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朝日新聞出版、週刊朝日の橋下徹・大阪市長に関する連載について経緯と見解を掲載



週刊朝日の橋下徹・大阪市長連載記事に関する「朝日新聞社報道と人権委員会」の見解等について(1)
週刊朝日の橋下徹・大阪市長連載記事に関する「朝日新聞社報道と人権委員会」の見解等について(2)
週刊朝日の橋下徹・大阪市長連載記事に関する佐野眞一氏のコメント

週刊朝日10月26日号(10月16日発売)に現大阪市長の橋下徹さんに関する連載記事が掲載されました。朝日新聞出版は、同連載を「不適切な記述があった」との理由で中止しています。この件について、朝日新聞出版の要請に基づき、長谷部恭男さん(東京大学法学部教授)、藤田博司さん(元共同通信論説副委員長)、宮川光治さん(元最高裁判事)の3人で構成される朝日新聞社の第三者機関「報道と人権委員会」による検証が行われました。

「報道と人権委員会」の見解では、今回の記事の企画立案、取材から掲載までの経緯、発行後の経過について詳細な調査を行い、企画段階における問題点や、チェック段階の問題点などを指摘しています。見解の要旨については、以下のようにまとめています。

本件記事は、橋下徹・大阪市長(以下「橋下氏」という。)についての人物評伝を意図したものであり、10回から15回を予定した連載の第1回分であるが、見出しを含め、記事及び記事作成過程を通して橋下氏の出自を根拠にその人格を否定するという誤った考えを基調としている。人間の主体的尊厳性を見失っているというべきである。そして、部落差別を助長する表現が複数個所あり、差別されている人々をさらに苦しめるものとなっている。また、各所に橋下氏を直接侮辱する表現も見られる。さらに記事の主要部分が信憑性の疑わしい噂話で構成されており、事実の正確性に関しても問題がある。

記事を執筆した佐野眞一さんは、「報道と人権委員会」の見解を受けてコメントを発表しました。橋下さんの成育環境を描いたことについて「生まれ育った環境や、文化的歴史的な背景を取材し、その成果を書き込まなくては当該の人物を等身大に描いたとはいえず、ひいては読者の理解を得ることもできない。それが私の考える人物評伝の鉄則です」と表明。その手法を取る理由を「当該の人物を歴史の中に正確にポジショニングして描くためであって、差別や身分制度を助長する考えは毛頭ありません」とした上で、「人権や差別に対する配慮が足りなかったという報道と人権委員会のご指摘は、真摯に受け止めます。また記述や表現に慎重さを欠いた点は認めざるを得ません」と述べています。

この問題を受け、代表取締役社長の神徳英雄さんは引責辞任。代表取締役社長代行の篠崎充さんは、再発防止策として「記者の人権研修の徹底化」「記者規範研修を改めて徹底」「発行人と編集人の分離」「コンプライアンス担当の専任化」「デスク(副編集長)の原稿相互チェック体制の強化」を掲げています。同氏は「読者への誓い」として以下の通り記しています。

創刊して90年の長い歴史を持つ週刊朝日は、今回の記事で社会からの信頼を失い、読者を裏切りました。なぜ今回のようなことが起きたのか、なぜ止められなかったのか、その原因を徹底的に探り、その問題点を排除、克服することから始めなければ、読者の信頼は回復できないと考えています。
報道と人権委員会からの「報道機関としてあってはならない過ち」との指摘は、雑誌の根幹に関わることであり、心に刻まなければなりません。週刊朝日の原点は、「家庭で安心して読めるニュース週刊誌」でした。私たちは、編集部のみならず、全社員が危機感を共有し、社をあげて失墜した信頼の回復に全力で努めていく所存です。

文: 古関崇義

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