲で離岸距離の制限なく海のどこにでもGPS津波計を設置することが可能になるとのことです。
実験における各機関の役割は以下の通りです。
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
- 実験結果に基づく次世代情報通信衛星への要求仕様の検討を担当
- 情報通信研究機構(NICT)
- きく8号へのデータ送信と受信、高知高専への受信データ陸上伝送及び次世代通信衛星の平時データ利用の検討を担当
- 日立造船株式会社(Hitz)
- GPS津波計のPVD測位結果出力装置の設計製作を担当
- 東京大学地震研究所(東大地震研)
- 実験結果に基づく次世代津波防災システムの検討を担当
- 高知工業高等専門学校(高知高専)
- GPS津波計からのPVD測位結果の出力、受信データの解析評価及び実験結果のまとめを担当
※PVDとは、前回の計測位置との変化量から観測位置を求める方法