宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は11月15日(木)、放射性物質の分布状況を可視化する「放射性物質見える化カメラ」のプロトタイプ機「ASTROCAM 7000」を共同開発したと発表しました。JAXA、MHIに名古屋大学を加えた開発チームが、科学技術振興機構(JST)の協力を受け、実用化に向けた開発に取り組んでいます。
▽ JAXA|放射性物質を可視化する「放射性物質見える化カメラ」を開発 世界最先端の超広角コンプトンカメラをベースに
▽ 放射性物質を可視化する「放射性物質見える化カメラ」を開発|三菱重工
「ASTROCAM 7000」では、コンプトン散乱という現象を利用することで、放射線の飛来方向とそのエネルギー(波長)をリアルタイムで同時に測定できます。これにより、セシウム134やセシウム137、ヨウ素131など、ガンマ線を放出する放射性物質を識別。測定は20~30mの距離から可能で、家屋の屋根や敷地など広範囲に集積した放射性物質の分布状況を可視化できます。今年度内には、MHIが商用モデル「ASTROCAM 7000HS」を市場に投入するとのことです。
JAXAでは過去15年にわたり、宇宙ガンマ線の高感度観測を目指して、コンプトン散乱を使ってガンマ線の方向を測定・可視化する技術の研究を進めてきました。福島原子力発電所事故の後、東京電力からの相談を受けて、ASTROCAM 7000でも利用されている原理を実証するモデルとして「超広角コンプトンカメラ」を試作。2012年2月11日には、この「超広角コンプトンカメラ」を用いて実証試験を行い、計画的避難区域に指定されている福島県飯舘村草野地区で、放射性セシウムの分布を画像化することに成功していました。
「飯館村草野地区における環境放射線分布測定試験結果報告」(PDF)より、実証試験での撮像結果
▽ ISAS | 「超広角コンプトンカメラ」による放射性物質の可視化に向けた実証試験 / 宇宙科学の最前線
▽ JAXA|「超広角コンプトンカメラ」による放射性物質の可視化に向けた実証試験について