魔夜峰央さんの名作を題材にした舞台「パタリロ!」が、12月8日に紀伊國屋ホール(東京都新宿区)で開幕しました。1978年から連載されている同作のコミカルかつ耽美な世界観を、パタリロ役の加藤 諒さんら俳優陣が全身で表現。再現度の高いキャラクタービジュアルにも注目が集まりました。「BLの先駆けとなった作品。その要素もふんだんに盛り込んでいく」と演出家も自信を見せたその内容とは。
▽ 舞台「パタリロ!」 | Nelke Planning / ネルケプランニング
架空の島国・マリネラ王国を舞台に、その若き国王・パタリロが起こすさまざまな騒動を描いた『パタリロ!』は、少女マンガ誌「花とゆめ」(白泉社)で連載が始まった作品です。39年という連載期間は、少女マンガのギャグマンガ作品としては歴代最長。2016年現在はオンラインサイト「花LaLa online」で連載が続いており、コミックスは97巻まで刊行されています。
同作初の舞台化となった舞台「パタリロ!」で主演を務めるのは、ドラマや舞台などで活躍する加藤 諒さん。マンガやゲームを原作とする“2.5次元”作品には、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」や残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』に続く出演となります。囲み取材では、初座長ということもあり、そのポジションにとらわれすぎてしまったとの心境を吐露。しかし「演出家の小林顕作さんについていき、なんとかパタリロになれた」と意気込みを語り、魔夜さんにもお墨付きをもらったという役の表現に自信を持って挑みます。
開演前の客席に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、ギラギラと辺りを照らすミラーボールのカラフルな光。BGMとして西城秀樹さんの「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」やピンク・レディーの「UFO」といった名曲が次々と流れ、昭和の時代にタイムスリップしたかのような雰囲気作りで作品の世界へと誘われます。連載当初から夢中になって読んだ人、若い世代の人、双方の心に等しく“どこか懐かしい”という感覚を植え付ける演出が光ります。
そんな雰囲気で劇場を包み込んだところで始まる今作。「花とゆめ」で連載されていた名作や魔夜さんの出版した書籍についても触れながら、舞台版らしいアレンジでコミカルに進んでいきます。全員がタマネギのような頭部とひし形の口をしているエリート軍人集団・タマネギ部隊も舞台では健在。それぞれの個性を発揮させながら客席を楽しませるシーンも用意されています。「魔夜峰央の世界観全てを表現することができるスペシャリスト」として出演する魔夜メンズがこなしていくさまざまな役どころにも注目です。
「パタリロ!」といえば、ギャグマンガというカテゴリーでありつつ、少年愛を取り入れた耽美な世界観を描いたことでも知られている作品。演出家の小林さんも「(『パタリロ!』は)BLの先駆けとなった作品ということで、その要素もふんだんに盛り込む」と語り、原作が持つ雰囲気を余すことなく表現すると意気込みます。
恋愛シーンの中心人物となっているバンコランを演じる青木玄徳さんも「僕自身、そういう芝居をするのは初めて。注目していただければ」とコメント。その相手を務めるマライヒ役の佐奈宏紀さんは「作品には最年少(19歳)で参加させていただきます。類まれなる未成年の色気を思う存分に発揮して、この『パタリロ!』と客席の皆さまを盛り上げていきたい」と語ります。
独特でありながらも、純粋な恋愛感情を舞台上でまっすぐに表現していく2人。加藤さんも自身のお気に入りとして2人の恋愛シーンを挙げ、「バンコランとマライヒの愛って、本当に純粋で、見ていてすごくどきどきしてしまう。男性と男性なのに、全然見ていられちゃう」と語ります。楽曲のすべてを手掛けた小林さんも「勝負曲はバンコランとマライヒの恋愛曲」と言及するほど熱を注いだそう。実際にその曲が使用されるシーンや、こちらまで胸が締め付けられてしまうほど感情をぶつけあう場面は、舞台上から目がそらせなくなります。
最後に「今年の漢字は何か」と聞かれると、加藤さんは「美」と回答。「美しい景色を見せていただきましたし、美しい人たちと触れ合いました。そして、最後にこの『パタリロ!』。耽美の世界ですから。有終の美を飾りたいと思います」と延べ、12月25日(日)の千秋楽までめくるめく『パタリロ!』の世界を駆け抜けます。
千秋楽翌日に当たる12月26日(月)午前10時からは、dアニメストアで限定映像付きのレンタル配信が始まります。視聴期限は7日間で、価格は1,800円(税込)です。また2018年春には、早くも舞台版の第2弾が上演されることも決定。「2018年はパタリロ一色になる」との気になる情報も公開されています。
(左から)マライヒ役:佐奈宏紀さん、パタリロ役:加藤 諒さん、バンコラン役:青木玄徳さん
舞台「パタリロ!」
(c)魔夜峰央/白泉社(別冊花とゆめ・メロディ・花LaLa online)
<公演概要>
公演期間:12月8日(木)~12月25日(日)
劇場:紀伊國屋ホール(東京都新宿区)<キャスト>
パタリロ:加藤 諒
マライヒ:佐奈宏紀
タマネギ部隊:細貝 圭・金井成大・石田 隼・吉本恒生
魔夜メンズ:佐藤銀平・吉川純広・三上陽永・柴 一平/香取直登(Wキャスト)
バンコラン:青木玄徳<スタッフ>
原作:「パタリロ!」(魔夜峰央『パタリロ!』白泉社)
脚本:池田鉄洋
演出:小林顕作
企画・制作:ネルケプランニング
主催:ネルケプランニング・キューブ
協力:一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会